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2011-02-20

滅私奉公と『プロジェクトX』


 私は、けっして「滅私奉公」が無条件に悪だと言いたいのではない。「滅私」に値するほどの公もあるだろう。たとえば、本章の第5節でも言及する、今後発展されることが期待される「新しい公共空間」がそうなる可能性はある。男性にせよ女性にせよ、公の世界に生きようとすれば「命を賭ける」必要が生じてくることはもちろんあるだろう。ただ、滅私奉公の倫理の問題点は、しばしば、人が公の世界に命を賭ける必要が生じたときに、私の世界に負い目を感じるどころか、私の世界をすっぱりと切り捨てることを要求することにある。『プロジェクトX』にしても、挑戦者の男たちが男泣きしている場面で完結せずに、負い目を感じなくてはならないはずの家族に「ありがとう。これまですまなかったね。これからは家事するよ」と毎回エンディングにおいて感謝と謝罪をすべきだと思うのである。男性が公の世界に生きようとすればするほど、私の世界に負い目を増していくことを、佐藤忠男は「情感的論理の世界」と呼んで好んだ。一方で佐藤は、私の世界の切り捨てを要求する「忠誠」を嫌っていた〔佐藤 2004〕。


【『男らしさという病? ポップ・カルチャーの新・男性学熊田一雄〈くまた・かずお〉(風媒社、2005年)】

男らしさという病?―ポップ・カルチャーの新・男性学

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