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EPUB版『InDesign者のための正規表現入門』

InDesignのTips一覧

2011-01-01

[]InDesignの10年を振り返る

いまから10年前、2001年1月26日(金)「InDesign 1.0日本語版」が発売されました*1InDesign日本語版は今年で満10歳になります。よい機会なので、ここでちょっとこれまでの10年を振り返ってみたいとおもいます。


InDesign 1.0日本語版f:id:seuzo:20101227164321p:image:right

2000年の秋に発売されるという発表が一時ありましたが、InDesign英語版に遅れること1年半、年越えしてようやくInDesign 日本語版は登場しました。このときのプレスリリースがこちら:

About Adobe - Press Room - InDesign 日本語版

まず、スプラッシュスクリーンから見てみましょう。ああ、何もかもみな懐かしい。

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アプリケーションのフォルダ階層はどうなっていたかというと、こうなっていました。

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アプリケーションのサイズ容量は2.4MBです(ちなみにInDesign CS5のサイズ容量は283.6MB)。アプリケーションとライブラリ(プラグイン)の分割によるスマートな設計によると説明されました。

実際に動作している姿もお見せしましょう。*2

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そう、この本はあの本です。日本で最初にInDesignを使って作られた書籍です。当時、何冊かInDesign関連本が出版されましたが、すべてQXPで作られていました。なぜなら、InDesignからマトモにフィルムに出せなかったからです。

本書の付録に「アプリケーション別機能比較表」を掲載しました。

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著者自身のひいき目もありますが、これを見ていまも思うのはQXPがいかにダメなアプリケーションであったかということです。ガイドを1本引くにも、正確に引くためにはスクリプトを使う必要がありました。膨大な手作業とトリッキーなバッドノウハウの固まりのような道具でした。

それでもなおかつ、InDesign 1.0日本語版は未完成なアプリケーションでした。だって、保存して再度開くと文字組みが変わっているのがフツーでしたから。ぼくらは有料のベータテスタだったわけです。*3


InDesign 2.0Jf:id:seuzo:20101230134001p:image:right

InDesign 1.0日本語版の登場からおよそ1年後の2002年2月8日にInDesign 2.0Jが発売されました。

About Adobe - Press Room - InDesign 2

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主な新機能は

  • 表組み
  • ブック
  • XML

でした。リリースノート

には「パフォーマンスの向上」などと書いてありますが、これは絶望的な遅さというバグの一種であって、今から思えばまだまだ笑っちゃうくらい遅かったです。

表組みはたしかにとてもすばらしい機能でしたが、ちょっとした表を入れた途端にドキュメントのサイズがバカでかくなったりしました。

XML機能は最初ベータ版のプラグインでリリースされたと記憶しています。その頃丁度展示会用パンフの作成があってすぐにXMLを使ったフローを考えました。XML機能に触れ、いままでの「レイアウトドキュメント中心」の考え方を180度転換させられました。ドキュメントは「作っていく」ものではなく、「コンテンツの入れ物」になりました。InDesignはハブではなく、単にコンテンツのデバイスだと実感しました。実際の作業フローについては

InDesign CS2で始めるXMLガイド(PDF)

に少し紹介させていただきました。もう時効だと思うんで言いますが、この冊子はぼくが書かせていただいたものです。自作自演とはこのことです^^


InDesign CS(3.0)f:id:seuzo:20101230142654p:image:right

2004年1月16日、InDesign CS(3.0)は「Adobe Creative Suite」の一員として発売されました。「Adobe Creative Suite」はユーザーの用途に応じていくつかのプロダクツをひとまとまりにインストールできるパッケージです。

About Adobe - Press Room - Creative Suite

About Adobe - Press Room - InDesign CS

InDesign CS(3.0)の主な新機能は

  • ストーリーエディタ
  • 分版パレット
  • 分割・統合パレット
  • 裁ち落としと印刷可能領域
  • 先頭文字スタイル
  • テキスト読み込み機能の拡張
  • XML文章型定義のサポート
  • XMLタグの文字スタイルへのマッピング
  • 測定ツール
  • ワークスペースの管理
  • パスファインダコマンド
  • 表のヘッダ行とフッタ行
  • 線種の作成
  • 混合インキのサポート
  • 字形セットの作成
  • インタラクティブなPDFの作成
  • XMPのサポートの強化
  • GoLiveパッケージコマンド
  • Adobe Version Cue

といったところです。どちらかというと使い勝手重視の地味なアップグレードという印象ですが、ようやくInDesignを使った一般的なフローが確立した頃だと思います。

発売から2ヶ月経った2004年4月8日、SINGアーキテクチャが発表され、プラグインとしてリリースされました。ただしこの時はまだプレビュー版でした。

About Adobe - Press Room - InDesign CS プラグイン「SING外字技術プレビュー」

SING外字アーキテクチャは、それまでの外字の概念を覆す画期的なものでした。しかし、表示に関するバグが一向に改善せず、それがユーザーの禁忌となってAdobe CS5にはもう付属されていません。同じく「Adobe Version Cue」も、CS5にはありません。業務として長いスパンでフローを構築しているユーザーにとって、こうした気まぐれな振る舞いはある種の裏切り行為です。新機能が「売らんかな」のキャッチとしてしか存在せず、何世代もバグが放置され、挙げ句にアナウンスなく捨てられてしまう。もう少し考えたらどうだろうと憂慮せざるを得ません。


InDesign CS2(4.0)f:id:seuzo:20110101124720p:image:right

2005年7月8日、InDesign CS2(4.0)が発売されました。

About Adobe - Press Room - Adobe Creative Suite 2日本語版

About Adobe - Press Room - Adobe InDesgin CS2 日本語版

主な新機能は

  • スニペット
  • PSD、PDFレイヤー配置。PDFから複数ページ配置
  • オブジェクトスタイル
  • クイック適用
  • 脚注
  • オートスペルチェック
  • アンカー付きオブジェクト
  • スタイルの選択的読み込み
  • フレームごとのベースライングリッド
  • 変形の再実行
  • 箇条書き
  • AI、PSとのスウォッチの共有
  • 表のXML

です。オブジェクトスタイルがあんまり便利なので、なんでもかんでもオブジェクトスタイルにするのがマイブーム(死語)でした。アンカー付きオブジェクトもとても重宝しました。

この時、いくつかのソリューションが同時に発表されました。Adobe CS2にはAdobe BridgeやSING用のIllustrator用プラグインが正式に同梱されました。Adobe InCopy CS2 日本語版が発売になったのもこの時です。少し間を置いてAdobe InDesign Server CS2もリリースされました。

InDesign発売から5年が経ち、InDesignが本格的なブレイクスルーを迎えたバージョンでした。しかしながら、まだまだQXPユーザー数は多く、ぼくは賭けに負け、それ以来ずっと丸坊主です。


InDesign CS3(5.0)f:id:seuzo:20110101124721p:image:right

2007年6月22日、InDesign CS3(5.0)が発売されました。

About Adobe - Press Room - ADOBE CREATIVE SUITE 3ファミリー

About Adobe - Press Room - ADOBE INDESIGN CS3

主な新機能は

  • 効果(グラデーションぼかし効果、ベベル効果とエンボス効果、サテン効果、シャドウ(内側)効果、光彩(内側)および光彩(外側)効果)
  • 複数ファイルの配置
  • InDesignドキュメントの配置
  • フレームに対して調整オプションなどを使ってフィットを設定
  • ページパネルでサムネールプレビュー
  • 先頭文字スタイルの繰り返し
  • 表およびセルのスタイル
  • XHTMLへの書き出し
  • XML規則セット
  • XMLでのXSLT表とCAL表のサポート
  • 新聞出版用のアゲート単位
  • テキスト変数
  • 自動番号リスト
  • 正規表現検索
  • 検索置換クエリの保存
  • ワークスペースのカスタマイズ
  • メニューのカスタマイズ

です。詳しくはオンラインヘルプからも参照できます。

InDesign CS3 新機能

エッセンシャルガイドが出始めたのもこのバージョンからです。

よくわかる!Adobe Creative Suite 3 Design EditionInDesign CS3 エッセンシャルガイド)

このバージョンでもっとも注目するべきは、テキスト変数と正規表現検索置換の導入でした。テキスト変数は、今も縦中横も行の折り返しもできないままですが、カタカナにマッチしない正規表現のバグは次のバージョンCS4まで待たなければなりませんでした。それでもなお、これらの機能はすばらしい効果をいくつももたらしてくれました。

正規表現検索置換について、ぼくはInDesign 1.0の発売直後から、何人ものアドビ開発者(日本人じゃない人)にその必要性を説くロビー活動をしていました。極東の島国の泡沫ユーザーの戯言がどれくらい功を奏したかわかりませんが、ようやく実装された時には感慨もひとしおでした。


InDesign CS4(6.0)f:id:seuzo:20110101151710p:image:right

2008年12月19日、InDesign CS4(6.0)が発売されました。

About Adobe - Press Room -アドビ システムズ社、ADOBE CREATIVE SUITE 4ファミリーを発表

About Adobe - Press Room -アドビ システムズ社、強力な新機能を搭載した ADOBE INDESIGN CS4を発表

主な新機能は

  • IDML、IDMS
  • ライブプリフライト
  • スプレッドビューの回転
  • スマートガイド
  • リンクパネルの改良
  • データ結合からPDFへダイレクト出力
  • 条件テキスト
  • スマートテキストのリフロー処理
  • 先頭行スタイル
  • 正規表現スタイル
  • 全角スペースの行頭禁則(新機能っていうより、バグだった!)
  • 相互参照
  • Flashへの書き出し
  • インタラクティブPDF機能拡張

です。くわしいレビューは「【最速報】InDesign CS4新機能紹介 - 名もないテクノ手」を参照してください。

オンラインヘルプはこちら(Adobe InDesign CS4 * 新機能)。エッセンシャルガイドはこちらです。

このバージョンでもっともすばらしいのは正規表現スタイルでした。もはや先頭文字スタイルのようなまやかし機能で、面倒くさい指定をする必要がなくなりました。

そしてなんといっても、IDMLです。IDMLに関してはIDMLWikiを参照してください。


InDesign CS5(7.0)f:id:seuzo:20110101155738p:image:right

2010年5月28日、InDesign CS5(7.0)が発売されました。

Adobe - アドビシステムズ社、CREATIVE SUITE 5 DESIGN PREMIUMを発表

Adobe - アドビ システムズ社、デジタルパブリッシングへの移行を支援するADOBE INDESIGN CS5を発表

主な新機能は

  • 複数ページサイズ
  • レイヤーパネルの階層化
  • 変形の機能強化
  • 間隔ツール
  • 段抜き見出し
  • 角オプションが施されたテキストフレームでも、行配置設定できる
  • 角オプションの四隅をそれぞれ個別に指定
  • ライブ角効果
  • 複数の画像配置時のグリッド化/複製時のグリッド化
  • メタデータをキャプションに
  • Mini Bridge
  • テキスト変更履歴のトラック
  • Document Fontsフォルダ

です。詳しいレビューは「InDesign CS5新機能【速報】 - 名もないテクノ手」を参照してください。

オンラインヘルプはこちら(Adobe InDesign CS5 * 新機能)。エッセンシャルガイドはこちらです。

これが今現在のバージョンですが、複数ページサイズにしろ、レイヤーパネルの階層化にしろ、間隔ツールにしろ、一体どっち向いてんだよといいたくなる*4ようなありさまです。


ぼくはこの10年、InDesignと一緒に仕事をしてきました。そしてこれからもInDesignと仕事をしたいと思います。ただそれは希望的観測かもしれません。InDesignは悪い友だちにたぶらかされ、本来の仕事も忘れて出来もしないことを夢想するような子になってしまいました。InDesignよ、どこへ逝く? と問いたい2011年の年明けです。

*1:英語版の発売は1999年8月31日です。InDesign満10歳 - 名もないテクノ手

*2:実は、このスクリーンを撮って終了しようとした途端にHDDごと逝っちゃいました。もう2度とこのドキュメントを開くことはできなくなりました。さよならOS9、永遠に。 on Twitpic

*3:とりあえず製品を出して、初期リリースでバグだしをする。こういうAdobe体質はいまだに変わっていません。

*4「インタラクティブなリッチコンテンツ」てえの - 名もないテクノ手