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2010-05-20

歴史を貫く物理法則/『歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』マーク・ブキャナン

 べき乗(冪乗)とは、ある数字を掛け続ける操作のことをいう。累乗(るいじょう)といった方がわかりやすいだろう。様々な現象にべき乗の法則があるそうだ。


 地震の代わりにジャガイモの破片を使うと、グーテンベルク=リヒターの法則と同様の、特徴のない曲線が得られる。ブドウの種くらいの微小な破片は膨大な数あり(ママ)、破片が大きくなっていくにつれて、その数は徐々に少なくなっていく。実際注意深く調べていくと、破片の数は、大きさに応じてきわめて規則正しく減少していくことが分かる。重さが2倍になるごとに、破片の数は約6分の1になるのだ。グーテンベルクとリヒターが発見したべき乗則と同様のパターンである。一つ違うのは、重さが2倍になるごとに、この場合には6分の1になるが、地震の場合には4分の1になるという点である。


【『歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』マーク・ブキャナン/水谷淳訳(ハヤカワ文庫、2009年/『歴史の方程式 科学は大事件を予知できるか』早川書房、2003年を改題)以下同】


 ジャガイモを硬い壁や床に叩きつけると粉々になる。何個ぶつけようと大きなかけらよりも小さなかけらの方が多い。同様に大きな地震よりも小さな地震の方が数は多い。これがべき乗になっているというのだ。


 世界各国が地震予知のために巨額の予算を投じているが、今まで予知できた例(ためし)はない。そもそもどうしてプレート(岩盤)が動くのかが判明していないのだ。最近の研究では宇宙線がトリガーになっているという説もある。


 本書で明らかにされているのは、「大地震の後は、しばらく大地震がこない」という事実のみである。


 あなたがナシの大きさだったときには、自分と同じ重さの破片一つに対して、その半分の重さの破片は約6個あった。ところが自分が縮んだ後でも、まったく同じ規則を発見する。再び、自分と同じ重さの破片一つあたり、その半分の重さの破片が約6個あるのだ。どんな大きさでもまわりの景色はまったく同じに見えるので、もし自分を何回縮めたか忘れてしまうと、まわりを見ただけでは自分の大きさがまったく分からなくなってしまう。

 これがべき乗則の【意味】するところである。


 大きさこそ違っても、同じ世界が広がっているというのだから不思議な話だ。多分、世界は入れ子構造になっているのだろう。マトリョーシカ人形のように。


 人それぞれの幸不幸もきっと同じような構造になっているに違いない。大きさの異なる幸不幸が一人ひとりの人生に彩(いろどり)を添えているのだろう。


 ここからが本書の白眉となる。物理世界に適用できるべき乗則が果たして人間の歴史にも応用可能なのかどうか?


「応用可能」というのが本書の答えである。つまり歴史を動かしているのは偉人や悪人といったパーソナルな要因ではなく、ある方向に時代が揺り動かされる時に臨界点を左右する人物が登場するということになる。


 詳細についてはまた後日。それなりの科学知識が必要で、一度読んだだけでは中々理解が深まらない。それでも面白い。

歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

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