シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

財務省の着ぐるみはどうなるか

昨日のエントリーネバダ・レポートで国民を脅かした五十嵐氏の最後 - シェイブテイル日記 ネバダ・レポートで国民を脅かした五十嵐氏の最後 - シェイブテイル日記で触れた、国会に怪文書ネバダ・レポートを引っ張りだした五十嵐文雄・前衆議院議員
 昨年三党合意による消費税増税法案の成立直前、財務副大臣として消費増税に関する国民の疑問に答えていましたが、結構イタい内容でした。 

      
       (本文とは関係ありません)

日経ビジネスオンラインの記事から抜粋してみます。(記事全文は無料登録しないと読めません)

Q1 「金融緩和をすれば、名目GDPの5%程度の成長は可能」といった見方がありますが。

五十嵐 「経済成長だけで財政収支が改善するのは期待薄」
 財務省に名目経済成長率と名目長期金利の過去の実績値を使って簡単な試算をさせたところ、名目成長率が1%増加した場合、税収増を国債費の増加が上回ってしまいます。

 利払費とは別に、物価の上昇などで歳出が増えてしまう面も無視できません。仮に、成長率を1%、税収弾性値を1.1、歳出弾性値を0.8と仮定しますと、歳入の増加は約42兆円×1.1%=約4600億円。一方で、国債費を除いた歳出の増加は約70兆円×0.8%=約5600億円となり、歳出の増加の方が大きくなります。

    「経済成長すれば消費増税なんてしなくていいんじゃないの?」 日経ビジネスオンライン2012年6月25日

五十嵐さん、財務省の示す数字をそのまま説明しています。最も問題なのは税収弾性値1.1(経済成長1%に対し、税収は1.1%しか伸びない)。
しかし、実際には税収弾性値は政府の有識者会議でも3.1。(正しい推測では消費増税はいらない? - シェイブテイル日記 正しい推測では消費増税はいらない? - シェイブテイル日記)
実際の税収は五十嵐さんの指摘の3倍多いはずです。つまり本当は自然増収による財政健全化は可能なんですね。

Q2「増税の前に無駄使いの削減などやるべきことがある」という意見が広がっています。歳出削減の努力が足りないとの指摘にはどう答えますか。
「政治家、役人は優遇されている」との声は消えませんね。

五十嵐:「『身を切る改革』の正当な評価を」
例えば、自民党政権時代に国会議員年金を廃止しましたが、もう皆さん、忘れてしまっています。役所のちょっとした役職以上の幹部は10%も給与がカットされています。住宅ローンの返済計画を変えざるを得ない職員だっているかもしれませんし、大変なことなんで、努力はしているわけですよ。

     増税よりも国のムダをなくすのが先じゃないの?」日経ビジネスオンライン2012年6月26日

民主党政権になって丸三年経った時点で、自民党政権の歳出削減成果を強調するのはいかがなものでしょう。
また「役所のちょっとした役職以上の幹部は10%も給与がカットされ」た、と言いますが、デフレ日本では先の消費税増税以来、努力していても平均で15%賃金が減っていますが、そちらは大変、とは思っていないようです。

Q3 「そもそも、消費増税しても全体の税収の増加につながるのか、増税により消費が落ち込むなどして、結局税収が伸びないのでは」との疑問が寄せられています。

五十嵐 税収の落ち込みの要因は『減税』
そうした見方があるのは、統計の見方の間違いが原因でしょう。確かに、かつての規模の税収が回復していないのは事実ですが、基本的に、消費税率を3%から5%へ引き上げた時も、今も1%あたり約2.6兆円という消費税収は保たれています。ということは、増税しても消費は落ちていないということです。  では、なぜ税収が落ちているかと言えば、1つは、1998年度、99年度に法人税率を37.5%から30%に引き下げるとともに、その後も日本の産業競争力強化を狙って、実質的に法人税率引き下げに等しい総額型の研究開発費の租税特別措置を導入したことです。これにより、実質的に減税の恩恵を享受している企業が多いのです。

 もう1つは、所得税について、累次にわたる減税を行ってきました。税収中立型以上の減税が行われた結果が反映しているのであって、仮にこれらの減税が行われていなければ、税収は消費税率アップ分だけ増えたはずです。また、地方への3兆円の所得税の税源委譲も国の税収減に影響している点も考慮すべきでしょう。

 さらに言えば、前回までに触れましたが、消費税率を3%から5%に引き上げた1997年以降に税収が落ち込んだことの要因は、この年の7月のアジア通貨危機や10月から実施した社会保険料の引き上げ、11月の山一證券の破綻などの金融危機の影響です。

 確かに引き上げ前に駆け込み需要があり、97年の4〜6月期には反動減も起きましたが、7〜9月期には前年同期比でプラスになりました。つまり、消費税の悪影響は反動減以外にはなかったのです。きちんと分析すると誤解は解けるはずです。

   「消費税を上げないと日本から企業や若者がいなくなる」日経ビジネスオンライン2012年7月24日

消費税増税でも税収が減ったのは減税のせい、あるいはアジア通貨危機のせい、というのは増税からしばしば聞かれる話です。 しかし実際には、前の消費税増税頃の経済状況はどうだったか - シェイブテイル日記 前の消費税増税頃の経済状況はどうだったか - シェイブテイル日記で見たように、消費税増税で金融機関の破綻が続くなどしたため、法人税は落ち込み、リストラで所得税も落ち込んで景気下支えのために緊急経済対策・経済新生対策として40兆円もの財政出動が必要になり、政府債務積み上がりが加速したのです。減税により税収が減ったというのは作り話に過ぎません。そもそも減税の効果が主体ならGDPが減ることが説明できません。

 またアジア通貨危機説の方も、増税で落ち込んだのはまず投資(総固定資本形成)で、輸出は健闘していました。輸出が落ちるのは1999年からです(図表1)。 こちらも作り話、ということです。
1997年に落ち込んだのは輸出ではなく投資

図表1 アジア通貨危機当時の日本のGDP変化
出所:内閣府国民経済計算
1996年を基準としてその後のGDPとその成分の変化額を示した。
アジア通貨危機は1997年7月に発生した。
1997年以降のGDP減少は内需(主に総固定資本形成)減少から生じている。
純輸出はその後も増加し、減少に転じるのは1999年以降。

五十嵐氏の主張で、情けないのは次です。

Q4 「政権交代を実現した2009年衆院選時のマニフェスト政権公約)では国の予算を組み替え、税金の無駄遣いをなくすことで財源を捻出し、消費増税は必要ない、と主張していたはずだ、マニフェスト違反だ」、との声が寄せられています。

五十嵐:「衆院任期中の4年間に消費税引き上げはないと思った」
国会でもよく質問されるところなのですが、民主党は党として「消費増税はしない」と公約していたわけではありません。マニフェストにもそのような記述はありませんから、公約違反というご批判は違います。

Q4-2 −でも、政権交代から4年間は消費増税はしないと言ってませんでしたか?

次の4年間の衆院任期中に実際に引き上がることはないと私たちは思っていました。だから、これは公約で触れなくていいんだ、となった。ずるいと言われるかもしれませんが、真剣にそう思っていました。ある意味で、国民に誤解を与えたのは事実ですが、それは嘘という事ではないと思います。

   増税は公約違反ではありません」
   日経ビジネスオンライン2012年7月25日

五十嵐氏、消費税増税は自分たち与党は上がると思っていなかったが、上がることになった、と意味不明のことを言っています。
早い話が、財務省の意向で消費税を上げることになったので自分たちの責任ではない、とでも言いたいのでしょうか。

五十嵐氏がデータを示して消費税増税の必要性を訴えた部分は全て財務省ウェブサイトで見られる筋書き・データと整合的です。そしてそれらは論破できるものばかり。 

五十嵐氏は財務副大臣と言う肩書きで、実は財務省の着ぐるみにすぎないんですね。
着ぐるみが中の人を離れて本音をいったのが最後の部分です。
ウソで固めた財務省増税誘導を先導しておきながら、最後には自分たちの責任ではないという五十嵐氏は、先の衆・参両議院選挙で大敗した民主党議員の典型例でしょう。 

 野田元首相らと共に国民が全く望んでいない消費税増税に道をつけてしまい、自分を選挙で選んでくれた国民には弓を引いて、財務省にシッポを振り続けた五十嵐元財務副大臣。自分はネバダ・レポートにもコロリと騙されるのに、消費税増税では国民を騙そうとした五十嵐氏でしたが、最後には公職選挙法違反までしても衆議院参議院ともに落選。

中の人はそれなりの「成果」を上げましたが、着ぐるみの方は使い捨てだったというわけです。

【追記】
昨日のエントリーネバダ・レポートで国民を脅かした五十嵐氏の最後 - シェイブテイル日記 ネバダ・レポートで国民を脅かした五十嵐氏の最後 - シェイブテイル日記 で、ネバダ・レポートは出所不明の怪文書と書きました。
 その後、エントリーを見ていただいた方から、この怪文書のオリジナルはこちらではないかと指摘をいただきました。→Nevada Economic Report

読んでみると、アメリカのIMFに近い筋、ではなくて、IMFについてよく知らない金貨商の方のブログに書かれた、IMFによる日本支配という妄想文です。 

IMFに多数幹部職員を送り込んでいる財務省官僚も、「先生、IMFは日本円を日本には貸そうにも貸せません」と教えれば良さそうなものですが、これを出所をIMF関連と脚色して国会資料として論戦しようという先生の中身が空であること知って、「使える人材」と判断したのかも知れません。