カナスピカ(秋田禎信)

- 作者: 秋田禎信
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/06/11
- メディア: 単行本
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いや、いい話だった。
佳作って感じかな、というのがあり、期待してたものがあり、また別の期待してたものがなく、それでいて「ああ、それをやるのか」といった感覚もあり。
それ以上詳細に書こうとすると感想と言うよりは自分語りになってしまう部分が多いのだがそれでも適当に書いておくことにする。まずまとまらないので重複しても気にせずメモ書き程度に。
- 人間でないもの
「観測衛星」という設定を見て自分がイメージしていたのは「人間でない、とされているものの自意識*1」だったんだけれども、これで描かれているのは「人間でないもの、と一緒にいる人間の自意識」の方だった。非人間の自意識の方は、固定された、安定した、外部の、「ただあるもの」といった感じのもの。エンハウのスイリーなんかが近い。(人間ではないが故に)飄々としていながらズレている、というおかしみは安心して読めた感じ。
「一緒にいる人間の自意識」に焦点当たるのは不思議ではなかったけど、ううん、どうだろうな、「人間でない自意識」の方に焦点が当たったものの方がぐっとくるのは否定できない。
- オッサン
オッサンを複数人出してどれも入念に書くのがらしいなあと思った。というかうけた。
- 距離
ああ、ここ行ったか、といった感じを受けた。しかもファンタジーでなく、言ってしまえば俗っぽい方に。そっち行ったというのは俺も望んでいたことなので喜ばしい。が、なんというかな。あれか、さわやかすぎるんではないか。さわやかで悪評価とかなめてんのかといった感じだが、ほらそこは血まみれで佇むくらいのがらしいっつーか。もごもご。
- 長さ
さわやかと似たような感じだが、もうちょい分量詰まってて欲しかったかな、と思った。これはかなり個人の好みに左右される部分だが、小説内時間感覚というかな。もっと遅くてもよかった気がした。長けりゃいいってもんじゃないのはわかってるが。
- 雑感
映像との親和性、というかな、多分こういったほのぼのさわやか系は映像の方が色々語られている気がして(それこそジブリとか)、そっちのイメージが少しあった。ああ、でもクレヨン王国とかは文章でこういう手触りだった気がするな。そういう意味では、やっぱり佳作、という印象が正しい。かなりいいせんいってるが、ベストではない(この分野は比べる対象が名作過ぎるという部分もあるが)。が、これを書く意思を持ち、これだけのものを書いたというのは素直にすげえと思う。
- 初見では見えなかったこと
ラスト付近の「場所」に関する部分はすっと読んでしまったが、あそこは二度目には違って見えてくる気がする。あまりすぐに何度も読むのはアレなので、そのうち読み返す。
新潮の三島賞選評
受賞作に関してはあまりいいものだと思えなかったし知人はつまらなくてむしろ不思議だ、とかいってたので読んでみる。なんとなく理解した。このひとはいろんな立場の人がいろんな見方をしている印象なのだが、概ね共通するのは「あやうさ」みたなところなのかなあ、などと思った。
あと結果でなく存在の方を見ているフシもあるのでそこらへんか。ここらへん説明するのめんどいなやっぱ。話すときは適当に誤魔化そう。