古本屋の覚え書き このページをアンテナに追加 RSSフィード


WWW を検索 古本屋の覚え書きを検索

2009-12-22

J・クリシュナムルティ


 1冊読了。


 138冊目『学校への手紙』J・クリシュナムルティ/古庄高〈ふるしょう・たかし〉訳(UNIO、1997年)/クリシュナムルティ10冊目。世界各地を飛び回るクリシュナムルティがインド、イギリス、アメリカの各学校に送ったメッセージが収録されている。1978年9月から1980年3月まで。古庄の訳は大野純一よりこなれている印象を受けた。教職員と生徒に宛てたものであるため、実に簡潔でわかりやすい内容となっている。執着を動ぜしめて疑いを起こさせるトリッキーな言葉が少ないためか。最初に読むなら本書がいいだろう。

クリシュナムルティの伝記〜メアリー・ルティエンス


ジドゥ・クリシュナムルティ/Jiddu Krishnamurti 著作リスト」に漏れがあったので補完しておく。ついでなんで、メアリー・ルティエンス女史が書いたものをまとめて紹介しよう。


クリシュナムルティ伝記三部作


クリシュナムルティ・目覚めの時代』メアリー・ルティエンス/高橋重敏訳(めるくまーる、1988年)


クリシュナムルティ・実践の時代』メアリー・ルティエンス/高橋重敏訳(めるくまーる、1988年)


クリシュナムルティ・開いた扉』メアリー・ルティエンス/高橋重敏訳(めるくまーる、1996年)


総集編


クリシュナムルティの生と死』メアリー・ルティエンス/大野純一訳(コスモス・ライブラリー、2007年)

電通を批判できない日本のマスコミ、東京五輪招致の税金浪費問題でも


 石原慎太郎都知事が18日の記者会見で、2016年東京五輪招致の最終プレゼンテーションの10分間の映像製作費として、電通から5億円を請求されていることに関し、請求額の根拠を都議会で説明するよう電通側に求めたことを明らかにした。五輪招致での都から電通への委託契約費は約53憶円にのぼり、中には4000円のアルバイト費などが含まれていた。


 共産党の曽根はじめ都議の調査によると、都が06年度から08年度にかけ外部に発注したこの委託契約費30億1059万円のうち、86.5%が電通へのものだった。都は電通競争入札なしで特定の企業の指定を行う「特命随意契約」で行い、さらに、他企業に発注できるはずの都バス車体広告や招致機運を盛り上げるTOKYO体操の企画まで電通に委託していた。


 こうした都と電通の不可解な結びつきに対して、ライブドアの「五輪『10分5億円映像』電通の参考人招致は必要?」というネット世論調査では、「電通の接待がどれだけ豪勢だったか知りたい」「電通参考人招致と共に、石原も呼べよ。まずは招致失敗の責任を石原に取ってもらわないと、石原自身の公約違反だろ?」など都と電通に対する批判が相次いだ。


 電通と五輪の不透明な結びつきは『黒い輪 権力・金・クスリ オリンピックの内幕』という著書にも示されているように、こと有名だ。アディダスと電通が共同出資して1982年に設立したマーケティング会社の「International Sports Culture & Leisure Marketing A.G.(ISL)」は国際オリンピック委員会(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA)などに深く食い込み、五輪やサッカーW杯関連のマーケティング業務をほぼ一手に引き受けた。だが、そのISLは常にIOC委員などのスポーツ貴族への贈賄疑惑などを引き起こし、2001年に経営破綻した。


 こうした電通と五輪の不透明な結びつきについて、日本のマスコミ、特に共同通信と時事通信、そして地方紙は取り上げることは滅多にない。なぜなら、共同と時事はもともと電通と同一の会社、戦前の国策通信社「同盟通信」だったし、地方紙は電通の広告営業力に頼りっぱなしという金銭面での利害関係があるためだ。汐留にある共同通信本社ビルや銀座にある時事通信本社ビルは電通が株式公開の際に両社が電通株を市場に放出して得た利益で建てたことはマスコミ界では有名な話だ。また、朝日、読売、毎日とて電通との結びつきは強いし、さらに民放テレビ局に至っては広告・営業面で電通に頼りっきりの体質がある。


 ジャーナリズムを実践しているとされる新聞社やテレビ局は電通にのど元を押さえられているのが現実で、歯向かうことすらできない状況なのだ。さらに状況を悪化させているのが、いわゆる「スポーツばか」や「おふざけ女子アナ」の新聞社・テレビ局の運動記者の存在だろう。カネに関する取材はスポーツ選手の契約金交渉くらいなもので、五輪など大規模スポーツイベントの経済的な運営面に目を向けるものはほとんどいない。その象徴が、運動部上がりの共同通信・石川聡社長だろう。日本のジャーナリズムは電通を批判する勇気もないし、その能力もないのだ。


 ならば、都民国民の税金をむさぼる電通の不透明な取引について、政治家や市民が監視する以外方法はない。まずは都に対して五輪招致活動の内情について詳細な調査を徹底させ、必要とあらば政治主導で電通関連の「事業仕分け」を行うのが、税金無駄遣いの防止になるのではないか。


PJニュース 2009-12-22

主人公は傷ついたホームレス女性/『喪失』カーリン・アルヴテーゲン

    • 主人公は傷ついたホームレス女性

 今、北欧ミステリが熱い。世界中で翻訳されているようだ。カーリン・アルヴテーゲンはスウェーデンの作家で1965年生まれ。アストリッド・リンドグレーンが大叔母に当たるそうだ。なるほど、と頷けるところが大。ストーリーテラーとしての腕前もさることながら、独特の薫りが漂う文章に魅了される。


 主人公はシビラという32歳のホームレス女性である。人生の疲労を隠し切れないものの、彼女はまだ美しい顔立ちを保っていた。ホテルのラウンジでそれとなく金持ちの男を物色し、相手が食事に誘うよう演出を施し、「財布がなくなった」と言って相手にホテル代を立て替えさせる。そんな手口で彼女は生活していた。ホテル代を払ってくれた男が何者かに惨殺される。警察の姿を見るや否やシビラは逃げ出す。寸借詐欺紛いの行為が露見したと錯覚したのだ。新聞はシビラを容疑者として報道し続けた。


 あの味が口中に広がった。それは彼女の頭が拒絶したものを受け入れてきた腹の一部から、じわっと滲み出てくる、馴染みの味だった。

 人々が彼女を支配しようとしている。

 またもや。

 過去に味わったことのある、恐ろしい息詰まるような感じがよみがえってくる。それはどこかの隅に隠れてじっと待機していたのだ。それがいままた暴れ出そうとしている。すべてが戻ってくる。彼女が必死で忘れようとしてきたことが。彼女が忘れることに成功したと思っていたすべてのことが。


【『喪失』カーリン・アルヴテーゲン/柳沢由美子訳(小学館文庫、2005年)】


 で、シビラがホームレスという立場で犯罪解決に挑むというのが大筋。そして彼女がホームレスとなるまでの人生がカットバックで挿入されている。シビラは資産家の娘で、幼い頃から心理的虐待を受けていた。


 原題には「失踪」という意味もあるようだが、訳者の柳沢はアルヴテーゲンに取材をした上で邦題を「喪失」にしたという。確かにこの方がいい。シビラは容疑者となることで真実を喪失し、虐待されたことで幼少期を喪失し、ホームレスとなることで自分自身を喪失していた。


 真犯人を見つけ出すことは、シビラにとって過去の自分を取り戻す行為でもあった。彼女は一人の少年と出会う。この少年がたった一人の味方となる。やや都合のいい展開とはなっているが、それでも最後のどんでん返しは手に汗握る。


 家族と社会の残酷さを炙(あぶ)り出した会心作だ。


喪失 (小学館文庫)

聴覚を失ったベートーヴェンに何が聴こえていたのか

小林●それはべつの話になります。音楽は単に音の組合せではないからね。音楽の持っている意味を感ずるという事とは別です。つんぼ(ママ)になったベートーヴェンに何が聴こえていたか。これは怖ろしいような事だが、しかし、何も格別な病的現象とは言えないからね。彼が耳が聞こえてた頃から、音楽を精神で聴いていなかったら、つんぼになって音楽が彼の内部で鳴ったわけがないでしょう。(※五味康祐との対談)


【『小林秀雄全作品 26 信ずることと知ること』(新潮社、2004年)】

小林秀雄全作品〈26〉信ずることと知ること