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企業の売上は必ず誰かの所得

26日の日経新聞では、7月の消費者物価指数(CPI)が2年7カ月ぶりにプラスになったことを伝えています。

総務省が26日発表した7月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きが激しい生鮮食品を除くベースで99.8となり、前年同月比0.1%上昇した。ガソリン高の影響で2年7カ月ぶりのプラスとなった。ただ薄型テレビなどデジタル家電の価格は大きく下落しており、需要不足によるデフレ圧力はなお根強い。*1

この記事によれば、ガソリン価格の高騰でインフレ気味だが、デジタル家電の価格下落が勝ってデフレ傾向が続いている、という分析になっています。 日本では採れないガソリンの価格が騰がることはインフレ要因なんでしょうか、それともデフレ要因なんでしょうか。

 この素朴な疑問に答えるために、まずあるメーカーの売上の内訳を考えてみます。
  
左図 あるメーカーの売上の内訳     右図 売上を再構成してみると 製品売上は、海外に支払われる費用と、企業・家計・政府・金融機関など国内の主体の取分に分けられる

メーカーの売上は、まず原材料費、(1)海外原料・(2)国内原材料)と粗利、(3)から(8)に分けられます(上左図)。 粗利部分は上の図のように諸経費・設備投資・人件費・金利・税金、そして株主への配当などからなります(株主配当以外の純利益部分については話をここでは単純化するため、後で述べます)。
このメーカー売上をよく眺めてみると、まず原材料費内の海外原料の部分は、海外に支払われる費用ですが、他の部分は全て国内の主体(家計、企業、金融機関、政府)の取分となっていることが分かります。
具体的には
(1)海外原料…海外に支払われる費用
(2)国内原材料と(3)諸経費、及び(4)設備投資…国内企業の取分
(5)人件費…家計の取分
(6)金利…金融機関の取分
(7)税金…政府(中央政府と地方政府)の取分
(8)配当…投資家(家計、企業、金融機関など)の取分

(2)〜(4)の国内企業の取り分は、上図で示したメーカー売上と同様な配分構造が入れ子になっています。
(6)の金利は金融機関の取分で、この配分構造はメーカー売上とはかなり異なっていますが、最終的には、やはり結局は国内企業と家計、政府、投資家の取分からなっています(詳しい説明図は省略)。
結局、最初のメーカー売上を再構成すると上右図のようになります。そしてそれぞれの主体の取分について少し考えればわかることですが、下の図のように、どの主体の取分も、結局はほとんど全ては、入れ子の形で日本の誰か個人の収入となっています。

製品売上 海外原料への支払いを除けばほぼ全て日本人誰かの収入となっている。

 ここまで考えれば、ガソリン高騰は、デフレ日本では最終顧客への価格転嫁が困難なことから、コスト抑制、人件費抑制、負債圧縮、節税、配当抑制を通じて、日本人誰かの所得を抑制していることが分かります。ガソリン高騰はデフレ状態(価格転嫁困難状態)ではインフレ要因ではなく、デフレ要因ということです。 最初の日経記事に戻れば、ガソリン価格が高騰し、国内で生産されるデジタル家電価格下落は共にデフレ要因ですから、GDPデフレータはどちらの要因によっても下落することが直感でもわかります。
 もし日銀・白川総裁が、速水元総裁や福井前総裁同様に「CPIが0%を上回り始めたから、金融引き締めの時期」などと思っているとするなら、とんでもない話ではあります。*2

 また、デフレであっても収入が減らない公務員や年金生活者といえども、借金(国債発行)を増額しない限りその所得の源泉は企業や家計の支払う税金や社会保障費負担ですから、デフレや海外商品高騰で企業収入名目値が減ることは所得の源泉が枯れていくことを意味しており、やはり政府日銀のデフレ目標政策には断固反対すべき立場であることを知るべきです。

 蛇足ですが、企業が上げた最終利益は一旦内部留保されます。しかしその大半はそのまま現預金で企業内に留まるわけではなく、運転資金となって各種の支払いとなります。 結局企業の上げた純利益も含め、海外原料い払いをのぞけばほぼ全てが日本人だれかの所得となっています。

*1:消費者物価2年7カ月ぶり上昇、7月0.1% http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E0E4E2E2878DE0E4E2EAE0E2E3E39F9FE2E2E2E2;at=DGXZZO0195164008122009000000;av=ALL

*2:日本の物価は安定しているのかそれとも世界最低か http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20110806