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シェイブテイル日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2012-07-19 国の債務を全て返済すれば何が起きるのか このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 現代日本では、政府債務が1000兆円近く積み上がっています。 野田政権消費税増税もこの政府債務積み上がりと勿論無縁ではありません。政府としては、政府債務を国民が着実に返済していけば、将来不安が減少して、国民はお金をどんどん使うようになり、景気が向上するというお話で動いているわけです。

ではもし仮に、極論ではありますが、政府債務を全て増税で返済したとしたら何が起きるのでしょうか。  

その答えがこちらです。 
1941年9月30日。 当時のFRB議長 マリナー・S・エックルズは下院銀行通貨委員会公聴会でライト・パットマン議員から20億ドル分の国債購入資金の出処について尋ねられました。*1
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エックルズFRB議長(1941年当時)

Mr. Patman: "How did you get the money to buy those $2 billion of Government securities?" (20億ドルの国債購入資金はどうやって入手しましたか?)
Mr. Eccles: "We created it." (我々が創りました。)
Mr. Patman: "Out of what?" (どっからですって?)
Mr. Eccles: "Out of the right to issue money, credit." (信用貨幣を創造する権利によってです。)
Mr. Patman: "And there is nothing behind it, except the Government's credit?" (つまり、政府の信用以外には何もない、ということですね。)
Mr. Eccles: "We have the Government bonds." (我々には政府国債があります。)
Mr. Patman: "That's right, the Government's credit." (そう、政府の信用が。)

Mr. Patman: "You have made the statement that people should get out of debt instead of spending their money. You recall the statement, I presume?"(あなたは、人々はお金を使うのは止めて借金を減らすべきといったこと、覚えてますよね?)
Mr. Eccles: "That was in connection with installment credit."(それは消費者割賦払いについて述べたものです。)
Mr. Patman: "Do you believe that people should pay their debts generally when they can?"(人々は債務は支払うべき、とは考えていますか?)
Mr. Eccles: "I think it depends a good deal upon the individual; but of course, if there were no debt in our money system..."(それは相手にもよりけりかと。もし我々の通貨システムに債務がなければ…)
Mr. Patman: "That is the point I wanted to ask you about."(そこですよ、私がお尋ねしたかったのは。)
Mr. Eccles: "There wouldn’t be any money."(お金は存在しなくなります。)
Mr. Patman: "Suppose everybody paid their debts, would we have any money to do business on?"(もし、全ての人々が債務を払ってしまえば、経済活動を行うためのお金は全くなくなってしまうと?)
Mr. Eccles: "That is correct."(その通りです。)

Mr. Patman: "In other words, our system is based entirely on debt."(言い換えれば、我々の通貨システムは全て債務によるもの、ということですね。)


中央銀行が、政府債務と引き換えにお金を発行する、ということはその債務が全て返済されれば、市中に流通するお金はもはやない、ということです。 普段は市中銀行も(中央銀行以上に)信用創造をしますが、日本ではその基礎は国の債務を基礎とする紙幣と日銀当座預金です。 従って、これら全ての債務が返済された場合には、市中銀行信用創造機能も全て消失し、市場に流通するお金は1円もなくなるということを意味します。

なお、金本位制時代ではこのような「怪しい」仕組みではなかったか、といえば、例えば金本位制時代の日銀のバランスシートを見ればその答えが分かります。
日本では1897年から1914年までの間と、1930年(昭和5年)に濱口雄幸内閣で1年だけ金本位制が実施されています。
にもかかわらず、日銀のバランスシートでは金本位であろうがなかろうが、金地金は常に紙幣量よりも過少にしか資産計上されていませんでした。

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図1 日本銀行のバランスシート推移 *2

勿論、シェイブテイルとしましても、野田政権が日本国債を全て償還に動いているなどということは毛の先ほども思いませんが、増税という方向性としては民間の信用を縮め、経済活動を減弱させることにほかなりません。
民主党だけでなく、自民公明党なども、増税による景気回復などという妄想は捨て、国の債務の何が問題で、何は問題ではないのか、という原点に戻って考えた方がいいのではないかと思います。

【7.21追記】
このエントリーを書いて、次のような疑問の声をいただきました。

1.現在のオーストラリア1960年以前の戦後日本は国債を発行していないのに、貨幣を発行できているのはなぜ?
2.政府債務を全て返済すれば中央銀行のマネー創出が止まるだけで、市中銀行からの信用創造は続くのでは?

これらの疑問については次の「国の債務の何が問題か」で考えてみたいと思います。

*1:The Social  Credit proposals explained in 10 lessons  Lesson 4: The solution: debt-free money issued by society

*2:出典:鎮目雅人「財政規律と中央銀行のバランスシート」日銀・IMES DISCUSSION PAPER No. 2001-J-15

ななみのゆうななみのゆう 2012/07/19 12:49 shavetailさま、良い文献を出されました。拡散したいですね。

shavetail1shavetail1 2012/07/19 22:12 murishinaiさま
>何かこれもまた「なるほど」vs「嘘だッ!」の会場になりそうな感じ……。

それは結構なことですね。ネットで楽に「情報」は取れるようになっていますが、各人の判断の根底にある「常識」を疑う機会は年齢を重ねるにつれなくなっていきますから、そのいい機会になったのであれば望外です。

laclefdorlaclefdor 2012/07/20 00:49 これはZeitgeist Addendumでも出てくる主張ですね。
まあ事実なんでしょうけど、実現する見込みもないので何とも・・・

shuichishuichi 2012/07/20 01:44 金持ち増税して所得格差をなくし中間層を増やせば景気は良くなりますよ。フェラーリ1台購入するお金でプリウス10台購入したほうが仕事が増えて経済に良いと思いますが。お金持ちの消費する量なんて限られています。

tarosuketarosuke 2012/07/20 06:14 ↑金持ち増税しろわろたw
金持ちを中間層に格下げすれば景気よくなるの?
自分で、「金持ちの消費する量は限られてる」って言ってるのに?
金持ちがいなくなったらどーするのよ
誰が地価を上げるの?
誰が株価を上げるの?
社長や会社が金持ちじゃなきゃだれがあなたに給料を払うのよ?
フェラーリとプリウスの話もそう
フェラーリは外国企業だからお話にならないが、もし「高級車」と「低級車」と読み替えたとしたら、
「高級車」が売れる方が経済に良いに決まってるじゃないかよ
安い物が売れるより高い物が売れた方が儲かるに決まってるじゃないか
経済を動かしてるのは一部の金持ちだ
最近、金持ちを増税すればいいと本気で思っている人が多くて困る
ヒガミ根性丸出し

shuichiじゃないけどshuichiじゃないけど 2012/07/20 07:41 ↑都合のいいとこしか読んでない。
金持ちの程度にも寄るが、一人を中間層に格下げした格差で
低所得者が10人中間層になれるのなら
トータルでは中間層を増やした方がお金が動く。
高級車が10台売れるのと低級車が10台売れるのなら
高級車が売れたほうが良いに決まってるが
高級車1台売れただけなのと、
高級車1台分の値段で低級車が10台売れた場合の
そこに関わる製造・流通・販売・使用中の経費は低級車が売れた場合の方が大きくなる。

経済はお金の動きの量だよ。

溜め込んだお金は景気を悪化させる。
金持ちが景気よくばら撒くようにお金を使ってくれれば増税なんてしなくても解決される。

問題なのは増税しても政府の金の使い方が
利権がらみでどっちにしろ有効に使われないところだけどな。
金持ち増税に限らず今回の消費税も増税自体が間違ってる気がするがね。

arerugenarerugen 2012/07/20 10:57 歴史と法律をしっかり勉強している知的に早熟な高校生でも知っている話。
イングランド銀行が紙幣を発行した歴史と民法の基礎理論、債権譲渡を可能とするゲルマン的法思想をきちんと学ぶことが重要。
紙幣はとことん法的な存在なのだ。法をきちんと知らない数学者や経済学者が色々国の借金について間抜けな言説を流布しているが、感違いもはなはだしい。少なくとも民法と手形小切手法に関しては司法試験で合格論文を書けるぐらいの知識がなければ、国債について責任ある言論は展開できない。

shavetail1shavetail1 2012/07/20 22:41 「国債を返済すると、お金はなくなるの?」「オーストラリアは国債がないそうだけど?」という疑問について。

日本の国の債務は、国の普通国債(600)、財投債(129)、交付・出資国債(4)、借入金(56)、政府短期証券(142)、地方・公営企業債・交付税特会借入金(198)(かっこ内の単位兆円、2009年度末)。合計で991兆円。 国債を全て返済してもその他の債務が300兆円以上あります。 オーストラリアも国債はなくとも、政府短期証券その他の債務がしっかりあります。 そもそも戦後の日本では1960年までは国債は発行されていなかったんですが、戦後1960年までも普通に不換紙幣は発行されていました。

shavetail1shavetail1 2012/07/21 07:05 政府が国債、借入金、政府短期証券など全ての債務を返済すれば、国がつくりだすマネーは消失します。 ここまでは分かるのに、「すると民間のマネーも消失」という繋がりが見えにくい方もいらっしゃるようですね。
中央銀行が創るマネーがなくとも民間金融機関が創造するマネーは残る、と主張することは、中央銀行とは完全に無関係に、民間銀行で信用創造し得る、という主張で、ちょっと考えてもかなり奇妙です。
 民間銀行での信用創造を時間を巻き戻せば、その根本は政府のつくりだす紙幣と、政府が政府雇用者への給与や財政政策の結果に民間に支払ったマネーが銀行に預けられたものが最初だと分かるでしょう。 政府の負債を全て返済すれば、マネーの創造機能が政府本体ではなく中央銀行に賦与されている以上、紙幣も無ければ、政府雇用者への給与も、財政政策に使うマネーもない、ということになります。

アカシアアカシア 2012/07/22 03:23 気になった点を。
1点目。紙幣とマネーは別物です。そして政府は紙幣を発行していません。紙幣は日銀の信用により存在しています(日銀は半官半民出資)。故に信用があれば民間会社が紙幣を発行することも可能です。
2点目。政府短期証券は、税収と歳出の時期のズレにより存在しており、国が「ツケ」取引を認めない限り完全返済できません。交付出資国債も別の理由ですが完全返済できないでしょう。これは純粋に会計処理や法律上の制約であり、全ての債務を返済という仮定があり得ません。
3点目。民間銀行の信用創造の最初は、商取引が最初だと思いますが。政府の取引が存在するには税収が必要であり、税収のためには民間の生産活動が既に発生している筈です。

shavetail1shavetail1 2012/07/22 08:31 アカシアさま
色々とご教示いただき有り難うございます。

1点目につきまして。
紙幣には発券銀行の信用も重要かと思いますが、それ以上に強制通用力を持たせる国家権力が必要だと思います。 確かに香港などで複数の発券銀行があったり、FRSが民間企業だけからの出資によったりしていますが、強制通用力をもたせることが不換紙幣の必要条件だと思います。

2点目につきまして。ここでの思考実験の目的が極限状態を想定し、マネーとは何かを明らかにすることにあり、マネーとは「純粋に債務である」かどうかを考える中で、国債以外にもマネーの裏付けとなる債務は存在することについて述べましたが、国が全ての債務を返済可能である、という主張はしておりません。

3点目については、例えば新円切替のような時点を想定すると、旧円からの切替え、政府による公共事業費、政府職員給与支払いなど、まずは政府から何らかの支払いなり貸付がないことには世の中に新円は1円もないので、新円の税収もまだないということかと。
仰っている税収にしても、そのもとは何周前かは判りませんが政府からの支払いから出発していると思います。

ご意見に対してはそれぞれこう考えていますが、更にご意見があればお聴かせください

 2013/09/08 23:08 そうして頭の中で考えた空想実験がどのような役に立つのでしょうか。
空想の先にたどり着いたアイデアを生かして世の中を良くすることが出来る立場の方なのでしょうか。
私のような庶民だと空想する時間があるなら動かないとご飯が食べられなくなってしまいます。
知識があったとしても生かす立場にありませんから世の中は何も変わりません。
ただ粛々と自分に出来る事をお金に換える努力をするだけですし、効率悪くても税金たくさん持って行かれても、その中で何とかするしかない立場で御座います。
優雅で羨ましい限りです。

KKKKKK 2015/12/02 16:34 日本は年金資産に対して、国債を引き受けさせることによって
膨大な借金を形成させました
あとは民間銀行や保険会社に国債を引き受けさせたのです
なので日本人の年金が、国債に化けただけなんですよ
だから年金不安が増大しているのです
もちろん1000兆円以上の負債を完全返済するのは不可能です
だからどうするのか?ですよね
おそらく今後20年以内をめどに国家破産するでしょう
そうなったときにどうするのか?ですよ
国債を引き受けている年金は破綻します
なので年金は自分個人で積み立てておく必要があります
あとは保険ですけど、生命保険などは国債がデフォルトされるので
生保も破綻します
国債のデフォルトは間違いなくおきます
これ以上は払えません
個人国債もデフォルトされます
あとはアメリカ国債もデフォルトされますね
そうなると日本が保有している200兆円の米国債もパー
日米が同時にデフォルトすることもありえます
そうなると株式市場は大暴落
(空売りすれば儲かる)
世界金融不安→政府に対する抗議→テロ発生→政府機能マヒ
ということになるでしょう
早く日本から離れて他国で暮らすしかありません
デフォルトまで最短で10年、最長で20年でしょうね
1300兆円以上もあって、さらに増えています
どんな経済学者もデフォルトすると言ってます
(返済不能→債務不履行→破綻→IMFから借りる→・・・)