古本屋の覚え書き このページをアンテナに追加 RSSフィード


WWW を検索 古本屋の覚え書きを検索

2010-11-22

消費税が国民を殺す/『消費税のカラクリ』斎藤貴男


 税という名の暴力がある。国民・県民・市民・区民は税金と引き換えに何を手にしたのだろうか? あるいは失ったものの方が多いのだろうか?


 租税には三つの機能がある。公共サービスの費用調達機能、所得の再分配機能、景気の調整機能である。この前提自体がそもそも嘘臭い。大体元々は年貢だろ? 平安時代以降、百姓がまともなサービスを受けていたっていうのか? 徴収は簒奪(さんだつ)の異名である。


 政治の役割は立法と予算決定であるが第二次世界大戦敗戦以降、我が国においては政治が機能していない。アメリカがコントロールしているのかもしれないし、日本の官僚がコントロールされたフリをしているだけなのかもしれない。だがいずれにせよ、この国において国民が何かを決めたことはないように思う。


 で、話を元に戻すが、国家が国民の懐に手を突っ込んで労働対価を奪うには、それ相応の巧妙な手口で行う必要がある。一歩間違うと国家がひっくり返る可能性があるからだ。その中で最も狡猾な手段が消費税ってわけ。


 国際競争力をつけるという名目で税制改革が行われてきたが、実は大企業と金持ちが優遇されていただけの話だった──


 かつて19区分、最高税率で75%もあった所得税の累進課税の仕組みは、1980年代半ばから緩和され続け、99年からの8年間はわずか4区分、最高税率37%という状況に至った。年間所得が100億円の人と1800万円の人の税率は同じであり、1000万円に満たない人ともあまり変わらないという、あからさまな金持ち優遇税制だ。

 表には含まれていないが、この間には住民税の累進課税も大幅に緩和された。14区分だったものが89年までに3区分(5%、10%、13%)となり、2007年にはこれも廃止されて一律10%の完全フラット化。年間所得100億円の人も100万円そこそこの人も、課される税率は同じだというのが現状なのである。

 かくて所得税の所得再分配機能は消失し、1991年度のピーク時には26兆7000億円あった税収も2009年度は12兆8000億円へと半減した。偶然ではもちろんない。

 財界の主導で進められた規制緩和、構造改革の、これも一環だった。


【『消費税のカラクリ』斎藤貴男講談社現代新書、2010年)以下同】


 政官業の癒着。三位一体。三人寄れば文殊の悪知恵。所得の再分配は胴元が取る仕組みだったってこと。人間という動物は苦しい情況に置かれると自分のことしか考えられなくなる。国民という枕詞(まくらことば)の実体は納税者・消費者・労働者・兵士・一票にすぎない。選択肢はあらかじめ狭められているから、どんな方向にでも誘導可能だ。ベルトコンベアー、あるいはエスカレーター上で行われる批判と議論にさしたる意味など存在しない。


 斎藤は消費税の欺瞞を次々と暴いてみせる──


 消費税は、国税のあらゆる税目の中で、最も滞納が多い税金なのである。


 ゲゲッ、知りませんでした。

 消費税の滞納者が急増した1998年という年は同時に、この国の年間自殺者が初めて3万人を超えた年であったという事実を、とりあえず知っておいてもらいたいと思う。


 消費税が国民を殺しているというのだ。恐るべき現実だ。で、滞納した消費税の取り立てについては税務署が好き勝手に決めている。


「長年にわたって消費税を滞納している納税義務者を、税務署の最前線では“優良事案”と呼んでいます。取り立てれば上に褒めてもらえるからで、しかも手段を選ぶ必要はないとまで指示されている。倒産や廃業に追い込む結果を招いても構わない、いや、消費税を滞納する奴らなど潰してくれ、などというセリフさえ、署内では当たり前のように交わされているんですよ。変な言い方ですが、そういう発想が税務署の文化のようになってしまいました」(※大規模税務署の中堅署員)

 国税庁は1998年頃から、あらゆる税目の中で消費税の徴収を最優先する“消費税シフト”を敷き続けている。


 これでは暴力団とやっていることが変わらない。彼らはアイヒマン同様「命令に従っただけ」とでも言うのだろう。


 消費税を滞納し、差し押さえた挙げ句に自殺する中小企業の社長がいる。


(分納分を納めていたにもかかわらず、突然、売掛金を差し押さえられ、この社長は自殺した)

「税務署の担当者には、『あんたたちのせいだ』と言わせてもらいました。お悔やみの言葉、ですか? いいえ、『規則ですので』だけです。滞納するから悪いんだと、それだけでしたね」


 税は暴力なのだ。国家が暴力装置である事実を我々は自覚する必要がある。


 税金に関する書籍なんで細かいデータが多く読みにくいのは確かだ。しかし「自分の懐の問題」だと認識すれば、やはり襟を正して読むべき一冊といえる。


 お金が企業や人の間を移動するだけでかすめ取るのが税金である。再分配が機能していない以上、富は特定の階層に集中する。つまり租税が貧困を拡大しているのだ。

消費税のカラクリ (講談社現代新書)

2010-08-22

世界で一番、税金が高い国

 実質税金である健康保険や年金、失業保険などによる還元、食料品を始めとする非課税分野など複雑な要素を加味すると、日本はスウェーデンよりも高い税金を支払っていることになる。

2010-07-13

戦前の預金部が戦後の財政投融資制度に


 日本の戦争遂行を考えるときに、預金部という制度を抜きにしては語れない。もし、郵貯、簡保、年金という預金部資金に頼らず、日清・日露戦争からアジア太平洋戦争に至る戦費をすべて税金で徴収したら、いくら戦前の日本でも厭戦(えんせん)気分が蔓延(まんえん)していたであろう。

 ところが、この預金部制度が戦後にほぼ無傷で生き残ってしまう。1954(昭和26)年9月8日、わが国はサンフランシスコにおいて連合諸国との間で講和条約に調印し、翌年4月28日からの発効によって独立を回復することになる。その直前の50年度に政府は「資金運用部資金法」および「資金運用部特別会計法」を制定、51年度の当初から預金部に代わり「資金運用部」を発足させていた。戦後の財政投融資制度の構築である。

 ここでの最大の問題は、創設以来の悪しき本質が、まったく修正されることなく戦後に引き継がれたことにあった。

 郵貯、簡保、年金は、預ける側の国民にとっては大切な個人資産である。しかし、預かる側の政府にとっては税外の国庫収入という程度の認識でしかない。返済することにいっさい頓着(とんちゃく)することなく、あたかも税金と同じような感覚でこの「裏収入」を使い切ってしまうという悪弊が、そっくりそのまま戦後に残されてしまったのである。しかも、本来は政府の暴走を抑制すべき議会までもが、「族議員」に代表されるように、官僚と結託して、後先を考えない使い切り方式に積極的に加担してしまう。


【『「お金」崩壊』青木秀和(集英社新書、2008年)】

「お金」崩壊 (集英社新書 437A)

2010-06-22

税金の二重取り


 なにしろ、この国では、税金にさえ税金がかかっている(そう。消費税は、酒税や飲食税含みの商品に対してもかかっています)。


【『無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ』小田嶋隆(翔泳社、1995年)】

無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ