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2010-07-04

齊藤誠、ブライアン・フェイガン、ルソー、福永武彦


 3冊挫折、1冊読了。


 挫折52『競争の作法 いかに働き、投資するか』齊藤誠(ちくま新書、2010年)/威勢のよさが裏目に出ている。文章に臭みがあって読みにくい。50ページで挫ける。


 挫折53『歴史を変えた気候大変動』ブライアン・フェイガン/東郷えりか、桃井緑美子〈ももい・るみこ〉訳(河出書房新社、2001年/河出文庫、2009年)/これも読みにくかった。30ページほどで挫ける。『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』の方がはるかに面白かった。


 挫折54『社会契約論』ルソー/桑原武夫、前川貞次郎〈まえかわ・ていじろう〉訳(岩波文庫、1954年)/季節が悪かった。梅雨時には不向きだ。60ページ過ぎで挫ける。これは後で必ず読み直す。


 93冊目『廃市・飛ぶ男』福永武彦(新潮文庫、1971年)/絶品。『鳥 デュ・モーリア傑作集』といい勝負である。日本にこれほどのストーリーテラーが存在した事実に驚く。「未来都市」は完全なSF作品で、「飛ぶ男」も実に斬新な構成である。主役は物語であって、登場人物は全員が黒子と化している。読者の感情移入を拒絶しながら、物語の結構だけで福永は勝負しているように見える。『忘却の河』よりはるかに面白かった。

アメリカ合衆国にはたったひとつの政党しかない


 でも、考えてみれば、アメリカ合衆国にはたったひとつの政党しかないのだということに気づかされます。二大政党とはいえ、じつは共和党が大勢を牛耳っていて、民主党はその支流のひとつにすぎないのだ、と。同じ政党の二つの支流にほかならない。アメリカには常軌を逸した、いや、驚くべきレヴェルのコンセンサスが存在し、肝要な案件の多くが、討議を尽くされないままにまかりとおっています。


【『良心の領界』スーザン・ソンタグ/木幡和枝〈こばた・かずえ〉訳(NTT出版、2004年)】

良心の領界

日本が成立したのは7世紀か


 個人が個人として成立するのは自己と他者を区別したときであるのと同じで、日本という国が国として成立したのは日本と他国を区別したときである。そのような区別が生じたのは他国から圧迫を受けたからであろう。

 すなわち、大陸に隋・唐という強力な帝国が成立して脅威となり、それに対抗するに大化改新(645年)を遂行し、白村江で唐・新羅連合軍に戦いを挑んでみたが惨敗し(663年)、やはり先進文明の模倣をするしかないと壬申の乱(672年)を起こして公地公民、中央集権の律令制を強化し、唐の皇帝のまねをして天皇を絶対君主に仕立てあげたとき、日本が成立したと考えられる。


【『歴史を精神分析する』岸田秀〈きしだ・しゅう〉(中公文庫、2007年/新書館、1997年『官僚病の起源』を改題)以下同】


 たとえば、天孫降臨の神話は、日本が現実には大陸・半島と深く結びつき、つねにその影響のもとにあったにもかかわらず、その現実を否認して日本は天上から降りてきた神々が創った国、大陸・半島と無関係な独自の国であって、そして日本は大陸・半島の人たちと違って神である天皇の血を受けているという幻想を支えるための神話であった。

 この幻想は合理的に考えればまったく馬鹿げているが、日本人というアイデンティティを獲得するためにはこの幻想が必要だったのである。

官僚病の起源 歴史を精神分析する (中公文庫)

(※左が単行本、右が文庫本)