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2011-04-20

人間はあるがままの世界を認識できない−カント


 カントはあまりにも偉大な存在であった。彼以前の哲学はすべてのそのなかに流れこみ、彼以後の哲学はすべてそこから流れだす、カントはまさにそのような湖にもたとえられる近代哲学の祖なのである。

 彼は人間の認識を根底から変えた哲人だった。カントは自分の哲学を「コペルニクス的転換」と自負した。太陽が動いているのではない、地球がまわっているのだ、というコペルニクスの発見と同じように、カントは人間の認識というものは世界をありのまま写しとっているのではない、人間の感受性や悟性や理性がみずからの形式に従って対象を構成しているのだ、と断じたからである。したがって、人間はけっして世界をあるがままに認識できず、あるがままの世界は「物自体」として、人間の認識能力の彼方におかれる。カントが生涯をかけて探究しつづけたのは、そのような人間の理性の能力についての分析だった。人間の認識能力の限界を見きわめることだった。


【『生き方の研究』森本哲郎〈もりもと・てつろう〉(新潮選書、1987年)】

生き方の研究

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