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2009-11-04

『正統と異端 ヨーロッパ精神の底流』堀米庸三(中公新書、1964年)


正統と異端 ヨーロッパ精神の底流


 目的は手段を正当化しない。たとえそれが人類救済のためであっても。すでに11世紀のローマ法王は、教会の腐敗をただし正統の信仰をたてるため、異端的手段を用いた。その結果は、12〜13世紀の一大異端運動となり正統を標榜する己れにはね返った。キリスト教会をめぐるこのような正統と異端の激烈な争いは、そのまま現代のイデオロギーの問題にかかわる。西洋中世史家が20年来抱き続けてきたテーマの成果がここにある。

視覚には複数の機能がある


 その後、「神経をつなぎ変えた」カエルを人工的な獲物を用いてテストしたところ、カエルは向きを変え、獲物を捕獲するためにすばやく舌を伸ばしたが、その方向は獲物が提示された側とは逆方向であった。この「左右逆の」行動が生じたのは、カエルの獲物捕獲システムが誤って配線し直されたことによる。

 しかしこれは、カエルの視覚世界全体が左右反転しているということではない。イングルがこの同じカエルを用いて、行く手を阻んでいる障壁を避けてジャンプする能力をテストすると、その運動はまったく正常だった。獲物の捕獲でエラーをおかした同じ場所に障壁が置かれても、ジャンプは正常だった。あたかも、カエルが障壁を回避するときには外界を正確に見ているが、獲物を捕獲するときには外界を左右逆に見ているかのようである。実際イングルは、視神経が依然として障害物回避モジュールと正常に連絡していることを発見した。


【『もうひとつの視覚 〈見えない視覚〉はどのように発見されたか』メルヴィン・グッデイル、デイヴィッド・ミルナー/鈴木光太郎、工藤信雄訳(新曜社、2008年)】

もうひとつの視覚―〈見えない視覚〉はどのように発見されたか

悩める人々に示す戦略の数々/『インテリジェンス人生相談 社会編』佐藤優


 この人は実務家だ。その点で佐藤優伊勢崎賢治は似たタイプだと思う。実務家は仕事や任務の範囲に明快な線を引き、何をどうすることで目標が達成できるかに集中する。彼等は障害が発生するたびに戦略を練り、駆け引きに応じ、自分が泥をかぶる場面があってもそれを厭(いと)わない。そう。プラグマティズムの体現者なのだ。


 個人編とは打って変わって、やはり格差問題が多い。相談者は資本主義の犠牲者といえるだろう。富は偏在する。だからこそ国家が税を徴収し再分配するわけだが、これが上手く機能していない。再分配先が大企業――すなわち官僚の天下り先――となっているためだ。偏在する富は国家の手によって、更に隅っこの方へ片寄ることとなる。ま、少々の犠牲には目をつぶろうってわけだよ。


 佐藤は相談者に対して、何ができて何ができないかを同じ目線で考え、具体的な戦略を提示する。読みやすいこともあって素通りしてしまいそうになるが、大事な情報があちこちに散りばめられている。


 例えばネットカフェ難民に対するアドバイスはこうだ――


 人間は環境順応性の高い動物です。ネットカフェ難民は、太陽の光の下でスーツや下着を干さないので、独特の臭いが生じます。踊り場や屋上に服を干して、ネットカフェ生活から抜け出す決断をすることです。


【『インテリジェンス人生相談 社会編』佐藤優〈さとう・まさる〉(扶桑社、2009年)以下同】


 ね、凄いでしょ。恐るべき想像力である。佐藤の脳には多分、相談者の映像が浮かび上がっているのだろう。あるいは意図的に映像化しているのかもしれない。


 また、こんな言葉もある――


 自分のことを「ダメ人間」と思っている人は決してダメ人間ではないのです。どうしてかというと、ダメである自分を外側から観察しているもう一人の自分がいるからです。もしほんとうのダメ人間ならば、自分がダメであるということに気づきません。


 心理的・哲学的でありながらも心優しいメッセージだ。佐藤は相談者と向かい合った位置に身を置かない。相談者と同じ方向を見つめながら、寄り添っているのだ。


 この男は、ひょっとしたら獄中で何かを悟ったのかもしれない。いや、ホントに。

インテリジェンス人生相談 [個人編] インテリジェンス人生相談 [社会編]