中央大学SF研究会:SFゼミ in hatena

2005-06-06 じゃ、小説で。 by江戸むらさき

では、書かせていただきましょうか。

女王の百年密室

女王の百年密室

作品の簡単な紹介 23:47

100年後の未来世界、ジャーナリストのサエバ・ミチルと、その相棒ウォーカロン(Walk Alone、つまり自立ロボット)のロイディは謎の老人マイカ・ジュクの導きでルナティック・シティにたどり着く。そこは女王デボウ・スホによって統治される不思議な国。そこでは食料にもエネルギーにも不自由せず、人々は日々幸せに暮らしている。生命活動の停止した人を冷凍装置に入れることで死を『永い眠り』と称し『死』に対する恐怖すら克服した世界。

だが、そこで殺人事件が起きる。王子が密室で明らかに他殺としか思えない状況で殺された。しかし人々はそれを殺人事件とは認識しない。不慮の事故による『永い眠り』として認識したのだ。外部の人間であるからこそ『死』を理解し恐怖するサエバ・ミチルは、過去に自分を襲った事件の真相に近づくため、その事件の謎を追う。

SFっぽいとこ 23:47

『永い眠り』につかせるための冷凍睡眠装置は、凍らせるだけで復活させる方法はまだない。それは遠い未来に人間を蘇らせる技術が出来た頃に目覚めさせてもらおうという、それだけの装置。楽園に旅立つと信じて、ルナティック・シティの住人達は『永い眠り』につくのである。そこには『死』に対する恐怖は一切存在しない。SF的なアイテムを使ってこの作品で描かれるのは『死とは何か』『殺人とは何か』という哲学的な命題。

ミチルとロイディの離れられない関係などもSFっぽいね。ネタバレになるから詳しくは書かないけれど。

作者について 23:47

この本の作者の森博嗣は「すべてがFになる」等のミステリ作品を書いている人で、この人の作品はよく理系ミステリィだといわれる。整然としたトリックや、難解な数式、冷たい文章、なんの躊躇いもなく使われる専門用語。

だが、この人の作品の真骨頂は短編集に収録されている諸作品や、「スカイ・クロラ」、この「女王の百年密室」のような詩的な世界・文章だと思う。もともと萩尾望都などに影響され少女マンガを描き、あの世界にはまり込んだ人だからこそこんな文章が書けるのだろうなと思う。

そういえばこの人、昔中京地方で大規模な同人誌即売会の主催もやってた人なんだよね。スゲエ。今は大学の教授だそうな。