蒼い空と、記憶

さむすぎた
今日は見上げる、東京タワー


タワーもすごいが
見上げるほうの体勢も、けっこうすごい


昼から、空が完全に暗くなるまで、おなじ位置で待機したから
カメラマンも、さむすぎてハイになっていた、気がする


足踏みしてないと凍りそうな寒空の下、あったかいお茶はプライスレスで
「おれのおごりや」カメラマンは、8回くらいそう言って
意外と、ゆかいな撮影になった


パーテーションに、囲まれたひとりの時間も必要だけど
たまにはみんなで見上げてもいい、鉄塔


なんで空は、青いんだろう
夜中が黒ってことはきっとオリジンは黒がフツウなんだろう
それが青くなるのは
太陽の色のせい? それとも空気のせい? とか考えていたら
高校のときにドロップアウトした理数科の理科の授業を思い出した
なんちゃらスペクタル、とかそんな名前のやつ


高校生って、それなりに物心ついているはずなのに
理科の授業なんて(そして、生物だったのか物理だったのかも定かでない)
オーロラを作る実験と、
自分の血を出して血液型を調べる実験しか覚えてないけど


あのころ記憶が曖昧だったのは
日記をつけなかったからなのかもしれないし
単に記憶力の濃淡の問題なのかもしれないけど
もしかしたら
あの頃はデジカメを持っていなかったからかもしれない、と思った


デジカメを買い、そして換えるたびに
撮る写真の量は増え
鮮明で偏屈な記憶ばかりが、積み上がり
それは鮮明で偏屈なんだけれども


確実に
どこかでなにかを、切り取って、刻んでいるのだ
切り取れないはずの
時間とか、空間とか


ありえないことが、もうずっと何年も前からありえて
中古で買ったという、カメラマンの仰々しいカメラの底の
いつかどこかで刻まれたらしい、だれかのサインの小さな跡を見ながら