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2010-03-29

コペルニクスが引っ繰り返したもの

 ルネッサンスの時代までには、プトレマイオス的世界観が西欧文化全体に普及し、絵画や文学や音楽、航海術はもちろん、医学、そして当時は本物の科学と見なされた占星術にも浸透していた。この世界観は美的感覚を満足させる構成で、その時代に浸透していたキリスト教神学にうまく調和していた。地上のあらゆるもの――月より下にあるもの――は原罪に染まっており、いっぽう月より上の天の周転円は汚れなき聖なるもので、神聖な“天上の音楽”に満たされていると考えられた。英国のジョン・ダンのような宮廷詩人たちの流行になったのが、女主人を“月以上”だと褒めそやし、“さえない地上の恋人たちの愛”を下等で劣ったものとして退けることだった。そして、社会階級制度をなんとしてでも維持するための、手ごろな理論的根拠を与えることになった。「天の星々も、惑星も、この宇宙の中心である地球も/序列、階級、地位をまもっているのです」。シェイクスピアの『トロイラスとクレシダ』のなかで、ユリシーズはこうご高説をたれる。いわゆる“存在の大きな連鎖”の序列をひっくり返せば、あとに待つのは枷を外された“混沌”というわけだ。


【『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット/尾之上俊彦、飯泉恵美子、福田実訳(ハヤカワ文庫、2007年)】

黒体と量子猫〈1〉ワンダフルな物理史 古典篇 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ) 黒体と量子猫〈2〉ワンダフルな物理史 現代篇 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

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