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英文学をゼロから学ぶ

2018-07-16

イギリス文学史I(第7回)『ヴェニスの商人』

シェイクスピアについて

ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare, 1564-1616)は、英文学史上、唯一無二の存在だと言えると思います。

英文学で最も偉大な作家は誰ですか?」と尋ねれば、おそらく、ほとんどの人が「シェイクスピア」と答えるのではないでしょうか。

日本文学には、シェイクスピアに匹敵するような文学者はいません。

夏目漱石は、間違いなく日本の文豪ですが、「唯一無二」とまでは言えないでしょう。

源氏物語』だって、数ある古典の中の一つに過ぎません。

シェイクスピアは、作品中で多数の語彙を新たに生み出し、英語そのものを変革しました。

代表作は『ハムレット』でしょうが、他にも、『ロミオとジュリエット』や『ヴェニスの商人』など、誰でも知っているような名作がたくさんあります。

作品名だけではなく、「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」「おお、ロミオロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」「ブルータスよ、おまえもか」と言ったセリフまでもが、多くの人に知られているではありませんか。

僕が初めてシェイクスピアに興味を持ったのは、小学6年生の時、黒澤明監督の『乱』を観て、原作がシェイクスピアの『リア王』だと聞いたからです。

中学生の時の文化祭では、先輩方のクラスが『ヴェニスの商人』を上演しました。

僕は高校2年生の時、やはり文化祭で『リア王』を演じましたが、同じ時、別のクラスは『ロミオとジュリエット』を出し物にしていました。

400年も昔にイギリスで書かれた戯曲が、遠く離れた日本の中高生に現在でも演じられているとは、スゴイことです。

そこで、この「イギリス文学史」では、一作家につき一作品を紹介することを原則にしていますが、シェイクスピアだけは例外的に2作品を取り上げます。

喜劇の代表作である『ヴェニスの商人』と、悲劇の代表と言える『ハムレット』です。

この2作は、高校世界史の教科書(『詳説世界史』)の「ルネサンス期の文芸と美術」という表にも載っています。

シェイクスピア本人については、「イギリスで16世紀末から17世紀初めに活躍したシェークスピア戯曲をはじめとして、すぐれた文芸作品は、それぞれの国の言語を発達させるのに貢献した」と書かれていました。

それでは、シェイクスピアを生み出した時代背景を見て行きましょう。

まずは、『イギリス文学史入門』(研究社)から引用します。

イギリスルネッサンスの栄光の頂点は、シェイクスピアの演劇にあった。そしてわれわれはその演劇が、ほとんど無から出発して、あの目もくらむ高みまで駆け登るのに、三、四十年しかかからなかったという、驚くべき事実を知らされる。エリザベス朝という時代は、まさにそんな奇蹟を可能にした、活力の煮えたぎるような時代であったのだ。

続いて、『はじめて学ぶイギリス文学史』(ミネルヴァ書房)から引きます。

人文主義者たちによる古典の復活の影響は演劇にも及び、ギリシアローマの喜劇、悲劇、またはそれを模倣したものが演じられるようになった。古典劇は、本来のイギリスの劇には欠けていた品格と形式美をそなえ、知識層には支援されたが、所作に乏しく、刺激的な筋や力強い身振りを好む一般大衆には受けなかった。

やがて、五幕形式、時、場所、筋の「三一致の法則(three unities)」などの古典劇の原理をよく消化し、民間の娯楽をも充分考慮した一群の劇作家があらわれた。彼らはオックスフォードやケンブリッジ大学で教育を受けた人が多いことから、大学出の才人たち(University Wits)と呼ばれている。

この頃になると、旅まわりの役者のほかに、女王や貴族をパトロンとする劇団の職業的俳優もあらわれ、劇場も創設され、商業演劇が確立した。この時流に乗るかのように頭角をあらわしたのが、シェイクスピアである。彼は、史劇、喜劇、悲劇、の各分野で成功をおさめ、万人の心を持つ(myriad-minded)と評されるほど、多様な登場人物を見事に浮き彫りにした。

ところが、シェイクスピアは、イギリス文学史上でこれほど重要な存在でありながら、伝記的なことはほとんど分かっていません。

僕の手元にある3冊のイギリス文学史の教科書も、経歴についてはほんの数行で、後は作品の紹介でページを埋めています。

一番記述が多い『イギリス文学の歴史』(開拓社)ですら、次のようなものです。

シェイクスピアの伝記を示す確実な資料は、いたって少ない。このことは、わずか400年ほど前の人物であり、在世中すでに名の高かった作家であったことを思えば、ふしぎなことである。

シェイクスピアは、1564年4月23日イングランド中部の小さな町ストラットフォード・アポン・エイヴォン(Stratford-upon-Avon)に生まれた。

町のグラマー・スクールに通ったものと考えられる。彼の受けた学校教育は、それだけで、大学へは行かなかった。

1582年、18歳で、8歳年上のアン・ハサウェイ(Anne Hathaway)と結婚。20歳で3児の父となった。

1585年から7年間の彼の消息は不明であるが、おそらく、この間に、ロンドンに出て、劇団関係の仕事を始めたのであろう。

1592年(28歳)、劇作家ロバート・グリーン(Robert Greene, 1582-92)が、シェイクスピアを「われわれの羽毛で美しく身を飾り立てた成り上り者のカラス」とけなした批評が現われた。このころ、シェイクスピアの『ヘンリー六世』が、大好評を博していた。グリーンの批評は、大学出でない田舎者のシェイクスピアの人気に対するねたみの気持ちから出たものと思われるが、それは、シェイクスピアが、そのころすでに、俳優としても、劇作家としても、相当活躍していたことを実証しているものと考えられている。

劇作家として、約20年。37編の劇を書き、劇作家としてはもちろん、劇場経営者としても成功をおさめ、大きな産を成した。

1611年(47歳)のころ、郷里ストラトフォードに隠退、1616年4月23日、52歳で死ぬまで、裕福な生活を送った。

わずかこれだけの文章の中に、何と推測が多いことでしょうか。

さて、シェイクスピアの作品の特徴については、『はじめて学ぶイギリス文学史』の、次の記述が簡潔にまとめられていると思います。

シェイクスピア劇は、史劇からロマンス劇にいたるまで多様である。構成には、複数の筋があり、悲劇的局面と喜劇的局面、日常性と非日常性など相反するものが巧みに混入され、融合されている。また登場人物は、あらゆる階層に及び、その性格描写には追随を許さぬものがある。語彙の広いこと、複数の意味をひきだす掛け言葉や隠喩、暗喩が豊富なことでも知られている。

ヴェニスの商人』について

それでは、シェイクスピアの喜劇の代表作『ヴェニスの商人』(The Merchant of Venice, 1596-7)について解説された箇所を、『イギリス文学の歴史』から引いてみましょう。

シェイクスピアの創作年代は通常、第1期(1590-95)の「修業時代」、第2期(1595-1600)の「喜劇時代」、第3期(1600-08)の「悲劇時代」、第4期(1608-11)の「ロマンス劇時代」の四つに分けられますが、『ヴェニスの商人』は「喜劇時代」に書かれた作品です。

ヴェニスの商人』は、人肉裁判のシーンだけを切り取って、「悲劇」として上演されることも多いため、意外に思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、シェイクスピアはあくまで、この作品を喜劇として書いています。

大衆向きに、巧みに構成された傑作喜劇。

ヴェニスの商人アントニオは、必要に迫られ、ユダヤ人シャイロックに借金を申し入れる。シャイロックは、日ごろ、ユダヤ人を虐待しているキリスト教徒に復讐する好機と思い、申し入れを受ける。ただし、担保は人肉1ポンド。アントニオは返済不能となり、窮地に陥る。法廷におけるポーシャの機知ある判決で、形勢逆転、シャイロックの計画は挫折する。

この劇はポーシャとシャイロックの二人の人物によって支えられている。

ポーシャは、シェイクスピアの描いた女性のうちでも、最も多くの人々に愛されて来た一人である。彼女は、女性らしい謙虚さを持つとともに、知的な面を持つ女性として描かれている。

シャイロックは、シェイクスピアが創造した人物のうちの傑作の一人。ユダヤ人は、古来、典型的な悪玉のレッテルをはられて来た。しかし、シェイクスピアは、シャイロックを単なる悪玉とせず血も肉も備えた一個の人間として描いている。

なお、ユダヤ人が何故これほど嫌われていたかについては、『イギリス文学の歴史』の次の記述が参考になります。

元来、キリスト教では、同国人に利息を取って、金を貸すことは禁じられていた。そこで、金貸し業は、キリスト教徒でないユダヤ人の仕事になった。キリスト教徒にとって、このいまわしい職業に従事するユダヤ人は、必然的に嫌われものであった。(参考:「同国人に利息を取って貸してならない。外国人には利息を取ってもよい」(旧約聖書:『申命記』、23:19-20)

以上に加えて、文庫版の「解説」などに書かれている事柄を使って、若干補足しましょう。

ヴェニスの商人』の初演は、学者によって諸説ありますが、大体1596〜98年頃とされています(最初に出版されたのは1600年)。

日本で初めて上演されたシェイクスピア劇であり、また、上演回数も『ハムレット』をしのいで、最も多いのだそうです。

ストーリーはあまりにも有名なので省きますが、本作品にも、他のシェイクスピアの作品同様、元ネタがありますね。

この作品は大きく次の四つの筋から成っています。

1.箱選び

2.指輪の喪失

3.人肉裁判

4.ジェシカの駆け落ち

このうち、2と3は中世イタリアの物語集『イル・ペコローネ』(阿呆)の中にあるそうです。

また、『イル・ペコローネ』では、求婚する男性に対しての難題も出てくるのですが、これが「夜伽」なので、それでは芝居にならないと考えたシェイクスピアが、お題を「箱選び」に変えたようですね。

さらに、1の「箱選び」は、イタリアの物語集『ジェスタ・ロマノーラム』(ローマ人行状記)の中に出てくるそうです。

ユダヤ人の登場と、その扱いに関しては、シェイクスピアと同時代に活躍した劇作家クリストファー・マーローの代表的悲劇『マルタ島のユダヤ人』の影響を受けています。

シェイクスピアは、これらの題材を用いながら、登場人物の性格描写を深め、新しい意味を作品に付け加えて、自分の色に染め上げたと言えるでしょう。

次に、テキストについては、『ハムレット』ほどの混乱はないようです。

この作品には、どちらも1600年刊行とされている、ヘイズ四折本(Q1)とジャガード四折本(Q2)という二つの四折本がありますが、ジャガード版の奥付は捏造で、実際には1619年発行の海賊版なのだということが判りました。

そして、1623年発行の第一・二折本(F1)はヘイズ四折本を基にしており、これらの三者に、さほどの違いはないとのこと。

つまり、ヘイズ四折本が一番の善本とされているのですね。

テキストについて

一口にテキストと言っても、様々な版が出ていますが、僕が選んだのは下のペンギン版です。

The Merchant of Venice

The Merchant of Venice

初版は2015年。

注釈はW.Moelwyn Merchant氏。

一般的には、演劇関係者はペンギン版、大学関係者はアーデン版やオックスフォード版を選ぶと言われています。

確かに、僕が学生の時の「シェイクスピア研究」という講義でも、教科書はオックスフォード版でした。

では今回、僕はなぜペンギン版を選んだのでしょうか。

それは、この版が大型書店洋書コーナーなどで普通に売られていて、最も入手しやすいからです。

近所の調布市立中央図書館に置いてあるのも、このペンギン版。

価格も手頃です。

学術関係では、どうしてペンギン版が使われないのかはよく分かりません。

おそらく、他の版では注釈がページの下半分にあるのに対し、ペンギン版では巻末にまとめらているため、本文と対照しづらいからではないかと想像しています。

逆に、役者の場合は、細かな注など不要だから、ペンギン版でいいのでしょうか。

僕は別に学術的な目的で『ヴェニスの商人』を読んでいる訳ではないので、この版で問題ないのです。

本書の注釈は全部で40ページ以上ありますが、概ね固有名詞の解説が中心で、語釈と呼べるようなものはあまりありません。

従って、普通の日本人が本書の注だけを頼りにして原文を読むことは、ほぼ不可能でしょう。

注の英語のレベルは、専門的な語も出て来ますが、辞書を引けば理解できる程度です。

今回は省略しますが、シェイクスピアの場合は、日本語の注釈書が充実しており、また、後述のように、翻訳も多数出版されているので、原文読解に挑戦するには、それらを参考にするのが良いと思います。

翻訳について

現在、日本では、廉価な文庫や新書版だけでも、6種類もの翻訳版が入手可能です。

それらを以下に紹介します。

岩波文庫

ヴェニスの商人 (岩波文庫)

ヴェニスの商人 (岩波文庫)

初版は、何と1939年。

現在流通しているのは、1973年に発行された改訳版です。

翻訳は英文学の大家・中野好夫氏。

古い版だけあって、活字は小さく、かすれて読みにくいですが、そんなことは全く気にならないほど、味のある言葉を駆使した名訳です。

確かに、今では使わないような言い回しが多用されているものの、それが何とも言えない情緒を醸し出しています。

初版刊行時は、参考になる先行の翻訳は坪内逍遥のものしかなかったそうですが、それでこの完成度はスゴイです。

改訳の際にも、それほど大幅には手を加えられていないそうなので、初版の風合いはそのまま残っているのでしょう。

中野氏は、巻頭の「改版にあたって」の中で、「学術的翻訳でも、上演用台本のつもりでもない」と述べています。

日本語としての自然さを意識しつつ、原文と併読する読者のことも考えて、極端な意訳は避けたそうです。

中野氏は、「独自の翻訳理論を持たない」などと謙遜していますが、翻訳に対して、達観のような境地に達していると思われます。

例えば、原文の「詩」を日本語に移すことは不可能だと認めながらも、散文との区別を付けるために、詩の部分を「わかち書き」にしました。

また、本文の下に行数が表示されています。

注解も、なかなか充実していますね。

巻末の「解説」は、ほとんど初版のままだそうですが、作品を理解するために必要な事項を簡潔にまとめてあります。

翻訳の底本はグローブ版。

新潮文庫

ヴェニスの商人 (新潮文庫)

ヴェニスの商人 (新潮文庫)

初版は1967年。

翻訳は劇作・演出でも高名な福田恒存氏。

福田氏の訳文は誠に格調高いものです。

僕が20年以上前、浪人時代に読んだのも、この福田氏の翻訳でした。

今回、久し振りに再読して、改めて「よく整理された作品だな」と感じました。

ちなみに、僕が以前観に行った、劇団四季の『ヴェニスの商人』も、福田氏の訳です。

本文中に注釈はありませんが、巻末の「解題」が充実しています。

また、英文学者の中村保男氏による「解説」、「シェイクスピア劇の執筆年代」、「年譜」もありますね。

福田氏が翻訳の原本として用いたのは、新シェイクスピア全集。

白水Uブックス

初版は1983年。

判型は新書サイズ。

翻訳は、日本で二人しかいない(もう一人は坪内逍遥シェイクスピア全訳という偉業を成し遂げた小田島雄志氏(東京大学名誉教授)。

訳文は、とてもリズミカルで、こなれた日本語なので極めて読み易いです。

韻文の形式に合わせて行分けがされています。

注は全くありません。

解説は英文学者の渡辺喜之氏。

訳者自身による解説は一切ないので、翻訳の底本などは分かりません。

ちくま文庫

初版は2002年。

翻訳は、目下シェイクスピア作品を精力的に訳し続けている松岡和子氏(翻訳家・演劇評論家)。

この調子で行くと、坪内逍遥小田島雄志に続き、日本で3人目のシェイクスピア全訳者になるかも知れません。

松岡氏の訳文は、素直な文体で、非常に読み易いです。

本文は、他の多くの翻訳と同じように、韻文の箇所が行分けされています。

注釈も豊富で、本文の下にあるため参照しやすく、また、原文を掲載してくれているのが、ありがたいですね。

「訳者あとがき」では、松岡氏が訳出に際して、代名詞の訳し分けに気を遣ったという記述が大変興味深かったです。

現在の英語では、二人称は全てyou一語に統一されていますが、シェイクスピアの時代には、まだ区別が存在していました。

目下や親しい相手に対して使う親称のthou(ドイツ語のduに当たる)と、目上やそれほど親しくない相手に対して用いる敬称のyou(ドイツ語のSieに当たる)です。

これらの代名詞の使い方に注目することで、登場人物たちの人間関係が浮き彫りになります。

この部分は一読の価値があるでしょう。

「アントーニオとポーシャのメランコリー」という題の解説は中野春夫氏(学習院大学教授)。

巻末の「戦後日本の主な『ヴェニスの商人』上演年表」は、資料的価値が高いです。

錚々たる役者の名前が散見されます。

本書の翻訳の底本はアーデン版。

角川文庫

新訳 ヴェニスの商人 (角川文庫)

新訳 ヴェニスの商人 (角川文庫)

初版は2005年。

翻訳は河合祥一郎氏(東京大学大学院教授)。

河合氏によると、本書の主な特徴は次の二つです。

一つ目は、上演を目的として、原文の持つ面白さや心地良さを日本語で表現するように努めたこと。

シェイクスピアの原文には駄洒落がたくさん出てきますが、それを何とか日本語に移し替えようと苦心された様子が伺えます。

二つ目は、原典(翻訳の底本とした、1600年出版の初版本である第一・四折本)に忠実に訳したこと。

原典通り、本文中に幕場割り(第○幕第○場という区分け)をなくし、人物名の指示についても原典を尊重したそうです。

これは、ちょっと裏目に出ていて、同じ登場人物を違う呼び名で指示している箇所があり、少々読み難くなっています(もちろん、注で解説されてはいますが)。

しかしながら、訳文は分かり易く、本文中の注釈も充実していますね。

「訳者あとがき」では、本作品について簡潔に解説されています。

河合氏は、シャイロックを、単なる悪役か悲劇の主人公かといった二元論で考えるのではなく、この作品が放つ多様な問題提起を今日的に捉えようという立場です。

この部分を読むだけでも、本作を理解する上で、大いに参考になるでしょう。

光文社古典新訳文庫

初版は2007年。

翻訳は安西徹雄氏(上智大学名誉教授)。

本書の訳文は、読んでいると、一人ひとりの役者の声が聞こえて来そうな名訳です。

それもそのはず。

本書は、1990年に安西氏自身が訳・演出した舞台の上演台本を基に加筆訂正した完訳版だからです。

シェイクスピアの作品は、読むためではなく、実際に舞台で上演するために書かれました。

ですから、舞台の洗礼を受けている本書の訳が「生きて」いるのは当然です。

翻訳のテキストは新オックスフォード版。

本文中の注釈は最小限なので、流れを追い易いです。

巻末の「解題」は、特に同時代の劇作家クリストファー・マーロウの『マルタ島のユダヤ人』と本作を詳細に比較して論じています。

また、「シェイクスピア略年表」も付いていますね。

映画化作品について

ヴェニスの商人』については、現在見ることの出来る唯一の映画が下のもので、廉価版のDVDも出ています。

ヴェニスの商人 [DVD]

ヴェニスの商人 [DVD]

2004年のアメリカイタリアルクセンブルクイギリス合作映画。

この作品はシェイクスピアの喜劇『ヴェニスの商人』の「初映画化」なのだそうです。

人気作なのに意外ですね。

監督はマイケル・ラドフォード(『イル・ポスティーノ』)。

主要なキャストは、いずれもシェイクスピア作品と関わりの深い人たちです。

シャイロック役は我らがアル・パチーノ

彼は、『リチャード三世』を舞台化する過程を描いた異色のドキュメンタリー『リチャードを探して』を監督・主演しています。

また、アントーニオ役のジェレミー・アイアンズはロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身。

バッサーニオ役のジョセフ・ファインズは『恋におちたシェイクスピア』の主演ですし、ポーシャ役のリン・コリンズも、舞台でオフィーリアやジュリエットを演じたことがあるそうです。

では、このような錚々たるキャストを揃えて、肝心の映画の出来映えはどうでしょうか。

本作の事実上の主役はシャイロック役のアル・パチーノです。

言わずと知れた現代映画界の名優中の名優であり、かつ僕の大好きな役者であります。

この映画の中でも、他の俳優を押しのけて、圧倒的な存在感です。

有名な「ユダヤ人には目がないのか」のセリフなど、この迫力は彼でなければ出せないでしょう。

逆に言うと、他の役者は、かなり印象が薄いです。

その点では、これは「失敗作」だと言えます。

まあ、通常の舞台でも、シャイロックを演じるのはベテランが多いので、どうしても他の役者と比べて存在感が強くなり過ぎてしまうのですが。

それにしても、いかに「憂鬱病」と言えども、喜劇なのに、最初から最後までずっと重苦しい表情しか見せなかったアントニオ。

コミカルさもなく、単なる軽薄でイヤな奴にしか見えないバッサーニオ。

そして、アントーニオとバッサーニオの関係が、どうにもホモっぽいのです。

(原作で「友情」のことをloveと表現しているので、このような解釈の仕方もあるようですが)。

おまけに、この娘のために世界中から命を掛けて男たちが押し寄せて来るとは到底思えないポーシャ(※失礼ながら、「全然美人じゃない」という意味です)。

男装しても、全く男に見えません(これは、現代におけるシェイクスピア喜劇全体の問題ですね)。

これは、どうしたことでしょう。

ところで、『ヴェニスの商人』は、シェイクスピアの作品中、『ロミオとジュリエット』と並んで学校演劇の定番ともなっています。

僕も、中学時代に、先輩方が文化祭で上演しているのを観ました。

学校演劇では通常、有名な「裁判のシーン」のみを切り取って上演されます。

そうすることで、「ユダヤ人差別がいかに理不尽か」という現代的なテーマを打ち出すのです。

教育現場にふさわしく、説教臭い演出になります。

ところが、シェイクスピアの時代には、ユダヤ人差別は理不尽なことでも何でもなく、むしろ「当然のこと」でした。

ハムレット』の中に次のようなフレーズがあります。

「this side of our known world」。

これは「キリスト教世界のこちら側」という意味です。

キリスト教徒にとって、異教徒であるユダヤ人は「あちら側の世界の人間」であり、しかもキリストを殺した不倶戴天の敵です。

当時のキリスト教徒は、憎きユダヤ人をコテンパンに懲らしめる芝居を観て溜飲を下げていました。

「ユダヤ人め、ざまあみろ!」という訳です。

僕は、もちろんユダヤ人差別を肯定しているのではありません。

シャイロックが受けた仕打ちは、あまりにもむごいものだし、彼を気の毒だと思います。

けれども、当時の状況を正しく知らないと、きちんと作品を理解することはできないのではないでしょうか。

福田恒存氏を始め、日本の著名なシェイクスピア学者にも、そのような立場の方が多いです。

シェイクスピア自身がユダヤ人差別をどう考えていたのかは、わかりません。

ただ、作品中のシャイロックのセリフを見る限りでは、極めて客観的に捉えていたのではないかと思われます。

だからこそ、時代を超えて生き残っているのでしょう。

本来、『ヴェニスの商人』は「喜劇」として書かれています。

難しいのは、それを現代において上演する場合です。

あくまで「当時はこうだった」ということで喜劇として上演するか、それとも学校演劇で行なわれているように人種差別を批判する悲劇にするか。

映画版『ヴェニスの商人』は、後者を選びました。

冒頭に、ユダヤ人に対する当時のヨーロッパ人たちの非道な差別を克明に語るナレーションが追加されています。

さらに、原作ではセリフでしか出て来ない、アントーニオがシャイロックに唾を吐きかけるシーンも、わざわざ映像化されているのです。

正に、昨今の偽善的なハリウッド映画のように、白人が過去の悪行を反省するポーズですね。

アル・パチーノの演技のおかげで、シャイロックの悲劇性は大きく浮かび上がっています。

一方で、本来主役であるはずのキリスト教徒たちは単なる「人権意識のないバカ」にしか見えません。

悲劇にしてしまったためか、最初から最後まで画面全体が妙に重く、暗いトーンです。

しかしながら、省略されている部分はあるものの、大筋は原作を忠実に再現しているため、喜劇的な場面が完全に整合性を欠いてしまっています。

しかも、全体としては、喜劇的なシーンの方が多いのです。

元来は「喜劇」なのですから、当たり前ですね。

彼らが喜劇として明るく振舞えば振舞うほど、ますます、その傾向に拍車が掛かります。

その結果、いったい「悲劇」なのか「喜劇」なのか、よくわからない代物に仕上がってしまいました。

僕は、中途半端に現代的なテーマを盛り込むくらいなら、いっそのことシェイクスピアの意図を尊重して、「喜劇」として作品を完成させた方が良かったのではないかと思います。

ただ、人種差別にうるさいハリウッドでは難しいかも知れませんね。

それは無理でも、喜劇を基調としつつ、シャイロックの悲劇性を浮かび上がらせるような演出も可能だったのではないでしょうか。

この映画の、ヴェネチアで撮影したという風景は非常に美しく、セットや衣装も豪華です(ベルモントの遠景がミニチュアにしか見えないのは御愛敬)。

音楽もエキゾチックで、とても耳に心地良く聞こえます。

それだけに、切り口さえもっと違ったものにしていればと、大いに悔やまれますね。

ヴェニスの商人』の映画化の難しさを示す、残念な例となってしまいました。

本作を、原作を読むための参考として御覧になる方は、以上の点を念頭に置いておかれた方が良いでしょう。

参考図書について

シェイクスピアについて書かれた本は余りにも多過ぎて、それらを読んでいると、肝心のシェイクスピア作品そのものを読む時間がなくなってしまうと言われるほどですので、省略します。

原文読解

それでは、『ヴェニスの商人』の冒頭部分を読んでみましょう。

下に「原文(※)」「日本語訳(安西徹雄・訳)(※※)」を記しました。

「原文」には、語注も付けてあります。

(※現行のテキストの英文は、全て現代綴りです。)

(※※刊本によって登場人物名に異同があるため、原文と日本語訳で一致しない箇所があります。)

WILLIAM SHAKESPEARE

Shakespeare, William(名)シェイクスピア(1564-1616/英国劇作家詩人

The Merchant of Venice

The Merchant of Venice 「ベニスの商人」(Shakespeare作の喜劇)

(1)

(原文)

(テキスト5ページ、1行目)

I.I

I(名)(ローマ数字の)I

(日本語訳)

1(一幕一場)

(2)

Enter Antonio, Salerio, and Solanio

enter(自)(Enterで)(演劇)登場する(脚本のト書きではしばしば3人称命令法で用いる/⇔exit) ・Enter Hamlet. ハムレット登場。

Antonio アントーニオー(Shakespeare, The Merchant of Veniceに登場する青年貿易商)

Salerio(名)サレリオ(Shakespeare, The Merchant of Venice中の、AntonioとBassanioの友人の一人)

Solario(名)ソラリオ

ヴェニス。街路。

アントニオ、サラリーノ、ソラーニオ、登場。

(3)

ANTONIO

In sooth, I know not why I am so sad.

in sooth 実際、真に(=truly)

know(他)(〜を)知る、知っている、(〜が)わか(ってい)る(+wh.)/(+that)

so(副)(程度を表わして)それ(これ)ほど、そんな(こんな)に、これくらい

sad(形)悲しそうな、ふさぎ込んだ、憂鬱(ゆううつ)な

アントニオ 実際、なぜだか分らない。どうしてこうも憂鬱なのか。

(4)

It wearies me, you say it wearies you;

But how I caught it, found it, or came by it,

What stuff 'tis made of, whereof it is born,

I am to learn;

And such a want-wit sadness makes of me

That I have much ado to know myself.

weary(他)(人を)退屈させる、あきさせる、うんざりさせる

say(他)(人に)(〜と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+that)

how(副)(疑問詞)(方法・手段を尋ねて)(to doまたは節を導いて)どうやって〜するか

catch(他)(病気に)感染する、かかる(=contract)

come by 〜 〜を手に入れる

what(形)(疑問形容詞)(間接疑問の節を導いて)何の、どんな

stuff(名)材料、原料、資料(=material)

'tis(古)it isの短縮形

make(他)(材料から)(ものを)作る、造る(of)(しばしば受身で用いる/ofは通例材料の形が製作物にとどまっている場合に用いる)

of(前)(材料を表わして)〜で(作った)、〜から(成る) ・make A of B AをBから作る

whereof(副)(古)(疑問詞として)何の、何について、だれの、何から

born(形)(人などが)生まれて(of)

be(助動)(be+to doで)(義務・命令を表わして)〜する義務がある、〜しなければならない

learn(他)(〜を)(聞いて)知る、聞く(+wh.)

such(形)(程度を表わして)(such 〜 thatで)非常に〜なので

wantwit(名)脳タリン、まぬけ

sadness(名)<sad(形)

make(他)(〜を)(〜に)する、変える ・make A of B BをAにする

of(前)(関係・関連を表わして)〜の点において、〜に関して、〜について

that(接)(副詞節を導いて)(such 〜 thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)〜なので、〜(する)ほど

have(他)(しばしば目的語に形容詞用法のto不定詞を伴って)((〜すべき(できる))用事・時間などを)もっている、与えられている

ado(名)(通例much 〜で用いて)骨折り、めんどう ・have much ado to do さんざん苦労して(やっと)〜する

myself(代)(再帰的に用いて)(一般動詞の目的語に用いて)私自身を(に)

いやになる。君たちだっていやだろう。なぜこんなものに取り憑かれてしまったのか。どこで出くわし、どうして捕まってしまったのか。その正体は何なのか、そもそも何が原因なのか、分らない。おかげですっかり腑抜けになって、自分が何者であるかさえ、見当もつかぬ有様だ。

(5)

SALARINO

Your mind is tossing on the ocean,

There where your argosies with portly sail,

Like signors and rich burghers on the flood,

Or as it were the pageants of the sea,

Do overpeer the petty traffickers

That curtsy to them, do them reverence,

As they fly by them with their woven wings.

your(代)あなた(たち)の、君(ら)の

toss(自)(上下に)揺れる、動揺する

where(副)(関係副詞)(制限的用法で)〜する、〜した(場所、場合など)(「場所」「場合」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)

argosy(名)(財貨を満載した、特にRagusa、Veniceの)大商船

with(前)(様態の副詞句を導いて)〜を示して、〜して

portly(形)(古)風采(ふうさい)の堂々とした、押し出しのよい

sail(名)(船の)帆

like(前)〜のような、〜に似た

signor(名)(イタリアの)貴族、紳士

burgher(名)市民、町民

flood(名)(古)海、川、湖

as it were(挿入句的に用いて)いわば、まるで

pageant(名)(時代衣装などをつけた壮麗な)行列、山車(だし)

do この“do”はPEでは不便で、強勢のない用法。今では詩、方言にだけ残っている。

overpeer(他)(古)見くだす、蔑む

petty(形)下級の、はしたの、劣った

trafficker(名)(悪徳)商人

that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(〜する(である))ところの/(主語として)

curtsy(自)(女性が)(人に)おじぎをする(to)

to(前)(行為・作用の対象を表わして)〜に対して、〜に

do(他)(〜に)(名誉・敬意・正しい評価などを)示す、施す、与える(+目+目) ・do a person honor 人に敬意を表する

reverence(名)敬意

as(接)(時を表わして)〜しながら

fly(自)(飛行機・弾丸・矢・雲などが)飛ぶ、飛ぶように走る(過ぎる)

by(前)(場所・位置を表わして)〜のそばに(で)、のかたわらに(の)、の手元に

with(前)(道具・手段を表わして)〜を用いて、〜で

their(代)彼ら(彼女ら)の

woven(動)weaveの過去分詞

weave(他)(〜を)織る、編む

サラリーノ そりゃきっと、心が大海原で波に揺られているからでしょう。あなたの船は威風堂々帆をふくらませ、さながら海上を闊歩する大貴族か大富豪、それとも海を練り歩く豪奢な山車とでもいうところか。蹴立てる大波に、まわりの小舟が腰をこごめてお辞儀するのを見くだしながら、大いなる翼を張って飛び過ぎてゆく。

(6)

SOLANIO

Believe me, sir, had I such venture forth,

The better part of my affections would

Be with my hopes abroad.

Solanio(名)ソラーニオ(Shakespeare, the Merchant of Veniceに登場する端役)

believe me(挿入的に用いて)本当に、確かに

sir(名)(男性への呼び掛け)あなた、先生、閣下、お客さん、だんな(見知らぬ人に、召し使いから主人に、生徒から先生に、店員から客に、目下から目上に、または議会で、議長に対する敬称/日本語ではこの語を訳さず文全体を丁重に訳せばよい場合が多い)

venture(名)冒険的事業、投機的企業、ベンチャー(特に事業で金銭上の危険をかけた行為にいう)

forth(副)(廃)戦場に、海上に

the better part of 〜 〜の大部分、の大半

my(代)私の

affection(名)感情

would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(現在または未来の事柄について帰結節で無意志の仮定を表わして)〜(する)だろう

hope(名)期待

abroad(副)国外へ(に)、海外へ(に)(=overseas/⇔at home)

ソラーニオ そう、そのとおり。私だって、あれだけの財産、危険を冒して海に出しているとなったら、気持ちはあらかた海の上、期待をかけた船と一緒に、波に揺られているに違いない。

(7)

I should be still

Plucking the grass to know where sits the wind,

Peering in maps for ports and piers and roads,

And every object that might make me fear

Misfortune to my ventures, out of doubt

Would make me sad.

should(助動)(可能性・期待を表わして)きっと〜だろう、〜のはずである

still(副)(古)常に、絶え間なく

pluck(他)(不要なものを)(〜から)(ぐいと)引き抜く、引っ張る

sit(自)(風が)(〜から)吹いてくる

peer(自)(副詞句を伴って)じっと見る、凝視する、熟視する

for(前)(獲得・追求・期待の対象を表わして)〜を得るために(の)、〜を(求めて)

port(名)港

pier(名)桟橋、埠頭(ふとう)

road(名)(しばしば複数形で)停泊地

object(名)(知覚できる)物、物体

might(助動)(仮定法過去)(条件節の内容を言外に含めた主節だけの文で)(現在の推量を表わして)〜するかもしれない

make(他)(強制的にも非強制的にも)(〜に)(〜)させる(+目+原形)

fear(他)(〜を)恐れる、怖がる

misfortune(名)(大きな)不幸、不安

to(前)(行為・作用の対象を表わして)〜に対して、〜に

out of(前)〜の範囲外に(⇔within)

would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(条件節の内容を言外に含め陳述を婉曲(えんきょく)にして)〜であろう、〜でしょう

make(他)(〜を)(〜に)する(+目+補)

草をむしっては抛り上げ、風の向きを調べては、四六時中、地図をのぞいて、港はどこだ、桟橋は、どこで停泊するんだと気をもむばかり。何を見ても、何を聞いても、積荷の財産のことが不安の種、憂鬱にならずにゃいられませんや。

(8)

SALERIO

My wind cooling my broth

Would blow me to an ague when I thought

What harm a wind too great might do at sea.

wind(名)(通例one's 〜)気息、呼吸

cool(他)(〜を)冷やす

broth(名)(だしに野菜などを加えた)薄いクリアスープ

blow(他)(通例副詞句を伴って)(〜を)吹き飛ばす

to(前)(限度・程度・結果などを表わして)〜に至るまで、〜するほどに

ague(名)悪寒(おかん)

when(接)〜ならば、〜とすると

think(他)(どうしようかなどと)よく考える、思いめぐらす(+wh.)

what(形)(疑問形容詞)何の、何という、どんな、いかほどの

harm(名)(精神的・肉体的・物質的な)害、傷害、危害(=injury)

too(副)(形容詞・副詞の前に置いて)〜すぎる

might(助動)(仮定法過去)(現在の仮定や仮定の結果を表わす節で)(現在の推量を表わして)〜するかもしれない(のだが)

do(他)(〜に)(利益・損害などを)与える、もたらす

at sea 海上に(で)

サラリーノ そうですとも。スープを冷まそうと息ひとつ吹きかけたって、ついゾクゾク身震いに取り憑かれましょう、もしこれが海の上で、もしこれが大嵐なら、どんな災難になるだろうなんて想像してね。

(9)

I should not see the sandy hour-glass run

But I should think of shallows and of flats,

And see my wealthy Andrew docked in sand,

Vailing her high-top lower than her ribs

To kiss her burial.

should(助動)(仮定法で)(可能性・期待を表わして)きっと〜だろう、〜のはずである

see(他)(〜を)、(〜が)見える(+目+原形)/(+目+過分)

sandy(形)砂の、砂質の

hourglass(名)(特に1時間用の)砂時計、水(水銀)時計、漏刻

run(自)(砂時計の砂が)こぼれる

but(接)(従位接続詞)(否定文のあとで)(しばしばbut thatで否定の主節に対して条件節を導いて)〜しないなら、〜でなければ(前から訳すと「(〜すれば)必ず〜(する)」になる)

think of 〜 〜のことを考える

shallow(名)(複数形で/通例the 〜)浅瀬、洲(す)

of(前)(関係・関連を表わして)〜の点において、〜に関して、〜について

flat(名)平洲(ひらす)、干潟(ひがた)

wealthy(形)豊富な、たくさんな

Andrew(名)アンドルー(男性名/愛称Andy)

dock(自)(船が)ドック(船渠)に入る

vail(古)(他)(敬意・服従を示して)(帽子などを)脱ぐ、取る、下げる

her(代)彼女の

high-top=topmast(名)トップマスト(下檣(かしょう)の上に継ぎ足した帆柱)

low(副)低く

rib(名)(船舶)肋財

kiss(他)(〜に)キスする、くちづけ(接吻(せっぷん))する

burial(名)埋葬地、墓

いえ、砂時計の砂が流れ落ちるのを見てさえ、つい浅瀬や砂州のことを思い出し、大事な船が砂に乗り上げ横倒し、帆柱が船の横腹よりも低く傾いで、おのが墓穴にキスする姿が目に浮かぶ。

(10)

Should I go to church

And see the holy edifice of stone

And not bethink me straight of dangerous rocks,

Which touching but my gentle vessel's side

Would scatter all her spices on the stream,

Enrobe the roaring waters with my silks,

And in a word, but even now worth this,

And now worth nothing?

should(助動)(条件節に用いて実現の可能性の少ない事柄に対する仮定・譲歩を表わして)万一(〜ならば、〜しても)、もしかして〜ということでもあれば(あっても)

to(前)(到達の意を含めて)〜まで、〜へ、〜に ・go to 〜に行く

church(名)(キリスト教の)教会(堂)、聖堂

holy(形)神聖な、聖なる

edifice(名)(宮殿・教会など堂々とした)建物

of(前)(材料を表わして)〜で(作った)、〜から(成る)

stone(名)石材、石 ・a wall of stone 石の壁

bethink(他)(bethink oneselfで)(〜を)よく考える、熟考する(of)

straight(副)(古)直ちに

of(前)(関係・関連を表わして)〜の点において、〜に関して、〜について

rock(名)(しばしば複数形で)岩礁、暗礁

which(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(主格・目的格の場合)そしてそれは(を)

touch(他)(ものが)(ものと)接触する(している)

but(副)ただ、ほんの、〜だけ

gentle(形)(態度など)もの柔らかな、上品な

vessel(名)(通例ボートより大型の)船

side(名)(前後・上下以外の)側面、横、わき

would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(現在または未来の事柄について帰結節で無意志の仮定を表わして)〜(する)だろう

scatter(他)(〜を)まく、まき散らす

all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな

spice(名)(集合的にも用いて)香辛料、香料、スパイス(pepper、cinnamon、nutmeg、mace、ginger、clovesなど)

stream(名)(特に、小川の)流れ、流水

enrobe(他)(〜に)ローブなどを着せる、まとわせる

roaring(形)ごうごういう

water(名)(複数形で)海

with(前)(材料・中身を表わして)〜で

silk(名)絹布、絹織物

in a word ひと言で言えば、要するに(=in short)

even(副)(同時性などを強めて)まさに、ちょうど(=just)

worth(形)財産が〜の、〜だけの財産を持って

this(代)(指示代名詞)(すぐ前に言われたことをさして)こう、こういう、このこと

教会に行けば行ったで、石造りの聖堂を目にしたとたん、恐ろしい暗礁の岩を思い出し、もしもこんないかつい岩が、かわいい船の脇腹にでも触れてみろ、たちまち香料はみな波の上にばら撒かれる、絹の布地は、吼え猛る荒波をむなしくくるむ――つづまるところ、たった今まで、あれほど値打ちがあると思っていた財産が、一瞬にして無一文になりはててしまうんだ。

(11)

Shall I have the thought

To think on this, and shall I lack the thought

That such a thing bechanced would make me sad?

have(他)(感情・考えなどを)(心に)抱いている

thought(名)思いつき(+that) ・have a thought 思いつく

think(自)考える

on(前)(関係を表わして)〜について、〜に関する

lack(他)(〜を)欠く、(〜が)ない

that(接)(名詞節を導いて)(〜)という/(同格節を導いて)(thatを略すことはない)

thing(名)(無形の)こと、事(柄)、事件

bechance(古)(自)生ずる

こんな思いが浮かぶとなれば、私だって、つい考えるというもんでしょう、こんなことがもし起こったら、憂鬱になるのも当然だって。

(12)

But tell not me; I know Antonio

Is sad to think upon his merchandise.

his(代)彼の

merchandise(名)商品(全体)

いや、なんにもおっしゃるな、分っております。アントニオさんが憂鬱なのは、船の積荷が気になって仕方がないから。そうでしょう。

(13)

ANTONIO

Believe me, no.

believe me(挿入的に用いて)本当に、確かに

no(副)(相手の肯定の陳述に応答して)いいえ

アントニオ いや、そんなことじゃない。

(14)

I thank my fortune for it

My ventures are not in one bottom trusted,

Nor to one place; nor is my whole estate

Upon the fortune of this present year.

fortune(名)幸運

for(前)(原因・理由)〜の理由で、〜のため(=because of)

it(代)(形式目的語としてあとにくる事実上の目的語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)

bottom(名)船舶

trust(他)(大事な物事を)(人に)委託する、預ける、任せる(to)

estate(名)財産、遺産

on(前)(基礎・原因・理由・条件などを表わして)〜に基づいて、〜による

fortune(名)運

this(形)(指示形容詞)(たった)今の、現在の、今〜、当〜(しばしば時を示す名詞を伴って副詞句をなす) ・this year 今年

present(形)(the 〜、one's 〜)現在の、現〜、今の、今日の

幸い私は、一隻の船に、財産をすべて託しているのではない。一個所の取引先に、一切をかけているのでもない。この一年の運不運に、全財産がかかっているというわけでもない。

(15)

Therefore my merchandise makes me not sad.

therefore(副)それゆえに、従って、それ(これ)によって(=consequently)

だから、積荷のことで憂鬱になってなど、いるはずがない。

(16)

SOLANIO

Why then you are in love.

why(間)(意外なことの発見・承認などの際の発声として)あら!、おや!、まあ!

then(副)(通例文頭または文尾に用いて)それなら、(それ)では

be in love ほれている、恋している

ソラーニオ ははあ。じゃあ、そうか、恋しているのか。

(17)

ANTONIO

Fie, fie!

fie(間)(軽蔑・不快・非難を表わして)えーい!、ちぇっ!

アントニオ 馬鹿な!

(18)

SOLANIO

Not in love neither?

not(副)(述語動詞・文以外の語句を否定して)〜でなく

in(前)(状態を表わして)〜の状態に(で)

love(名)(異性に対する)恋愛、恋

neither(副)(neither 〜 nor 〜で相関接続詞的に用いて)〜も〜もどちらも〜ない(しない)

ソラーニオ 恋でもない?

(19)

Then let us say you are sad

Because you are not merry; and 'twere as easy

For you to laugh and leap and say you are merry

Because you are not sad.

let(他)(通例let's、時にlet usで勧誘・提案を表わして)〜しよう(ではないか)

because(接)(副詞節を導いて)(なぜなら)〜だから(である)、〜なので

'twere(古)it were(=it would be)の短縮形

it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)

as(副)(通例as 〜 as 〜で、形容詞・副詞の前に置いて)(〜と)同じ程度に、同様に、同じくらい(as 〜 as 〜で前のasが指示副詞、後のasは接続詞)

for(前)(不定詞の主語関係を示して)〜が(〜する)

leap(自)(通例副詞句を伴って)跳ぶ、はねる、跳躍する

すると、つまり、陽気じゃないから憂鬱だということか。そいじゃあ、思いっきり笑って踊って、こう言ったっていいわけだ、「おれは憂鬱じゃないから陽気なんだ!」

(20)

Now by two-headed Janus,

Nature hath framed strange fellows in her time:

Some that will evermore peep through their eyes

And laugh like parrots at a bagpiper,

And other of such vinegar aspect

That they'll not show their teeth in way of smile

Though Nestor swear the jest be laughable.

now(副)(接続詞的に、話題を変える時などに文頭で用いて)さて、ところで、では

by(前)(誓言・祈願を表わして)(神)のみ名にかけて、(神)に誓って

two-headed(形)両頭の

Janus(名)ヤヌス(頭の前と後ろに顔をもった神/物事の初めと終わりをつかさどり、戸口・門を守護した)

nature(名)(無冠詞/しばしばNature)自然、天然(しばしば擬人化して女神扱い)

hath(動)(古)haveの直説法3人称単数現在形/・he hath=he has

frame(他)作る、形づくる

fellow(名)(通例修飾語を伴って)男、やつ

in(前)(時間を表わして)〜(のうち)に、〜の間、〜中

time(名)(one's 〜)(人の)一生

some(代)人(もの)によると、〜の人(もの)(もある)(しばしば後に対照的にothersまたはsomeを用いる)

that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(〜する(である))ところの/(主語として)

will(助動)(人の反復行為・習慣を表わして)よく〜する

evermore(副)常に、いつも

peep(自)のぞき見する、のぞく(=peek) ・peep through 〜からのぞき見する

laugh at 〜 〜を見て(聞いて)笑う

parrot(名)オウム

bagpiper(名)<bagpipe(名)バグパイプスコットランド高地人が愛用する皮袋で作った楽器)

other(代)(通例複数形で)ほかのもの、ほかの人たち、他人

such(形)(程度を表わして)(such 〜 thatで)非常に〜なので

vinegar(名)(表情・態度などの)気難しさ、不機嫌

aspect(名)(またan 〜)(人の)顔つき、容貌(ようぼう)

that(接)(副詞節を導いて)(such 〜 thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)〜なので、〜(する)ほど

they'll they willの短縮形

show one's teeth 歯をむき出す

in(前)(方法・形式を表わして)〜で、〜をもって ・in this way この方法で、こうやって

way(名)やり方、手段(of) ・in this way このように(して)

smile(名)ほほえみ、微笑

Nestor(名)ネストル(Homer作Iliad中の老齢の知将)

swear(他)(〜であると)断言する、確かに(〜であると)言える(+that)

jest(名)冗談、しゃれ

laughable(形)おかしい、おもしろい

そういやあ、ローマ神話の門口の神様ヤヌスには、笑い顔と泣き顔と二つの顔があるというけど、自然の女神というお方も、実際、不思議な人間をさまざま産み出してきましたもんねえ。一生目尻を下げっぱなし、もの悲しげなバグパイプの音を聞いても、オウムみたいにケタケタ笑い出す男がいるかと思えば、あの、謹厳実直を絵に描いたようなギリシャの英雄ネストールでさえ、この冗談は笑えると受けあった戯れ言を聞かされたって、ニコリともしない男もいるもんなあ。

(21)

Enter Bassanio, Lorenzo, and Gratiano

Bassanio バサーニオ(Shakespeare, The Merchant of Veniceに登場する青年/Portiaに求婚する)

Lorenzo ロレンゾ(男子名)

Gratiano グラシアーノ(Shakespeare, The Merchant of Venice中の、AntonioとBassanioの友人の一人でおしゃべりな男/Portiaの侍女Nerissaと結婚する)

バサーニオ、ロレンゾ、グラシアーノ、登場。

(22)

Here comes Bassanio your most noble kinsman,

Gratiano, and Lorenzo.

here(副)(文頭に用いて)(特に相手の注意を引くために用いて)ほらここに(へ) ・Here comes John. ほらジョンが(こっちへ)やってきたよ。

most(副)(通例theを用いないで)はなはだ、非常に

noble(形)高貴の(=aristcratic/⇔base)

kinsman(名)血族(親戚)の男

ソラーニオ ああ、バサーニオさんが見えた、御親戚の。グラシアーノとロレンゾも一緒か。

(23)

Fare ye well;

We leave you now with better company.

fare(自)(well、badlyなどの様態の副詞を伴って)(人が)(よく、まずく)やっていく、暮らす(=get on) ・Fare you(thee)well!(古)さらば!

ye(代)(古)なんじらは(が)(2人称代名詞thouの複数形)

well(副)裕福に、安楽に ・live well 裕福に暮らす

leave(他)(もの・ことを)(〜に)託す、預ける(with)

with(前)(処置・関係の対象を導いて)〜に対して、〜について、〜にとっては

company(名)(時に複数扱い)仲間、連れ、一緒に過ごす人

じゃ、私たちはこれで失礼致しましょう。もっといいお仲間が現われた。後はあの方々にお任せして。

(24)

SALERIO

I would have stayed till I had made you merry,

If worthier friends had not prevented me.

would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(would have+過分で/過去の事柄について帰結節で無意志の仮定を表わして)〜しただろう

till(接)(動作・状態の継続の期限を表わして)〜まで(ずっと)

worthy(形)尊敬すべき、りっぱな

prevent(他)(〜を)防ぐ、妨げる

サラリーノ 私どもの馬鹿っ話で、お気が晴れればと思ったんだが、もっと立派なご友人にお任せしたほうがよさそうだ。

(25)

ANTONIO

Your worth is very dear in my regard.

worth(名)価値、真価

dear(形)大事な、貴い

in(前)(範囲を表わして)〜において、〜内で

regard(名)(考慮すべき)点(通例次の句で) ・in this(that)regard この(その)点について

アントニオ いや、君たちこそ立派な友人。

(26)

I take it your own business calls on you,

And you embrace th'occasion to depart.

take it 思う

business(名)用務、用事、用件 ・your business あなたの用

call on(人を)訪問する

embrace(他)(考え・提案・変化などを)喜んで受け入れる

th'→the

occasion(名)(単数形で)(〜のための)機会、好機(=opportunity)(+to do)

depart(自)(人・列車などが)出発する

本当は用でもあって、これ幸いと逃げ出すんだろう。

(27)

SALERIO

Good morrow, my good lords.

good(形)(あいさつの成句に用いて)

morrow(名)(古)朝

lord(名)(my Lordで呼び掛けに用いて)閣下!

サラリーノ (バサーニオたちに)お早ようございます、お三方。

(28)

BASSANIO

Good signors both, when shall we laugh?

signor(名)(イタリアの)貴族、紳士

both(代)(同格に用いて)両者とも、両方とも

shall(助動)(疑問文で)〜でしょうか、〜だろうか ・When shall we see you again? いつまた私たちはあなたとお会いできるでしょうか。

バサーニオ やあ、お二人。今度はいつやる? また集まって飲もうじゃないか。

(29)

Say, when?

say(自)(間投詞的に用いて)ねえ、もし、おい

いつがいい?

(30)

You grow exceeding strange.

grow(自)(次第に)(〜に)なる(+補)

exceeding(副)(古)=exceedingly(副)きわめて、非常に、すこぶる

strange(形)よそよそしい、うちとけない

なんだ、やけに冷たいね。

(31)

Must it be so?

must it be so?=must you go?

もう行っちゃうの?

(32)

SALERIO

We'll make our leisures to attend on yours.

we'll we willの短縮形

will(助動)(意志未来を表わして)(1人称の主語に伴い、発話時の話者の意志を表わし、約束・諾否・主張・選択などを示して)〜するつもりである、〜しようと思う

our(代)我々の、私たちの

leisure(名)余暇、自由な時間、暇(な時間)(仕事から解放されて休息・レクリエーションに使う時間/日本語の「レジャー」には余暇を利用して楽しむことの意味があるが、leisureにはその意味はない)

attend(自)仕える、付き添う、伺候する(on)

on(前)(動作の対象を表わして)〜に対して、〜に当てて

yours(代)あなた(たち)のもの(さす内容によって単数または複数扱いとなる)

サラリーノ いつだって、喜んで御一緒しましょう。ですが、今日はこれで。

(33)

Exeunt Salerio and Solanio

exeunt(自)(演劇)退場する(昔の脚本のト書きで複数の主語の前に用いた)

サラリーノ、ソラーニオ、退場。

【参考文献】

詳説世界史B 改訂版 [世B310]  文部科学省検定済教科書 【81山川/世B310】』木村靖二、岸本美緒、小松久男・著(山川出版社

イギリス文学史入門 (英語・英米文学入門シリーズ)川崎寿彦・著(研究社)

はじめて学ぶイギリス文学史神山妙子・編著(ミネルヴァ書房

イギリス文学の歴史』芹沢栄・著(開拓社)

ヴェニスの商人 (研究社小英文叢書 (53))』岩崎民平・注釈(研究社)

ヴェニスの商人 (対訳・注解研究社シェイクスピア選集 (3))』大場建治・編注訳(研究社)

新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)

リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)

リーダーズ・プラス』(研究社)

新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)

2018-07-01

『高慢と偏見』を原書で読む(第33回)

(テキスト36ページ、3行目〜)

“She did indeed, Louisa. I could hardly keep my countenance. Very nonsensical to come at all! Why must she be scampering about the country, because her sister had a cold? Her hair so untidy, so blowsy!”

do(自)(代動詞としてbe以外の動詞の反復を避けるのに用いて)(同一の動詞(およびそれを含む語群)の反復を避けて)

Louisa(名)ルイーザ(女性名/Louisの女性形)

keep one's countenance 平然として(すまして、笑わないで)いる

nonsensical(形)ばかげた(=absurd)

at all(疑問文に用いて)少しでも、一体

scamper(自)(副詞句を伴って)(子供・小さい動物などが)はね回る、ふざけ回る

about(前)(周囲を表わして)〜のあちこちに(へ)、〜の方々に(へ)

country(名)(通例修飾語を伴って)(地勢的に見た)地方、地域、土地

because(接)(副詞節を導いて)(なぜなら)〜だから(である)、〜なので

her(代)彼女の

have(他)(病気などに)かかる、かかっている、苦しむ ・have a cold かぜをひいている

cold(名)かぜ、感冒 ・have a cold かぜを引いている(haveのときは不定冠詞が必要)

so(副)(強意的に)とても、非常に、大変

untidy(形)だらしのない、不精な

blowsy(形)=blowzy(形)(髪が)ぼさぼさの

“Yes, and her petticoat; I hope you saw her petticoat, six inches deep in mud, I am absolutely certain; and the gown which had been let down to hide it, not doing its office.”

yes(副)(相手の言葉に同意を表わして)そうだ、さよう、然り

petticoat(名)ペチコート

hope(他)(Iを主語にして)(〜と)思う、信じる(+that)

six(形)(基数の6)6の、6個(人)の

inch(名)インチ(長さの単位/=1/12 foot、2.54 cm)

deep(形)深さが〜の ・a pond 5 feet deep 深さ5フィートの池

mud(名)泥

absolutely(副)絶対的に、無条件に

certain(形)(〜を)確信して、確かだと思って(+that)

gown(名)(婦人用)ガウン(パーティーなどの正装に着る)

which(代)(関係代名詞)(制限的用法で)〜する(した)(もの、事)(通例「もの」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(主格の場合)

let down(衣服を)(縫い上げを下ろして)長くする(⇔take up)

not(副)(不定詞・分詞・動名詞の前に置いてそれを否定して)(〜し)ない

its(代)それの、あれの、その

office(名)職務、任務、役目 ・do the office of 〜の役目をする

“Your picture may be very exact, Louisa,” said Bingley; “but this was all lost upon me. I thought Miss Elizabeth Bennet looked remarkably well, when she came into the room this morning. Her dirty petticoat quite escaped my notice.”

your(代)あなた(たち)の、君(ら)の

picture(名)(通例単数形で)(写実的な)描写、叙述

may(助動)(不確実な推量を表わして)〜かもしれない、おそらく〜であろう

exact(形)精密な

say(他)(人に)(〜と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+引用)

this(代)(指示代名詞)(すぐ前に言われたことをさして)こう、こういう、このこと

all(代)(単数扱い)(同格にも用いて)全部、ことごとく

lost(形)(人に)ききめがなくて、きかなくて(on)

on(前)(不利益を表わして)〜に対して

think(他)(〜と)思う、考える(+that)

Elizabeth(名)エリザベス(女性名/愛称Bess、Bessie、Bessy、Beth、Betty、Eliza、Elsie、LilyLisa、Liz、Liza、Lizzie、Lizzy)

Bennet ベネット(Jane Austen, Pride and Prejudiceに登場する一家)

look(自)顔つき(様子)が(〜)だ(+補)

remarkably(副)著しく、目立って、非常に

well(形)健康で、丈夫で(⇔ill) ・look well 元気そうな顔をしている

when(接)〜する時に、〜時(時を表わす副詞節をつくる)

come into 〜 〜に入る

this(形)(指示形容詞)(たった)今の、現在の、今〜、当〜(しばしば時を示す名詞を伴って副詞句をなす) ・this morning けさ

morning(名)(副詞的に)朝に、午前中に ・this morning 今日の午前中に

escape(他)(人の注意などから)はずれる、逃れる

my(代)私の

notice(名)注意、注目 ・not escape one's notice 〜の目につかない

You observed it, Mr. Darcy, I am sure,” said Miss Bingley; “and I am inclined to think that you would not wish to see your sister make such an exhibition.”

observe(他)(〜を)(観察によって)認める、目撃する(=notice)

Darcy ダーシー

sure(形)確信して(⇔unsure)(+that)

inclined(形)(〜する)気になって(+to do)

that(接)(名詞節を導いて)(〜)ということ/(目的語節を導いて)

would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(条件節の内容を言外に含め陳述を婉曲(えんきょく)にして)〜であろう、〜でしょう

wish(他)(〜)したい(と思う)(+to do)

see(他)(〜を)見る、(〜が)見える(+目+原形)

make an exhibition of oneself(ばかなことをして)恥さらしをする

“Certainly not.”

certainly(副)(返答に用いて)承知しました、もちろんです ・Certainly not. とんでもない。

“To walk three miles, or four miles, or five miles, or whatever it is, above her ankles in dirt, and alone, quite alone! what could she mean by it? It seems to me to shew an abominable sort of conceited independence, a most country town indifference to decorum.”

three(形)(基数の3)3の、3個の、3人の

mile(名)マイル(距離の単位/1760 yards、約1.6 km

or(接)(三つ以上の選択に用いて)〜か〜か〜か

four(形)(基数の4)4の、4個の、4人の

five(形)(基数の5)5の、5個の、5人の

or whatever(列挙した後に置いて)その他何でも、〜とか何とか

ancles→ankles

ankle(名)足首

dirt(名)泥、ほこり、ごみ、垢(あか)

alone(副)ひとりで、孤独に(で)

what(代)(疑問代名詞)(不定数量の選択に関して用いて)何、どんあもの(こと)、何もの、何事/(目的格の場合) ・What do you mean by that? それはどういう意味ですか。

could(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(条件節の内容を言外に含めた主節だけの文で/婉曲的に)〜できるだろうに、〜したいくらいだ

mean(他)(人が)(〜で)(〜を)意味する、(〜の)意味で言う(by)

by(前)(手段・媒介を表わして)〜で

it(代)(非人称動詞(impersonal verb)の主語として)(seem that 〜の主語として)(thatは略されることがある)

seem(自)(itを主語として)(〜には)(〜のように)思われる

to(前)(行為・作用の対象を表わして)〜にとっては、〜には

shew→show

abominable(形)(人・行為・天気など)実にいやな、不快な

sort(名)(sort ofで)種類(=type)

of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)〜の

conceited(形)うぬぼれの強い、思いあがった

independence(名)独立、自立

most(副)(通例theを用いないで)はなはだ、非常に(この語が修飾する形容詞が名詞の単数形とともに用いられる時は不定冠詞を伴う/この意味のmostが修飾する形容詞・副詞は話者の主観的感情・判断を表わす)

country(形)いなか(風)の、いなか育ちの ・a country town いなか町

town(形)町の、都会の

indifference(名)無関心、冷淡、むとんちゃく(⇔concern)(to)

to(前)(行為・作用の対象を表わして)〜に対して、〜に

decorum(名)(りっぱな)行儀作法、エチケット(=propriety)

“It shews an affection for her sister that is very pleasing,” said Bingley.

shews→shows

affection(名)(人が子供・妻などに示すような)愛情、優しい思い(for)

for(前)(感情・趣味・適性などの対象を表わして)〜に対して(する)、〜を理解する ・an affection for 〜に対する愛情

that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(〜する(である))ところの/(主語として)

pleasing(形)愉快な、心地よい、満足な

“I am afraid, Mr. Darcy,” observed Miss Bingley, in a half whisper, “that this adventure has rather affected your admiration of her fine eyes.”

afraid(形)(I'm afraid、I am afraidで、よくない事・心配な事を表現するとき、語気をやわらげるのに用いて)(〜であることを)残念に思う、(〜と)思う(+that)

observe(他)(〜と)述べる、言う(+引用)

in(前)(状態を表わして)〜の状態に(で)

half(形)不十分な、不完全な

whisper(名)ささやき、小声 ・in a whisper 小声で

this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)(⇔that)

adventure(名)(偶然起こってくる)珍事、珍しい経験(出来事)

rather(副)幾分、少々、やや(しばしば批判・驚き・失望等を含意する)

affect(他)(〜に)悪影響を及ぼす

admiration(名)感嘆、感心、称賛(of)

of(前)(目的格関係を表わして)(しばしば動作名詞または動名詞に伴って)〜を、〜の

fine(形)魅力的な

“Not at all,” he replied; “they were brightened by the exercise.”

not at all 少しも〜ない

reply(他)(〜を)答える(目的語には答える内容がくるので、人称代名詞やletterなどの名詞は用いられない)(+引用)

brighten(他)(〜を)輝かせる、明るくする

exercise(名)(体の)運動

―A short pause followed this speech, and Mrs. Hurst began again。

short(形)(時間・過程・行為など)短い

pause(名)絶え間、とぎれ、ポーズ

follow(他)(時間・順序として)(〜の)次にくる(=come after)

speech(名)話すこと、発言

Hurst ハースト

begin(自)(人が)(〜から)始める

“I have an excessive regard for Jane Bennet, she is really a very sweet girl, and I wish with all my heart she were well settled. But with such a father and mother, and such low connections, I am afraid there is no chance of it.”

have(他)(感情・考えなどを)(心に)抱いている

excessive(形)過度の、過大な、極端な

regard(名)(またa 〜)好意 ・have a regard for 〜を評価する

Jane(名)ジェイン(女性名/愛称Janet、Jenny)

sweet(形)優しい、親切な ・a sweet lady 優しい女性

wish(他)(現在の実現不可能なことの願望を表わして)(〜であればよいのにと)思う(+that)

with all one's heart 心から喜んで

settled(形)(人・生活など)落ち着いた、安定した(=steady/⇔unsettled)

low(形)(階級・位置など)低い、卑しい

connection(名)(通例複数形で)親類、有力な知人、縁故、「コネ」

there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「〜がある」の意になる)/(beを述語動詞として)

chance(名)(可能な)見込み、成算(of)

“I think I have heard you say, that their uncle is an attorney in Meryton.”

hear(他)(ニュースなどを)聞き知る、聞かされている、話に聞く(+that)

their(代)彼ら(彼女ら)の

attorney(名)(昔の)代訴人、事務弁護士

in(前)(場所・位置・方向などを表わして)〜において、〜で ・in London ロンドンで(に)

“Yes; and they have another, who lives somewhere near Cheapside.”

have(他)(ある関係を表わして)(肉親・友人などが)いる、(〜が)ある

another(代)もう一つのもの、もう一人の人

who(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人は

Cheapside チープサイド(Londonのthe Cityの一街区・通り/中世には市場)

【参考文献】

Pride and Prejudice (Penguin Classics)』Jane Austen・著

自負と偏見 (新潮文庫)小山太一・訳

新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)

リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)

2018-06-30

『ロビンソン・クルーソー』を原書で読む(第142回)

(テキスト144ページ、3行目〜)

I was indeed terribly surpris'd at the sight, and stepp'd short within my grove, not daring to go out, least I might be surpris'd; and yet I had no more peace within, from the apprehensions I had, that if these savages in rambling over the island, should find my corn standing, or cut, or any of my works or improvements, they would immediately conclude, that there were people in the place, and would then never give over till they had found me out:

terribly(副)恐ろしく、ものすごく

surpris'd→surprised(形)驚いた、びっくりした(at)

at(前)(感情の原因を表わして)〜に(接して)、〜を見て、聞いて、考えて ・be surprised at 〜に驚く

sight(名)光景、風景、眺め

stepp'd→stopped

stop(自)止まる、停止する

short(副)突然、急に

within(前)〜の内に、〜の中に

my(代)私の

grove(名)(散策などに適した下生えのない)小さい森、木立

not(副)(不定詞・分詞・動名詞の前に置いてそれを否定して)(〜し)ない

dare(他)あえて(〜)する、思い切って(勇気をもって、生意気にも)(〜)する(+to do)

go out 外へ出る、(〜へ)出ていく

least(接)(廃)=lest(接)〜しないように、するといけないから(=in case)

might(助動)(仮定法仮定)(条件節の内容を言外に含めた主節だけの文で)(現在の推量を表わして)〜するかもしれない

yet(副)(andまたはbutに伴って)それにもかかわらず、それなのに、しかもなお

have(他)(感情・考えなどを)(心に)抱いている

no more それ以上(もはや、二度と)〜しない

peace(名)安心、平安

within(副)内に(で)、中に(で)、内部は(で)

from(前)(原因・理由を表わして)〜のために、〜の結果

apprehension(名)気づかい、心配、懸念(=anxiety) ・have some apprehension 気づかう

that(接)(名詞節を導いて)(〜)という/(同格節を導いて)(thatを略すことはない)

savage(名)野蛮人、未開人

in(前)(行為・活動・従事を表わして)〜して、〜に従事して(doing)

ramble(自)(副詞句を伴って)ぶらぶら歩く、あてもなく歩く

over(前)一面に、〜の上をあちこち

should(助動)(仮定法で)(条件節に用いて実現の可能性の少ない事柄に対する仮定・譲歩を表わして)万一(〜ならば、〜しても)、もしかして〜ということでもあれば(あっても)

find(他)(〜を)(偶然)見つける、ふと見つける(+目+doing)

corn(名)穀物、穀類(小麦・大麦・オート麦など)

standing(形)(作物など)生えたままの ・standing corn 刈ってない穀草

or(接)(二つまたはそれ以上の選択すべき文法上同性質の語・句・節を対等につないで)(三つ以上の選択に用いて)〜か〜か〜か

cut(形)切り離した(取った)、刈った、摘んだ

any(代)(疑問文・条件節でany of 〜の形か既出名詞の省略の形で用いて)何か、だれか(of)

of(前)(部分を表わして)〜の中の

work(名)(やっている)仕事

improvement(名)(同一物の)改良(改善)されたもの、改良(改善)(点)

would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(現在または未来の事柄について帰結節で無意志の仮定を表わして)〜(する)だろう

immediately(副)直ちに、即座に、早速

conclude(他)(〜だと)結論を下す、断定する(+that)

that(接)(名詞節を導いて)(〜)ということ/(目的語節を導いて)

there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「〜がある」の意になる)/(beを述語動詞として)

then(副)(しばしばandを伴って、前に続くことを示して)それから、その後で

never(副)(notよりも強い否定を表わして)決して〜ない

give over(〜を)やめる

till(接)(否定語の後に用いて)〜するまでは(〜しない)、〜して初めて(〜する)

find out(調査などをして)(〜を)見つけ出す、発見する、知る

In this extremity I went back directly to my castle, pull'd up the ladder after me, and made all things without look as wild and natural as I could.

in(前)(状態を表わして)〜の状態に(で)

this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)

extremity(名)(またan 〜)(苦痛・悲しみなどの)きわみ、極度、極限(状態) ・in one's extremity 窮地に陥って、いよいよ困って

go back(〜へ)戻る、帰る(to)

directly(副)まっすぐに、一直線に、直行で

to(前)(方向を表わして)(到達の意を含めて)〜まで、〜へ、〜に

pull'd→pulled

pull up(〜を)引っ張り上げる

ladder(名)はしご(はしごの下を通るのは不吉であるという迷信があるが、これは昔、はしごが絞首刑や火刑の道具の一つとして使われ、死を暗示したことによるといわれる)

after(前)(順序・場所を表わして)〜のあとに、〜の後ろに続いて

make(他)(強制的にも非強制的にも)(〜に)(〜)させる(+目+原形)

all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな

without(副)(古)外は(に)

as 〜 as one can できるだけ

Then I prepar'd my self within, putting myself in a posture of defence; I loaded all my cannon, as I call'd them; that is to say, my musquets, which were mounted upon my new fortification, and all my pistols, and resolv'd to defend my self to the last gasp, not forgetting seriously to commend my self to the divine protection, and earnestly to pray to God to deliver me out of the hands of the barbarians; and in this posture I continu'd about two hours; and began to be mighty impatient for intelligence abroad, for I had no spies to send out.

prepar'd→prepared

prepare(他)(prepare oneselfで)心構えをする、覚悟を決める

put(他)(〜を)(〜の状態・関係に)置く、する(in)

myself(代)(再帰的に用いて)(一般動詞の目的語に用いて)私自身を(に)

posture(名)(体の)姿勢、ポーズ ・in a 〜 posture 〜の姿勢で

defence(名)(英)=defense(名)防衛、防御、守備(⇔offense)

load(他)(鉄砲に)弾丸を込める、装填(そうてん)する

cannon(名)(昔の)カノン砲

as(代)(関係代名詞)(前後の主節全体を先行詞として、非制限的に用いて)それは〜だが

call'd→called

call(他)(人を)(〜と)呼ぶ、称する(+目+補)

that is to say すなわち

musquets→muskets

musket(名)(昔の)マスケット銃(rifleの前身で銃腔に施条(しじょう)がない)

which(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(主格・目的格の場合)そしてそれは(を)

mounted(形)台紙にはった、台に(据え)付けた

fortification(名)(通例複数形で)防御工事、とりで、要塞(ようさい)

pistol(名)ピストル、拳銃

resolv'd→resolved

resolve(他)決意する、決心する(+to do)

defend(他)(国・人などを)守る、守備する

to(前)(限度・程度・結果などを表わして)〜に至るまで、〜するほどに

last(形)(通例the 〜、one's 〜)最終の

gasp(名)あえぎ、息切れ

forget(他)忘れて(〜)しない、(〜)し忘れる(+to do)

seriously(副)まじめに、真剣に

commend(他)(古)(人・ものを)(他人の世話に)ゆだねる、託する(to)

to(前)(行為・作用の対象を表わして)〜に対して、〜に

divine(形)神の

protection(名)保護(する(される)こと)、擁護、庇護(ひご)

earnestly(副)まじめに、真剣に、熱心に

pray(他)(〜を)祈る ・pray to God to do 〜してくださいと神に祈る

deliver(他)(古)(人を)(〜から)救い出す、救出する(from)

out of(前)〜の届かぬところに(⇔within)

hand(名)(通例複数形で)管理、支配、監督(of)

barbarian(名)野蛮人、未開人

continu'd→continued

continue(自)(仕事などを)(休まずに)続ける

about(副)(数詞を伴って)およそ、約〜

two(形)(基数の2)2の、2個の、二人の

begin(他)(〜し)始める、(〜し)だす(+to do)

mighty(副)非常に

impatient(形)(〜を)待ち遠しがって

for(前)(感情・趣味・適性などの対象を表わして)〜に対して(する)、〜を理解する

intelligence(名)(特に、重要な事柄の)報道、諜(ちょう)報

abroad(副)(古)戸外で

for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は〜だから(=as、since)

have(他)(しばしば目的語に形容詞用法のto不定詞を伴って)((〜すべき(できる))用事・時間をなして)もっている、与えられている

spy(名)スパイ(人)

send out(人を)派遣する、送り出す

After sitting a while longer, and musing what I should do in this case, I was not able to bear sitting in ignorance any longer; so setting up my ladder to the side of the hill, where there was a flat place, as I observ'd before, and then pulling the ladder up after me, I set it up again, and mounted the top of the hill, and pulling out my perspective glass, which I had taken on purpose, I laid me down flat on my belly, on the ground, and began to look for the place; I presently found there was no less than nine naked savages, sitting round a small fire, they had made, not to warm them; for they had no need of that, the weather being extreme hot; but as I suppos'd, to dress some of their barbarous diet, of human flesh, which they had brought with them, whether alive or dead I could not know.

while(名)(a 〜)(短い)間、暫時(ざんじ) ・after a while しばらくして

long(副)長く、長い間、久しく

muse(他)思いめぐらす

what(代)(疑問代名詞)(不定数量の選択に関して用いて)何、どんなもの(こと)、何もの、何事/(間接疑問の節や+to doの形で)

in(前)(範囲を表わして)〜において、〜内で

able(形)(〜することが)できて、(〜し)えて(⇔unable)(+to do)

bear(他)(通例can、couldを伴って否定文または疑問文で)(苦痛・不幸などに)耐える、我慢する(+doing)

ignorance(名)無知、無学

any longer(疑問・否定文に用いて)もはや、これ以上

so(接)(等位接続詞として)そこで、それで、〜ので

set up(柱・像などを)立てる

to(前)(方向を表わして)(方角を表わして)〜のほうに(当たって)

side(名)(前後・上下以外の)側面、横、わき(of)

where(副)(関係副詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)

flat(形)平らな、平たい

observ'd→observed

observe(他)(〜と)述べる、言う(+that)

before(副)(時を表わして)以前に、かつて、すでに

pull up(〜を)引っ張り上げる

mount(他)(山・階段・王位に)登る

pull out(〜を)引き抜く、引き出す

prospective(形)予期される、見込みの(ある)、〜になる予定の、〜になりそうな(=potential)

glass(名)望遠鏡(=telescope)、顕微鏡(=microscope)

take(他)(副詞句を伴って)(ある場所から他へ)持っていく、連れていく

on purpose 故意に、わざと

lay down(〜を)(〜に)横たえる、下に置く

flat(副)平らに、(べったり)横たわって ・lie flat on the ground 地面にぴたりと伏す

belly(名)(人間・動物・魚の)腹、腹部

look for 〜 〜を探す

presently(副)まもなく、やがて

find(他)(研究・調査・計算などをして)(答えなどを)発見する、見出す(+that)

no less than 〜(数詞を伴って)〜も(=as many as)

nine(形)(基数の9)9の、9個の、9人の

naked(形)(身体(の一部)が)裸、裸体の

round(前)〜の周囲に、〜をぐるりと取り巻いて(囲んで)

fire(名)(暖房・料理用の)火、炉火、炭火、たき火 ・make a fire 火をたく(起こす)

make(他)(火を)おこす ・make a fire 火をたく(おこす)

warm(他)(〜を)温める、温かくする

have need of 〜 〜を必要とする

that(代)(指示代名詞)(前に言及しているか、場面上了解されている物事をさして)そのこと(⇔this)

extreme(副)(古)=extremely(副)極度に、極端に、きわめて、ごく

hot(形)(気温上「寒い」に対して)熱い

suppos'd→supposed

suppose(他)(知っていることから)推測する、思う、考える(+that)

dress(他)(料理する前に)(魚・肉などを)下ごしらえする

some(代)(可算の名詞を表わす時には複数扱い、不可算の名詞を表わす時には単数扱い)多少、いくぶん(of)

their(代)彼ら(彼女ら)の

barbarous(形)野蛮な、未開の(⇔civilized)

diet(名)日常の(飲)食物

of(前)(材料を表わして)〜で(作った)、〜から(成る)

human(形)人間の(⇔divine、nonhuman)

flesh(名)(人間・動物の)肉

whether(接)(or 〜と相関的に譲歩の副詞節を導いて)〜であろうとなかろうと(いずれにせよ)

alive(形)生きて(⇔dead)

could(助動)(過去形の主節の時制の一致により従属節中のcanが過去形に用いられて)〜できる、〜してよい

know(他)(〜を)知る、知っている、(〜が)わか(ってい)る(+wh.)

They had two canoes with them, which they had haled up upon the shore; and as it was then tide of ebb, they seem'd to me to wait for the return of the flood, to go away again; it is not easy to imagine what confusion this sight put me into, especially seeing them come on my side the island, and so near me too; but when I observ'd their coming must be always with the current of the ebb, I began afterwards to be more sedate in my mind, being satisfy'd that I might go abroad with safety all the time of the tide of flood, if they were not on shore before:

canoe(名)カヌー(paddleでこぐ小舟)

hale(他)強く引く、引っ張り出す

shore(名)(海・湖・川の)騎士

as(接)(原因を表わして)〜だから、〜ゆえに

it(代)(非人称動詞(impersonal verb)の主語として)/(天候・寒暖を漠然とさして)

tide(名)潮、潮の干満

ebb(名)(the 〜)引き潮(⇔flood、flow

seem'd→seemed

seem(自)(〜と)見える、思われる、(〜)らしい(通例話し手の推量をこめた見方・判断を示す語で、文法上の主語と判断の主体に一致しないことが多く、時に判断の主体を示すのにto a personを従えることがある)/(+to do)

to(前)(行為・作用の対象を表わして)〜にとっては、〜には

for(前)(獲得・追求・期待の対象を表わして)〜を得るために(の)、〜を(求めて) ・wait for 〜を待つ

return(名)(単数形で)回帰、復帰(of)

of(前)(主格関係を表わして)(動作の行為者、作品の作者を表わして)〜が、〜の

flood(名)上げ潮(⇔ebb)

go away 立ち去る

it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)

easy(形)容易な、平易な、やさしい(⇔difficult、hard)(+to do)

imagine(他)(〜を)想像する(+wh.)

what(形)(疑問形容詞)(間接疑問の節を導いて)いかほどの

confusion(名)困惑、ろうばい

into(前)(変化・結果を表わして)〜に(する、なる)

especially(副)特に、とりわけ

see(他)(〜を)見る、(〜が)見える(+目+原形)

on(前)(近接を表わして)〜に接して、〜に面して ・on 〜 side 〜側に

so(副)(程度を表わして)それ(これ)ほど、そんな(こんな)に、これくらい

near(前)(場所・時間などを表わして)〜の近くに、〜に近く

when(接)〜する時に、〜時(時を表わす副詞節をつくる)

observe(他)(〜することに)気づく(+that)

coming(名)(the 〜)到来

must(助動)(当然の推定を表わして)〜にちがいない、〜に相違ない、きっと〜だろう

with(前)(同時・同程度・同方向などを表わして)〜とともに、〜と同時に

current(名)(液体・気体などの)流れ、流動

afterwards(副)(英)=afterward(副)その後、以後

more(副)(主に2音節以上の形容詞・副詞の比較級をつくって)(〜より)もっと

sedate(形)(人・態度など)平静な、落ち着いた(=unhurried)

satisfy'd→satisfied(形)納得して、確信して(=convinced) ・I'm satisfied that 〜. 〜を確信している。

might(助動)(直説法過去)(主に間接話法の名詞節中で、時制の一致により)(許可を表わして)〜してもよろしい

with(前)(様態の副詞句を導いて)〜を示して、〜して

all the time その間中ずっと(=the whole time)

if not もし〜できないとするなら

on shore 陸に、上陸して

【参考文献】

Robinson Crusoe (Penguin Classics)』Daniel Defoe・著

ロビンソン・クルーソー (河出文庫)』武田将明・訳

新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)

リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)

リーダーズ・プラス』(研究社)

2018-06-26

『ウエスト・サイド物語』

この週末は、以前DVDで見た『ウエスト・サイド物語』をブルーレイで再見した。

1961年のアメリカ映画。

監督は、『地球の静止する日』『サウンド・オブ・ミュージック』『アンドロメダ…』『スタートレック』のロバート・ワイズと、ジェローム・ロビンス。

音楽は、『波止場』のレナード・バーンスタイン、『サウンド・オブ・ミュージック』『チキ・チキ・バン・バン』のアーウィン・コスタル

主演は、『幽霊と未亡人』『理由なき反抗』のナタリー・ウッド、『史上最大の作戦』のリチャード・ベイマー。

共演は、『雨に唄えば』のリタ・モレノ、『サムソンとデリラ』『西部開拓史』のラス・タンブリン。

監督のロバート・ワイズは、本作と『サウンド・オブ・ミュージック』で映画史上に残っている。

地球の静止する日』や『スタートレック』も監督して、SFからミュージカルまで、守備範囲は広い。

が、この監督の作風は余り好きではない。

もっとも、『サウンド・オブ・ミュージック』はスゴイ映画だと思うが。

本作で助演のジョージ・チャキリスは、僕の母が好きだった。

僕が小学生位の頃、どんな流れだかは忘れたが、しきりにジョージ・チャキリスのことを話していた。

僕は彼の名を全く知らなかったが、珍しい名前なので、記憶に残った。

もう少し詳しく聞いておけば良かった。

本作は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を元にしたミュージカルである。

シェイクスピアの現代化というのが如何に難しいかを痛感させられる。

ユナイテッド・アーティスツ

カラー、70ミリ。

序曲が流れた後、タイトル・バックは現代のニューヨークを航空撮影。

約半世紀前だが、既に摩天楼が林立している。

画質は良い。

指を鳴らす若造ども。

バスケをする。

踊る。

最初は、ミュージカルなのに、歌わない。

ポーランド系アメリカ人で構成されるジェット団という少年ギャングだ。

「見ろよ、臭う」「失せろ」という、昨今のヘイト・スピーチのような言葉を合図に、対立するグループとケンカが始まる。

対立するのは、プエルトリコアメリカ人のグループ・シャーク団だ。

ペンキを頭からかけたりして、大乱闘になる。

そこへ、警察が来る。

「この街はお前らチンピラの街じゃない。殺し合いならオレの管轄外でやれ!」と、シュランク警部補(サイモン・オークランド)。

彼らの対立の理由が、地元の唯一の広場である運動場の占有権を巡ってとか。

実に下らない。

中世が舞台なら、名家の対立も受け入れられるが、法治国家である現代のアメリカでは、チンピラ同士の対立に置き換えるしかない。

レオナルド・ディカプリオの『ロミオ+ジュリエット』もそうだったが、チンピラの対立なんて、一般市民には迷惑なだけだ。

到底、感情移入出来ない。

この時点で、主役の二人は名門の子供から、貧困にあえぐ下層階級になってしまう。

で、ジェット団は「シャーク団を掃除する」なんて物騒なことを言って、全員で決闘することになった。

今夜10時にダンス場で挑戦状を叩き付けると。

ジェット団リーダーのリフ(ラス・タンブリン)は、元リーダーで親友のトニー(リチャード・ベイマー)に声を掛ける。

トニーはこの1ヶ月、コカ・コーラの瓶を運ぶ仕事をしている。

一方、シャーク団リーダーのベルナルド(ジョージ・チャキリス)の妹マリア(ナタリー・ウッド)は、ダンス・パーティーに着て行く洋服を選んでいる。

彼女はシャーク団のチノ(ホセ・デ・ヴェガ)という男に言い寄られていたが、彼には何も感じないという。

「白いドレスなんて私だけよ(本当は赤色に染めたい)」と言いながらも、「今夜は私のアメリカ娘としての第一歩よ」と、ダンス・パーティーへ出掛ける。

案の定、ジェット団とシャーク団の対立が起こる。

まあ、それはともかくとして、ダンスは、山手線のように内回りと外回りで回転しながら、止まった相手とペアになって楽しく踊ることになっていた。

お約束どおり、トニーとマリアは出会い、一緒に踊り、早くも惹かれ合って、キスをする。

ベルナルドは激怒して、「手を出すな!」と、トニーとマリアを引き離す。

で、ベルナルドはリフから決闘を申し込まれる。

詳細はドク(ネッド・グラス)の店で決めることになった。

もう足を洗ったから争い事なんて巻き込まれたくないトニーは、今夜出会ったマリアの名前を唱えながら帰る。

ベルナルドは「今夜でカタを付ける!」と息巻く。

ベルナルドの嫁のアニタ(リタ・モレノ)は「アメリカがいい」と。

移民の人達は色々と大変だろう。

昨今のアメリカでは、ロクでもない大統領が移民を排斥しようとしているが。

新天地を夢見てアメリカにやって来た人達にとって、ここは天国のように映るのだろう。

トニーはマリアのアパートの下へ。

二人は愛をささやき合う。

邸宅のバルコニーが、貧民アパートの階段だよ。

ロミオとジュリエット』は、アメリカの高校では全員が読まされるらしい。

だから、誰もがストーリーを知っているという前提で、この物語が作られているようだ。

話しの運びが大雑把なのは、ミュージカルだからだろうか。

マリアはトニーに「明日午後6時に、ルシアの婚礼衣装店(彼女が働く店)にいるわ」と言う。

夜、ジェット団が集会をしている。

そこへ、警察がやって来る。

「すぐに散れ!」「今度は捕まえるぞ!」

容赦ない国家権力。

ドクの店にジェット団がいる。

そこへ、ベルナルドらがやって来る。

「女は出て行け。」

そして、ドクも出て行く。

リフとベルナルドは、決闘の詳細について話し合う。

決闘は全員で行うことに。

「国へ帰れ!」なんていう、ヘイト・スピーチまがいの言葉が飛び交っているが。

場所は高架の下。

そこへトニーがやって来る。

彼は「素手でケンカをしてみろ」と提案する。

そこへ、警部補が来る。

連中は、サッと打ち合わせを止める。

「オレにはバッジがある。分かったら失せろ! プエルトリコ人め!」

何と人種差別的な!

プエルトリコ系のシャーク団は帰る。

残ったジェット団の連中から、警部補はケンカが行われる場所を聞き出そうとする。

しかし、連中は誰も口を割らずに出て行く。

トニーは最後まで残っていたが、やがて、店主と一緒に店を去る。

ここで「Intermission」。

ここまでで約1時間20分である。

展開が非常に遅い。

それから、当たり前だが、原作を端折っている所も多い。

辻褄を合わせるために、改変されている所もある。

例えば、「仮死状態になる薬」なんて、現代にはそんな物はないから、出て来ない。

結末も違っている。

そんなことはさておき、やはりシェイクスピアの現代化は無理があると思う。

ディカプリオの『ロミオ+ジュリエット』なんて、セリフまで原作のままだし。

まあ、セリフを変えてしまっては、シェイクスピアと言えるかどうかは微妙だが。

蜘蛛巣城』や『乱』のように、舞台を日本の戦国時代に置き換えるというのなら、やりようもあろうが。

本作を、映画史上の傑作だと言う人は多いし、ミュージカルの傑作だと言う人も、同様に多い。

でも、僕は、そうは思わない。

ミュージカルでも、本作よりもっと面白い(明るいとか、笑えるという意味ではなくて)作品はたくさんある。

アカデミー賞作品賞、監督賞、助演男優賞(ジョージ・チャキリス)、助演女優賞(リタ・モレノ)、脚色賞、撮影賞、編集賞美術賞、衣装デザイン賞、録音賞受賞。

1961年洋画興行収入2位(1位は『荒野の七人』。邦画の1位は『椿三十郎』)。

D

2018-06-25

『みずうみ(湖畔、インメンゼー)』を原文で読む(第5回)

(テキスト8ページ、1行目〜)

Die Kinder

das Kind(中)子供(英:child)(複:Kinder)

Bald trat die anmutige Gestalt eines kleinen Mädchens zu ihm.

bald(副)間もなく、すぐに、じきに(英:soon)(比較:eher)(最上:am ehesten)

treten(自)(方向を表す語句とともに)(〜へ向かって)歩む(英:step)(zu)(過去:trat)(過分:getreten)(完了:haben) ・du trittst、er tritt

anmutig(形)優美な、優雅な、気品のある

die Gestalt(女)(だれとははっきりしない)人影、物影(複:Gestalten)

klein(形)小さい(英:small)(比較:kleiner)(最上:kleinst)

das Mädchen(中)女の子、少女(英:girl)(単2:Mädchens)(複:Mädchen)

zu(前)(3格とともに)(行く先)〜に(へ)、〜の所に(へ)(英:to)

Sie hieß Elisabeth und mochte fünf Jahre zählen; er selbst war doppelt so alt.

heißen(自)(〜という)名前である、(〜と)呼ばれている(過去:hieß)(過分:geheißen)(完了:haben) ・du heißt

Elisabeth(女名)エリーザベト(単2:Elisabets)(複:なし)

mögen(助動)(話法の助動詞)(zuのない不定詞とともに)〜かもしれない、〜だろう(英:may)(過去:mochte)(過分:mögen)(完了:haben) ・ich mag、du magst、er mag

nf(数)(基数/無語尾で)5(の)(英:five)

das Jahr(中)年(英:year)(複:Jahre)

zählen(他)(ある数4格に)達する ・Er zählt gerade 40 Jahre. 彼はちょうど40歳になる。

doppelt(形)2倍の、二重の(英:doppelt) ・Er ist doppelt so alt wie ich. 彼は私の倍の年齢だ。

so(副)(ふつう文中でのアクセントあり)(程度を表わして)それほど、そんなに

alt(形)(年齢が)〜歳の ・Er ist so alt wie ich. 彼は私と同じ年だ。

Um den Hals trug sie ein rotseidenes Tüchelchen; das ließ ihr hübsch zu den braunen Augen.

um(前)(4格とともに)(空間的に)〜の周りに(を)、〜を回って(英:round、around)

der Hals(男)首、首すじ(英:neck)(複:Hälse

tragen(他)(衣服など4格を)身につけている(過去:trug)(過分:getragen)(完了:haben) ・du trägst、er trägt

rot(形)赤い、赤色の(英:red)(比較:röter)(最上:rötest)

seiden(形)(付加語としてのみ)絹(製)の

das Tuch(中)(さまざまな用途のために加工された)布(英:cloth)(複:Tücher) ・sich3格 ein Tuch4格 um den Kopf binden 頭にスカーフを巻く

〜el(名詞につけて中性の縮小名詞をつくる/幹母音の変音を伴う)(→〜chen)「小さい、かわいい」の意

〜chen(中性の縮小名詞をつくる接尾/幹母音がa、o、u、auの場合は変音する)(小・親愛・軽蔑

lassen(自)(形容詞と)(〜に)見える(過去:ließ)(過分:gelassen)(完了:haben)

hübsch(形)かわいらしい、きれいな、感じのよい(英:pretty)(比較:hübscher)(最上:hübschest)

braun(形)褐色の、茶色の ・braune Augen とび色の目

das Auge(中)目、眼、眼球(英:eye)(複:Augen)

„Reinhard!“ rief sie, „wir haben frei, frei! Den ganzen Tag keine Schule, und morgen auch nicht.“

Reinhard(男名)ラインハルト

rufen(他)(〜と)呼ぶ、大声で言う(+引用)

frei haben(自)(人が)休みである(完了:haben)

frei(形)(時間などが)空いている、(仕事などが)休みの(比較:freier)(最上:freist)

ganz(形)(付加語としてのみ)〜中(英:whole) ・den ganzen Tag 一日中

der Tag(男)日、1日、1昼夜(英:day)(複:Tage) ・den ganzen Tag 1日中

kein(冠)(否定冠詞)一つも(少しも)〜ない、一人も〜ない(英:no、not a)

die Schule(女)学校(英:school)(複:Schulen)

morgen(副)あす、あした(英:tomorrow

auch(副)〜もまた、〜も(同様)、同じく(英:also、too)

Reinhard stellte die Rechentafel, die er schon unterm Arm hatte, flink hinter die Haustür, und dann liefen beide Kinder durchs Haus in den Garten und durch die Gartenpforte hinaus auf die Wiese.

stellen(他)(物4格を)立てる、(立てて)置く(英:put)(過去:stellte)(過分:gestellt)(完了:haben)

die Rechentafel(女)計算盤

schon(副)すでに、もう(英:already)

unter(前)(空間的に)(どこに)(3格と)〜の下に、〜の下方に(英:under9

der Arm(男)腕(英:arm)(複:Arme)/(前置詞とともに)物4格 unter den Arm nehmen 物4格を小わきにかかえる

flink(形)敏捷(びんしょう)な、すばしこい

hinter(前)(空間的に)(どこへ)(4格と)〜の後ろへ、〜の裏へ

die Haustür(女)(建物の)玄関のドア、戸口(複:Haustüren)

dann(副)それから、そのあと(英:then)

lief laufen(走る)の過去

hinaus|laufen(自)(外へ)走って出る(完了:sein)

beide(形)(格変化語尾がつくときはbeid-)両方の、両方とも、二人の、二つの(英:both)

durch(前)(4格とともに)(空間的に)〜を通って(通して)、通り抜けて(英:through)

das Haus(中)家、建物(英:house)(複:Häuser)

in(前)(空間的に)(どこへ)(4格と)〜の中へ(英:in)

der Garten(男)庭、庭園(英:garden)(複:Gärten)

die Pforte(女)(小)門、木戸、通用門(英:gate)(複:Pforten)

auf(前)(上面との接触)(どこへ)(4格と)〜の上へ、〜(の上)に

die Wiese(女)草地、牧草地、草原(英:meadow)(複:Wiesen)

Die unverhofften Ferien kamen ihnen herrlich zustatten.

unverhofft(形)思いがけない、予期していなかった

die Ferien(複)(学校などの)休暇(英:vacation)

kam kommen(来る)の過去

zustatten|kommen(自)(人・事3格にとって)役に立つ、有利に働く(完了:sein)

herrlich(形)すばらしい(英:marvelous

Reinhard hatte hier mit Elisabeths Hülfe ein Haus aus Rasenstücken aufgeführt; darin wollten sie die Sommerabende wohnen; aber es fehlte noch die Bank.

hier(副)ここに、ここで(英:here)

mit(前)(3格とともに)(手段/材料)〜で、〜を使って

die Hülfe(女)(古)=die Hilfe(女)助け、助力、援助、救助(英:help)(複:Hilfen)/(前置詞とともに)mit Hilfe 物2格 物2格の助けを借りて

aus(前)(3格とともに)(材料)〜でできている、〜製の(英:from、out of)

der Rasen(男)芝生(英:lawn)(複:なし)

das Stück(中)(全体から切り離された)部分、切片、かけら(英:piece)(複:Stücke/3格のみ:Stücken)

auf|führen(他)(建物・壁など4格を)建てる、築く(過去:führte 〜 auf)(過分:aufgeführt)(完了:haben)

darin(副)その中で、その中に

wollen(助動)(話法の助動詞)(zuのない不定詞とともに)〜するつもりだ、〜しようと思う、〜したい(と思う)(英:will、want)(過去:wollte)(過分:wollen)(完了:haben) ・ich will、du willst、er will

der Sommer(男)(ふつう単)夏(英:summer)(複:Sommer)

der Abend(男)晩、夕方、夜(英:evening)(複:Abende)

wohnen(自)(場所を表す語句とともに)(〜に)住む、住んでいる(英:live)(過去:wohnte)(過分:gewohnt)(完了:haben)

aber(接)(並列接続詞)(相反、対比)しかし、けれども、だが(英:but)

es(代)(人称代名詞)(仮の主語として)(このesに必ず文頭に置かれ、あとに続く実際上の主語が複数なら動詞の人称変化形もそれに従う)

fehlen(自)欠けている、足りない(過去:fehlte)(過分:gefehlt)(完了:haben)

noch(副)まだ、いまだに(英:still)

die Bank(女)ベンチ、腰掛け(英:bench)(複:Bänke)

【参考文献】

みずうみ (対訳シリーズ)』中込忠三、佐藤正樹・編(同学社)

アポロン独和辞典』(同学社)

新コンサイス独和辞典』(三省堂

2018-06-24

『嵐が丘』を原書で読む(第17回)

(テキスト18ページ、1行目〜)

This was Zillah, the stout housewife; who at length issued forth to inquire into the nature of the uproar.

this(代)(指示代名詞)これ、このもの(人)(身近なもの・人をさして/しばしば人を紹介する時に用いて)

Zillah ジラ(女子名)

stout(形)太った、かっぷくのよい

housewife(名)(特に専業の)主婦

who(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人は

at length ついに、ようやく

issue(自)(〜から)出る、発する、流出する、噴出する(forth)

forth(副)(通例動詞に伴って)前へ、見える所へ

inquire into 〜 〜を取り調べる

nature(名)(the 〜)(ものの)本質、特質、特徴(of)

uproar(名)(またan 〜)騒ぎ、騒動

She thought that some of them had been laying violent hands on me; and, not daring to attack her master, she turned her vocal artillery against the younger scoundrel.

think(他)(〜と)思う、考える(+that)

that(接)(名詞節を導いて)(〜)ということ/(目的語節を導いて)

some(代)多少、いくぶん(of)

of(前)(部分を表わして)〜の中の

lay hands on 〜 〜をつかむ、握る、とらえる

violent(形)乱暴な、暴力的な、暴力による

not(副)(不定詞・分詞・動名詞の前に置いてそれを否定して)(〜し)ない

dare(他)あえて(〜)する、思い切って(勇気をもって、生意気にも)(〜)する(+to do)

her(代)彼女の

vocal(形)声の、音声の(に関する)

artillery(名)砲、大砲

against(前)〜にぶつかって

scoundrel(名)悪党、ならず者

‘Well, Mr. Earnshaw,’ she cried, ‘I wonder what you'll have agait next! Are we going to murder folk on our very door-stones? I see this house will never do for me — look at t' poor lad, he's fair choking! Wisht, wisht! you mun'n't go on so — come in, and I'll cure that. There now, hold ye still.’

well(間)(驚き・疑いなどを表わして)まあ、おや、おやっ!、えっ!

Earnshaw(名)アーンショウ(Emily BrontëのWuthering Heightsに登場する、主人公Heathcliffの養家の名)

cry(他)(〜を)大声で叫ぶ、どなる(+引用)

wonder(他)〜かしら(かな)(と思う、と好奇心をもつ、と知りたがる)(+wh.)

what(代)(疑問代名詞)(間接疑問の節や+to doの形で)

you'll you willの短縮形

will(助動)(意志未来を表わして)(2人称を主語とする疑問文に用い、相手の意志を問い、また依頼・勧誘を表わして)〜するつもりですか

have(他)(〜を)(〜の位置・状態に)保つ、保っておく(+目+補)

agate→afoot(形)(事が)起こって、進行中で

next(副)(場所・時間・程度などを表わして)次に、次いで

be going to do(まさに)〜しようとするところだ、〜しかかっている

murder(他)(人を)殺す、殺害する

folk(名)(複数扱い)人々

our(代)我々の、私たちの

very(形)(the、this、thatまたは所有格人称代名詞に伴って強意を表わして)まさしくその、ちょうどその、〜にほかならない

doorstone(名)沓摺石(いし)

see(他)(〜が)わかる、(〜に)気づく(+that)

this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)(⇔that)

will(助動)(話し手の推測を表わして)〜だろう

never(副)(notよりも強い否定を表わして)決して〜ない

do for 〜 〜に役立つ

look at 〜 〜を見る、眺める、熟視する

t'→the

poor(形)哀れな、不幸な、気の毒な(話し手の気持ちからpoorと言っているので、訳の時には「気の毒に」と副詞的に訳すとよい)

lad(名)若者、少年、若いの、にいちゃん(⇔lass

he's he isの短縮形

fair(副)まともに、まっすぐに

choke(自)(感情で)(言葉・声が)詰まる、(人が)口がきけなくなる

wisht→whist(古)シッ、静かに!

mun'n't→mustn't must notの短縮形

must(助動)(否定文で禁止を表わして)〜してはいけない

go on(通例好ましくない)態度をとり続ける、ふるまう ・Don't go on like that. そんな態度をとり続けるのはよせ。

come in 入る、入場する ・Please come in. どうぞお入りください。

and(接)(等位接続詞)(命令法またはそれに相当する語句の後に用いて)もしそうすれば

I'll I willの短縮形

will(助動)(意志未来を表わして)(1人称の主語に伴い、発話時の話者の意志を表わし、約束・諾否・主張・選択などを示して)〜するつもりである、〜しようと思う

cure(他)(病気・病人を)治す、いやす

that(代)(指示代名詞)(前に言及しているか、場面上了解されている物事をさして)そのこと

there(間)(勝利・満足・反抗などを表わして)そら!、それ!、それ見ろ!、そうら(ごらん)!

now(副)(間投詞的に、命令・要求・慰め・威嚇などを表わして)そら、さあ、まあ、おい ・There now, don't worry. さあもう心配しないで。

hold(他)(〜を)(ある状態・位置に)保っておく(+目+補)

ye→you

still(形)静止した、じっとした

With these words she suddenly splashed a pint of icy water down my neck, and pulled me into the kitchen.

with(前)(同時・同程度・同方向などを表わして)〜とともに、〜と同時に

word(名)(しばしば複数形で)(口で言う)言葉

splash(他)(水・泥などを)はねかす、はねかける、飛び散らす

pint(名)パイント(液量の単位/=1/2 quart、1/8 gal、4 gills)0.568リットル

of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)〜の

icy(形)氷のような

down(前)(移動を表わして)(高所から)〜を下って、〜の下方に

my(代)私の

pull into(〜を)(〜に)巻き込む、引きずり込む

Mr. Heathcliff followed, his accidental merriment expiring quickly in his habitual moroseness.

Heathcliff ヒースクリフEmily Brontëの小説Wuthering Heights(1847)の主人公/復讐の鬼)

follow(自)後ろについていく(くる)

his(代)彼の

accidental(形)偶然の

merriment(名)陽気さ、陽気な騒ぎ、おもしろがって笑うこと

expire(自)(期間などが)満了する、終了する

in(前)(状態を表わして)〜の状態に(で)

habitual(形)習慣的な、いつもの

moroseness(名)<morose(形)気難しい、不機嫌な

I was sick exceedingly, and dizzy and faint; and thus compelled, perforce, to accept lodgings under his roof.

sick(形)吐きそうで、むかついて

exceedingly(副)非常に、きわめて(=extremely)

dizzy(形)(人が)目が回る

faint(形)(疲労・空腹・病気などで)気が遠くなって

thus(副)だから、従って(=hence、therefore)

compel(他)(〜に)(〜するように)強(し)いる、無理に(〜)させる(+目+to do)

perforce(副)(古)いやおうなしに、必然的に

accept(他)(事態などを)不本意ながら認める、甘受する

lodging(名)(一時的な)宿泊

under a person's roof 人の家に(泊めてもらって)、人の世話になって

He told Zillah to give me a glass of brandy, and then passed on to the inner room, while she condoled with me on my sorry predicament, and having obeyed his orders, whereby I was somewhat revived, ushered me to bed.

tell(他)(人に)(〜するように)言う、命じる、注意(警告)する(命令を表わす間接話法の表現として用いる)(+目+to do)

give(他)(人に)(飲食物を)出す(+目+目)

glass(名)グラス(コップ)1杯 ・a glass of 〜 コップ1杯の〜

brandy(名)ブランデー

then(副)(しばしばandを伴って、前に続くことを示して)それから、その後で

pass on(〜に)移る(to)

to(前)(方向を表わして)(到達の意を含めて)〜まで、〜へ、〜に

inner(形)内(側)の、内部の(⇔outer) ・an inner room 奥の部屋

while(接)(主節の後方に置き、対照を表わして)ところが一方、しかるに(=whereas)

condole(自)(人に)(〜の)悔やみを言う、弔慰する(with)(on)

with(前)(感情・態度の対象を導いて)〜に対して、〜に

on(前)(関係を表わして)〜について、〜に関する

sorry(形)みじめな、哀れな

predicament(名)苦境、窮地

obey(他)(命令を)遵奉する

order(名)(しばしば複数形で)命令、指令 ・obey one's orders 〜の指図に従う

whereby(副)(関係副詞)(それによって、それに従って)〜する(手段など)

somewhat(副)やや、いくぶん、多少

revive(他)(〜を)生き返らせる、よみがえらせる、回復させる

usher(他)(副詞句を伴って)(人を)(〜へ)先導する、案内する

【参考文献】

Wuthering Heights (Penguin Classics)Emily Brontë・著

嵐が丘(上) (光文社古典新訳文庫)小野寺健・訳

新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)

リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)

リーダーズ・プラス』(研究社)

2018-06-19

『ロミオとジュリエット』(1968)

この週末は、以前DVDで見た『ロミオとジュリエット』をブルーレイで再見した。

1968年のイギリスイタリア映画。

監督は、『ハムレット(1990)』のフランコ・ゼフィレッリ

原作は、言うまでもなくウィリアム・シェイクスピア

音楽は、『ゴッドファーザー』『ゴッドファーザー PARTII』『ナイル殺人事件』のニーノ・ロータ

主演は、レナード・ホワイティングと、『ナイル殺人事件』のオリヴィア・ハッセー

共演は、『2300年未来への旅』のマイケル・ヨーク

ナレーションは、『レベッカ』『ハムレット(1948)』『スパルタカス』『空軍大戦略』『マラソンマン』『遠すぎた橋』の名優ローレンス・オリヴィエ

シェイクスピアの代表作は『ハムレット』で間違いないだろうが、最も名前の通っている作品は『ロミオとジュリエット』ではないか。

仮に、シェイクスピアの名前を知らなくとも、『ロミオとジュリエット』を知らない人はいないだろう。

友人で、文学なんぞに全く興味のないのがいるが、彼は「シェイクスピアって『ロミオとジュリエット』の人?」と僕に尋ねて来たことがある。

僕と『ロミオとジュリエット』との出会いは、高校2年の時だった。

高校の文化祭で、あるクラスが『ロミオとジュリエット』を上演したのである。

噂によると、劇団に所属している女の子がいて、その子がジュリエットを演じるという。

それで、優勝候補と目されていた。

僕のクラスは『リア王』をやるので、当然ながら、ライバル視していた(ちなみに、僕は脚本・演出・主演)。

で、文化祭の当日、その芝居を観て、確かにジュリエット役の子は華があったが、思ったより声量がなかった。

それに、一番ガッカリしたのが、ロミオを演じたのが女の子だったことである。

それも、宝塚の男役みたいな見目麗しい子なら許せるのだが(昔、光源氏を女性が演じた『源氏物語』の映画があった)、どう見ても、無理矢理押し付けられたような…(以下、自主規制)。

おそらく、この年代の男子はシャイだから、誰も立候補しなかったのだろう。

結局、ジュリエット役の女の子は主演女優賞を獲ったが、そのクラスは総合で5位だったと記憶している(なお、『リア王』は準優勝で、僕は主演男優賞をもらった)。

それはさておき、『ロミオとジュリエット』は人気作だから、これまでに何度も映画化されている。

有名な所だけでも、ベネチア映画祭金熊賞を受賞した1954年のレナート・カステラーニ監督作品(1954年)や、最近では、レオナルド・ディカプリオロミオを演じた1996年の現代版なんかもある(これはヒドイ出来だった)。

その中でも、一番知られているのが、このフランコ・ゼフィレッリ監督作品だろう。

何でも、歴代のシェイクスピア映画の中で、最高の観客動員数を記録したらしい(おそらく、今でも破られていないと思う)。

まあ、下世話な見方をすると、皆、オリヴィア・ハッセーのヌードが目当てだったような気もしなくはないが。

パラマウント映画

テクニカラー、ワイド。

画質はイマイチ。

舞台はイタリアヴェローナ

「二つの名家が遺恨を深め、ついに血で血を洗う争いに発展し、その家の子の二人も不幸な結末を招く」という旨のナレーション(ローレンス・オリヴィエ)。

賑やかな市もある広場に若者達がやって来る。

モンタギュー家とキャピュレット家のケンカが始まり、どちらからともなく剣を抜く。

大勢が入り乱れて乱闘になる。

そこへ領主がやって来る。

領主は怒り、「今度騒ぎを起こせば死罪だ!」と言い渡す。

モンタギュー家の一人息子ロミオ(レナード・ホワイティング)が帰宅する。

優男だ。

日本なら、ジャニーズか何かがやるんだろう。

ロミオの心は沈んでいる。

原因は恋(相手はジュリエットではない)なのだが、モンタギューとキャピュレットの争いにも心を痛めている。

一方、キャピュレット家の一人娘ジュリエット(オリヴィア・ハッセー)はもうすぐ14歳。

つまり、今なら中学生だ。

オリヴィア・ハッセーも撮影時は未だ16歳であった。

だから、ものすごく幼く見える。

エキゾチックな感じはするが。

今の日本なら、AKBか何かがやるのか。

おぞましい。

本作の現代版が何故つまらないかと言うと、マセガキの恋愛ゴッコにしかならないからである。

中学生が「好きよ、嫌いよ」と言っている話しを、名作として見ろというのが無理だろう。

で、キャピュレット家に求婚者のパリス伯爵(ロベルト・ビサッコ)がやって来る。

ジュリエットは、結婚の申し出に戸惑うが、特に疑問も持たずに承知する。

当時の女性は、14歳位で、親の決めた相手と結婚するのが普通だったということだな。

夜、仮面舞踏会に向かうロミオ達。

マキューシオ(ジョン・マケナリー)が「夢」について語っている。

本作は、オーディションで選ばれたという主役の二人は、はっきり言って下手だが、脇役が芸達者なので、何とか見られる。

キャピュレット家に着いたロミオは、仮面を着けて夜会に紛れ込む。

そこで、ジュリエットを見付けて、一目ぼれしてしまう。

キャピュレット家の若者が、モンタギュー家の人間が来ていると目を付ける。

更に、ロミオがジュリエットと踊り出したのを見て起こるが、ジュリエットの両親に「騒ぎにするな」とたしなめられる。

会場内で、例の甘美なテーマ曲を朗々と歌う若者レオナード。

仮面のロミオを目で追うジュリエット。

ロミオは物陰から彼女に近付き、手の甲にキス。

言葉を交わし、口付けする二人。

この時点では、お互いのことを何も知らない。

ロミオは、ジュリエットの乳母と話す。

それで、ジュリエットがキャピュレット家の人間だと知る。

一方、ジュリエットも乳母にロミオの名を聞きに行かせる。

ジュリエットは「憎い敵に恋をしてしまった」と。

夜会の終了後、去りかねたロミオは庭へ。

バルコニーにジュリエットの姿を認め、遠巻きから眺める。

ジュリエットは、例の誰でも知っているセリフ「おお、ロミオロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」を。

それを聞いたロミオは、ジュリエットに愛を誓う。

ジュリエットは、もしもロミオの愛が本物なら、「明日、結婚の使いを出す」と。

そんなことを言っている間に、もう明け方になっている。

有頂天で走り出すロミオ

彼はそのまま、ロレンス神父(ミロ・オーシャ)の教会を訪ねる。

これまではロザラインという娘に夢中だったロミオに対し、神父は「彼女のことを想って寝ていないのか?」と尋ねる。

しかし、ロミオは「そんな名はもう忘れた」と言う。

ロミオも大概の軽薄野郎である。

彼は神父に、「キャピュレットの娘に恋をした。今日、結婚の儀を」と告げる。

神父は呆れる。

そりゃそうだろう。

それでも、「この結婚に私も力を貸そう。うまく行けば、両家の和解につながる」と、協力を約束する。

今なら、中学生位の男子と女子が、昨日知り合ったばかりで「結婚する」なんて言い出したら、笑い話しにしかならないが。

結婚に対する考え方が違い過ぎる。

その頃、キャピュレット家のティボルト(マイケル・ヨーク)がロミオに対し、手紙で決闘を申し込んでいた。

が、ロミオは黙殺している。

ロミオは広場にやって来て、マキューシオら友人と会う。

友人達は、ロミオの(ロザラインに対する)失恋を心配しつつ、からかう。

そこへ、ジュリエットの乳母がロミオを探しに来る。

周りの友人達は、キャピュレット家のオバサンが来たもんだから、散々バカにする。

このバカに仕方が、実に下品だ。

まあ、両家の対立は、感情の問題だから、どうしようもないのだろう。

で、乳母はロミオを建物の中へ呼び、「お嬢様の使いで来た。たぶらかす気なら許さない」と告げる。

ロミオは、「頼む。私は真剣だ。昼過ぎにロレンス神父の所へ来てくれ。そこで結婚する」と伝える。

乳母は「貴族のパリスがお嬢様を狙っています」と。

どうやら、彼女はロミオの味方になったようだ。

一方、ジュリエットは乳母の帰りを、今か今かと待っている。

乳母が戻って来るや、「あの人は何て言ったの?」

「急いでロレンス神父の所へ行って、あの方と式を。」

そうして、ロミオとジュリエットは、ロレンス神父の教会で結婚式を挙げる。

ここで「Intermission」。

当時は、2時間20分位の映画に休憩があったんだな。

で、後半は、悲劇に転がって行く訳だが。

今見ると、ツッコミどころはたくさんある。

一番悪いのは神父だろう。

まあ、友人の死に逆上して相手を殺してしまったロミオも大概だが。

今なら殺人罪だよ。

剣を抜いているから、傷害致死ではないだろう。

結婚したばかりで殺人って。

若気の至りと言えなくもないが。

それでも、シェイクスピアの原作自体は、既に古典として固まっているから、何も言うまい。

本作は、古典的な格式ばった演出ではなく、現代風の青春映画に仕立て上げたシェイクスピア映画の走りである。

その試みは、果たして成功したと言えるだろうか。

確かに、古典に対する敷居は低くなっただろうが、低ければいいというものでもない。

昨今のシェイクスピアは、舞台も映画も、奇をてらった演出でないと評価されないようで、もう観に行く気も起きないのが多いが。

なお、本作は、当時16歳のオリヴィア・ハッセーのヌードが収録されているので、日本の法律では「児童ポルノ」に当たる。

シェイクスピアの古典を児童ポルノ扱いする国家権力に対し、断固抗議する。

それにしても、もう半世紀も前の映画なんだな。

8倍すれば、ほぼシェイクスピアの生きていた時代だよ。

アカデミー賞撮影賞、衣装デザイン賞受賞。

D

2018-06-18

「スキーピオーの夢」を原文で読む(第15回)

(テキスト15ページ、17行目〜)

(22) Ex hīs ipsīs cultīs nōtīsque terrīs num aut tuum aut cūiusquam nostrum nōmen vel Caucasum hunc quem cernis transcendere potuit vel illum Gangem trānatāre?

ex(前)(+奪格)(空間的)〜から、〜より

hic haec hoc(形)(指示詞)この、ここの、ここにある

ipse -a -um(強意代名詞)自ら、自身

cultus -a -um(形)(完了分詞)耕された

nōtus -a -um(形)(完了分詞)知られた、既知の

-que(前接辞)(2語を並列する場合、2番目の語に付ける/語群や文の場合はその先頭の語に付ける)〜と〜、また、そして

terra -ae(女)土地、国土

num(疑問副詞)(否定の答を予期する疑問文を導いて)〜ではないだろうね

aut(接)aut 〜 aut 〜 〜あるいは〜

tuus -a -um(所有形容詞)あなた(きみ、おまえ)の

cūiusquam→cūjusquam

quisquam quisquam quisquam(代)(疑問文・条件節中で)だれか、何か

nōs(代)(複数)我々、私たち

nōmen -minis(中)名、名前

vel(接)それとも、あるいは/(二つ重ねて)vel 〜 vel 〜 〜にも〜にも

Cancasus -ī(男)カウカスス、カフカス山脈黒海カスピ海の間の山脈)

quī quae quod(代)(関係代名詞)(+直説法)(事実関係)〜するところの(人・もの)

cernō -ere crēvī crētum(他)識別する、見わける(+物・事の対格)

transcendō -ere -endī -ensum(他)登り越える、向こう側へ行く、渡る

possum posse potuī(他)(〜することが)できる(+不定法)

ille illa illud(指示形容詞)あの、その

Gangēs -is(男)ガンゲース、ガンジス川(Indiaの大河)

trānatō -āre -āvī -ātum(他)向こう岸まで泳ぐ、泳いで渡る

Quis in reliquīs orientis aut obeuntis sōlis ultimīs aut aquilōnis austrīve partibus tuum nōmen audiet?

quis quis quid(代)(疑問詞)だれ、何、どれ

in(前)(+奪格)(空間的)〜の中に、〜において、〜に

reliquus -a -um(形)その他の

oriens(形)(現在分詞)東の

obeō -īre -iī -itum(自)(天体が)沈む

sōl sōlis(男)太陽

ultimus -a -um(形)(最上級)最も遠方の、一番端の

aquilōnis(男)北風

auster -trī(男)南風(特にアフリカから地中海に向かって吹く熱風)

-ve(前接辞)あるいは、または

pars partis(女)地方、地域

audiō -īre -īvī -ītum(他)聞き知る(+物・事の対格)

Quibus amputātīs cernis profectō quantīs in angustiīs vestra sē glōria dīlātārī velit.

quī quae quod(代)(関係代名詞)(連結詞として)=et is、sed isなど

amputō -āre -āvī -ātum(他)切り離す

profectō(副)確かに、疑いなく、本当に

angustus -a -um(形)狭い、窮屈な

vester -tra -trum(所有形容詞)あなた方の

suī再帰代名詞)(属格)(対格:sē)彼(彼女・それ・彼ら・それら)自身

glōria -ae(女)名声、評判

dīlātō -āre -āvī -ātum(他)(反復)広げる、拡張する

volō velle voluī(他)欲する、望む、願う(+対格+不定法)

Ipsī autem quī dē nōbīs loquuntur, quam loquentur diū?

autem(接)さらに、そのうえ

(前)(+奪格)(関連・限定)〜に関して、〜について

loquor -quī locūtus sum(自)(形式受動相)話す、ものを言う(de 物・事の奪格)

quam(副)(疑問詞)どれほど、どの程度

diū(副)長く、長い間

【参考文献】

ラテン語を読む キケロ―「スキーピオーの夢」』山下太郎・著(ベレ出版)

羅和辞典 <改訂版> LEXICON LATINO-JAPONICUM Editio Emendata水谷智洋・編(研究社)

2018-06-17

イギリス文学史I(第6回)『ユートピア』(その2)

英文読解

それでは、『ユートピア』の第1巻の冒頭部分を読んでみましょう。

下に「英文」「日本語訳」を記しました。

「英文」には、語注も付けてあります。

THOMAS MORE

More, Sir Thomas(名)モア(1478-1535/英国の政治家・作家/カトリック教会における聖人

Utopia

Utopia(名)ユートピア(Sir Thomas More作Utopia(1516)中に描かれた理想郷

(1)

(英文)

(テキスト23ページ、1行目)

BOOK ONE

book(名)巻、編 ・Book I 第1巻(book oneと読む)

one(形)(基数の1)(名詞の後に置いて)(一連のものの中の)1番目の ・Lesson One(=The First Lesson)第1課

(日本語訳)

第一巻

(2)

The most invincible Henry, King of England and eighth of that name, a prince richly endowed with all the qualities of an outstanding ruler, recently had a dispute with Charles, the most serene Prince of Castile, over matters that were far from trifling, and sent me as ambassador to Flanders to discuss and resolve them. I was to accompany and assist that exceptional man Cuthbert Tunstall, whom the King, to general acclaim, has recently appointed Master of the Rolls.

most(副)(主に2音節以上の形容詞・副詞の最上級を作って)最も、いちばん

invincible(形)征服できない、無敵の(=unbeatable)

Henry(名)ヘンリー(イングランド王の名) ・Henry VIII(在位/1509-47)(国教会を設立/Elizabeth Iの父)

England(名)イングランドGreat Britain島のScotlandWalesを除いた部分)

eighth(代)(序数の第8番)(通例the 〜)第8番目の人(もの)

that(形)(指示形容詞)(対話者同士がすでに知っているもの・人をさして)あの(⇔this)

prince(名)(通例単数形で)(その道の)第一人者、大家

richly(副)豊富に、豊かに、十分に

endow(他)(人に)(才能・特権などを)賦与する、授ける(通例受身)(with)

with(前)(委託を表わして)(もの)を(ゆだねて)

all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな

quality(名)(通例複数形で)(もの・人などの)特質、特性、特色(of) ・the qualities of a king 王者の(備えるべき)特性

outstanding(形)傑出した、実にすぐれた、抜群の

ruler(名)支配者、統治者、主権者

recently(副)最近、近ごろ、このごろ(現在完了か過去形の動詞とともに用い、通例現在時制の動詞とは用いない)

have(他)(通例動作・行為などを表わす不定冠詞付きの名詞を目的語として)(〜)する、(〜を)行なう

dispute(名)紛争、争議、抗争(with)(over)

with(前)(接触・交際・結合などを表わして)〜と ・discuss a problem with a person 人と問題を話し合う ・join A with B AをBに接合する

Charlesフランス王)シャルル

serene(形)(ヨーロッパ大陸で王侯(王妃)に対する敬称に用いて)高貴な

prince(名)(しばしばPrince)(大国に守られた公国・小国の)王、君主、公 ・the Prince of Monaco モナコ

Castile(名)カスティリヤ(スペイン中部の古王国)

over(前)〜に関して ・talk over the matter with 〜とその事について話し合う

that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(〜する(である))ところの/(主語として)/(他動詞・前置詞の目的語として)(前置詞は関係詞節内の動詞の後に置かれる)

far from 〜 少しも〜でない

trifling(形)くだらない、取るに足らない

send(他)(通例副詞句を伴って)(人・軍隊などを)行かせる、やる、派遣する

as(前)〜として(続く名詞が官職・役目・資格・性質など抽象的概念を意味している時には無冠詞

ambassador(名)(公式または非公式の)使節

to(前)(方向を表わして)(到達の意を含めて)〜まで、〜へ、〜に ・go to 〜に行く

Flanders(名)フランドルフランダースベルギー北西部の5州とフランス北部の小地域を含み北海に臨む地方)

resolve(他)(問題・困難などを)解決する(=solve)

be(助動)(be+to doで)(義務・命令を表わして)〜する義務がある、〜しなければならない

accompany(他)(人が)(別の人に)同行する、ついていく

assist(他)(人を)手伝う、援助(助力)する

that(形)(指示形容詞)(関係詞節による限定をあらかじめ指定して)あの(日本語では訳さないほうがよい)(⇔this)

exceptional(形)並はずれた、非凡な、すぐれた(=extraordinary)

man(名)(修飾語句を伴って)(特定の仕事・性格などの)男性(of)

Tunstall(名)タンスタル Cuthbert Tunstall(1474-1559)(イングランドの聖職者/教会や官界の顕職につき、国王の至上権に黙従したが、カトリックの教義を奉じたため、Edward6世下で官位を奪われ、Mary1世の即位で回復し、Elizabeth1世下で再び失った)

whom(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人(たち)を(に)(whomの省略は不可)

to(前)(結果・効果を表わす句を導いて)

general(形)世間一般の、社会の大部分に共通する、普通の

acclaim(名)絶賛

appoint(他)(〜を)指名する、任命する(=assign)(+目+補)/(+目+to do)

master(名)(各種団体の)会長、団長、院長

roll(名)(the Rolls)保管書類収蔵所(もとはthe Master of the Rollsの、今はPublic Record Officeの所管) ・the Master of the Rolls 記録長官(控訴院の専任の裁判官の中で最上位の裁判官

軽少ならざるある問題について、王者の万徳に秀でた不敗のイギリス王ヘンリー八世は最近明澄なるカスティリア公シャルルと争いたまい、その討議、解決のために、私を交渉委員として、抜群の人物カスバート・タンスタルの同伴、同僚として、フランダースに派遣された。タンスタルはみなの大好評のうちに王の大法官官房書記長に任命されたばかりの人だった。

(3)

I'll say nothing in praise of him, not because I'm afraid that the testimony of a friend will carry little weight, but because his integrity and learning are too widely celebrated for it to be necessary, unless, as the proverb has it, I wished to show the sun with a lantern.

I'll I willの短縮形

will(助動)(意志未来を表わして)(1人称の主語に伴い、発話時の話者の意志を表わし、約束・諾否・主張・選択などを示して)〜するつもりである、〜しようと思う

in(前)(行為・活動・従事を表わして)〜して、〜に従事して

praise(名)称賛、ほめる(られる)こと ・in praise of 〜をほめて、たたえて

of(前)(目的格関係を表わして)(しばしば動作名詞または動名詞に伴って)〜を、〜の

not(副)(述語動詞・文以外の語句を否定して)〜でなく

because(接)(副詞節を導いて)(なぜなら)〜だから(である)、〜なので

I'm I amの短縮形

afraid(形)(〜を)心配して、気づかって(よくない事の起こる可能性のある時に用いる)(+that)

that(接)(名詞節を導いて)(〜)ということ/(形容詞・自動詞などに続く節を導いて)(文法的に副詞節とも考えられるが、意味上他動詞相当句と考えて名詞節に入れる)/(主語節を導いて)/(目的語節を導いて)

testimony(名)(法廷で行なう)証言、口供書(of)

of(前)(主格関係を表わして)(動作の行為者、作品の作者を表わして)〜が、〜の

will(助動)(話し手の推測を表わして)〜だろう

carry weight(意見などが)影響力がある、重きをなす

little(形)(不可算の名詞を修飾して)(aをつけないで否定的用法で)少ししかない、ほとんどない(⇔much)

but(接)(等位接続詞)(前の否定語・句・文と照応して)(〜ではなく)て(not A but Bで「AではなくBである」の意を表わす表現)

his(代)彼の

integrity(名)高潔、誠実、清廉

learning(名)(またa 〜)学問、学識、知識

too(副)(形容詞・副詞の前に置いて)(〜するには)〜すぎる、非常に〜で(〜する)ことができない(for)(to do)

widely(副)広く、広範囲に

celebrated(形)名高い、有名な

for(前)(不定詞の主語関係を示して)〜が(〜する)

unless(接)(否定の条件を表わして)〜でない限り、もし〜でなければ(通常if 〜 notと言い換えられるが、現実とかけ離れた仮想の出来事・状態とともに用いることはまれ)

as(接)(様態・状態を表わして)〜のように

proverb(名)諺(ことわざ)、金言 ・as the proverb says 諺に言うとおり

have it(〜と)表現する、言う、確言する、主張する ・As Kant has it 〜 カントの言うように〜

wish(他)(〜)したい(と思う)(+to do)

show(他)(〜を)見えるようにする

with(前)(道具・手段を表わして)〜を用いて、〜で

lantern(名)手さげランプ、角灯、カンテラ

この人の賞讃に私はよけいなことばを費やすまい。それは、友情からの証言というものは人に信用されまいという恐れからではなく、彼の徳と学識は私の筆舌に尽くせぬほど偉大であり、また私が賞めたてる必要もないほどよく知られているからである。「太陽を蝋燭の光で照らし出そうとする」、という俚諺どおりのことをやっていると思われたいなら別であるが。

(4)

Those appointed by the Prince to deal with us, all of them men of high standing, met us at Bruges as arranged.

those(代)(指示代名詞)(修飾語句を伴って)(〜の)もの、人々(⇔these)

appoint(他)(〜を)指名する、任命する(=assign)(+目+to do)

deal(自)(人が)(問題・人を)処理する、扱う(with)

all(代)(複数扱い)(同格にも用いて)だれも、みな(通例代名詞の場合に用いる/代名詞の前に来る時はall of 〜の形式をとる)

man(名)(修飾語句を伴って)(特定の仕事・性格などの)男性(of)

of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)〜の

high(形)(身分・地位など)高い、高貴な

meet(他)(折衝などのため)(人と)面会(会見)する

Bruges(名)ブリュージュベルギー北西部西フランドル(West Flanders)州の州都

arrange(他)(事を)前もって整える、用意しておく、手配する、準備する

相手方の主君の命で交渉役をおおせつけられていた委員たちは〔予定されていたとおり〕ブルージュで私たちと会見した。みな優れた人たちだった。

(5)

Their principal and leader was the Burgomaster of Bruges, a very striking figure. But their spokesman and guiding spirit as Georges de Themsecke, the Provost of Cassel, whose eloquence derived as much from natural flair as from training; he was deeply learned in the law and, thanks to his wit as well as long experience, a consummate negotiator.

their(代)彼ら(彼女ら)の

principal(名)長官、社長

leader(名)首領、主将

burgomaster(名)(オランダオーストリアドイツベルギーなどの)市長

striking(形)目立つ、著しい

figure(名)(通例修飾語を伴って)(重要な)人物

spokesman(名)スポークスマン、代弁者、代表者

guiding(形)目印(指針)となる

spirit(名)(修飾語を伴って)(〜の性格(気質)を持った)人、人物 ・a leading spirit 指導する(先頭に立つ)人

Georges ジョージ、ジョルジュ(男子名)

de(前)〜の(of)、〜から(from)、〜に属する(母音の前ではd'/フランス(系)人などの姓で用いられ、元来は出身地を示す)

provost(名)(通例Provost)(大聖堂の)主席司祭

Cassel カッセルドイツ中部Hesse州の市)

whose(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人(たち)の

eloquence(名)雄弁、能弁

derive(自)(〜に)起源を持つ、由来(派生)する、(〜から)出ている(from)

as much 〜 as 〜 〜と同じ程度に〜

from(前)(出所・起源・由来を表わして)〜から(来た、取ったなど)

natural(形)生まれつきの、生得の

flair(名)(またa 〜)才能

deeply(副)深く

learned(形)学問(学識)のある、博学な、博識な ・She's learned in the law. 彼女は法律に通じている。

in(前)(性質・能力・芸などの分野を限定して)〜において、〜が

thanks to 〜(前置詞的に)〜のおかげで、〜のせいで、のため(=owing to)

wit(名)(また複数形で)理知、知力

as well as 〜 〜はもちろん、〜も〜も

long(形)(時間・過程・行為など)長い、長期にわたる(⇔short)

consummate(形)熟練した

negotiator(名)交渉者、折衝者

ブルージュの市長で豪邁なる人物がむこうの委員団の団長、頭領だったが、交渉の指導役、スポークスマンとなったのはカッセルの司教座大聖堂司祭団長のゲオルグ・デ・テムゼッケである。この人は修練によってのみならずたしかに生まれつき弁論に秀で、さらに法律にくわしく、また日ごろの実務経験のみならず天与の才能によって外交交渉での第一級の達人であった。

(6)

When, after several meetings, there were still various points on which we failed to agree, they took leave of us for some days and went to Brussels to consult with the Prince.

when(接)〜する時に、〜時(時を表わす副詞節をつくる)

there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「〜がある」の意になる)/(beを述語動詞として)

still(副)それでも(やはり)、なお(=nonetheless)

various(形)いくつかの、種々さまざまの

point(名)(通例単数形で)問題(点)、論点

on(前)(関係を表わして)〜について、〜に関する

which(代)(関係代名詞)(制限的用法で)〜する(した)(もの、事)(通例「もの」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(目的格の場合)

fail(自)(人・ものが)失敗する、しくじる(⇔succeed)(+to do)

take leave of 〜 〜にいとまごいする、あいさつをして(〜と)別れる

for(前)(時間・距離を表わして)〜の間(ずっと) ・for two months 2か月間

to(前)(到達の意を含めて)〜まで、〜へ、〜に ・go to 〜に郁

Brussels(名)ブリュッセルベルギー首都/ECの本部がある)

consult(自)(人と)(〜のことで)協議(相談)する、打ち合わせる、話し合う(with)

数回会合したにもかかわらず、いくつかの点について双方十分に同意できず、彼らは数日の猶予をということでわれわれに別れを告げ、カスティリア公の裁可を仰ぐためにブリュッセルにおもむいた。

(7)

In the meantime, as my own affairs dictated, I made my way to Antwerp.

in the meantime(2つのことが起こる)その間に

as(接)(原因・理由を表わして)〜だから、〜ゆえに

my(代)私の

affair(名)(するべき)仕事、用事

dictate(自)(通例否定文で)(人に)指図する

make one's way 進む、行く

Antwerp(名)アントワープアントウェルペンベルギー北部の貿易・工業都市で同名州の州都

この間私は〔用事があって〕アントワープに出かけた。

(8)

Among those who visited me during my stay there, none was more welcome than Peter Giles, a native of that city, where he was much respected and already occupied high office, being fitted for the very highest; indeed, it's hard to tell whether this young man stands out more for his learning or for his moral character.

those(代)(whoなどの関係代名詞を伴って)(〜な)人々

who(代)(関係代名詞)(制限的用法で)〜する(した)(人)(通例「人」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(主格の場合)

during(前)(特定期間の)〜の間のいつか、の間に(の)

stay(名)(通例単数形で)滞在、逗留(とうりゅう)

none(代)だれも〜ない

more(副)(主に2音節以上の形容詞・副詞の比較級をつくって)(〜より)もっと(than)

welcome(形)(客など)歓迎される

Peter(名)ピーター(男性名/愛称Pete)

Giles ジャイルズ(男子名)

native(名)(〜の)生まれの人(of)

where(副)(関係副詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてそこに(で)

much(副)(過去分詞を修飾して)大変に、非常に、大いに

respected(形)尊敬されている、りっぱな

occupy(他)(地位・役を)占める、(職に)つく(=hold) ・occupy a high position 高い地位についている

office(名)職務、任務、役目

fitted(形)(〜に)適して、ふさわしく(for)

for(前)(用途・指定・適否を表わして)〜に適した

very(形)(the、this、thatまたは所有格人称代名詞に伴って強意を表わして)まさしくその、ちょうどその、〜にほかならない

it's it isの短縮形

it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)

hard(形)難しい、骨の折れる(⇔easy)(+to do)

tell(他)(can、couldなどを伴って)(〜を)知る、わかる(+wh.)

this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)(⇔that)

stand out(他より)(人・ものが)際立つ、すぐれている

more(副)(muchの比較級)もっと、より多く(⇔less)

for(前)(感情・趣味・適性などの対象を表わして)〜に対して(する)、〜を理解する

moral(形)(善悪の基準になる)道徳(上)の、倫理的な ・moral character 徳性、品性

character(名)人格、品性

同地に滞在中やってきた訪問客のなかで、私がいつも他のだれよりもありがたく思って迎えたのはアントワープ生まれのピーター・ヒレスであった。彼はあそこの市民のあいだで信用厚く、名望ある地位にあり、かつ最高の名誉を受けるに値する人物である。この若い人物は学問、品行のいずれにおいてより秀でているか、そう聞かれると私は返答に困るほどである。

(9)

For he's truly upright, exceptionally well-read and considerate to all, while to his friends he is so open-hearted, so warm, trustworthy and sincere, that you would be hard put to it to find anyone anywhere whom you might rate his equal in the attributes of friendship.

for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は〜だから(=as、since)

he's he isの短縮形

truly(副)(特に形容詞を修飾して強意的に)本当に、実に、まったく

upright(形)正しい、正直な、高潔な

exceptionally(副)並はずれて、非常に

well-read(形)博識の

considerate(形)思いやりのある(⇔inconsiderate)

to(前)(行為・作用の対象を表わして)〜に対して、〜に

all(代)(複数扱い)すべての人々

while(接)(主節の後方に置き、対照を表わして)同時に(=whereas)

so(副)(程度・結果を表わして)(so 〜 that 〜で)(順送りに訳して)非常に〜なので〜

open-hearted(形)腹蔵のない、率直な

warm(形)温情のある、思いやりのある

trustworthy(形)信頼(信用)できる、当てになる(=reliable)

sincere(形)(人が)うそ偽りのない、言行一致の、正直な、誠実な(⇔insincere)

that(接)(副詞節を導いて)(so 〜 thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)〜なので、〜(する)ほど

would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(条件節の内容を言外に含め陳述を婉曲(えんきょく)にして)〜であろう、〜でしょう

be hard put to it ひどく困っている(+to do)

find(他)(探して)(人・ものを)見つけ出す

anyone(代)=anybody(代)(疑問文・条件節で用いて)だれか

anywhere(副)(疑問文・条件節に用いて)どこかに(へ)

whom(代)(関係代名詞)(制限的用法で)〜する(ところの)(人)(「人」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)

might(助動)(条件節の内容を言外に含めた主節だけの文で)(現在の推量を表わして)〜するかもしれない

rate(自)(〜と)見積もられる、評価される(+補)

equal(名)(地位・能力・年齢など)同等(対等)の人(in)

in(前)(範囲を表わして)〜において、〜内で

attribute(名)属性、特性、特質

というのは、彼は道徳的に最高の人物であると同時に博学多識、そのうえすべての人にたいして率直、友人にたいしては非常に開放的で、愛情、忠実、誠意に満ちた心の持主なので友情のすべての点で彼と比較できる人をさがし出すことは困難なほどだからである。

(10)

He has a rare modesty; no one is less given to deceit or better combines prudence with simplicity. On top of all this, his talk is so entertaining and witty without a hint of malice that, although I had been away for more than four months, my longing to see my own country again, and with it my home, my wife and my children, was eased by his engaging company and delightful conversation.

have(他)(部分・属性として)(特徴・性質・能力などを)もっている

rare(形)まれな、珍しい、めったにない(⇔common

modesty(名)謙遜(けんそん)、謙虚、慎み深さ

no one(代)だれも〜ない

less(副)(動詞を修飾して)より少なく

given(形)(〜に)ふけって(to)

deceit(名)虚偽(=deception)

better(副)(wellの比較級)いっそう大いに、もっと

combine(他)(別々の性質などを同時に)兼ねる、兼ね備える(with)

prudence(名)思慮分別、賢明さ

simplicity(名)純真、無邪気、気取りのないこと

on top of 〜 〜に加えて、〜の上に

this(代)(指示代名詞)(すぐ前に言われたことをさして)こう、こういう、このこと

talk(名)話、談話、会話

entertaining(形)愉快な、おもしろい

witty(形)機知に富んだ

hint(名)(a 〜)わずか(=trace) ・a hint of 〜 わずかの〜

of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)〜の

malice(名)(相手を傷つけようとする意図的な)悪意、敵意、恨み

although(接)〜であるが、〜だけれども、とはいえ

away(副)(位置を表わして)別の所にいて、不在で

more than 〜 〜より多い、〜を越える

four(形)(基数の4)4の、4個の、4人の

longing(名)(〜したいという)切望、熱望 ・one's longing to see one's native country 故国を見たいという願い

country(名)(通例one's 〜)本国、祖国、故国

with(前)(同時・同程度・同方向などを表わして)〜とともに、〜と同時

home(名)(生活の場としての)家、わが家、自宅(通例家族の生活・だんらんのイメージを持つ)

ease(他)(苦痛・心痛・緊張などを)やわらげる、軽くする、緩和する

engaging(形)人を引きつける、魅力のある

company(名)つき合い

delightful(形)楽しい、愉快な

conversation(名)会話、談話、対話、座談、会談

彼は珍しいほど慎ましやかで、彼ほどみせかけと縁の遠いものはいないし、これ以上の賢明さを秘めた単純さの持主はおらず、また彼の話は非常に軽妙酒落であり、かつ、邪気のない機知に富んでいる。だから彼との楽しいつきあいと魅力ある会話のおかげで、故郷、わが家、妻子らへの私のホームシックはずいぶんやわらいだ。じつは私は〔すでに四ヵ月以上も家を留守にして〕彼らとの再会の念にかられて居ても立ってもいられないほどだったのである。

(11)

One day I attended Mass in Notre Dame, the most handsome and frequented church in Antwerp, and after the service had ended I was preparing to return to my lodgings when I saw Peter talking with a stranger, a man verging on old age, sunburnt, with a shaggy beard and a cloak slung carelessly over his shoulder. It struck me from his face and attire that he was a ship's captain.

one(形)(基数の1)(時を表わす名詞の前に用いて)ある ・one day(過去か未来の)ある日

day(名)(副詞的に)〜日 ・one day(過去の)ある日

attend(他)(儀式に)参列する

Mass(名)ミサ ・attend Mass ミサに参列する

Notre Dame(名)聖母マリア

handsome(形)(建物など)見事な、堂々とした

frequent(他)(場所に)しばしば行く、よく行く(集まる)

church(名)(キリスト教の)教会(堂)、聖堂

in(前)(全体との関係を表わして)〜の中で、〜のうちで

after(接)(〜した)後に(で)、〜してから

service(名)礼拝(の式)、お勤め

end(自)終わる、済む

prepare(他)(〜を)準備する、用意する(+to do)

lodging(名)宿所、宿

when(接)(主節の後にwhenの導く従属節がくる時文脈上で)(〜すると)その時(主節が進行形または過去完了形で表わされる場合に用いられる)

see(他)(〜を)見る、(〜が)見える(+目+doing)

talk(自)(人と)話をする、話し(語り)合う(with)

stranger(名)(見)知らぬ人、他人

verge(自)(〜の状態に)近づく、今にも(〜に)なろうとする(=border)(on)

on(前)(近接を表わして)〜に接して、〜に面して

sunburnt(形)小麦色に日焼けした

with(前)(所持・所有を表わして)〜を持って(た)、〜のある

shaggy(形)(髪・毛など)もじゃもじゃの、くしゃくしゃの

beard(名)あごひげ

cloak(名)(ゆったりとした)そでなしの外套(がいとう)、マント

slung(動)slingの過去形・過去分詞

sling(他)(通例副詞句を伴って)つり下げる、ぶら下げる、つり包帯でつる(しばしば受身) ・sling one's coat over one's shoulder 上着を肩にひっかける

carelessly(副)ぞんざいに

over(前)(位置を表わして)(接触した位置を表わして)〜の上をおおって ・over one's shoulders 肩にかけて

strike(他)(考えが)(人の)心に浮かぶ ・It strikes me that 〜. 〜のような気がする。

from(前)(根拠・動機を表わして)〜から(判断して)

face(名)顔色、顔つき

attire(名)装い、服装、衣装

that(接)(名詞節を導いて)(〜)ということ/(主語節を導いて)

captain(名)船長、艦長、艇長

ある日、わたしはたいそう美しい建築で、おおぜいの人でいっぱいな聖母の教会でのミサに参列した。礼拝が終わって宿に帰りかけていたとき、私はピーターがひとりの見知らぬ男と話しているのをふと見かけた。この男は老年に近く、日焼け顔で長いあごひげをたくわえ、外套をさりげなく肩にひっかけて着ており、顔つきや服装からは船乗りと見えた。

(12)

When Peter caught sight of me he came over and greeted me. I was about to respond when he drew me aside and, pointing to the man with whom I had seen him talking, muttered, ‘Do you see this character? I was just about to bring him over to you.’

catch(他)(感覚を)感じとる、とらえる ・catch sight of 〜を見つける

sight(名)(またa 〜)見ること、見えること ・catch sight of 〜を見つける

come over やってくる、渡来する

greet(他)(口頭・動作・書面などで)(人に)あいさつする、(人を)迎える

about(形)今にも(〜)しかけていて(+to do)

respond(自)返答する、応答する

draw(他)(副詞句を伴って)(ものを)(ある方向に)引き寄せる ・He drew me aside.(こっそり話をするために)彼は私をかたわらに引き寄せた。

point(自)(〜を)指さす、さす(to)

mutter(他)低い声でぶつぶつ言う(+引用)

do(助動)(be以外の動詞の疑問文に用いて)

character(名)(修飾語を伴って)(〜な)人、人物

bring over(人・ものを)(遠くから)連れて(持って)くる

ピーターは私を見つけるやいなや、こちらにやって来て挨拶し、それに答えようとした私をちょっとかたわらにひきよせて〔私がさきほど見た彼の話し相手のほうを指さしながら〕言った。「あの人のことですがね。私は今ちょうどあの人をあなたにお引きあわせしようと思っていたのです」。

(13)

‘He would have been most welcome for your sake,’ said I.

most(副)(通例theを用いないで)はなはだ、非常に

your(代)あなた(たち)の、君(ら)の

sake(名)(for the sake of 〜、for 〜's sakeで)〜のための(に)(for the sake of 〜、for 〜's sakeは目的・理由を表わす)

say(他)(人に)(〜と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+引用)

私は言った「私としてはほかならぬあなたがお引きあわせくださるのでしたら、もちろん大歓迎いたしたはずですよ」。

(14)

‘But for his own too, if only you knew the man,’ he answered, ‘for there's no man living today who can give you such an account of unknown peoples and lands, a topic that I know you are always keen to hear about.’

own(代)(one's 〜/独立用法で)自分独特のもの(立場)

if only 〜さえしていれば

answer(他)(人に)(〜と)答える、答えて言う(+引用)

there's there isの短縮形

living(形)生きている(⇔dead)

today(副)現今(では)、今日(は)、このごろは(=nowadays)

give(他)(人に)(言葉・返事・命令・あいさつなどを)述べる、言う(+目+目)

account(名)(順を追ってする詳しい)話 ・give an account of 〜の話をする、〜の顛末(てんまつ)を話す

unknown(形)未知の、不明の、未詳の ・an unknown place 未知の場所

people(名)民族、種族、国民(文化的・社会的な共通性をもつ人々)

land(名)国、国土

topic(名)話題、話の種、テーマ、トピック

know(他)(〜を)知る、知っている、(〜が)わか(ってい)る(+that)

keen(形)熱心に(〜)したがって(+to do)

hear(自)(〜について)(消息を)聞く、聞いて知る(about)

「いや私がご紹介するのではなくて」と彼は言った。「もしあなたがあの人のことをご存じでしたら、あの人と知り合いになれるというだけで大歓迎なさったはずですよ。同時代人のなかで、未知の人々、未知の土地について彼ほどにたくさん話のできる人はいません。あなたはたしかそういう話を非常に聞きたがっていらっしゃいましたね」。

(15)

‘So, my guess wasn't such a bad one,’ I replied, ‘for at first glance I suspected that he was a ship's captain.’

so(副)(間投詞的に文頭に用いて)(前言を受けて)そうすると、つまり

guess(名)推測、推量、憶測

wasn't was notの短縮形

such(形)(程度を表わして)(形容詞+名詞の前で/副詞的に)あれほど(これほど)の、あんな(そんな)に、このように

bad(形)間違った

one(代)(基数の1)(既出の可算名詞の反復を避けて)(その)一つ、それ

reply(他)(〜と)答える(+引用)

at first glance 一見したところでは

suspect(他)(〜ではないかと)思う(思う内容は通例よくないこと、望ましくないことを表わす)(+that)

that(接)(名詞節を導いて)(〜)ということ/(目的語節を導いて)

私は言った。「それなら私の見当はおおはずれではなかったわけですね。なぜかというとあの人を一目見るなり私はあれは船乗りに違いないと感じましたからね」

(16)

‘Then you are right off target,’ he said, ‘for he hasn't sailed like Palinurus, but rather like Ulysses, or, better still, Plato. For this man, Raphael as he's called, his family name being Hythloday, is far from incompetent in Latin and is especially well versed in Greek. He studied the latter more than Latin because he's devoted himself wholly to philosophy, and he realized that in that field there's nothing of any substance in Latin apart from certain pieces by Seneca and Cicero. Driven by a desire to see the world, he left to his brothers the patrimony that was his due at home (he happens to be Portuguese), attached himself to Amerigo Vespucci, and was his constant companion on the latter three of those four voyages which you now read about everywhere. Except that on the last one he didn't return with him: instead he nagged and pestered Vespucci, and so far prevailed that the latter let him be one of twenty-four men who were left behind in a fort at the furthest point of that final trip. So he was left there in order to gratify his own inclination, being more taken up with his travels than his last resting place. He had the habit of remarking, “He who has no grave is covered by the sky”, and “Whatever the place, it's the same distance from heaven.” Such an attribute might well have proved costly if God had not been gracious to him. Once Vespucci had departed, he travelled through many territories along with five companions from the fort, and at length, having arrived by a happy turn of fortune in Ceylon, he got from there to Calicut where he conveniently met up with some Portuguese ships and finally, against all expectation, regained his homeland.’

then(副)(通例文頭または文尾に用いて)それなら、(それ)では

right(副)まったく、すっかり

off(前)(離れた位置・状態を表わして)(場所)から(離れて、隔たって)、〜を離れて、それて

target(名)(射撃などの)的(まと)、標的

hasn't has notの短縮形

sail(自)(通例副詞句を伴って)(船・人が)帆走する、航海する

like(前)〜のような、〜に似た

Palinurus(名)パリヌールス(Aeneasの船の舵手/舵をとっているうちに眠りの神に襲われて海に落ち、漂着したところのLucaniaの住民に殺された/イタリア南西部のPalinuro岬は彼の名にちなむという)

rather(副)どちらかと言えば、いやむしろ

Ulysses(名)ユリシーズ(Odysseusのラテン語名)

or(接)(訂正語句・コメントなどを導いて)いや〜、あるいは(むしろ)

better still おまけに、その上

Plato(名)プラトン(427?-?347 B.C./ギリシアの哲学者)

Raphael(名)ラファエル、レイフィアル

as(接)(譲歩を表わして)〜だけれども、〜ながらも(=though)

call(他)(人を)(〜と)呼ぶ、称する(+目+補)

family(形)家族の、家庭の

incompetent(形)無能な、役に立たない

Latin(名)ラテン語(古代ローマ帝国の言語/中世に地方によって分化し、今日のイタリア語フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語などとなった)

especially(副)特に、とりわけ

versed(形)(通例well 〜で)熟達して、精通して、通じて(in)

Greek(名)ギリシア

study(他)(〜を)勉強する、学ぶ

latter(名)(代名詞的に用いて)後者(単数名詞を受ける場合は単数扱い、複数名詞を受ける場合には複数扱い)

devote(他)(devote oneselfで)(人が)(〜に)身をささげる、専念する、熱中する(to)

himself(代)(再帰的に用いて)(再帰動詞の目的語に用いて)

wholly(副)まったく、完全に

philosophy(名)哲学、哲学体系

realize(他)(事実などを)はっきり理解する、悟る、了解する(+that)

field(名)(活動・研究の)分野、範囲(=discipline)

there's→there was

any(形)(否定文で名詞の前に用いて)(可算の名詞の複数形または不可算の名詞につけて)少しも(〜ない)、何も(〜ない)、だれも(〜ない)

substance(名)資産、財産

apart from 〜 〜は別として、〜を除いて(=except for)

certain(形)(多くはないが)いくらかの、ある程度の

piece(名)1編の作品(詩、散文、作曲、劇)、1枚の絵、1個の彫刻(など)

Seneca, Lucius Annaeus(名)セネカ(4 B.C.?-A.D.65/ローマのストア派の哲学者・政治家・劇作家/Neroの教師・執政官)

Cicero, Marcus Tullius(名)キケロ(106-43 B.C./ローマの政治家・哲学者・雄弁家)

driven(形)(人が)駆り立てられた

desire(名)(〜を求める)欲望、欲求(+to do)

leave(他)(人に)(財産を)残す(to)

to(前)(行為・作用の対象を表わして)(間接目的語に相当する句を導いて)〜に

patrimony(名)(またa 〜)世襲財産、家督

due(名)(通例単数形で)当然払われる(与えられる)べきもの

at home 自国で(に)、本国で(に)(⇔abroad)

happen(自)偶然(たまたま)(〜)する(+to do)

Portuguese(形)ポルトガル(人、語)の

attach(他)(attach oneselfで)(時に望まれないのに)なつく、慕う(to)

Vespucci, Amerigo(名)ベスプッチ(1454?-1512/イタリアの航海者・探検家/地名のAmericaは彼のラテン名Americus Vespuciusに由来する)

constant(形)忠実な、節操の固い ・a constant friend 忠実な友

companion(名)仲間、友 ・one's constant companion いつも一緒にいる人(動物)、いつも持ち歩いているもの

on(前)(日・時・機会を表わして)〜に

latter(形)(the 〜、this 〜、these 〜)(時間的に)後のほうの、終わりの、末の、後半の

three(代)(基数の3)(複数扱い)3つ、3個(人)

of(前)(部分を表わして)〜の中の

those(形)(thatの複数形/指示形容詞)(関係詞節による限定をあらかじめ指定して)あの(日本語では訳さないほうがよい)(⇔these)

voyage(名)(船・飛行機・宇宙船による)船、船旅、航海、航行、飛行

read(自)(〜のことを)読んで知る(about)

except(接)(しばしばexcept thatで)〜であること以外(に)は〜、ということ(事実)を別にすれば

didn't did notの短縮形

instead(副)その代わりとして

nag(他)(人に)しつこくせがむ

pester(他)(人などを)(せがんだりして)悩ます、困らす、苦しめる

far(副)(程度に関して)はるかに、大いに、ずっと

prevail(自)功を奏する、首尾よくいく、うまくいく、効く

let(他)(使役を表わして)(人に)(働きかけて)(〜)させる(+目+原形)

one(代)(基数の1)(単数形で)(特定の人(もの)の中の)一つ、1個、一人(of)

twenty(形)20の、20個の、20人の

leave behind(〜を)置き忘れる、置き去りにする

fort(名)とりで、城砦(じょうさい)、堡塁(ほうるい)

furthest(形)=farthest(形)(farの比較級)(距離的に)最も遠い

final(形)最終の、最後の

so(接)(等位接続詞として)そこで、それで、〜ので

leave(他)(副詞句を伴って)置き去りにする

in order to do 〜する目的で、するために(は)

gratify(他)(欲望・気まぐれなどを)満たす

inclination(名)(〜したい)気持ち、意向、思い

more(副)(〜より)むしろ(than)

take up with 〜 〜と仲よくなる

travel(名)旅行(すること)

last(形)(通例the 〜、one's 〜)生涯の終わりの、臨終の

resting place(名)(one's last 〜)墓場

habit(名)〜する傾向(たち)(of doing)

remark(他)(〜だと)言う(+引用)

grave(名)墓、死体を埋める穴

cover(他)かばう、保護される

sky(名)(the 〜、the skies)天(国)

whatever(形)(譲歩節を導いて)どんな〜でも(=no matter what)

it(代)(非人称動詞(impersonal verb)の主語として)(特にさすものはなく、従って訳さないで文の形式的主語となる)(距離を漠然とさして)

from(前)(空間・時間などの起点を表わして)

heaven(名)天国、天界、極楽(=paradise/⇔hell)(古代の天文学では天を七つ(または九つ)の層と考え、その最上層が神・天使のすみかとされた)

attitude(名)(物事に対する)気持ち、考え、意見(to)

may well do 多分〜だろう、(十分)〜しどうだ

prove(自)(〜であることが)(あとになって)わかる、(〜と)判明する、(結果)(〜に)なる(=turn out)(+補)

costly(形)犠牲(損失)の大きい

gracious(形)(神が)恵みあふれる、慈悲深い

once(接)ひとたび(いったん)〜すると、〜してしまえば

depart(自)(人・列車などが)出発する

through(前)(あちこち至る所を表わして)〜じゅうを(に)、〜の間を(あちこち)

territory(名)地方、地域

along with 〜 〜と一緒に、同伴で

five(形)(基数の5)5の、5個の、5人の

at length ついに、ようやく

by(前)(原因を表わして)〜のために

happy(形)幸運な

turn(名)(a 〜)(情勢の)変化、成り行き(of)

fortune(名)運 ・by good fortune 幸運にも

in(前)(場所・位置・方向などを表わして)〜において、〜で ・in London ロンドンで(に)

Ceylon(名)セイロン島(インド東南方インド洋上の島/Sri Lanka共和国をなす)

get to 〜 〜に達する

there(副)(前置詞・他動詞の目的語として/名詞的に)そこ、あそこ(⇔here) ・from there そこから

Calicut カリカットインド南西部Kerala州のMalabar海岸にある市/植民地時代ヨーロッパ貿易の重要基地/かつてキャラコ(calico)の産地)

where(副)(関係副詞)(制限的用法で)〜する、〜した(場所、場合など)(「場所」「場合」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)

conveniently(副)便利に、都合よく

meet up(偶然)出会う、(動物などに)出くわす(with)

against(前)〜にそむいて、〜に反して

all(形)(否定的な意味の動詞や前置詞の後に用いて)一切の、なんらの

expectation(名)(時に複数形で)予期、予想、期待 ・against all expectation 予期に反して

regain(他)(場所・状態に)復帰(帰着)する、再び到着する

homeland(名)自国、母国、故国

「それもおおあてはずれ」と彼は言った。「というのは、あの人はパリヌールスのようにではなくユリシーズ、いやプラトンのように船旅をしたからです。ところでこのラファエルは――これは彼の呼び名では姓はヒュトロダエウスですが――、ラテン語にもかなり通じていないわけではないが、むしろギリシア語には非常に通暁しています〔ラテン語よりもギリシア語のほうをよく勉強したのは、彼が哲学に全心を傾倒し、この分野ではセネカとキケロの多少の著作以外にはラテン語で価値あるものは皆無だということを知ったからです〕。彼は世界を見たいという望みから、故郷〔彼はポルトガル人です〕にあった自分の財産を兄弟たちにゆずり、アメリーゴ・ヴェスプッチの仲間になりました。そして最近あちこちで読まれているあの四回の航海のうちのあとの三回の航海にはずっと同行していました。その最後の航海からアメリーゴといっしょに帰国しませんでしたが、それまではいつも、アメリーゴの仲間だったのです。

帰ってこなかったというのも、彼は、最後の航海の終わりに城塞にとり残されることになった二十四人の中に自分もはいりたいと熱望し、ついにアメリーゴからその許可をとりつけたからです。それで彼はおきざりになりましたが、(故郷の)墓場よりもむしろ旅を選ぶというその心意気どおりになったわけです。というのも、彼はいつもつぎのようなことを口にしているからです。『柩を持たざるものは、天これをおおう』、それから、『天に到る道程はいずこからなりとも等し』。彼のこういう考え方は、もし神様が彼にたいしてめぐみ深くあらせられなかったら、彼にとって命とりになっていたでしょう。

ところで、彼はヴェスプッチの出発後、城塞に残った同伴のうちの五人といっしょにたくさんの国々を歴訪し、奇跡的な偶然のおかげでついにセイロンへたどりつき、そこからカリカットに出て来ました。そこで、ぐあいよくポルトガルの船団に出くわし、ついに期待もしていなかったのにふたたび祖国に帰って来たのです」

【参考文献】

Utopia (Penguin Classics)』Thomas More・著

ユートピア (中公文庫)』澤田昭夫・訳

新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)

リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)

リーダーズ・プラス』(研究社)

2018-06-16

イギリス文学史I(第5回)『ユートピア』(その1)

モアについて

イギリスルネッサンスが最初に咲かせた華は、高校世界史の教科書(『詳説世界史』)にも出て来るトマス・モア(Thomas More, 1478-1535)の『ユートピア』(Utopia, 1516)です。

イギリスルネッサンスについては、『イギリス文学の歴史』(開拓社)に、次のようにあります。

14世紀にイタリアで燃えあがったルネッサンスの火が、イギリスに本格的に伝わったのは、比較的おそく、16世紀になってからである。

イギリスルネッサンスの思想は、人文主義を提唱する学者グループによって導入された。オランダ人エラズマス(Erasmus, 1466?-1536)、トマス・モアなどが中心になっている。

岩波文庫版『ユートピア』の「解説」には、モアの生きた時代について、「文化史的にいうならば、要するに、文芸復興と宗教改革の二つの思潮が、中世的な思潮と激突した、恐ろしい時代だった」とあります。

モアは、『イギリス文学史入門』(研究社)にあるように、エラスムス(エラズマス)の親友であり、第一級の人文学者(ヒューマニスト)としてヨーロッパ中に名声が通っていました。

それでは、モアについてまとめられた箇所を、『はじめて学ぶ文学史』(ミネルヴァ書房)から引いてみましょう。

政治家、思想家。判事の息子としてロンドン生まれる。オックスフォード大学入学後、法曹界に入ったが、余暇はもっぱら文学の研究にささげられた。彼は、ギリシアラテンの古典語に精通し、オランダ人ヒューマニストのエラスムス(Desiderius Erasmus, 1466?―1536)の無二の親友となった。やがて政界入りしたモアは、ヘンリ8世の信任を得、大法官という輝かしい地位に就いた。しかし、王の離婚問題が起こったとき、彼はカトリックの立場から断固としてこれに反対し、反逆罪のかどでロンドン塔に幽閉された。反逆罪で処刑されたが、1935年、カトリック教会は彼を殉教者として聖者の列に加えた。

モアは、家庭にあってはよき夫でありよき父であった。多忙な公務の間を縫って、子供たちの教育に励み、娘たちにも男の子と同じ古典の教養を与えた。教養とは宝石であり、すべての人間はこれを楽しむ同等の権利があるというのが彼の考えだった。彼が、『ユートピア』において共産主義的な理想郷を描いたのも、同じ思想のあらわれといえよう。その背後には、貧富の差がはなはだしく、貧しい人々が飢えに泣く当時のイギリスの現実があった。

平井正穂氏による岩波文庫版の「解説」には、更に詳しくモアの経歴について述べられているので、少し補足しましょう。

モアは、セント・アントニ学院にしばらく通った後に、12歳の頃、当時のカンタベリ大司教であったジョン・モートンの屋敷に小姓として見習奉公に行き、ここで様々な見聞を得て、15歳の時に、モートンの推薦でオックスフォード大学に入学します。

ここでモアはギリシア語を学び、新しい文化・学問・人間観、つまりヒューマニズムの洗礼を受けました。

しかし、彼は父の希望によって大学を去り、ロンドンのニュー法学院、ついでリンカン法学院の学生とならざるを得なかったのです。

1499年の夏、終生の友となる30歳のエラスムスと出会います。

1505年、ジェイン・コルトと結婚。

1509年、ヘンリ8世が王位に就きますが、この頃から、モアはイギリス及びヨーロッパの理想と現実の問題に悩み始めます。

それでも、カトリックの信仰は揺らぎませんでした。

1511年、妻ジェインが亡くなり、まもなく年上の未亡人アリス・ミドルトンと再婚しますが、これは主として子供達の養育のためであったと言われています。

この頃、エラスムスはモア家に滞在し、有名な『痴愚神礼讃』を書き上げました。

そして、その頃、ヘンリ8世の妹メアリとスペイン王フェリペ1世の王子カルロスとの結婚問題に端を発し、イギリススペインネーデルラントとの間に、かなり緊迫した外交関係が生まれます。

これを打開するために、ヘンリ8世は外交使節を派遣することにしますが、モアはそのロンドン市民の代表に選ばれたのです。

1515年5月、一行はブルージュに到着しますが、先方の内部事情が複雑で意見が一致せず、一時交渉を打ち切ります。

モアはアントワープに行き、数ヶ月間滞在しますが、そこでエラスムスの弟子ピーター・ジャイルズと知り合いました。

そうして、『ユートピア』の執筆を開始。

その後、モアは外交使節として充分な職責を果たして帰国し、ヘンリ8世と枢機卿ウルジの信望を一身に集めます。

1521年にはナイトの爵位を授けられ、1529年にはウルジの失脚の後を継いで大法官の重職に就きました。

この頃から、宗教改革の波がイギリスにも押し寄せて来ます。

モアの内心は、国家の立場からはヘンリ8世に属し、宗教の立場からはローマ教皇に属していました。

ヘンリ8世自身も、ローマ教皇に忠節を誓っていましたが、自らの離婚問題をきっかけに、それが揺らぎ始めます。

ヘンリ8世は、その問題についての助言をモアに求めました。

モアは、離婚を正当化するいかなる根拠もないことを国王に率直に告げ、以後、この問題については沈黙します。

しかしながら、カンタベリの宗教会議がヘンリ8世を「我々の最高の主」であると承認したことを受けて、モアは大法官を辞任したのです。

やがて、ヘンリ8世のモアに対する復讐が始まりました。

1534年、ヘンリ8世は王位継承令を議会に通過させ、この法に対する宣誓をモアに迫ります。

モアは、教皇の権威を否定する言葉がある以上、この法をそのまま肯定する訳には行きませんでした。

彼は、4月17日にロンドン塔に幽閉されます。

それから約15ヵ月後の1536年7月6日、モアは自らの信仰のために、断頭台の刑に処せられたのでした。

ユートピア』について

トマス・モアは『ユートピア』をラテン語で書きました。

それは、ラテン語が当時の知識階級の間の国際語だったからです。

ユートピア』は作者の死後16年経った1551年、レイフ(ラーフ)・ロビンスンによって、ようやく英訳されました。

それでは、『ユートピア』について解説された箇所を、『イギリス文学の歴史』から引いてみましょう。

ルネッサンスの開幕を告げる散文作品は、モアの『ユートピア』である。『ユートピア』と言えば、「理想郷」の代名詞となり、後世の社会主義者たちにも大きな影響を与えた。

ユートピア』は2部から成る。第1部では、好戦的君主、横暴な軍隊、私有財産制などから生まれてくる種々の社会悪などが論じられている。

第2部では、そのような弊害のない理想的な社会が描かれている。宗教的に寛容であり、教育は男女平等。6時間労働、金持ちによる搾取のない共産制という具合で、ルネッサンス人文主義の思想が強く現われている。

通例、ユートピアを求める志向は、現実社会に対する不満から生まれる。モアも、理想的社会の構図と対比して、当時のイギリス社会の悪弊を指摘し、その対策を暗示している。この作品を貫いているキリスト教的人類愛は、その後のユートピア文学の基調となっている。

続いて、『イギリス文学史入門』から引いてみます。

モア(Sir Thomas More, 1478-1535)はエラスムスの親友であり、第一級の人文学者としてヨーロッパ中に名声がとおっていた。その『ユートピア』(Utopia. ラテン語 一五一六、英訳出版 一五五一)は、彼の精神と思想の精髄を表わしている。ある船乗りから伝聞した理想国ユートピアの制度や風俗を語るのだが、その詳細の一つ一つが同時代のヨーロッパ、とくにイギリスのあり方の、そっくり裏返しになっているわけだ。ギリシアラテン文学や哲学に一貫して流れていた人間理性に対する深い信頼は、このモアの作品のなかにルネッサンス人文思想としてよみがえり、人間とその社会のあるべき姿を特異な語り口で主張している。「ユートピア」とは、その後「理想郷」を意味する普通名詞として定着したが、本来はこのときモアがこの著作のために新しく造った言葉である。ギリシア語でou(no)+pos(place)すなわち「どこにもない(架空の)場所」を意味するが、同時にeu(good)+posにも掛けてあって、こちらは「(どこかに人間が実現すべき)善き場所」を意味する。 

上記に加え、岩波文庫版の「解説」では、少し詳しく『ユートピア』について分析されているので、足りない部分を補足します。

ユートピア』は主に2巻から成りますが、先に書かれたのは第2巻の方です。

本作がラテン語で書かれたのは、この書物が広くヨーロッパの知識人に読まれることを欲したからですが、それだけではありません。

本作の中で、イギリスの悲惨な現状を痛烈に批判し、暴君を呪っているのが、そのまま抗議として受け取られないように。

出来るだけ非現実化した現実暴露をし、自分の属している国の市民としてというより、ヨーロッパの知識人として発言するという意味があったのです。

そして、ユーモアが重要な一要素でもあります。

ユートピア的」とは「空想的」という意味ですが、ここでは皮肉な調子は含まれていません。

岩波文庫版の「解説」を引用します。

モアの著『ユートピア』が近代的精神のマニフェストであることが、そこでは殆んど前提条件として了解されていよう。中世的な絶対主義から自らを解放しようとする近代人の、いわば自由の宣言があると考えられている。ユートピア国は自由の天地であり、まさしく理想国家であり、進歩の極限とされている。そこでは、金持による搾取はなく、人々は六時間の労働時間をエンジョイしている。信仰は自由であり、寛容が支配的である。人々は戦争を呪い、平和を祈り求めている。要するに、共産主義的な社会機構がうるわしく運営されているのだ。およそ、進歩的といわれる近代人が心の中に描く未来の国家像がここにあるといっても誇張ではない。「モアの理想は依然として苦闘している人類の理想である」とカウツキーが昔いったが、それは今日でもなお妥当な言葉である。

岩波文庫版は、初版が1957年に発行されています。

社会主義が崩壊した現代においても、そして日本においても、なお、格差や貧困が問題になっています。

資本家による搾取のない、6時間労働の世界というのは、今日でも、やはり「理想」であり、言い換えると、「空想」であり続けています。

訳者の平井氏は、モアを中世と近代の過渡期の人間と見ており、本作の描く「理想」の中には、中世の「現実」による留保が付けられるのです。

再び、岩波文庫版の「解説」を引用しましょう。

この理想国家の中には自由も確かにある。けれどもそれは衆人の前で自分の政治的信念をとくことを禁じられているといった自由である。信仰の自由もまた寛容もあるが、もし人間の霊魂不滅に対して、懐疑をもつような人間があれば、その人間は法律の保護を奪われるのである。共産制は行われている。しかし、それはただ自由人の間だけであって、ここに使用されている奴隷たちはその恩恵には浴してはいない。ユートピア人は、人間が不幸や快楽を求めるものであることを肯定している。が、宗教的な動機から苦行を行う者があれば、その者はみんなに賞讃される。彼らは人間の理性によってはこれ以上のものが見出せないという確信をもってすべての制度やモラルを律している。ただし、もっと信仰的な考え方が天から啓示されるならば、話は別だ、といっているのである。

ユートピアでは離婚ももちろん可能である。ただし、市の当局者たちがあらゆる角度から検討して離婚以外に道がないという結論に達しないかぎり、離婚は許可にならないのである。

ユートピア』の本編は、第1巻と第2巻に分かれています。

本作は、もちろん創作ですが、いわゆる小説ではありません。

第1巻「国家の最善の状態についてのラファエル・ヒスロデイの物語」では、貴族や教会、刑罰等、イギリス社会の現状についての批判が行なわれています。

モアが本当に書きたかったのは、この部分なのでしょう。

でも、当時の社会の状況を詳しく知らないと、読んでも面白くありません。

第2巻は、タイトル通り「ユートピア」について詳述されています。

物語ではないので、レポートを読んでいるような感じです。

モアは、ラテン語で本作を書いていますが、ラテン文学には読むべきものは少ないとし、ギリシアの文化を崇拝していました。

本作に登場する単語(造語)は、ほとんどがギリシア語由来ですし、ギリシア文化そのものにも、あちこちで言及されています。

現在では、ユートピアと言えば「理想郷」のことだと思っている人も多いかも知れませんが、本作で描かれるのは、そんなに理想的な社会とも思えません。

奴隷制の上に成り立っているのが、現代人の目から見ると、最も違和感のある部分ではないでしょうか。

ユートピアの人々は、各人の義務をよく果たします。

それから、この国の人々には、欲望があまりないようです。

華美な衣装が必要ないとか、金や銀には何の価値もないというのは、現実社会に対するある種の皮肉なのでしょうが。

ただ、人間を動かす原動力が欲望であるということは間違いない訳で、こんなに自分の欲望がない人々の集団というのは、ちょっと気持ち悪いですね。

独特の結婚観もありました。

ある意味、建て前を排しているいるとも言えますが、

ただし、結婚については、時代と共にかなり感覚が変わって行くものなので、これでも良いのかも知れません。

戦争があるというのも、特筆すべきことでしょう。

今の日本人にとっては、戦争のない社会が理想だと思いますが、モアの時代には、そんなことは考えられなかったのでしょうか。

それほど、人類の歴史と戦争は切り離せないということですね。

最後に、宗教について。

ユートピアには色々な宗教がある(ということは、信仰の自由は認められている)ようですが、モアは結局、キリスト教が一番だと言いたいようです。

その前提で、当時のイギリスの、教会の腐敗を批判したかったのでしょう。

中世英文学は、やはりキリスト教を抜きに考えることは出来ません。

テキストについて

ユートピア』の原文は前述のようにラテン語で書かれていますが、普通の学生はラテン語は読めませんので、英訳版を参照することになります。

英語版のテキストで最も入手し易いのは、次のペンギン版でしょう。

Utopia (Penguin Classics)

Utopia (Penguin Classics)

アマゾンで注文すれば、数日でイギリスから送られて来ます。

初版は2012年。

翻訳はDominic Baker-Smith氏。

英文は現代英語なので、分かり易いです(とは言っても、やはり難しいですが)。

ユートピア』は、英文科の原書講読ではまず取り上げられませんが、それは原文がラテン語だからでしょう。

アマゾンのレビューには、「ユートピアを原文で」として、「原文で読むことと、翻訳で読むことは大きな差があるだろう」と書かれていますが、この版自体が、ラテン語から英語への「翻訳」です。

「英語のニュアンスや使いまわしを翻訳版ではあまりうまく表現することができない」ともありますが、ラテン語のニュアンスを完全に英語に移すことも、同様に難しいでしょう。

ですから、そんなに堅く考えず、『ユートピア』という作品は、現代英語ではこんな感じなんだな、ということが分かれば良いのです。

『ベーオウルフ』は古英語、『カンタベリー物語』と『アーサー王の死』は中英語、『ユートピア』はラテン語なので、ようやく誰もが取り組める英文学の古典は、初期近代英語で書かれたシェイクスピアということになります。

翻訳について

現在、簡単に入手出来る翻訳(日本語訳)は岩波文庫中公文庫から出ています。

岩波文庫

ユートピア (岩波文庫 赤202-1)

ユートピア (岩波文庫 赤202-1)

初版は1957年。

翻訳は平井正穂氏。

翻訳の定本は、1551年に出版されたレーフ(ラーフ)・ロビンスンの英訳版。

つまり、「重訳」です。

「はしがき」によると、イギリス人で『ユートピア』を読んだ人は、大抵このロビンスン訳で読んでいるとのこと。

ただ、ロビンスン訳は「まま意味が充分にとれないところもある」ため、日本語訳に際しては「適当にラテン文を参照して補った」とあります。

この岩波文庫版は、昭和21年に出版された平井氏の訳を訂正したものだそうです。

訳文は、60年以上前の日本語なので、やや堅いですが、読み難いということはありません。

中公文庫

ユートピア (中公文庫)

ユートピア (中公文庫)

初版は1978年。

改版は1993年。

翻訳は日本トマス・モア協会会長の澤田昭夫氏(筑波大学名誉教授)。

「あとがき」によると、この版はラテン語原典からの翻訳です。

明治15年の初訳以来かなり普及している邦訳『ユートピア』は、(上述の岩波文庫版も含め)ほとんど例外なく1551年のロビンソンによる英訳からの「孫訳」なのだとか。

原典からの本邦初訳は、澤田氏が昭和44年に中央公論社「世界の名著」第17巻で試みました。

昭和53年、モア生誕500周年にあたって、中公文庫からその改訂訳が出されます。

この版の新訳は、原典のより一層忠実な再現を目指して、改訂訳に更に手を加えたものなのだとのことです。

ラテン原典からの訳出が大切なのは、『ユートピア』が本来16世紀のキリスト教社会のヒューマニスト指導者達に向けて、この社会の共通国際用語であるラテン語で書かれたものであるから(当時、英語はごく一部の人間にしか通じない方言でした)。

ヒューマニスト達が大切にしたギリシャローマの古典的レトリックの約束事は、ラテン語以外の言葉では表現出来ませんでした。

まあ、僕のような素人が読んでも、ラテン語からの翻訳と英語からの翻訳の違いは、よく分かりませんが。

本版には、岩波文庫版にはなかった「ユートピアにかんする詩と書簡」が収められています。

ただ、この部分は、資料的価値はあるのかも知れませんが、読んでもあまり面白くはありません。

また、40ページ以上に及ぶ詳細な「訳注」と、巻末には「索引」があります。

訳者曰く、「テキストの一字一句をないがしろにしない精読が『ユートピア』理解の大前提だからである」そうです。

しかし、訳文は、非常に堅くて読み辛く、万人向けとは言い難いですね。

参考図書について

トマス・モア関連の参考図書として、僕の近所の調布市立図書館にもあるものを1冊だけ紹介します。

トマス・モア

トマス・モア

初版は2007年。

著者はジョン・ガイ氏。

翻訳は門間都喜郎氏(京都精華大学人文学部教授)。

トマス・モアの詳細な伝記です。

定評のある幾つかの古典的な伝記も批判的に検証しています。

「モアは性欲が強かった」など、驚きの記述もありました。

文庫の「解説」程度の表面的な経歴をなぞっただけの人が、少し踏み込んでモアのことを知りたいならば、一読の価値はあるでしょう。

それにしても、シェイクスピアよりも1世紀も前の人なのに、国家の要職についていたおかげで、こんなに細かく記録が残されているんですね。

(続く)

【参考文献】

詳説世界史B 改訂版 [世B310]  文部科学省検定済教科書 【81山川/世B310】』木村靖二、佐藤次高小松久男・著(山川出版社

イギリス文学の歴史』芹沢栄・著(開拓社

イギリス文学史入門 (英語・英米文学入門シリーズ)川崎寿彦・著(研究社)

はじめて学ぶイギリス文学史神山妙子・編著(ミネルヴァ書房