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2009-12-08

setofuumi2009-12-08

アリとキリギリスの寓話 アリとキリギリスの寓話を含むブックマーク アリとキリギリスの寓話のブックマークコメント

 とある村に、タヌキとキツネが住んでいました。二人は商売人で、村のみんなは半分はキツネの店を、半分はタヌキの店を利用していました。

 ある時、キツネは考えました。

「タヌキよりぼくのほうが真面目に仕事をしているはずなのに、村のシェアが半々なのはおかしい。ここはひとつキャンペーンをうって、ぼくのほうが商売人として立派だとみんなに知ってもらおう」

 キツネはいっしょうけんめい頭をひねって、キャンペーンのアイデアを考えました。結果、このようなものができました。

「アリとキリギリスの寓話はみんなよく知っていると思います。キツネは、こつこつ、みんなのために働いています。タヌキは、仲のいい人とおしゃべりしたり、お酒を飲んで暮らしています。どちらが商売人として立派でしょうか?」

 キツネは、この文面がはいったチラシを村中に配りました。

 確かに、キツネはこつこつと物を仕入れては売り、少し無愛想だけれど、品揃えもよいと評判でした。一方のタヌキは、お客の喜ぶことをしてくれる商売人として評判はいいのですが、顔なじみのお客さんと長々とおしゃべりをしたり、遊ぶことが多く、それを好ましく思わない村人もいたのでした。

 結果として、村のシェアは、少しずつキツネに傾いて行きました。気を良くしたキツネは、自分をアリになぞらえ、タヌキをキリギリスになぞらえたキャンペーンを積極的にするようになっていきました。お店の雰囲気も、アリをイメージできるようなものにしましたし、お店のイベントの時には、アリの格好をすることさえもありました。

 一方、タヌキはというと、相変わらずお客さんとよくしゃべり、よく遊びました。そうやって仲良くなったお客さんが喜ぶものを仕入れ、売ることがタヌキの商売の基本だったので、タヌキがキャンペーンを気にすることはありませんでした。

 そんな調子で、お互いに商売にせいを出し、数ヶ月が過ぎました。村のシェアは、キツネが7割を占めるようになりました。タヌキは、相変わらずのやり方で、商売を続けていました。

 キツネは考えました。

「キャンペーンは大成功だった。でもシェアを独占するまでにはいたっていない。ここはひとつ、都会の大企業と手を組むことにしよう。有名企業の名前があれば、村のシェアはもっとあがるに違いない」

 キツネは、都会で成功しているトラ社長のもとへおもむきました。結果、業務提携を結ぶことに成功し、おかげで村のシェアは8割にまで上がりました。

「この調子でいけば、ぼくが村のシェアを独占できるに違いない。ここはひとつ、権威のある評論家の先生に来てもらって、タヌキよりもぼくのほうが優れた商売人だと認めてもらおう」

 キツネは、都会に住む経済評論家の先生に講演の依頼をすることにしました。先生はきむずかしいと評判でしたので、単刀直入に「私を応援してくれ」とは言えなかったキツネは、村の経済状況のデータとともに「お題は『アリとキリギリス』でどうでしょうか」と添えて依頼しました。

 後日、先生から「喜んで講演をお受けします。お題も『アリとキリギリス』でいきたいと思います」というお返事が来ました。

 キツネは小躍りして喜びました。これで村のシェアは独占できるに違いありません。

 一月後、先生が村にやってきました。

先生:「アリとキリギリスという寓話を、皆さんよくご存知かと思います……」

 キツネは満足げにうなづいています。

先生:「そう、この村のタヌキさんは、まるでアリのようだ、といえるでしょう。地道に消費者の要望を聞き、真に消費者が求めているものを提供し続けてくれるタヌキさんはすばらしい商売人です」

 キツネは驚きました。それはキツネの役回りのはずだったのに。

先生:「それに比べて、トラさんはキリギリスのような商売人です。確かに彼は成功していますが、それは派手なイベントや広告、宣伝のおかげでそう見えるのであって、消費者を大事にはしていません。冬の季節になれば、彼の商売に未来はないでしょう」

 キツネは飛び上がって驚きました。これでは、全く逆の評価ではありませんか。

 タヌキは、キツネがさまざまなキャンペーンをうっている間、今まで通りに着々と、村の外側へもお客を増やしていっていたのでした。村のシェアは若干減っていましたが、それでもタヌキを慕うものは一定数いて、彼らが村の外の人にタヌキの店を紹介し、その人が知り合いに紹介して……といったように、お客はねずみ算式に増えていったのです。

 タヌキの店は全国的に有名になり、業界トップのトラに迫る勢いだったにも関わらず、タヌキは以前と同じように、お客と楽しく話し、欲しい商品を知り、それを提供し続けていたのです。

 都会に住む先生は、キツネから「村のイベント」として講演を頼まれたので、村のシェア争いやキャンペーンのことなど露ほども知らず、全国区で有名なタヌキとトラのお話をしてしまったのです。

 この講演のおかげで、村のシェアはキツネとタヌキの半分ずつになり、元通りになったそうです。

めでたしめでたし。







「……という話があるんですが、先生どうでしょう、これをうまく大勢に読ませることはできませんかね?」



  • この文章は第9回文フリマでBWNの8P*1用に書いたものです。
  • 画像はid:nitinoさんに書いてもらって表紙にさせてもらいました。
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