古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

太陽暦と幾何学を発明したエジプト人

 ・ゼロをめぐる衝突は、哲学、科学、数学、宗教の土台を揺るがす争いだった
 ・数の概念
 ・太陽暦幾何学を発明したエジプト人
 ・ピュタゴラスにとって音楽を奏でるのは数学的な行為だった
 ・ゼロから無限が生まれた

『宇宙を復号(デコード)する 量子情報理論が解読する、宇宙という驚くべき暗号』チャールズ・サイフェ

 エジプト人による太陽暦の発明は飛躍的前進だったが、エジプト人は歴史にさらに重要な足跡を残している。幾何学の発明だ。ゼロがなくともエジプト人は、たちまち数学の達人になった。怒れる大河のおかげで、ならざるをえなかった。ナイルは毎年、堤からあふれ、デルタを水浸しにした。幸いだったのは、洪水によって一帯の畑に豊かな沖積土が堆積し、ナイルデルタが古代世界でもっとも肥沃な農業地帯となったことだ。一方、困ったことに、境界の目印が数多く壊され、農民たちに、どこが自分の耕すべき土地かを知らせる標識が消え去ってしまった(エジプト人は所有権を重んじていた。『死者の書』によれば、死んだばかりの人は、隣人から土地をだまし取ったことはないと神に誓わなければならない。そのような罪を犯せば、「むさぼり食うもの」と呼ばれる恐ろしいけだものに心臓を食われるという罰を受けてしかるべきだとされた。エジプトでは、隣人から土地をだまし取るのは、誓いを破ること、人を殺すこと、神殿でマスターベーションをすることにおとらず重大な罪と考えられていた)。


【『異端の数ゼロ 数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念』チャールズ・サイフェ/林大訳(早川書房、2003年/ハヤカワ文庫、2009年)】