wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

混戦(11)

『生きてるか、ブラック・アウト』
エクスカリバー2――ワイルドファイア――の問いに田辺は浅く息を吐いてから、
「生きてるよ。そっちはどうだ?」
『見ての通りだ』
「なるほど、元気そうだ」
並走する両機の後方、敵の機竜集団には球状の空間が生まれている。
エーテルバーストで吹き飛ばした跡だ。
だが、黒の機竜と紅の機兵はエーテルバーストで敵集団を攪乱し、強引に抜けてきたことを感じさせなかった。
補給に戻るぞ、と田辺が口を開こうとしたところで、開放回線で、
『今からボスバトルするよ〜、デスペナ覚悟の自信家とか募集中だからね〜☆』
通信で聞こえるのは能天気な声。
「まったく、気まぐれだな」
『乗るのか?』
「こちらがそうでなくても向こうは仕掛けてくるだろう」
『そうじゃなくて、どうするんだよ』
「踊らされるのは好きじゃないんでね」
田辺の言葉を補うようにエリスが続ける。
「踊らねば損だと判断する」
『お前ら二人揃ってそれかよ』
通信機越しにため息が聞こえる。
「お前はどうするんだ?」
田辺は紅蓮に尋ねた。
レーダーには友軍が敵軍に寝返っている様子が見て取れた。
『雑魚は任せとけよ』
「了解。落とされるなよ」
『そっちもな。お前は俺に落とされるんだからな』
「その言葉、そっくり返す」
『くく、楽しみにしてるぜ』
その言葉を合図に赤の機兵が雲を引きながら最寄の敵集団に向かっていく。
周囲を待機していた味方の機兵群がエクスカリバー2に続いて移動を開始する。
敵の機竜群に機体を向けながら田辺はオールシーイングアイの言葉を聞いた。
『各機、造反部隊及び敵機竜群を殲滅し、制空権を奪還せよ』