『きみがぼくを見つけた日』ロベルト・シュベンケ監督
タイムトラベラーの妻というのが原題で、タイトルがほぼ全てと言ってもいいでしょう。
全体としては悪くなさそうな脚本なんですが、映画全体としての完成度っていう意味ではあれ?と思っていましたが、原作小説がある映画ということで納得しました。なんか描写不足な感じがちょっとあったんですよね、長めの小説を駆け足気味に展開した結果の不自然さが少し残念でした。
でもこのタイムトラベラーのお話って好きなんだなーと改めて思います。一番好きなのはアバウト・タイムですが、バタフライエフェクトも傑作ですし。その中では一番普通なところに落ち着くのが、この作品です。タイムトラベラーらしさを生かしながら、完全なハッピーエンドとも言えない、けどバッドエンドでもないそんなエンディングでした。
『犬猿』 吉田恵輔監督
見た目も性格も正反対な兄弟の話。
男兄弟の方は真面目に堅実に生きている弟と、リスクをとって勝負をしたいというヤンチャな兄、女兄弟は美人でチヤホヤされて育った妹と、勉強はそこそこちゃんと出来て、家の会社を継いだけど、太って容姿に自信がない姉。
この兄弟たちの愛憎劇で、お互いに嫉妬する部分があったり、補間関係にあるような兄弟なので、嫌いだけど、それだけどっていう感情は残っていたりという話ですが、まだこの兄弟には子供時代の思い出とか、想う感情が残っていたりします。でも長年の蓄積や性格は簡単には変わらないし、変えられない、簡単に仲の良い兄弟になんて映画のクライマックスのようなイベントがあっても、そうは戻らない。
兄弟って血の繋がりって難しい関係だよなーと想う映画でした。
『沈まぬ太陽』 若松節朗監督
JALで起きた航空機事故と実在の人物をベースにした小説、沈まぬ太陽が原作のドラマです。
WOWOWで放送されたドラマということもあって、20話という長編で丁寧に主人公の会社人生を描いていて非常に面白かったです。第一部と第二部ではだいぶトーンが変わるドラマになっていますが、第二部では相手側の行為が犯罪まで発展する上、人物描写も悪役然としていて、単なる勧善懲悪もののドラマになっていてデフォルメされたように感じました。しかしながら、放漫経営や汚職、官僚との癒着等から、最終的には政治家が絡み、複数の陣営の戦いが始まるところで終わってしまいましたが、そこからの話も見たかったなーと思いつつ、難しそうですね。
ある程度のわかりやすさと物語性を考えると、この辺が落とし所なのかもしれません。
『コードギアス 復活のルルーシュ』 谷口悟朗監督
コードギアスシリーズの最新作かつ、総集編劇場三部作の続編になる復活のルルーシュが今作品です。
コードギアスってタイトルの付け方からも副題で反逆のルルーシュってあるように、シリーズ化も念頭においた作品だったと思いますが、他のアニメ企画は亡国のアキトくらいしかありません。亡国のアキトはCGによるナイトメアフレームの描写が素晴らしく、ドローン含め多数の新兵器が登場したりとロボットアニメとして面白かったです。またEUを舞台に反逆のルルーシュでは描かれなかった外側から見たブリタニア帝国が分かったりと、良かったです。
振り返っても反逆のルルーシュはルルーシュの物語として完結していました。4クールの尺とはいえ、恐ろしく展開の早いアニメでそこが良さでもありましたが、C.Cとの話は少々消化不良ではありました。それに決着をつける話として、復活のルルーシュがあるように思います。とはいえファンサービスの要素が強く、これで改めて完結したんだなと感慨深いですね。
前振りの総集編劇場版ではシャーリーが死ぬ設定を変えて、今回登場させていますが、出番はほとんどありませんでした。ルルーシュとシャーリーの話ってどうやっても主軸にしにくいのはわかりますど、もうちょっと二人の話をして欲しかったなぁと個人的には思います。
『チョコレートドーナツ』 トラヴィス・ファイン監督
1979年にゲイのカップルが親に育児放棄されたダウン症の子供を養子にしようとして...というお話。
実際にブルックリンのゲイのカップルが障害児を育てたという実話が元になっているようです。映画ではそこから養子にとって育てようとしたらどうなるのか?を非常にリアルにそしてあの時代における差別を描いていきます。親権の問題は別に詳しいわけでもないので、何も語れませんけど、法律上優先される親権とそれが幸せになるのかはイコールでもないし、まして裁判でそれを明らかにするのは非常に難しいと思います。今回の映画では非常に意識的な差別が感じられる登場人物の妨害もありましたが、たとえそういった妨害がなかった最初の裁判でもゲイに対する偏見が拭えない判決が下ります。映画は最後には、ハッピーエンドにはならず、その子は施設を抜け出して放浪後に死んでしまうという末路でした。
フィクションではありますけど、起こる出来事はリアルで、マイノリティへの世界の不寛容さ、理不尽さが本当に切実に感じられる内容でした。