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2010-07-10

正木晃、川北稔、菅原出


 3冊挫折。


 挫折55『マンダラとは何か』正木晃(NHKブックス、2007年)/第一章は面白かったのだが、二章以降はあまり必要のない内容だった。マンダラは瞑想や呪術と密接な関係にあるが、瞑想と呪術を知る人は少ない。マンダラ研究本が退屈なのはここを理屈で寄り切ろうとするためだ。図像としてのマンダラがあり、もう一方の極には瞑想がある。その距離の広大と密接を描くことは至難だ。


 挫折56『結社のイギリス史 クラブから帝国まで』綾部恒雄〈あやべ・つねお〉監修、川北稔編(山川出版社、2005年)/シリーズ「結社の世界史」の第4巻。各章の執筆者が違うため読みにくく、字数制限があるため底が浅くなってしまっているように感じられた。ヨーロッパの歴史はキリスト教と結社の歴史といっても過言ではないが、意外なほど研究されていない。貴重な文献なので目を通す必要がある。


 挫折57『日本人が知らない「ホワイトハウスの内戦」』菅原出〈すがわら・いずる〉(ビジネス社、2003年)/ハードカバーで出すような代物ではない。NHKブックス的な内容だ。狙いは悪くないのだが、読み物としては面白くない。タイトルに難あり。アメリカのシンクタンクを概観した内容だ。この新興国ではハード面においてもソフト面においても競争原理が上手く機能している。もう少しで読み終えるところだったが、時間がもったいないのでやめる。

アフガニスタンの実録映画『Restrepo』


 アメリカで上映中だが、日本では公開予定がない。アフガニスタン戦争の実写フィルム。

D

自然淘汰によって作り上げられた適応


 ネコとネズミの闘争で、あなたは、ネズミの側についていたとしよう。ネズミは、ネコの匂いが大嫌いだという。ネコの匂いは、ネズミを神経過敏にさせ、大切なこと、たとえば、食べ物や、求愛行動や、生まれたての子ネズミに集中できなくなる。あなたは、匂いの感覚を鈍らせてもネズミがネコの匂いにこれ以上悩まされないようにする薬を知っているとしよう。あなたは、この薬を処方するだろうか。たぶんしないだろう。どんなにネコの匂いが不快なものであっても、ネコの匂いに気づく能力は、ネズミにとっては貴重な財産である。ネコの匂いがすれば、ネコの爪と歯がすぐに近づいてくることの合図だろうから、これらを避けることは、不快な匂いによるストレスよりもずっと大切である。


【『病気はなぜ、あるのか 進化医学による新しい理解』ランドルフ・M・ネシー&ジョージ・C・ウィリアムズ/長谷川眞理子、長谷川寿一、青木千里訳(新曜社、2001年)以下同】


 ネコの匂いと同様に、発熱は不快だが役に立つ。発熱は、とくに感染と闘うために自然淘汰によって作り上げられた適応なのである。

病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解

木の芽


 一雫(ひとしずく)こぼして延びる木の芽かな  有井諸九(ありい・しょきゅう)


『諸九尼句集』所収。有名な加賀の千代所女とほぼ同時代に生きた筑後(福岡)出身の女性俳人。「行春や海を見て居る鴉の子」のような、切れ味のいいせいせいとした句を作った。右の句も彼女の鋭い感覚と的確な表現力がみごとにあらわれている句である。しだいにふくらみはじめた木の芽に、春雨がやわらかくかかる。一滴たれるたびに、芽も一緒にひき延ばされていく感じ。実際そのようにして木の芽は育つ。


【『折々のうた 第十』大岡信〈おおおか・まこと〉編(岩波新書、1992年)】

折々のうた〈第10〉 (岩波新書) 近世俳句俳文集 (新編日本古典文学全集)