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リビア:カダフィ大佐は被害妄想 社会学者が分析

 混迷が続くリビアの最高指導者カダフィ大佐(68)。国内外から退陣を迫られながら、その気配を見せない。「中東の狂犬」(レーガン米大統領)と呼ばれながら、自ら「王の中の王」「革命の教師」を名乗る奇矯な独裁者の性格を、本人を直接知る社会学者で外科医のモハメド・ムフティ氏(67)に分析してもらった。


 カダフィ大佐は1969年の革命後、国を率い、国家運営のありようについて多くの者に会って耳を傾けた。私も呼ばれた一人で何度か会ったが、非常に頭のいい男という印象だ。初対面の相手には非常に丁寧で自分でお茶をいれたりするが、その10分後に撃ち殺されてもおかしくない怖さを漂わせていた。


 70年代にそううつ病と診断され、精神安定剤が欠かせないというのがリビアの医師たちの共通認識だ。覚醒剤中毒のうわさもあるが、確認はできない。


 被害妄想、強迫神経症系の性格だ。革命直後、仲間の将校たちを次々と更迭したり事故死に追いやったのは、強い人間不信のせいだ。毎晩、宿泊場所を変え、地方では夜中に抜け出し路上の車で眠る用心深さを備え、常に裏切りを疑っている。


 ベドウィン(アラブの遊牧民族)の生まれであることなど環境に原因を探る学者もいるが、生来のものだと思う。革命以降の10年間は国民の人気は非常に高かった。教育や医療を無料化して格差の解消に努め、石油収入が激増して成り金国家になり、(地方の部族長などに)カネをばらまいた。


 毛沢東語録を模して著した「緑の書」で社会主義的な理想論を語りつつも、76年にはすでに、小学生にまで見せる公開絞首刑を始めている。


 服従しない者への復讐(ふくしゅう)心が極めて強く、88年の米パンナム機爆破事件も自分を認めない欧米への報復心から来ている。革命前の中尉時代、反抗的な兵をうつぶせにし皆で踏みつける制裁を編み出した。今回の反政府活動においても、命令に従わない政府軍兵士を後ろ手に縛って並べ、頭を撃ち抜く処刑が各地で見られた。捕まえた反政府活動家の体を幾つにも切断する殺し方も、彼が発案した「復讐」の形だ。


 92年、国連制裁で航空機の部品不足が生じ、これを世界に訴えるため、あえて国内旅客機を撃墜し約180人を死亡させたことからも分かる通り、人命に対する良心がない。


 もう一つの特徴は激しい自己愛で、他人の成功を異常にうらやむ。リビアのサッカー中継で選手を名前の代わりに背番号で呼ぶのは、国民的ヒーローを生ませないためだ。歌手なども有名になると、干されてしまう。


 自己愛と妄想から自分を「王の中の王」「アフリカの王」「アラブの王」と本気で信じており、自分は国際社会の被害者であり、まだ国民に愛されているとも信じている。


 いろいろ考えれば早期退陣が最も利口な手だが、裏切った国民への憤激、復讐心が今の彼を支えている。説得できる者はいない。疑心の強さから、国際社会にも誰も友人がいないからだ。


毎日jp 2011-05-21


 アメリカとそっくりだ。