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2010-10-28

神秘時代のクリシュナムルティ/『大師のみ足のもとに/道の光』J・クリシュナムルティ、メイベル・コリンズ

 クリシュナムルティが14歳で記した一書。マスター・クートフーミからのお告げとされている。神智学協会の重要なテキスト。


 この本についてはクリシュナムルティ自身も否定的で、後の教えとは無縁なものと考えるべきだ。ニューエイジ志向の連中は高く評価しているようだが、所詮インチキ宗教に拾われた少年が書いたものに過ぎない。萌芽は見受けられるが、拠(よ)って立つ基盤が異なることを弁えるべきであろう。


 というわけで、これからクリシュナムルティを読もうと思っている人は、この本から入ってはいけない。


 この本に書いてあることは私の言葉ではありません。私を教えてくださった大師のお言葉です。(はしがき)


【『大師のみ足のもとに/道の光』J・クリシュナムルティ、メイベル・コリンズ/田中恵美子訳(竜王文庫、1982年)以下同】


 このあたりの件(くだり)については、メアリー・ルティエンスの『クリシュナムルティ・目覚めの時代』が詳しい。要は霊界みたいなところへ意識が飛んで行って、マスターなる神様からのお告げを受けたってな話だ。


 クリシュナムルティが悟りに達したのは1922年8月のことで、神智学協会が彼のために設けた「星の教団」を解散したのが1929年の8月である。この二つの出来事以前については重きを置くべきではないというのが私の考えだ。なぜなら、神秘宗教・オカルティズムを超脱したところにクリシュナムルティの本領があるからだ。


 いみじくも本書には「オカルティズム(密教)」と書かれている。つまり、欧米でスピリチュアリズムと受け止められているのは密教的飛躍であり、密教の影響を色濃く反映している鎌倉仏教はおしなべてスピリチュアリズムの範疇に貶(おとし)められてしまうのだ。


 ここを見誤ると、今度はクリシュナムルティを神に祭り上げてしまうようになる。彼が弟子の存在すら否定したことを軽々しく考えてはいけないだろう。


 それでも十代の少年とは思えぬ言葉で真理を突いている。


 肉体はあなたの動物、あなたが乗る馬です。だから肉体をうまく扱い、よく世話をしなさい。使いすぎてはいけません。清浄な飲食物だけを適切に与えなさい。また、ちょっとした汚れもない様にいつも完全に清潔にしておかねばいけません。


 彼は晩年に至るまで朝の散歩を欠かさず、アルコール類や煙草から食料に至るまで刺激物を避けた。生涯にわたって肉体を調教していた。


 あなたは真実と虚偽を見分けなければいけません。思想、言葉、行為のどれもが真実である様に学ばなければいけません。


 これは後のクリシュナムルティの教えの基本ともなる考えだ。「虚偽を虚偽と見、虚偽の中に真実を見、そして真実を真実と見よ」という言葉は『生と覚醒のコメンタリー』で何度も出てくる。虚偽を虚偽と見抜く中に真実があるのだ。


 クリシュナムルティは完全に現在に生きた。それは同時に過去を死なせることであった。このため彼の記憶は大半が欠落していた。弟ニティヤの死すら曖昧な記憶しかなかった。幾度となくこの本の質問をされているが、彼は「覚えていません」と一蹴するのが常だった。


 本書の後半にはメイベル・コリンズという女性が綴ったものとなっている。これまた神のお告げらしいが、興味深いものを紹介しよう。


(1)野心を殺せ

(2)生命への欲望を殺せ

(3)慰安への欲望を殺せ

(4)野心のある者の如く働け。生命を望む者がなす如く生命を大切にせよ。幸福を求むる者の如く幸福なれ。

(5)あらゆる隔絶感を殺せ。

(6)感覚に対する欲望を殺せ。

(7)成長への渇望を殺せ。

(8)略

(9内なるもののみを望め。

(10)君を越ゆるもののみを望め。

(11)獲得出来ぬもののみを望め。

(12)略

(13)熱烈に力を求めよ。

(14)熱心に平和を望め。

(15)凡てに勝る財産を求めよ。

(16)略

(17)道を探求せよ。

(18)内に退くことにより道を求めよ。

(19)大胆に外に進み出て道を求めよ。

(20)略

(21)嵐のあとの沈黙の中ではじめて咲く花を求めよ。

(句点の有無はママ)


 人間の脳は短文命令形に弱い(笑)。多分、大胆な省略を認めて勝手な連想が働くためだろう。トール・ノーレットランダーシュがいうところの外情報だ。


 いずれにしても懐疑や吟味に耐える言葉であれば、何らかの真理を含んでいると考えてよかろう。大切なのは言葉で示された内容である。

大師のみ足のもとに

ニュートン別冊


 1冊読了。


 125冊目『みるみる理解できる相対性理論 改訂版』ニュートン別冊/佐藤勝彦監修、水谷仁編集(ニュートン プレス、2008年)/内容がイマイチで文章がイマサン。前にも書いた通り、イラストが大きすぎて文字が小さく感じてしまう。バランスの悪さが病的なほど。無駄な判型だ。

『戦争における「人殺し」の心理学』デーヴ・グロスマン/安原和見訳(ちくま学芸文庫、2004年)


戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)


 本来、人間には、同類を殺すことには強烈な抵抗感がある。それを、兵士として、人間を殺す場としての戦場に送りだすとはどういうことなのか。どのように、殺人に慣れされていくことができるのか。そのためにはいかなる心身の訓練が必要になるのか。心理学者にして歴史学者、そして軍人でもあった著者が、戦場というリアルな現場の視線から人間の暗部をえぐり、兵士の立場から答える。米国ウエスト・ポイント陸軍士官学校や同空軍軍士官学校の教科書として使用されている戦慄の研究書。

うつ病:運動療法が効果 薬効きにくい人も改善 再発率低く


 うつ病を運動で治す試みが注目されている。薬の効きにくい人が改善することがあるほか、再発率が低いとの研究成果も出ている。

 首都圏に住む30代の男性会社員は、自宅近くを15分、週4回速歩きをしている。腕を大きく振り、ハアハアと息が弾むほどのスピードを保つ。終わるとじっとり汗をかく。2カ月後、気分が晴れてきたのを実感するようになった。

「うつうつと家に閉じこもっていたが、今は友人とお茶をしたり、人と積極的にかかわれるようになった」と男性は話す。10年以上抗うつ薬を飲んでいるが、これほど変わったのは初めて。両親と電話で話すと「声が明るくなった」と言われた。夜寝て朝起きる規則正しい生活になり、会社への復職を考え始めている。

 男性が通う「青葉こころのクリニック」(東京都豊島区)の鈴木宏医師は「運動すると気分がすっきりして前向きになれる」と話す。大事なのは、一人一人に適した強度と頻度の運動を一定期間続けることだ。クリニックは患者の脈拍や最大酸素摂取量を測り、速度や運動量を指示。患者は週3〜4回、計1時間程度の速歩きをする。

 歩くときは、信州大医学部が開発した計測器を腰につけ運動量を測る。「記録を確認できるので意欲が続きやすい」と鈴木医師。昨年の開院後、延べ約20人が取り組み、続けられた17人のほぼ全員に効果があったという。

 運動療法は、自殺を考えるような重いうつ病患者には勧められないが、軽症から中等症のうつや、自分の好きな仕事や活動の時だけ元気になる新型うつにも効果がみられるという。

 米国デューク大の調査では、薬物療法の後にうつ病を再発した人は38%だったが、運動療法をした人の再発率は8%だった。鈴木医師は「人には自然回復力がある。運動は主体的に取り組むためか、再発しづらい印象がある」と話す。

 専門知識が必要なため、運動療法を行う診療所はほとんどなく、健康保険もきかない。鈴木医師は、信州大運営のNPO法人で1カ月1万2600円で指導している。


 聖路加看護大の小口江美子教授(予防医学)らは08〜10年、薬が効かないうつ病患者4人に運動療法を併用したところ、うつ状態が改善し、日本精神神経学会などで発表した。休職・休学中だった4人は、4カ月〜1年6カ月にわたってウオーキングに取り組み、全員が会社や大学に戻れた。

「朝起きられず午前の活動が苦手なうつ病の人たちに、運動を日課にしてもらうのは大変だった。でも最後には笑顔も見られるようになり、歩く習慣も根付いた」と小口教授。

 うつの程度を測るハミルトンうつ病評価尺度(23以上は重症、7以下は回復)を調べたところ、ある大学生は運動前に22ポイントだったのに終了後は7ポイントに下がっていた。

 なぜ、運動すると気分が安定するのか。

 生物学的には、脳血流や脳内の神経伝達物質が増え、ストレスホルモンが安定するとされている。共同研究した慶大医学部の渡辺衡一郎専任講師(精神神経科学)は「ひきこもりがちの患者さんに日課ができることは大きい。定期的な体力測定で体力増強がわかり、励みになって意欲が増し、うつ症状の改善につながった可能性がある」と話す。

 各国では、運動の効果は認められつつある。渡辺講師によると、英国や米国テキサス州の治療ガイドラインは、軽症うつに運動を勧めている。

 慶大病院では年内にも、軽症者数十人を集め12〜16週間にわたってウオーキングやジョギングの運動療法を試み、効果を確かめる研究を始める。冨田真幸助教(同)は「一人一人の体力にあった運動量をアドバイスする、テーラーメードの治療を行う。将来的には、運動でうつを予防する取り組みにつなげたい」と話している。


【毎日jp 2010-10-22】

予測よりも理解


 肝心なのは、予測することではなく理解することだ。


【『精神の自由ということ 神なき時代の哲学』アンドレ・コント=スポンヴィル/小須田健〈こすだ・けん〉、C・カンタン訳(紀伊國屋書店、2009年)】

精神の自由ということ ― 神なき時代の哲学

オーギュスト・エスコフィエが生まれた日


 今日はオーギュスト・エスコフィエが生まれた日(1846年)。レストラン経営と料理考案・レシピ集の著述を通じて、伝統的なフランス料理の大衆化・革新に貢献した事で知られる。現在にいたるフランス料理発展の重要なリーダーとして、シェフと食通の間で偶像視されている。

エスコフィエ自伝 - フランス料理の完成者 (中公文庫BIBLIO) 味覚の巨匠 エスコフィエ