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2010-03-10

生と死の間に生まれ出る言葉/『異空間の俳句たち 死刑囚いのちの三行詩』異空間の俳句たち編集委員会


 人を殺(あや)めた男達が、牢獄で自分の死と向き合う。罪を顧(かえり)み、残された生をひたと見つめ、更にもう一段高い視点から俳句は生まれる。


 死を自覚すると、生の色彩はガラリと変わる。その時、彼等の胸の内で悔恨の風が吹き抜けたことだろう。そうかといって決して過去の罪が軽くなるわけではない。


 進化論的に考えれば、突発的な犯罪を犯す者はコミュニティを危険にさらす可能性がある。だから、チンパンジーの世界では仲間によって殺される。このあたりに死刑制度の原型があるように思う。また、種の本能としてそのようなDNAは排除されてしかるべきだと判断されるのかもしれない。


序  鶴見俊輔(哲学者)


俳句の生まれるとき

 二つの力のせめぎあいを感じる。

 自分個人として生きてきたという事実を何とかしてここにのこしておきたいという意志と、自分個人の肉体をぬけだして、すでに人外の場所に立って、誰のものでもない自由を行使する感性と。

 死刑囚の俳句は、この二つの方向に、作品をときはなつ。


 人間の存在に 頭をたれる。


【『異空間の俳句たち 死刑囚いのちの三行詩』異空間の俳句たち編集委員会(海曜社、1999年)以下同】


「せめぎあい」は彼等が激情に駆られた時にこそ発揮されるべきであった。後悔先に立たず、である。悔やんでも悔やみきれない過去を見つめ、死を受け入れた時、彼等の心には初めて静穏が訪れた。


   絶句


 冬晴れの

 天よ

 つかまるものが無い


 尚道(63歳)


 さらになにか言おうとしても、それ以上の言葉がでてこない。とぎれてしまった最後の言葉、最後のうた=絶句。

 身をゆだねる雲もない「冬晴れ」。間もなく自分は宙に吊られる。

 絞首刑という即物的なイメージを離れ、生きていること事体のえたいの知れない不安感も。

(俳号の下に記載されている年齢は被処刑時のもの)


 死後の自分をも達観しているのか。ロープにぶら下がった彼は空(くう)に手を伸ばしただろうか。その手で何をつかまえようとしたのか。


 執行直前


 水ぬるむ

 落としきれない

 手の汚れ


 公洋(28歳)


 汚れを自覚しているのは、心が清らかな証拠であろう。それにしても若い。若過ぎる。


 処刑前夜


 処刑明日(あす)

 爪 切り揃う

 春の夜


 卯一(27歳)


 20代で泰然自若として死に赴くことは、まず難しい。俳句にしかならなかった言葉、そして言葉にできなかった思いが交錯する。「自分は何のために生まれてきたのか?」という疑問が、心の中を行きつ戻りつしたに違いない。どこで人生の歯車が狂ったのか。どこでボタンを掛け違えたのか。二度と伸びることのない爪がパチンパチンと弾ける音を牢獄の壁はじっと聞いていた。


 我々はどうしても「死刑囚」とひと括りにしがちであるが、色々な人物がいることだろう。いい奴もいれば、悪い奴もいるはずだ。人生が千差万別であれば、犯罪だって千差万別であろう。わずか五七五の文字だけで人を判断できるものではない。それでも、次の句には戦慄を覚える──


 綱(つな)

 よごすまじく首拭く

 寒の水


 和之(31歳)


 作者が残した二枚の色紙。その一枚が「布団たたみ/雑巾しぼり/別れとす」。もう一枚がこれである。色紙を手渡された係官は「もうこれは人間のワザではない。神様に近い存在だ」と感じ、「手の震えが止まらなかった」という。執行の瞬間、立ち会った全員が、夢中で「南無阿弥陀仏」を唱和していたとも。


 死と一体化した時に現れる慎み深い所作。溢れんばかりの自由な旋律。一切を受け容れた者のみに特有なニヒリズム。人間はこれほどの言葉を発することができるのだ。「凄まじい」としか表現のしようがない。


 彼等は死んだ。我々の法律によって処刑された。死刑制度とは、正当な理由があれば人間を殺してもいいという価値観である。そこに潜む暴力性は不問に付されている。


 人が人を殺(あや)める。そして国家が犯罪者を殺める。行為だけ見れば全く同じだ。


 最後に収められた「鑑賞と解説」という座談会が余計である。かえって、死刑囚の俳句を軽んじる結果となっていて辟易(へきえき)させられる。しかも、関西弁をそのまま活字にするというお粗末ぶり。


異空間の俳句たち 死刑囚いのちの三行詩

「隠し撮り」アカデミー賞映画ベースに 「反イルカ漁」テレビ番組も決定?

 盗撮映画『ザ・コープ』は、原爆で30万人以上の日本人を殺戮(さつりく)したアメリカ人が、日本のイルカ漁を問題視した作品。こうした行為は、彼等の先祖が先住民族を虐殺した事実に対して目をつぶっている証拠といえる。正義に取りつかれたアメリカは強迫神経症に冒されている。

日米密約:3密約確認 元駐米大使・東郷氏の大量メモ決め手に


 息子の東郷和彦は外務省で佐藤優の上司だった人物。


 60年安保改定や沖縄への核再持ち込みを巡る三つの「密約」の交渉過程が9日に公表された外交文書で明らかになったのは、当時の担当者だった東郷文彦元駐米大使が残した大量の記録によるところが大きい。東郷氏は安保改定交渉時に外務省安全保障課長、69年の沖縄返還交渉時はアメリカ局長を務めた。

 68年、東郷氏は核兵器搭載艦船の寄港を認めた密約の経緯をメモに記した。メモは政府内の共通認識として外務省幹部に引き継がれ、歴代首相、外相への説明に使われた。沖縄返還を巡り、69年には日米首脳会談直前の佐藤栄作元首相と外務省幹部の打ち合わせ記録なども残した。

 東郷氏は、義父が太平洋戦争開戦時の外相の茂徳氏、次男が元オランダ大使の和彦氏という外交官一家。


毎日jp 2010-03-10

ナイジェリアの宗教衝突、死者500人に


 西アフリカ、ナイジェリアの中部ジョス近郊で7日に起きたイスラム教徒とキリスト教徒の衝突で、AFP通信は8日、政府当局者の話として、犠牲者が少なくとも500人に達したと報じた。

 イスラム教徒の武装集団が7日未明、ジョス郊外にあるキリスト教徒の村を奇襲。逃げまどう住民をナタで襲い、家屋や車に放火したという。ジョスでは1月、キリスト教徒がイスラム教徒を襲撃したことが発端で混乱が拡大し、300人以上が死亡。地元紙は今回の襲撃はイスラム教徒による報復との見方を伝えている。


YOMIURI ONLINE 2010-03-08

「太陽の男たち」の冒頭


 アブー・カイスは湿り気をおびた土に胸を憩わせた。すると大地は身体の下で息づき始めた。心臓の鼓動はもの憂く脈打ちながら砂の粒子に伝わり、それから彼の細胞のすみずみに行きわたった。砂の上に腹這いになるたびに彼はこの脈動を感じ取る。それはちょうど大地の心臓が、彼が初めてそこに胸をあててこのかた、遥か地底の暗闇から光を求めてたゆみなく険しい道を切り拓いているかのようであった。


【『ハイファに戻って/太陽の男たち』ガッサーン・カナファーニー/黒田寿郎、奴田原睦明〈ぬたはら・のぶあき〉訳(河出書房新社、1978年〈『現代アラブ小説集 7』〉/新装新版、2009年)】

ハイファに戻って/太陽の男たち