『LOOPER』 ライアン・ジョンソン監督

2074年には非合法ではあるがタイムマシンが犯罪組織に利用され、過去に人を送ることで殺人を行っていた…というお話。まぁ時間移動ものということですが、時間軸は一つしかない(？)タイプの設定でした。つまりは過去が変われば未来は即座に書き換えられる。

30年後の主人公は自分の愛する妻を救うがために、過去へ行きます。しかし、彼が目指しているのは自分の理想の未来。つまりは彼女を救い、そして自分も救われる未来を望んでいます。そして過去の自分に言われる。「その女を教えてくれ、そいつ以外の女と一緒になるよ」基本的には彼の言うことが正しい。何かの不幸から逃れようと思ったら、その因果の中心にある自分から遠ざけることこそが確率的に一番危険を回避しやすい。自分のエゴを通すってことは一番難しい。それこそ、未来を変えることは世界を変えることで簡単であるはずがない。すべての可能性から逃げ続けることなんてほぼ不可能。もちろん、倫理的にもやってはいけないことでもあります。また、その困難さは数々の主人公たちが通ってきた道です。
　
バタフライエフェクトでの選択は現在の主人公が言ったことでしたが、この作品の少し面白いところは、結論は全く同じながら、より不幸な結末であるところです笑。原因と結果がそこにあるなら、原因を断つだけです。ただ、まぁタイムマシンの設定がかなりあやふやというか、かなり矛盾を抱えた設定なので、ちょっとアレなんですけどね。

地味に超能力者が存在するところとか、その頂点にあたる子供の将来についてとか細かい物語は結構好きでした。というかこの子供の目つきが半端なかったです。わずか10歳程度にして、スターウォーズのアナキン・スカイウォーカーばりのダークサイドへの落ちっぷりでした。母親を殺されたトラウマを持った能力者が世界を憎むというのは非常に強いドラマを持っているので、ちょっとそんな結末も悪くないかなと思いました。