シェイブテイル日記2

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財政が悪くなれば「毒を食らわば皿まで」が正解

現在政府・与党では財政健全化計画に向けて検討が進んでいます。
財政健全化といえば、緊縮財政が当然として議論されていますが、本当に当たり前、なのでしょうか。

これを考えるために、中学数学レベルの大変単純なモデルを作ってみました。このモデルでの結論では、日本のように財政健全性指標(政府粗債務÷名目GDP)が1を超えていた場合、意外なことに財政出動したほうが、財政健全性指標がよくなるという結果となりました。 

 政府・与党が今年夏に策定する財政健全化計画に向けた検討に着手した。政府は12日の経済財政諮問会議で議論を本格化させ、自民党もすでに新たな検討委員会を設置。当面は社会保障費などの歳出抑制策を中心に検討が進みそうだ。ただ、春の統一地方選を控え、与党には、歳出削減で痛みを強いる政策を封印したいとの思惑もあり、健全化の具体的道筋は見えてこない。
財政健全化:基礎収支、改善へ議論本格化
毎日新聞 2015年02月12日 22時10分

政府与党での議論では、財政健全化のためには歳出削減は当然のことのように議論されています。

ただ、日本の財政健全化に歳出削減が本当に良策なのかどうか。
これを考えるために、中学数学レベルの大変単純なモデルを作ってみました。

このモデルでの結論から言えば、日本のように財政健全性指標(政府粗債務÷名目GDP=bとする)が1を超えていた場合、意外なことですが、財政出動したほうが財政健全性がよくなります。(f<0 ;fの定義は文末囲みに記載)  (図1)
つまり常識に従い、日本でプライマリーバランス改善を目指せば、財政健全性指標は悪化するということです。


図1 財政健全性指標(b)が1以上の国での財政出動の影響
文末のような簡単なモデルで、日本のように財政健全性指標(b)が
1を超えている国での財政出動の影響をみると、
財政出動規模(ΔD) や名目GDP(Y)規模によらず財政出動しなかった場合
より財政健全性指標が良くなっている。(f<0)

ただ、財政健全性指標が1未満の場合には、財政出動をすると財政健全性指標は悪化するようです。(図2;f>0)

図2 財政健全性指標が1未満の国での財政出動の影響
財政健全性指標(b)が1未満の場合、財政出動すると、
財政健全性指標の悪化を招く。(f>0)

財政出動の財政健全性への影響を調べる簡単なモデル

もしパラレルワールドがあるとして、現在の日本と全く同じ状況の「日本’」があるとする。  現在の名目GDPはともにY、政府粗債務残高はDで、その他物価や金利その他の条件も全て同一。

ただ、「日本'」は「日本」より余分に財政出動ΔDをし(ΔD>0)、名目GDPはΔYだけ多くなるとする。

そうした時に、「日本’」と「日本」の財政健全化指標の差をfと置いて、の正負を見れば、財政出動することの財政健全性への影響が分かる。

計算を単純化するために、また控えめな仮定として、財政支出乗数を1とすれば、ΔD=ΔYとなる(=aとする)。
以下、の計算結果は…。

これをY-f座標でグラフ化したものが図1と図2。

 財政健全性指標が1を超える場合(図1)と1未満の場合(図2)では財政出動ΔDの、財政健全性に与える結果が逆向きになっている。

これだけ単純化した指標で何が言えるのか!と批判される向きもあるかもしれません。 ただ、財政健全性によく引き合いに出されるドーマー条件の解釈にしても、政府内では経済成長率を一定、あるいは経済成長率=金利といった、財政出動の意義は全くないという現実味のない前提を置いた議論が普通に横行していますので、ドーマー条件には意味があり、ここで出した単純なモデルが無意味とも思えません。

■現実の財政健全性指標の動き
図3は、資源国を除いた先進32カ国での財施健全性指標の単純平均の推移です。近年、数値は次第に上がっており、80%を超えてきています。

もし上記のモデルが妥当なのであれば、財政破綻を起こしていない、継続した長い経済史を持つ国々の財政健全性指標は次第に100%に収束していくように思われます。

図3 資源国を除く先進32カ国での財政健全性指標
出所:IMF WEO