シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

今更ですが、消費税増税は何のため?

 今更ながらの話にはなるのですが、消費税が増税されたのは一体何のためだったでしょう。

政府や財務省、マスコミ、そして国民の大多数も「消費税増税分の使途は社会保障財源に決まってます。」というのでしょうね。 確かに自民・公明・民主の三党合意、正しくは税と社会保障の一体改革に関する三党合意では社会保障の安定財源と明記されています。

問題はお金には色がついていないことです。 本当に消費税増税分が社会保障費に充てられているのかは、自分の頭で一度整理してみる必要があります。

 私たち個人の立場で考えてみると、消費税は8%に増税されて確実にサイフから多く出ていくことになりました。 ところが安倍内閣では、社会保障の「自然増」を1.3兆円削減、公的年金もこの間3.4%削減されました。

不思議な話ですよね。社会保障費に回されるはずの税が増えたのに、国民に戻ってくる社会保障費は確実に減額されているのですから。 

  では、増税された消費税は実際のところ、何に使われているのでしょうか。 右の図は実際の消費税の使途を政府広報の説明通りに図示したものです。*1

消費税増税で増加した5兆円のうち、1割に相当する0.5兆円こそ、子育て支援など文字通りの社会保障充実に充てられるわけですが、残りの9割方は「基礎年金国庫負担」「安定財源確保」が使途になっています。これら、基礎年金国庫負担、安定財源確保という部分は国民に新たに分配されるものではありません。 これまで国債で賄われていたものを消費税で置き換えたわけです。

国債で賄われていたものを、税で置き換える。
これは何を意味するのでしょうか。

ある消費により支払われた消費税は、それを預かり支払い義務が生じた企業の銀行預金から政府預金に振り替えられます。
その政府預金が、国債の代わりに使われる、ということは、要するに、国債は家計の預金量とは無関係に発行可能 - シェイブテイル日記 国債は家計の預金量とは無関係に発行可能 - シェイブテイル日記 でご紹介した、市中消化した国債による財政出動逆回転ということになります。 

ということは、消費税増税分の使途とは、1割が社会保障の充実、9割は負の財政出動ということですね。

そうすると、安倍内閣が主導する「失われた30年」 - シェイブテイル日記 安倍内閣が主導する「失われた30年」 - シェイブテイル日記 でみましたように、日本は元々世界の先進国で最も財政出動をせず、その結果、最も名目GDP成長率が伸びない国だったのに、消費税増税はこれに追い打ちをかけるように、名目GDPの抑制策というだけであり、「社会保障の充実」のための消費税増税というのは絵に描いた餅、もっとはっきりいえばウソ、ということです。

アベノミクスはデフレ脱却を掲げ、第一の矢では総額400兆円を超すほどのマネタリーベース(殆どは日銀と金融機関の間を行き来するおカネ)を積み上げながら、最近ではコアコアCPIもマイナス圏に転じ、黒田日銀総裁も自分自身の任期一杯までのデフレ脱却を曖昧にするところまで見解が後退しています。

ではなぜ、財務省は日本経済潰しにしかならない消費税増税を、こうした国民に対するダマシ打ちで強行しているのでしょうか。
ここが私もよく理解しかねる点でしたが、元財務省出身の高橋洋一氏はこの点に明確に答えを出しています。

”歳出権は予算上の歳入がポイント、これが増えれば予算編成がら楽になりかつZは各省からありがたがられる。予算上の歳入を増やすには増税が手っ取り早い。経済成長で増えるのは決算上の歳入だが、これでは歳出権は大きくならない。*2

財務省の役人に本音を語ってもらえば、
「歳出権という省益増大のためというが消費税の存在意義であり、その消費税により日本経済が半潰れになろうが知ったことではない。社会保障のための消費税などという虚構に騙される国民が悪い。」
ということになるのでしょうか。

*1:図の出所はこちら

*2:Twitter2016.10.23