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2009-09-30

表現欲求/『相談しがいのある人になる 1時間で相手を勇気づける方法』下園壮太


陸上自衛隊初の心理幹部」という肩書が気になって読んでみた。なるほど、実践に強そうな人だ。カウンセリングは一歩間違うと、理論の迷宮に入り込んでどんどんクライアントから離れてゆく傾向がある。


 ハウツーものっぽい内容だが決して侮れない。私はどちらかというと、相談を持ち掛けられることが多く、カウンセラー的資質のある方だが、頷かされるところが多かった。


 人はなぜ相談するのか。苦しいと声を上げるのはどうしてか――


 さてそんな原始人の一人が、あるピンチに陥ったとしましょう。怪我をしたか、お腹が痛くなったか、ヘビに噛まれたか、熊に襲われそうになったか……。そんなとき、仲間に助けを求めます。おそらく、大きい声で叫んだり、泣いてみたりしたでしょう。声も出ないときは、絵を描いて苦しさを伝えたかもしれません。いずれにしても自分の苦しさを表現できれば、仲間から助けてもらえるチャンスがあるのです。

 つまり、人にはピンチになったら自分の苦しさを表現したいという欲求が組み込まれているのです。これを私は「表現欲求」と呼んでいます。


【『相談しがいのある人になる 1時間で相手を勇気づける方法』下園壮太〈しもぞの・そうた〉(講談社、2008年)】


 学術的な根拠は示されていないが、鋭い想像力を窺わせる。悩みを打ち明けたくなるのは「表現欲求」の表れだった。


 文化の継承が口伝えで行われていた時代――つまり本のない時代だ――は、古老などの中心人物に相談していたのだろう。何といっても人生の経験が豊富だ。で、極端に敏感な女性が呪術の道を切り拓いたのだろう。卑弥呼よ、お前もか――。


 表現欲求は、それを正しく受け止めてくれる人がいなければ満たされない。傾聴的態度が求められる。カウンセリング理論の大半は「聴く技術」ともいえる。


 本書で紹介されている技術は簡単なものである。しかしながら簡単だから身につくかといえば、そうは問屋が卸さない。強い自覚を持って、日常生活のやり取りの中でロールプレイングを繰り返す作業が必要だ。


 相談が寄せられる人に求められる資質は、「共感力」とでもいうべき感受性に尽きる。言葉による情報から、相手の苦悩をそのまま自分の心で感じ取る営みを仏教では「同苦」と呼ぶ。

相談しがいのある人になる 1時間で相手を勇気づける方法 (こころライブラリー)

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