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名もないテクノ手 このページをアンテナに追加 RSSフィード

EPUB版『InDesign者のための正規表現入門』

InDesignのTips一覧

2011-02-02

[][][]CPubってなんだ?

本日、PAGE 2011を見学してきた。お目当ては株式会社ニューキャストさんのCPubである。CPubとはナニか? ぼくがグダグダ講説を垂れるよりまず下記エントリーを読んでいただきたい。

ひとことでいうなら、Wikiを利用したCMSだ。Wiki記法によるマークダウンによってコンテンツを構造化して保持しようという目論みだ。マークダウンを使えば、XMLやプログラミングなしに文書を構造化でき、エンジニアリングに詳しくない編集者や著者もブログ感覚で文書を作成・編集できる。

Wikiを利用した出版物向けの文書構造化の取り組みはCPubだけではない。『電子書籍で生き残る技術−紙との差、規格の差を乗り越える−』に紹介されている、TOP STUDIOさんのReVIEWなどもある。またある出版社ではWordPressを積極的に取り入れ、自社での変換ノウハウを蓄積されている会社もある。

CPubが一般的なCMSと違うところを2つあげてみよう。ひとつは、このCMSが(電子出版と紙媒体を含む)出版物を念頭に置いて設計されていること。ニューキャストさんは長年、出版の制作を生業とされている会社だ。このノウハウが生かされているわけだ。ふたつめは、IDML書出しができること。現状、制作会社への原稿の多くはMS Wordやマーキングテキストで渡されている。これらはたいていテキスト洗浄を必要としそのままでは使えない。じゃあ、XML入稿なら文句はあるまい。いやいやXMLって聞くだけでもう腰が引けてしまう。そこでCPubで書き出したIDMLを原稿に使えるのだ。粗組みしたIDMLには段落スタイルや文字スタイルが適用されているし、図版や表もIDML上で再現できる。

CPubを使えば、著者・編集者・校正者などのグループワークを円滑に行えるし、用途によってEPUB、IDML、bookreaderへと出力できる。なにより、InDesignドキュメントを中間ファイルにしようなどというリスキーで野放図なワークフローに混乱させられなくて済む。

実際に動作画面を見てみると、予想以上にシンプルで気負いがない。興味本位でお話を伺ったところによると、写真図版はFlickrなどのWebServiceから直リンクできるらしい。さらに任意のタグ(とその記法)を追加編集できるようになるとのこと。IDMLはStoryをごっそり入れかるような方法を採っているようだ。今春から専用サイトでテスト稼働が始まるとの情報も得た。

今後の課題として、誰がいつどこを直したかのバージョニングが可視化できること。また、WordPressやMediaWikiなど主要なプラットフォームからのインポート/エクスポートを挙げておきたい。今後の動きに注目だ。

2011-01-19

[][][][][]InDesign電子書籍の中間ファイルたりうるか?

2011年、電子2年(あるいは何度目の元年なのか)などと言われている昨今、電子出版への取り組みを始められた出版関係の方も多いと思います。電子出版とひとくちに言っても、アプリ形式のものからPDF、EPUB、専用フォーマットに至るまでさまざまな種類があります。なかでも、自社のコンテンツを構造化されたXMLやDB、または管理されたCMSに取り込む必要性を感じていらっしゃる方も多いかもしれません。

構造化されたコンテンツを取り出すために、組版ソフトのInDesignからのEPUB(XHTML)書出しに期待している方も多いでしょう。実際にそうしたワークフローを推奨する書籍やネット上の記事も散見されます。しかしながら、InDesignからのEPUB(XHTML)書出しは(現状では)まったく使い物になりません。ここで3つだけ理由を述べます。

まず、ひとつめにInDesignから書き出されたEPUB(XHTML)はまったく構造化されていません。ルビ要素などもなくなってしまいます。とある書籍では書き出されたデタラメなタグをパーサーも使わないまま、検索置換で置き換えるバッドノウハウが紹介されていたりします。こうしてできたEPUB(XHTML)は最早InDesignのコンテンツと同期していません。1度目はそれでよいかもしれませんが、再版時、修正時には膨大な手作業を伴います(もちろんここにはコストもかかります)。出版物は長いスパンで保存すべきコンテンツがあり、こうしたワークフローを続ければコンテンツの一意性の維持さえ難しい状況が生まれるでしょう。

ふたつめは、EPUB(XHTML)書出しを前提にしたInDesignドキュメントには、特別な配慮が必要です。InDesign内部のスタイル名の命名や種類に気を遣ったり、見出しや図版をひとつのストーリーに集約したりする作業です。過去データならば、最初にこれを作り直す必要があります。この作業でレイアウトが変わってしまうので、もう元の紙用版下にはなりません。新規で作成するとしても、紙面デザインの大きな制約になります。EPUB(XHTML)書出しを前提にするというだけで、デザインの制約を受けるなんて本末転倒ではありませんか。

みっつめは、わざわざ面倒なInDesignから書き出す意味がないということです。EPUB(XHTML)が必要ならDreamweaverとSigilを使う方が100倍簡単です*1。やってみればすぐにわかります。


近い将来、出版の制作は紙媒体より電子出版が先になるかもしれません。

紙を最初に作る理由はあるでしょうか? 情報コンテンツの「鮮度」から見れば、電子出版を先行させるのは理に叶っています。あるいは、電子版で売り上げの様子の見ながら、印刷流通コストのかかる紙に展開するのは穏当なやり方に見えます。

この時もし、InDesignのドキュメントを中間ファイルにしたワークフローが定着していたらどうでしょう? InDesignを仲介するワークフローは、この可能性を考慮していません。制作ワークフロー全体を見直す中で、大きな流れから1歩も2歩も遅れてしまうのではないでしょうか。

コンテンツはDBやCMSで管理されるべきです。こうした一次コンテンツから電子出版物を制作するソリューションは既にいくつかあります。紙媒体へ展開する必要があればDBからXMLを書出し、InDesignでレイアウトします(InDesignはずっと以前からXMLを扱えます)。InDesignはコンテンツの入れ物であって、紙媒体のためのデバイスです。


AdobeInDesignプロダクトをコンテンツのハブとして位置づけているようです。前述のEPUB(XHTML)書出しだけでなく、FLASH書出し、インタラクティブPDF、そしてAdobe Digital Publishing Suiteもあります。一見してにぎやかで、将来性があるように見えます。しかし、全体の道筋や方向性が違うような気がしてなりません。それは端的に成果物の完成度に現れています。たとえば、Adobe Digital Publishing Suiteでは、ユーザー操作のちょっとしたダイアログやビープを追加したりするようなUIのカスタマイズすらできません。そもそもこれをアプリと呼ぶのは正しくありません。細かい操作や振る舞いが制御できないのですから、根本的に違うなにかです。そして今後、(アプリとして)より多くのことができるように機能が追加され続けるとしたら、それはほとんど拷問に近い学習を意味するでしょう。また、将来性といったところで、それはアドビのロードマップに依存しすぎます。不具合があってもそれがいつ解消されるかわからない状況はワークフローを常に危うくします。アドビでは、かつていくつかのアーキテクチャが何の催告もなく突然打ち捨てられた過去もありました。(電子出版のワークフローが整っていない)今の段階で多様性はよい兆候ではありません。InDesignには組版ソフトとしてやるべきことがまだ山ほどあるんじゃないでしょうか。

*1:拙書、EPUB版『InDesign者のための正規表現入門』はDreamweaverとSigilのみで作成しました。