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2009-07-06

レイプを研究対象とする愚行/『人はなぜレイプするのか 進化生物学が解き明かす』ランディ・ソーンヒル、クレイグ・パーマー


「進化論は後だしじゃんけんだ」というのが私の持論である。進化論は生き残った種を勝者と位置づけ、残された機能を有利と判断する。しかしよく考えてみよう。淘汰という概念から見ても、果たしてヒトが進化しているかどうかは不明だ。人類が地球の歴史に登場してから高々700万年しか経っていないのである。恐竜のようにならないとは誰も保証できないだろう。要はこうだ。過去を振り返れば現在生きている生物は勝者となるが、未来から見れば滅びつつある種になっているかも知れないのだ。


 本書を知ったのは、「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」というブログでのこと。


 一部引用させて頂く――


 つまりこうだ。女は妊娠、出産、授乳に多大な時間とエネルギーを費やさなければならない。だから男選びも慎重になる。レイプは父親を選べず、子育てを困難にするため、女に大きな苦痛をあたえることになる。いっぽう男は養育投資が少ないことから、繁殖のため、多数の相手に関心を向けることになる。そんな男のセクシュアリティの進化が、レイプの究極要因だという。要するに男は色を好み、女は選り好みするんだね。

 ただし、レイプそのものが適応なのかどうかについては、判断を保留している。レイプとは、男の性淘汰の中における、偶然の副産物だという考えと、ずばりレイプは適応であるという仮説の両論を併記している。性淘汰における繁殖に有利な形質として、レイプが選び取られていたなんて、考えるだにゾッとするのだが、それが生き物としての雄の姿なのだろうか。


【「人はなぜレイプするのか」】


 この書評に賛否両論のコメントが殺到した。それに対して再び書かれた記事が以下――


 しかし、そうした勇み足の一つを攻撃して、本書の全てを否定できたヤッホーと能天気に勝利宣言するほど、わたしはおめでたくない。あるいは、竹内久美子のエッセイのような「分かりやすさ」に飛びついてこと足れりとするほど、この分野の研究は進んでいない(はずだ)。だから、「進化・適応からレイプを説明する」可能性は残し、精進に励もう。


【「レイプは適応か」】


 で、リンク先にはこんな記述がある――


 この話題が欧米ではどのような苛烈な政治的な論争を巻き起こす危険があるかを十分に理解した上で、真摯にレイプとはどのような現象であるかを解説している書である。


shorebird 進化心理学中心の書評など


 本書の原題は『A Natural History of Rape』(強姦の自然史)である(※「EP: 科学に佇む心と身体」を参照した)。これをわざわざ『人はなぜレイプするのか?』と改題するとは見上げた根性だ。売るためなら、何でもやってのけるような出版社なのだろう。「青灯社」という名前は、何となく殺虫ライトを思わせる。きっと、害虫みたいな読者を募ろうって魂胆なのだろう。


 では、私の考えを述べよう。まず、レイプを研究対象とすること自体が愚行であると考える。これがレイプ防止とか、レイプ被害者のケアであればまだ理解できる。しかし本書は、「レイプという行為」を研究対象にしているのだ。


 これがおかしいのは、レイプを犯罪に置き換えるとよくわかる。レイプが進化的適応だとすれば、窃盗や詐欺には経済的合理性を、暴力にはリーダーシップを認めねばなるまい。


 大体が適応であるはずがないのだ。なぜならば、レイプという行き掛かりの行為によって自分のDNAを遺せたとしても、経済的な支援がなければ子供は育つことができないからだ。つまり、殆どの人々がレイプをしないのは、「好き」という感情をベースとした持続的な関係性があって、初めて育児が可能になることを本能的に知っているためだろう。


 では、レイプした側に経済力があったとしよう。そうであったとしても、無理矢理子供を孕(はら)ませてしまえば、生まれてきた子供が母親に殺されるリスクが生じる。そう考えると、進化的に有利とは決して言えないはずだ。それ以前に寝首を掻(か)かれる可能性が大だ。


 レイプといえば、以下の記事が忘れられない――

 もしも私に娘ができたら、こう教えるだろう。「女として生まれた以上、レイプされる可能性は常にあると考えよ。だが、いくら心を構えたとしても、いざとなれば組み伏せられてしまうことだろう。そうなったら逆らうな。静かに迎え入れて、相手の隙(すき)を窺え。そして、一瞬の間に相手の両目を指で抉(えぐ)り取れ。ほんの少しでも躊躇すれば逃げられる。レイプされた後で殺される可能性があることを忘れてはならない。否、レイプされた時点で自分は殺されたものと思え」――。


 レイプという行為は、種というコミュニティを破壊する可能性がある。とすれば、加害者は殺されてしかるべきだろう。本気でそう思う。


 尚、私は本書を買ってもいないし、読んでもいない。もちろん、読む予定もない。所詮、センセーショナリズムに訴えて注目を浴びようとしている程度の研究に過ぎないと思う。実に唾棄すべき研究だ。


 女性は万一に備えて護身用の催涙スプレーなどを持ち歩くべきだ。

 進化生物学に関しては、以下の書籍が有益である――

人はなぜレイプするのか 進化生物学が解き明かす

hapipi_0715hapipi_0715 2009/07/07 15:21 >生き残った種を勝者と位置づけ
そんな単純な進化観を持っている生物学者はいないと思いますよ。種の絶滅や存続には運も大きく関わっていると誰だって認めます。例えばシロクマを考えてみると分かりやすい。シロクマの白い毛並みは隠蔽色になり、おそらくエサとなる動物を捕獲するのに有利だろうと推論できます。しかしその毛並みは雪がないところでは逆に目立つ=つまり適応ではない。進化生物学者がある形質を適応だと呼ぶとき、それは「特定の環境、特定の状況でその持ち主の聖損と繁殖成功率を増大させる」という意味でしかありません。「種の存続」と「特定の形質の適応さの度合い」は分けて考えなければなりません。
ある性質が適応かどうかは、例えば以下のように実際の生物を対象とした研究で結論されます。
http://www.sciencedaily.com/releases/2009/06/090602133551.htm

>過去を振り返れば現在生きている生物は勝者となるが、未来から見れば滅びつつある種になっているかも知れないのだ。
まさにこれ、「進化とは勝者が生き残る過程ではない」ということは全ての進化生物学者の卵が大学一年の最初の講義で学びます。

>まず、レイプを研究対象とすること自体が愚行であると考える。これがレイプ防止とか、レイプ被害者のケアであればまだ理解できる。
本書をお読みになっていないためにご存じないのだろうと思いますが、ソーンヒルとパーマーはどうすればレイプを防げるか、どうすれば被害者のケアを強化でいるかを論じています。そもそも犯罪心理学者や社会理論家も「レイプそのもの」を研究していますよ。レイプが何かを知らなければ防止することも十分なケアもできません。従来の研究と異なるのは生物学的要因を考慮しているかしていないかです。

>レイプが進化的適応だとすれば、窃盗や詐欺には経済的合理性を、暴力にはリーダーシップを認めねばなるまい。
おそらく「進化的適応」を「良いこと」だと誤解してらっしゃるのではないかと思います(だから、レイプに良い部分を認めるなら窃盗や暴力にも良いところを認めなければならないだろう、と考えられたんですよね?)。そうではなくて、進化的適応とは「個体の繁殖成功率を増大させるような性質」と言うだけの説明的な概念です。たとえば物体が「重い」とか「軽い」というのと同じですね。そしてレイプが適応かどうかとは関わりなく、窃盗や詐欺や暴力が(特定の状況では)適応かどうかを研究することはできるでしょう。もちろんそれがよいことかどうかは別の問題です。経済的合理性やリーダーシップは何の関係もない。

>大体が適応であるはずがないのだ。
ここで想定されているのは代替戦略ですよ。つまり、経済的、社会的に困窮していて通常の繁殖戦略を用いることができない場合に、そのまま子をもうけずに死ぬよりもハイリスクローリターンでも一か八かの手段に訴えるほうが子孫が残りやすいと言うことです。代替戦略はオランウータンなど多くの生物で見つかっています(だからと言って人間にもそのまま通用するかは別ですが)。レイプによる子が実子よりも親に殺されやすいとか、経済的支援を受けにくいことは確かでしょうが、通常戦略がとれないときに代替戦略を用いるのですから通常戦略のコスト/ベネフィット比と代替戦略のコスト/ベネフィット比を比較しても意味がありません。比較すべきなのは代替戦略同士です。ほとんどの人がレイプできないのは、もちろん通常戦略が多くの場合成功するからでしょう。

>本能的に知っているためだろう
「進化的適応」に関する議論はすべて、「なぜ本能的に知っているのか?」に関する議論ですよ。通常戦略、つまり特定の相手と長期にわたる関係を維持する方が好ましく思えるのは、それがとれる状況ではそうした方がより適応的だからではないでしょうか。

ところでsessendoさんはレイプを研究することは愚行だと仰っていながら、まさにレイプが適応かどうかについて、ソーンヒルらと同じ視点で論じてらっしゃることに気付いておられるでしょうか?(そして残念ながら、それら唾棄すべきレイプ研究者と比較してsessendoさんのロジックはかなりずさんだと思います)

>尚、私は本書を買ってもいないし、読んでもいない。もちろん、読む予定もない。所詮、センセーショナリズムに訴えて注目を浴びようとしている程度の研究に過ぎないと思う。実に唾棄すべき研究だ。

1920年代のアメリカやドイツの人種差別主義者は、人種間の科学的平等を訴える本を全く同じ論理を用いて退けました。よく理解していない理論や読んでいない本を、自分の想像をベースとした批判を元に退ける危険性は、とてつもなく高いのではないでしょうか?

sessendosessendo 2009/07/07 17:08 いやはや、勉強になりました。

半可通半可通 2009/07/10 03:50 hapipi_0715 2009/07/07 15:21
>生き残った種を勝者と位置づけ
そんな単純な進化観を持っている生物学者はいないと思いますよ。種の絶滅や存続には運も大きく関わっていると誰だって認めます。例えばシロクマを考えてみると分かりやすい。シロクマの白い毛並みは隠蔽色になり、おそらくエサとなる動物を捕獲するのに有利だろうと推論できます。しかしその毛並みは雪がないところでは逆に目立つ=つまり適応ではない。進化生物学者がある形質を適応だと呼ぶとき、それは「特定の環境、特定の状況でその持ち主の聖損と繁殖成功率を増大させる」という意味でしかありません。「種の存続」と「特定の形質の適応さの度合い」は分けて考えなければなりません。

生き残ったのはやはり勝者だと思います。出世競争だって能力だけではなく偶然が作用しますが、勝ち残れば勝者です。シロクマを氷山から引きずり出して密林で能力査定をしてもお笑いだと思います。生き残った種は適応している環境での勝者だと思います。スーパーへビュー級のリンクでは秒殺されようともモスキート級では勝者でありえます。

>過去を振り返れば現在生きている生物は勝者となるが、未来から見れば滅びつつある種になっているかも知れないのだ。
まさにこれ、「進化とは勝者が生き残る過程ではない」ということは全ての進化生物学者の卵が大学一年の最初の講義で学びます。

「盛者必衰の理」でしょう。ある環境条件で、ある種が勝者として栄え、環境が変われば別の種が勝者として栄えるのではないでしょうか。アレキサンダー大王も、ナポレオンも、そして麻生太郎も、勝者だった時がありました。勝者が生き残るのです。そして環境条件の変化で、別の勝者が現れるのです。と、思います。

CrispdawnCrispdawn 2012/08/14 17:15 進化論について僕と同じくらい雑な認識をお持ちのようですので『知識ゼロからのダーウィン進化論入門』(佐倉統監修, 2010)をおすすめします。

通りすがり通りすがり 2013/02/12 04:12  気になったのは、いわゆるレイプ殺人のような行動はこれで説明できないことです。相手を殺してしまっては「種の保存」が不可能であるのは明確ですから。それとも、「本能的なレイプ」と「社会的罰則回避のための殺害」という複合要因なのかな?異常心理に興味があるせいか、我々が想像するような暴力的レイプという行為はある種の欠陥のなせる業という気がしてなりません。Live Leakなどで実際の動画などを見ると分かると思いますが、ちょっと普通の神経ではできないですよ。むしろ、特殊な遺伝的欠陥として見ることができないのか、と考えてしまいます(まぁ、「俺はそいつらとは違う」ということを正当化したいだけかもしれませんが)

sessendosessendo 2013/02/16 11:52 特殊な例を一般化する必要はないでしょう。

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