日本の所得分配の現状 (1997年時点の紹介記事)

NTT労組機関誌『あけぼの』1997年12月号

<経済・産業> 日本の所得分配の現状

地球規模の競争激化と経済構造の変化の中で、いかにして雇用の量と質を確保するかが、この間OECDや先進国首脳会議の場などでの経済政策論議の焦点のひとつとなってきた。雇用の量を確保するための政策としては、労働市場の柔軟化施策がOECDの「雇用戦略」としてまとめられ、各国の労働市場改革の大きな流れとなりつつある。
しかし、こうした動きの中で、雇用の質の問題、とりわけ所得分配の悪化を懸念する声も大きくなった。現に、アメリカやイギリスなどでの所得の不平等化の進展は、深刻な社会問題にまで発展しつつある。このような背景もあって、近年欧米諸国では、所得分配の実情とその要因に対する関心が大きな高まりをみせている。
OECDの「エンプロイメント・アウトルック」は所得分配の国際比較を毎年のようにテーマにとりあげ、またルクセンブルクには各国の家計所得データを国際比較するための大規模なデータベース(ルクセンブルク所得調査)が設立されるなど、所得分配研究は国際的な盛り上がりを見せている。
ところが、このところ日本における所得分配研究は、あまり盛況とはいえない状況が続いてきた。ありあまる統計情報を抱える統計大国でありながら、上記のルクセンブルク所得調査プロジェクトには日本は参加していないし、一般に入手しうる所得分配関係の文献や資料は、欧米に比べると格段に少なかった。
そうした中で、最近発表された経済企画庁経済研究所の『日本の所得格差―国際比較の視点から』と題する報告書は、ルクセンブルク所得調査と日本の「全国消費実態調査」の個票を用いた、久方振りの大規模な実態分析の報告書として大いに注目される。

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