古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

東浩紀、白戸圭一、グレッグ・ルッカ


 2冊挫折、1冊読了。


 挫折61『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会東浩紀〈あずま・ひろき〉(講談社現代新書、2001年)/哲学ではなくオタク系文化の評論だった。タイトルに難あり。私は東浩紀の言動に魅了されている一人であるが、著書は一冊も読んだことがない(笑)。


 挫折62『ルポ資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄』白戸圭一〈しらと・けいいち〉(東洋経済新報社、2009年)/前評判が高く、amazonの評価も高いので期待していたが40ページで挫ける。文章のスタイルが確立されていないため非常に読みにくい。また、日記みたいな個人的所感も目立つ。内容と文体は必ず一致するものだ。


 102冊目『守護者(キーパー)グレッグ・ルッカ古沢嘉通〈ふるさわ・よしみち〉訳(講談社文庫、1999年)/面白かった。文句なし。500ページ一気読み。アメリカにおける妊娠中絶反対派の原理主義ぶりや暴力性が描かれている。主人公アティカスは28歳のボディガード。アティカスは恋人と二人で堕胎するためにクリニックを訪れる。ひょんなことで女性医師ロメロから警護を依頼される。途中からアティカスの落ちつき払った振る舞いが28歳とは思えなくなってくる。が、解説を読んでびっくりたまげた(漢字だと「魂消た」)。グレッグ・ルッカは本書を26歳で書いたというのだ! いやあ凄いもんだね。トム・ロブ・スミスにも驚かされたが、アメリカにもこんな書き手がいたとは。“アティカス・コディアック”シリーズは既に6作が発表されているようだ。

ペンは剣よりも強し

 The pen is mighter the sword (ペンは剣よりも強し)――言論は、武力では押さえ込めないものだ、という主旨のこの有名な成句は、イギリスの政治家で、小説家、劇作家でもあったジョージ・ブルワー・リットンが、その戯曲「リシュリュー」のなかで用いてから、たちまち広まった。


【『嘘つきアーニャの真っ赤な真実米原万里〈よねはら・まり〉(角川書店、2001年/角川文庫、2004年)】


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (文芸シリーズ) 嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)
(※左が単行本、右が文庫本)

中国人が肉を食べ始めた

 この(ハイエク新自由主義)モデルには大きな前提があるんです。それは経済が持続的にどんどん、どんどん成長していくっていうことなんです。これは結論から言うと無理です。とくに非常に深刻な問題は、中国人が肉を食べ始めたからです。どういうことか言いますと、不思議な法則があって、肉を食べることを覚えると、人間は絶対にその味を捨てることができないんです。人口13億の中国人が肉を食べ始めるようになったということは世界のエネルギーの消費量が今後ぐんぐん、ぐんぐん上がっていくことを意味するんです。これは産業社会じゃないとできない。産業社会というのは資本がどんどん、どんどん膨れ上がっていく傾向がある。これが続くと成長の限界に突き当たり、そこで無理をすると人類が本当に食べていけない時代が来てしまいます。持続的成長は無理だという大前提からスタートしなくてはならない。


【『国家の自縛』佐藤優〈さとう・まさる〉(産経新聞出版、2005年/扶桑社文庫、2010年)】


国家の自縛 国家の自縛 (扶桑社文庫)
(※左が単行本、右が文庫本)

スウェーデンの外交官ラウル・ワレンバーグが生まれた日


 今日はスウェーデンの外交官ラウル・ワレンバーグが生まれた日(1912年)。第二次世界大戦末期のハンガリーで、迫害されていたユダヤ人の救出に尽力。外交官の立場を最大限に活用して10万人にも及ぶユダヤ人を救い出すことに成功した。ドイツ撤退後、ソ連軍に拉致されて行方不明となる。


ユダヤ人を救った外交官 ラウル・ワレンバーグ