古本屋の覚え書き このページをアンテナに追加 RSSフィード


WWW を検索 古本屋の覚え書きを検索

2010-07-15

飯島和一作品の外情報

 これがトール・ノーレットランダーシュの言う「外情報」だ。極端な省略、割愛によって読者の想像力が拡がる。行間の豊かさ。


「お名前ぐらい、教えていただけませんか」

『前にも言ったろう。俺はただの修理工』

 バッグを手渡しながら彼は笑ってそう言った。車が動き出す時、彼は窓越しにおれを見つめた。

『新田って言ったな』

「はい」

 彼は小さくひとつ頷くと車を出し、そしてそのまま視界から消えていった。


【『汝ふたたび故郷へ帰れず』飯嶋和一〈いいじま・かずいち〉(河出書房新社、1989年/リバイバル版 小学館、2000年/小学館文庫、2003年)以下同】


 頭を下げドアを開けて出ようとした時だった。

『新田』いきなり彼が背後から呼んだ。

「はい。なにか……」

『……よく来た』

 まだおれに伝えることがあったようだったが、急に言うのをやめたらしかった。


汝ふたたび故郷へ帰れず リバイバル版 汝ふたたび故郷へ帰れず (小学館文庫)

(※左が単行本、右が文庫本)

投稿したコメントは管理者が承認するまで公開されません。

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証