古本屋の覚え書き このページをアンテナに追加 RSSフィード


WWW を検索 古本屋の覚え書きを検索

2009-11-06

紙屋克子


 1冊読了。


 126冊目『紙屋克子 看護の心 そして技術/課外授業 ようこそ先輩・別冊』NHK「課外授業 ようこそ先輩」制作グループ、KTC中央出版編(KTC中央出版、2001年)/fwikさんから勧められた一冊。好著。紙屋の人柄が素晴らしく、何となく涙が出てきてしまう。言葉の端々に「寄せる思い」が現れている。意識障害の患者が、録音された友人のメッセージを聴いて泣き出すシーンを私はテレビで観ていた。一つだけ残念なのは、意識障害の回復に対してさほど新しい情報がないこと。声掛け、座位、立位、食事、体位変換など現在では既に常識となっている。医療ではなく看護という視点からのアプローチが、紙屋の創造的なところで今まで以上に患者と家族に寄り添う位置で奮闘している。紙屋と宮本省三がつながると面白い。それにしても、KTC中央出版ってのは何なのかね? NHKの天下り先か?

途方もなく巨大な建築物は崩壊の影を投げかけている


 一度、とアウステルリッツは言い添えた。建築物の大きさの順に並べたリストを作ってみるといいのです、この国の建物でふつう以下の大きさのもの――たとえば野中の小屋、庵、水門のわきの番小屋、望楼、庭園の中の子供のための別荘(ヴィラ)――がいずれも少なくとも平和のはしくれ程度は感じさせてくれるのに、ひるがえってかつて絞首台が置かれていた通称首吊り丘、あそこに立つブリュッセル裁判所のような巨大建造物について、これを好きだという人は、まともな感覚の持ち主にはまずいないでしょう。驚くというのがせいぜいのところで、そしてこの驚きが恐怖に変わるのは、あともう一歩なのです。なぜなら、途方もなく巨大な建築物は崩壊の影をすでにして地に投げかけ、廃墟としての後のありさまをもともと構想のうちに宿している、そのことを私たちは本能的に知っているのですから。


【『アウステルリッツ』W・G・ゼーバルト/鈴木仁子訳(白水社、2003年)】

アウステルリッツ