shaka2005-12-15

昨日はH氏と久々にお会いして4時間たっぷりと話し込む。美味いものも鱈腹食べれて大満足。いやはや大変に楽しい時間であった。またお付き合いくださいませ。
というわけで昨日はトヨタカップを見ていないわけだが、ニュースで見る限りサンパウロアルイテハドの試合は思ったよりも好試合で見所が多かったようだ。やはりカロンは凄いなあ。まあ結果は一応順当にサンパウロが勝ちました。というわけで本日のリヴァプール対サプリサを楽しみにしよう。

『著者略歴』ジョン・コラピント(ISBN:4151759018)

北上次郎スティーブン・キングという当代きっての誉め上手(?)の帯だっただけにやや警戒して読んだ一冊。しかしそれは杞憂。これはなかなかウェルメイドな一冊でした。どうでもいいことだけど、単行本と文庫版では表紙の写真は一見同じように見えるのにTシャツの色だけが違う。なぜだ。
作家を目指してニューヨークへとやってきたキャルは、ロースクールに通うスチュワートとルームシェアして暮らしている。
自作のアイデアのため日々怠慢かつ色事ばかりの日々を送るキャル。反対にスチュワートはロースクールと家の往復でまったく面白みに欠ける生活を送っている。そんなスチュワートにとっての楽しみには毎週の報告会と称してキャルの奔放な生活を聞くこと。
やがて二年近い月日が経ち、キャルは漸く小説を書こうとするが、一行たりとも書けない。悩むキャルにスチュワートは「読んで欲しい」とある原稿を手渡す。それはなんと小説。しかもその出来は素晴らしいものであった。打ちひしがれるキャルはスチュワートの部屋から他の原稿を盗み読む。驚いたことにそれはキャルがこれまで報告会で話した彼の生活をそのまま小説にしたものだった。
で、自分をモデルに、というか自分が小説のアイデアにしようと思っていた題材を見事に小説化されて憤っていたキャルは、スチュワートに一言いってやろうと思うのですが、スチュワートはよりにもよってその日に事故で死んでしまいます。魔が差したキャルはその小説を自分の作品としてエージェントに送ってしまう。すると、その作品が莫大な富を生み、一躍キャルは時の人に。
というのが前段。一見順風満帆に見えたキャルの人生ですが、少しずつスチュワートの影に脅かされて行き、そこがサスペンス調に描かれていきます。とはいえ、サスペンスというよりもどこかドタバタめいた雰囲気もあって、心拍数が上がるドキドキというよりは、ニヤニヤしながらページを捲るといった感じ。
盗作の事実を覆い隠そうとするキャルですが、彼は決してそこで思い切った行動に出ません。すんでのところで度胸がなく、常に中途半端な行動をしてしまいます。そこが妙に親近感が湧く。ダメ人間の哀愁が漂ってきて、その憎めなさが本作の空気を作っていて、必要以上にドキドキもしなければ、嫌な思いに駆られずに読み進んでしまう。キャルにとっては一大事であることでも決して大きなイベントにはならず、それでもその間抜けともとれる彼の行動に惹きつけられ一気に読んでしまいます。
全てが表沙汰になった時、その後に待っているオチがまた非常にウェルメイドなブラックユーモアとなっていて読後感が大変いい。「もう小説の時代は終わった。これからは回顧録だ!」と声高に叫ぶエージェントの姿を想像すると思わず苦笑してしまう。
サスペンスとか、解説で北上次郎が比較に挙げているような『太陽がいっぱい』とか『シンプル・プラン』のような作品を想像して期待するとやや肩透かしにあうかも。単純に「ひとつの嘘をついた男が、その嘘を隠し通すためにどんどん嘘をつかねばならなくなった」ブラックコメディだと思って読んだほうが楽しめるかと。