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2009-09-23

アメリカの反テロ戦争が金融崩壊を招いた/『ドンと来い! 大恐慌』藤井厳喜


 まるで「売れない演歌歌手」といったところだ。表紙も著者名も。若者相手の講義といった体裁をとっているため、言い回しが馴れ馴れしくなっている。「――なんだよな」みたいな。読みやすさを考えた戦略なんだろうが裏目に出ている。話し言葉と書き言葉の違いはそんな簡単なものではない。


 信じられないほど誤字が目立つが、国際経済を知る上で見事な教科書たり得る一冊となっている。意図的に保守を気取っているため、「シナ」という表記もあるが無視して宜しい。保守派というのはおしなべてデリカシーに欠けているものだ。そうでなければ保守など務まらない。


 藤井厳喜は、増田俊男と同じく力学的に経済を捉えている。これが実にわかりやすい。例えば、サブプライムショックに端を発した昨今の世界的な不況について、次のように指摘している――


 第四の要点。これは、他のどの恐慌本にも書いていないポイントだと思うけど、金融バブルの崩壊を起こした「引き金」は、実はアメリカの反テロ戦争だったということ。

 アメリカのブッシュ政権は、国際テロリズムの資金源を根絶やしにするために、国際的なアングラ・マネー(地価資金=違法資金)の撲滅を企てた。

 特にオフショア(海外)のタックス・ヘイヴン(※租税回避地)には大量の違法資金が集まって、これがニューヨークの金融市場に流入して、アメリカの金融バブルを支えているという側面があったんだね。

 ブッシュ政権としては、各国の協力を求めて、テロの資金源を断つためにやったことだったんだけど、これが思った以上に大きいマイナスのショックをアメリカ経済に与えてしまったというわけだ。

 違法資金というのは、麻薬や武器密輸や脱税で儲けたカネのこと。違法なカネを表に出して使えるようにするのを、マネー・ロンダリング資金洗浄)というが、通称このマネロンのために利用されるのが、オフショアのマネー・センター、その代表格がイギリス領のケイマン諸島で、ケイマンからニューヨークに流入していた資金は、約1.9兆ドル(1ドル90円として171兆円)の巨額に及んでいた。


【『ドンと来い! 大恐慌』藤井厳喜〈ふじい・げんき〉(ジョルダンブックス、2009年)】


 この大前提として、印刷し過ぎたドルを回収する目的でニューヨークの金融マーケットを高値に誘導したと分析。それにしても、よもやアングラ・マネーとはね。ま、政治家と暴力団に共通するのは「力の論理」が支配することか。


 マーケットの値段を決めるのはマネーの量である。資金量が増えれば値段は上がるし、減れば下がるというだけの話だ。「買える金」があれば、いくらでも相場は上がってゆく。


 藤井の指摘が正しければ、武器・弾薬、重火器、麻薬、覚醒剤、買春、児童売買、臓器売買、みかじめ料に至るまでドルで支払われていることになる。悪い奴等がドルを手にしていれば、相対的にドルの価値は下落する。あるいはドルの余剰。


 それにしても不思議なことだが、ダブついたマネーはどこに消えたのだろうか? 信用創造とレバレッジで膨らむだけ膨らませたお金はどこへ行ったのだ? マーケットは常にゼロサムゲームだ。誰かの儲けは、誰かの損失である。途中で消え失せることはあり得ない。とすると、儲けている連中はどこかにいるはずだ。あなたや私でないことだけはハッキリしている(笑)。


 もう一つ。アングラ・マネーが台頭しているということは、アングラな連中に対する需要が伸びている事実を示している。世界は無法化しつつある。でもまあ、無法者の代表選手がアメリカだからねえ。

ドンと来い!大恐慌 (ジョルダンブックス)

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