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2009-12-16

名前すら付与されない悲劇


 キーボードを一心不乱に叩きながら彼女は語る。

「一番大きな問題は私たちのこの悲劇には名前がついていないことです。世界の注目どころか、国内でも無視され切り捨てられている」

 名前さえもついていない問題。確かにコソボ難民という言い方をすれば、ほとんどの外国人はアルバニア系住民のことを指すと思うだろう。


【『終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社新書、2005年)】

終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ (集英社新書)

ヤスミナ・カドラ


 1冊読了。


 136冊目『テロル』ヤスミナ・カドラ/藤本優子訳(早川書房、2007年)/傑作。ガッサーン・カナファーニーユースフ・イドリースほどのインパクトはないが、水晶の如き文体と構成が素晴らしい。ヤスミナ・カドラはアルジェリア軍の元将校だというのだから驚き。イスラエルに帰化したアラブ人医師アーミンが主人公。最愛の妻が死んだ。妻は自爆テロを行った。衝撃の事実に打ちのめされたアーミンは憔悴の中から妻の動機を探るべくベツレヘムへと向かう。イスラエルとパレスチナの狭間(はざま)でアーミンは裏切り者扱いをされる。妻の真実を知った時、アーミンに訪れたものは何だったのか? まあね、凄いよ。アラブ文学ってえのあ、底が知れないね。ローリー・リン・ドラモンドといい勝負だ。