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2009-04-26

『脳と仮想』茂木健一郎(新潮社、2004年/新潮文庫、2007年)


 小林秀雄講演「信ずることと考えること」に触れているようだ。


脳と仮想 脳と仮想 (新潮文庫)

(※左が単行本、右が文庫本)


 第4回小林秀雄賞(2005年度)受賞。数量化できない微妙な物質の質感=クオリアをキーワードとして、意識の問題に切り込み続ける気鋭の脳科学者が提示した新しい概念「仮想」。心とは何か。どこから生まれてくるのか。小林秀雄を出発点として、漱石、一葉、ワグナー、柳田国男、三木成夫……。幾多の先人の痕跡を辿りながら、近代科学が置き捨ててきた「心」の解明へと迫る、脳科学の最到達点、画期的論考。

大塚英志、玉井禮一郎、トム・ルッツ、岡本浩一


 3冊挫折、1冊読了。


 挫折26『物語消滅論 キャラクター化する「私」、イデオロギー化する「物語」』大塚英志〈おおつか・えいじ〉(角川oneテーマ21、2004年)/オタクによる理屈っぽい評論。話し言葉であるにもかかわらず難解。ついてゆけなかった。20ページほどで挫ける。


 挫折27『大石寺の「罪と罰」』玉井禮一郎〈たまい・れいいちろう〉(たまいらぼ出版、1997年)/部分的な資料として取り寄せたもの。巻末に収められた菅田正昭(すがた・まさあき、宗教史家・離島文化研究家)の論文が興味深い内容だった。日蓮が書写した本尊の写真が十数点掲載されている。内容的には大石寺貫首(かんず)の阿部日顕から寄せられた疑難に答えたものだが、目新しい視点がない上、思想的な深みも皆無だ。


 挫折28『働かない 「怠けもの」と呼ばれた人たち』トム・ルッツ/小澤英実、篠儀直子訳(青土社、2006年)/これは面白かったのだが、如何せん長すぎる。489ページで余白も少なく3360円は安い。迷った挙げ句、222ページでやめた。労働文化史の決定版といってよい。重いテーマであるにもかかわらず筆致が軽妙。ベンジャミン・フランクリンに始まり、各時代のフリーターやニートみたいなタイプ(本書ではスラッカーと表現されている)の著名人がずらりと勢揃いしている。メルヴィル、ホイットマン、マーク・トウェインなんかも登場する。スラッカーこそは文化の担い手であった。


 57冊目『権威主義の正体』岡本浩一(PHP新書、2005年)/『無責任の構造 モラルハザードへの知的戦略』(PHP新書、2001年)と半分以上重複した内容。『無責任の構造』で感じた違和感が、より具体的な形で現われている。岡本浩一は卓越した説明能力の持ち主ではあるが、それだけで終わってしまっているために、骨太の論理を提示できず、結論が必ず些末な方向に終始する癖がある。『無責任の構造』も最終章が全くダメだったが、本書はもっとダメである。アプローチすべきベクトルが逆方向となっているため、安っぽい保守主義に堕してしまっている。更に、岡本浩一自身が“権威主義”という言葉の権威に取りつかれて、あらゆる問題を権威主義で読み解こうとするあまり、偏った方向からの批判に終始している。読み手に旺盛な批判精神が求められる作品だ。

ロスチャイルド家がユダヤ人をパレスチナへ送り込んだ/『パレスチナ 新版』広河隆一


 一般的には「パレスチナ問題」と表現されているが、その実態は「イスラエル問題」であり、ユダヤ人の側に罪があるものと私は考えている。パレスチナからすれば、「軒を貸して母屋を取られる」ありさまだ。

 イスラエルは中東の中央に位置する。今まで知らなかったのだが、中東にはアフリカ大陸の北東部も含まれ(Wikipedia)、北アフリカ諸国の公用語はいずれもアラビア語となっている。


 イスラエルを取り巻く問題には、宗教と民族に端を発したもので、ユダヤ教から派生したキリスト教とイスラム教の兄弟同士が血で血を洗う凄絶な歴史が結晶している。現代の先進国における諸制度は、大半がヨーロッパで誕生したものである。資本主義、議会制民主主義、選挙、憲法、組合、三権分立、人権など、数え上げたらきりがない。ここには正義という概念も含まれる。日本人が何となくこれらのものに、しっくりこない感情を抱くのは、いずれも翻訳語のためと思われる(柳父章著『翻訳語成立事情岩波新書、1982年)。その一方でヨーロッパはキリスト教思想を背景とした帝国主義に走り、アフリカ・アジア諸国を蹂躙(じゅうりん)してきた。世界を知るには、ヨーロッパの歴史を学ぶ必要がある。そして、その“負の面”がイスラエルという国家で噴火しているのだ。


 では、いかなる経緯でユダヤ人はパレスチナへ移り住んだのか――


 1880年代初めから、ロシアではユダヤ人大虐殺(ポグロム)の嵐が吹き荒れていた。このあと起こったユダヤ人の青年運動家たちは、ロスチャイルドの手でパレスチナに送りこまれ、この人々は約20の入植地をつくった。

 ロスチャイルド家は西欧に経済的・政治的影響力をもつユダヤ系大資本家である。彼らにとってユダヤ人の救出と、植民地主義的野心の双方が満たされるこの方法は、願ったりかなったりだった。送りこまれたユダヤ人たちは、現地でパレスチナ人を雇って農園を広げていった。ユダヤ人移民は植民地主義諸国の利益にかなうように働き、現地住民を低賃金で働かせ、搾取していったのである。

 ここで、覚えておかねばならないのは、パレスチナに送りこまれたのがいつも東欧のユダヤ人で、送りこんだのが西欧諸国だったということである。


【『パレスチナ 新版』広河隆一〈ひろかわ・りゅういち〉(岩波新書、2002年)】


 ロスチャイルド家といえば、いつだって陰謀説の主人公だ。世界の金融界を牛耳り、多国籍企業すら膝下に治めている。中丸美繪著『嬉遊曲、鳴りやまず 斎藤秀雄の生涯』(新潮社、1996年)には、こんなエピソードも紹介されていた――


 しかし、ドイツほど、ユダヤ人の経済力に依存した国もなかった。戦費、国家財政、貨幣の鋳造などを押さえ、三十年戦争からナポレオン支配を経て解放戦争にいたるまで、ユダヤ人の資金提供のない戦争はほとんどなかった。ヨーロッパに銀行大帝国を築いたロスチャイルド家の兄弟の母は、戦争の勃発を恐れた知り合いの夫人に対して「心配にはおよびませんよ。息子たちがお金を出さないかぎり戦争は起こりませんからね」と答えたという。


 ということは、数々の戦争すらコントロールしていたことになる。少し前に「信用創造のカラクリ」という一文を書いたが、ここで紹介した動画の冒頭にロスチャイルドの言葉が登場する――「通貨の発行と管理を私に任せてくれ。そうすれば誰が法律をつくろうとも私の知った事ではない」(マイアー・アムシェル・ロスチャイルド)。


 第二次世界大戦以降の戦争は、そのいずれもが経済政策として行われているという指摘がある。そして日本は、アメリカが戦争をするたびに経済的発展を遂げてきた。

 すると、いまだにロスチャイルド家が戦争をコントロールしている可能性がある。そして今、資本という力学が腐食し始めた。マネーの暴走をロスチャイルド家ですら止められなかったのか、それともこの事態までコントロールされたものなのかはわからない。


 パレスチナやチベットの現状が示しているのは、軍事力を持たない国は大国から踏みつけられるという事実である。力弱き者が立ち上がるには、暴力による道しか残されていなかった。その「悲しき暴力」を私は否定しない。

パレスチナ新版 (岩波新書)

独裁とは一人でも闘う/『この大地に命与えられし者たちへ』写真・文 桃井和馬


 1940年6月、ドイツ軍がパリを占領した。凱旋門にはハーケンクロイツ(鍵十字)の旗が翻(ひるがえ)り、フランスの栄光はナチスの軍靴に踏みにじられた。時の首相・ペタン将軍はドイツ軍の前にひざまずいた。


 この時立ち上がったのがドゴールだった。無名の将軍は、ロンドンのBBC放送からラジオを通じてフランス人民に徹底抗戦を呼びかけた。この時、戦っていたのはドゴールだけではなかった――


 フランス人っていうのは、おかしいと思ったら一人でも闘う。

 それがフランス革命を起こしたこの国の伝統で、

 フランス人が一番大切にする気質です。

 1940年、わたしがドイツ軍に捕まった時、それはちょうど結婚した

 ばかりの時期でしたから、指に新しい結婚指輪をつけていたんです。

 で、それを見つけたドイツ兵は、無理矢理、指輪を指から盗ろうとした。


 もう頭にきてねぇ。一人でも闘おうと決心しました。


 捕虜になると、最初に顔写真を撮られます。

 ナチスの連中はたかだか証明写真だっていうのに、

 わたしの身体をカメラの前に置き、ものすごい力で両脇から押さえつけてきた。

 フランス人なら絶対こんな時、闘わなくちゃいけない。

 だから、わたしはシャッターが押される瞬間、カメラの前で目一杯

 舌を出してやったんですよ。……こんな風にね。

 もちろん殴られて、再度写真を撮られることになった。

 でもわたしは抵抗をやめませんでしたよ。

 何度も何度も、彼らが諦(あきら)めるまで私は舌を出し続けた。


 独裁とは一人でも闘う。


 小さなことかもしれませんが、

 それがフランス人の矜持(きょうじ)なんです。


【『この大地に命与えられし者たちへ』写真・文 桃井和馬(清流出版、2007年)】


 年老いたオジサンが舌を出した写真が掲載されている。少しブレているのは、オジサンの迫力に桃井和馬が気圧(けお)されたのであろうか。


 フランス人の矜持――私は羨望の思いを抑えることができなかった。絶体絶命の危地に立たされた時、個人としての誇りは吹き飛ばされてしまう。そこで問われているのは、「自分は何者なのか」というアイデンティティに他ならない。程度の低い帰属意識とは異なる。自分よりも大きい何かと、自己という存在を一体化させた時に、偉大な自覚が生まれるのだろう。


「フランス人っていうのは、おかしいと思ったら一人でも闘う」――このような“大きな物語”が紡ぎ出される背景に、私の興味は掻き立てられる。この際、フランス人の身勝手ぶりは無視して構わない。


 この写真集は世界と歴史を、個々の人間と特定の場所から捉え直す不思議な力に満ちている。「見る」という行為の衝撃が、確かにある。

この大地に命与えられし者たちへ

今やり直せよ。未来を。


 本当にこんな言葉が2chにあったのか――


 10年後にはきっと、せめて10年でいいから戻ってやり直したいと思っているのだろう。

 今やり直せよ。未来を。

 10年後か、20年後か、50年後から戻ってきたんだよ今。


【2ch】


 出典はこの辺りか――

 下のコメント欄にこうある――


27. 通販さん@賛成です 2008年01月27日 16:51


 あなたは十年後にもきっと、

 せめて十年でいいから戻ってやり直したいとおもっていますよ。


 今やり直してください。未来を。


 十年後か、二十年後か、

 五十年後から戻ってきたんですよ、今。


 また、こんな言葉もあった――


23. 通販さん@賛成です 2008年01月27日 15:57


 お前らが無駄に過ごしてきたこの10年間は10年前に病気とかで死んだ人が生きたかった10年だったんだよ。


201-03-10


 yhachisuさんからのコメントで、もっと古くからあることが判明した。詳細は以下のページを参照されよ──