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2009-05-17

吉田洋一、ゲーテ、小林秀雄、関岡正弘


 1冊挫折、3冊読了。


 挫折29『零の発見 数学の生い立ち』吉田洋一(岩波新書、1939年)/札幌へ行く際、携えていった。文章が読みにくい上、展開が遅い。98ページで挫ける。50ページまでは面白かった。


 62冊目『ゲーテ格言集』ゲーテ/高橋健二編訳(新潮文庫、1952年)/5月10日に読了。これさえ読んでおけば、「ゲーテ曰く――」と書くことができる。素晴らしいのは、一々出典を明記しているところ。『ファウスト』を読んだふりができる。名言はたくさんあるのだが、どうもゲーテという人を私は好きになれない。「テクニックの人」という印象を受けた。胆力が感じられないのだ。「喧嘩のできる人物」には見えなかった。ま、一読の価値はあるんだけどね。


 63冊目『小林秀雄全作品 26 信ずることと知ること小林秀雄(新潮社、2004年)/千歳へ向かう飛行機の中で読了。これは面白かった。講演「信ずることと考えること」の抄録が収められている。テープ起こしではなく本人が書き直したもので、講演の前半部分のみ。講演の名調子を窺い知ることはできないものの、論旨は文章の方が明快である。特に、炭焼きをしている男が二人の子を殺す話は、文章でなければわかりにくい部分がある。小林秀雄は文章になると面白味に欠けるが、対談が実に素晴らしい。常人の言葉づかいと全く異なっている。講演CDはその内買う予定である。


 64冊目『「1929年大恐慌」の謎 経済学の大家たちは、なぜ解明できなかったのか』関岡正弘(PHP研究所、2009年/ダイヤモンド社『大恐慌の経済学 カジノ社会が崩壊する日』1989年の改訂版)/本日読了。硬派な教科書本。ハードカバーで復刊したのはPHPの英断を称讃したい。本書が発刊されてから3ヶ月後に日経平均株価は3万8915円を記録し、その後相場は瓦解した。日経平均の30年間のチャートを見れば一目瞭然だが、今も尚下げ続けている。戻しては下げを繰り返しながら、底を打ってはいない。著者の先見性もさることながら、実学的要素が濃く、理論を弄(もてあそ)ぶところがない。経済学が富のストックを無視したために大恐慌を予測できなかった、という指摘が斬新。末永く読まれてしかるべき一冊だ。

運とは流れ/『運に選ばれる人 選ばれない人』桜井章一


 運命なんぞにはとんと興味のない私だが、20年間無敗の雀鬼が語る「運」には耳を傾けざるを得ない何かがある。「運」というよりは「流れ」であり、「変化」を敏感に感じ取り、つかまえることが大切であると桜井章一は説いている――


 運命を変えるには単に信念を持って行動を続けるとか、真面目にコツコツ努力すればいいというものではありません。変化を感じ取り、流れをつかめばおのずと運命は変わっていきます。すべてのものは絶え間なく変化しているのであり、それにリズムを合わせることが出来れば自然に運命は変わっていきます。運命を変えたいのになかなか変わらないなと思っている人は、周りで起こっている変化を感じようとしないので変わらないのです。変化をつかみ、その上でさらに自分が望む流れをつくっていこうと思えば運命は確実に変わります。


【『運に選ばれる人 選ばれない人』桜井章一(東洋経済新報社、2004年/講談社+α文庫、2007年)】


 一週間ほど更新が滞っていたが、実は札幌の実家で父が倒れた。直ちに救急車で搬送されたが意識不明・四肢麻痺の重態。脳幹出血との診断だった。これだって、一つの「流れ」といえる。父の意識はまだ戻らず、予断を許さない状況ではあるが、今後も小さな変化が何度となく現れることだろう。


 ま、親の病気や死を「運命」などという言葉で大仰(おおぎょう)に語りたくはない。そんなことは、私が子として生まれた時から受け容れなくてはならない既定の事実である。だが、たとえそうであったとしても、「今日、明日がヤマ」と医師から告げられると、今尚生きている現実に感謝の念が湧いてくる。


 誰人たりとも生老病死(しょうろうびょうし)を避けることはできない。これ自体が人生のリズムであり、流れそのものだ。ブッダは四苦として説いたわけだが、これらの苦しみとどのように付き合うかが幸不幸の命運を分かつのだろう。


 もしも、運命なるものがあるとすれば、ある時は甘受し、ある場合は戦う必要が出てくる。「命を運ぶ」と書くのだから、そこに自分の意志を働かせることは十分可能だろう。


 風がなければ凧(たこ)は空高く舞うことができない。波がなければ波乗りを楽しむことも不可能だ。つまり、人生の変化をよりよい方向へリードできる人であってこそ、自分の人生の舵(かじ)を取っているといえよう。


 世界を見渡せば、病気で死ぬことはまだ幸せな部類に入る。しかしそれでも尚、私は運命と対峙し、徹底抗戦するつもりだ。

運に選ばれる人 選ばれない人 運に選ばれる人  選ばれない人 (講談社+α文庫)

(※左が単行本、右が文庫本)

海老沢泰久著『青い空』が文庫化


 江戸時代、キリシタンは改宗しても幕府の監視下にあった。幕末に生きる主人公・宇源太も五代前の祖先が信者だったため、監視を受け、苛酷な生活を強いられていた。友人が殺されその敵討ちを果たした宇源太は、村を出て江戸へ向う。江戸で剣術を学び、尊敬できる宗教家と出会った宇源太。しかしそれは、新たな悲劇の幕開けだった。


 勝海舟と知り合った宇源太は、勝の頼みで浦上へキリシタンの救済に向う。幕藩体制が崩壊すれば、信仰の自由を手に入れることができると信じた敬虔な人たち。しかし、その思いを新政府は無残に打ち砕いていく。数多くの研究書・史料を駆使し、「日本はなぜ神のいない国になったのか」を問いかける傑作時代小説。

青い空〈上〉―幕末キリシタン類族伝 (文春文庫) 青い空〈下〉―幕末キリシタン類族伝 (文春文庫)