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2010-03-07

偽りの記憶/『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』スーザン・A・クランシー


 答えは「睡眠障害」。エ、それだけ? そう、それだけの話だ。序盤で解答が判明するため、これから汗を握ろうとしている手から力が抜ける。構成に難あり。脱力状態。残されているのは冗長な説明。


 元々スーザン・A・クランシーは「偽りの記憶」に関する研究を行っていた。レイプ被害者に面談調査し、催眠療法によって引き出された記憶の多くが「作り話」であることが明らかになったという。研究結果を公開するや否や、レイプ被害者から怒りの声が沸き起こった。そりゃ当り前の話だ。ところが著者は「科学的な事実を追求しただけなのに、どうしてそれが悪いの?」といった所感を綴っている。まず間違いなくこの人物は人格障害だと思われる。善悪の概念が稀薄で、他人を傷つけることに罪悪感を覚えていないのだから。


 トーマス・ギロビッチ著『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』、アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース著『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』などを既に読んでいる人であれば本書は不要だ。


 実際アメリカにはどれくらいの人々が宇宙人にさらわれた経験があるのだろうか? 何と400万人だ。アメリカの人口は3億人だから、実に1%以上の人々がエイリアンに連れ去られていることになる。

 とすれば、地球を訪れたエイリアンの人数も400万人以上の可能性がある(笑)。


 一体全体どうしてそんな経験をでっち上げるのだろうか? 殆どの「体験者」が実ははっきりと宇宙人を目撃しているわけではない。にもかかわらず、「未知との遭遇」を証言するのだ──


 わたしがインタビューした被験者は、みなおなじ軌跡をたどっていた。いちどエイリアンに誘拐されたのではないかと疑いはじめると、もう後戻りはできない(信じかけた人が、そうでないと思い直すには、どんなことがターニングポイントになるのだろう。これは興味深い研究分野になりそうだ。誤った思い込みをつくりだすのを防いでいる心理的な認知要因を理解するのに役立つかもしれない)。思い込みの種がまかれ、アブダクションを疑いはじめると、アブダクティーは補強証拠を探す。そしていったん探しはじめると、必ずといっていいほど証拠が出てくる。確証バイアス──すでに信じていることに都合のいい証拠を探したり解釈したりして、都合の悪い証拠は黙殺したり解釈しなおしたりする傾向──は、だれもが持っているものである。科学者さえもだ。いちど前提(「わたしはエイリアンに誘拐されたと思う」)を受け入れてしまうと、それが事実ではないと納得するのは非常にむずかしい。打たれ強くなり、まわりの議論に左右されなくなる。


【『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』スーザン・A・クランシー/林雅代訳(ハヤカワ文庫、2006年)以下同】


 睡眠障害というのは、いわゆる金縛りである。つまり、肉体は睡眠しているが脳が覚醒している状態だ。私は一度も経験したことがないが、ま、大体の想像はつく。まず、恐怖感に襲われることだろう。そして身体を動かすことができないのは、何者かによってコントロールされているからだと考えるに違いない。そして、部屋の中をサッと黒い影が動く。「あ、宇宙人だ!」。


 また、エイリアンに誘拐されたという人々の手記は、ほぼ睡眠障害の状態と一致しているため、人知れず悩んでいる人にとっては渡りに舟となるのだ。


 人間は何かを信じた途端、認知バイアスがかかる。自分が信じる対象を補強する情報は積極的に取り入れ、吹聴するが、反対に否定する情報に対しては無視する傾向が強くなる。「信じる」とは、信じる対象を中心にして物語を編む営みである。


 著者は催眠療法についても異議を唱える──


 要するに、何十年にもわたる研究から、催眠によって偽りの記憶がつくられやすくなることがわかっているのだ。これはおもに、催眠で想像力が刺激されることと、現実の束縛から解放されることに原因がある。そして、このような状況においては、わたしたちはいつになく暗示にかかりやすくなる。


 つまり、催眠状態に置かれたクライアントは誘導されやすいということだ。自我を形成しているのは記憶である。偽りの記憶によって「勝手に上書きされた自我」が現れる。


 ただし、このあたりも面白みのある展開ではない。じゃあ、記憶が正確なら人間は幸せなのか? ってな次元になってしまう。心理学が胡散臭いのは、データを集めて恣意的(しいてき)な解釈を試みるためだ。本来であれば、「記憶を偽らざるを得ない理由・原因は何か?」と踏み込むべきところだ。


 相手がエイリアンだから、我々はフンと鼻で笑う。でも、これが神様や幽霊だとしても何ひとつ変わりがない。っていうか、何かを信じて生きている以上、錯誤は避けようがないのだ。


 果たして宇宙人は存在するのだろうか? ああ、いるとも。実際にどこにいるかは問題ではない。「宇宙人」という言葉が生まれた時から宇宙人は存在するのだ。言葉や情報とはそういう性質のものである。つまり、我々が宇宙人という概念を受け入れた瞬間から宇宙人は実在するのだ。


 で、今回の結論だ。宇宙人や神様や幽霊を信じている人々は、恐怖感に支配された人々であると考えられる。

なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか (ハヤカワ文庫NF)

fwikfwik 2010/03/08 19:03  興味深い話ですね。子供の頃学校で禁止令まででた「こっくりさん」騒ぎも同質のものかもしれませんね。
 金縛りは、徹夜ばかりしてた受験生時代に度々経験しました。幽霊とかタタリとかがささやかれるド田舎在住でもあり、最初の2、3回は心底びびりました。確かに自分の上に何か居る(笑)。でもそのうち予測がつくようになり、すっかり慣れてしまって。お陰で「百物語」の達人にもなれましたが(笑)。
 いまでも年に何度か、「首から上だけ起きてる」状態は経験します。こりゃ体が少々ヤバイことになってると対処することにしています(笑)。

sessendosessendo 2010/03/08 21:27 枕の高さを変えてみてはどうでしょう?
脳が起きて、身体が眠っているというのだから、多分脊髄の神経が混線しているような気がしますね。

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