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2017-08-11 日本は世界一GDPシェアが減少しているがそれは人口減少とは無関係 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

蓮舫氏が辞めた後の民進党代表選挙枝野氏と前原氏が立候補していますが、その枝野氏の打ち出す経済政策の背景には「人口減少など社会成熟化による需要そのものの減少」があるそうです。 *1

確かに日本は2008年をピークに人口減少に転じました。 ただ、世界を見渡せば、ロシアポーランドなど他にも人口減少国はあります。
そこで日本やこれらの人口減少国を含めて世界経済での各国シェアの変動を調べてみました。

図1は1996年時点での名目GDP(ドルベース)の各国シェアとそれから20年後2016年の名目GDP各国シェアの比をとったものです。


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図1 名目GDP世界シェア増減率
元データ出所IMF WEO April 2017
世界シェアの変動費率は、例えば日本の1996年の名目GDP世界シェアが15.2%で、2016年のそれは6.6%なので、
6.6÷15.2=43.4(%)を日本の世界シェア増減率とした。
なお、グラフの煩雑性を減らすため、2016年の名目GDP世界シェアが0.3%未満の国々は省略している。

このグラフをみるといくつかの情報が得られます。

まず、このグラフに載る主要な国々の中では日本のGDP世界シェア減少率が最大ということです。

日本に次ぐシェア縮小国はギリシャです。ギリシャユーロを借りた相手のEUなどトロイカ体制から厳しい緊縮策を突きつけられています。
それに次ぐのがドイツイタリアフランスといったEU主要国です。 EUでは「マーストリヒト条約」で、ユーロ参加の条件として財政赤字が対 GDP 比で3%、債務残高が対 GDP 比で 60%を超えないこととする基準(いわゆる「マーストリヒト基準」)が定められ、参加国は全て緊縮財政を余儀なくされて各国とも経済失速・失業増加などに喘いでいます。(通貨経済力に対して常に割安に維持されるドイツ外需だけは例外ですが)

また、人口減少国ロシアポーランドはこのグラフでは中位にあり、人口減少国だから経済規模が拡大しないということはないようです 
ちなみに日本は2008年以降人口が減少していますが、1996年と2016年の比較では日本は0.9%人口は増加しているのに対して、ロシアは3.1%、ポーランドは1.7%人口が減少していますので、枝野説のように、「人口減という抗しがたい現象経済規模減少の主因」と捉えることには疑念が生じます。

GDPシェア減少国は例外なく緊縮財政を持続的かつ強力に実行しており、人口減少国はGDPシェアを下げた国(日本)と上げた国(ロシアポーランド)が混在しており、経済活動を縮小させることに対して、人口減少は余り意味を持たず、政府緊縮財政をとることが非常に有効ということなのではないでしょうか。

もうひとつ、近年世界での日本の発言力が落ちるのと裏腹に中国の発言力が増していますが、GDPシェアが相対的に10倍も変動すれば、それもあながち不公平ともいえない気がします。

では日本のGDPシェアの推移もみてみましょう。
図2は、日本のGDP世界シェアを名目GDP(ドル換算ベース)と購買力平価ベースでみたものです。


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図2日本の世界でのGDPシェア推移
生データ出所:図1に同じ。

このグラフに描かれた期間内には、世界・日本でさまざまな経済事象東日本大震災などの自然事象が発生していますが、まるでそれらとは無関係かのように、日本のGDP世界シェアは右肩下がりで下がっています。
 
日本国内ではアベノミクスはそれなりにポジティブな評価がなされていますが、経済活動を名目GDPの世界シェアという切り口でみた時には、それとは随分と違う印象があるものですね。
安倍政権がいかに金融政策規制緩和に努めようと、緊縮財政を止めない限り、この四半世紀つづく日本経済の縮小傾向を止めることはできないのではないでしょうか。

*1:ソースは枝野氏のウェブサイト

田中リンクス田中リンクス 2017/08/12 00:08 人口減少で需要が減るから経済成長しない、というのはサプライサイド経済学とは反対ですよね。需要側、しかも内需を重視しているわけです。この着目自体は正しい。デフレギャップが恒常化しているから日本は経済成長しないと言ってるのだから。但し、彼等が間違ってるのは供給側と違い需要側は政府が債務を拡大することでいくらでも押し上げることが出来るということを理解していないところでしょう。仮に人口が半分になっても1人当たりの可処分所得が倍になれば金額換算の需要は変わらない筈です。
物、サービスを供給するのは国民ですから政府が国家の生産力を上げれるかどうかは国民の働き次第です。しかし需要はいくらでも拡大出来ます。
そもそも人口減少で需要不足になりデフレギャップが恒常化すると言うのなら、財政破綻だのハイパーインフレだのと心配する事もないでしょう。デフレが固定化するのですから。インフレにならないのなら財政支出しほうだいですよ。でもそれをやるとハイパーインフレになるという。僕から言わしたら「どっちやねん!」です。

名無し名無し 2017/08/12 13:43 橋本龍太郎が1997年にあんなことをしなければ、「日本は人口減少してるのだから成長するわけない」などという卑屈で情けない負け犬根性が国民の間に染みつくことは無かったでしょう。

景気対策のおかげもあって、日本経済は95年は成長率2.7%、96年は3.1%まで回復していたのに、総額14兆円(消費増税5兆円、特別減税廃止3兆円、公共事業削減4兆円、社会保障費負担増2兆円)の特大緊縮を行い、地獄の門を開けたのが橋本龍太郎です。

私は彼は戦後最悪の国賊だと思ってます。あの年を境にあらゆる経済指標が屈折しています。あれが無ければ名目GDPも600兆円どころか、今頃1000兆円には達していたでしょう。日本の分岐点が1997年ではなくバブル崩壊からという説が市民権を得ているのが嘆かわしいです。

世間的に彼はあまり無能扱いされてません。反省会すら満足にできないのだから、失われた20年はお似合いだったのかもしれません。

こ↑こ↓こ↑こ↓ 2017/08/12 15:12 民進党はもうダメでしょうねぇ・・・
本当に経済については山本太郎のほうがまともに現状を理解しているからもうこの政党はいらないと思います
ぶっちゃけ共産党辺りがもうちょっとマシな経済についての知識を持って自由党と連立してくれたらなぁと持っていますが幻想ですからね・・・

名前を入力して下さい。名前を入力して下さい。 2017/08/12 18:01 日本の左派は左派としての体を成してません。トピ違いかもしれませんが、韓国の現左派政権は経済的にはそれなりにまともだと思いませんか?積極財政志向かつ法人税を引き上げるようです。

ビルビル 2017/08/22 11:23 日本が『緊縮財政を持続的かつ強力に実行している』という御主張のようですが、では何故日本は世界一の政府債務国なのでしょうか?

けんけん 2017/08/28 01:30 ↑緊縮政策の為、無自覚にデフレを20年延長させた結果、税収や名目GDPが伸び悩んだからです。デフレにならず、他の先進国同様に平均名目成長率4%前後のペースで成長を続けたら、今頃名目GDPは1000兆円、税収は100兆円以上で、GDP比の債務が200%超えなんて事態にはならなかったでしょう。

通りがかり通りがかり 2017/10/02 13:27 税は国の経済構造、産業形態、人口動態を制御し、国家構造を決定付ける重大な要素です。

経済や人口動態は国の税制に左右されると言っても過言ではありません。
実際に歴史上でも人頭税を人口抑制の手段に使用した国も存在します。

人頭税は人が生きる為の最低限の衣食住育を犠牲にして負担を最優先されますから、(中絶や非婚の増加により)出生数がを抑制されます。

因みに、「税と歳出」まにより労働分配率を引き下げる国は日本だけです。
つまり、社会保障制度が労働搾取として機能し、再分配を行われず働く貧困世帯や貧困児童を増やしています。

人の為の社会保障ではなく、アベコベに「社会保障の為の人」ですから、社会保障が人を食い潰している格好です。

社会保障が経済調整(ビルトインスタビライザー)の効かない消費税(定率税)や保険(定額税)である為に、これが人頭税として機能する為です。
こういう人頭税は、資産集中化と貧困拡大の同時進行、経済停滞とデフレ化、破産廃業の増加、産業衰退、出生数激減、財政難となり国難を招きます。

従って、人頭税の撤廃が最大の社会保障と言えます。

2017-04-08 すべては銀行の信用創造行動から始まる このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

皆さんは、おカネはどこで生まれるかを考えたことはおありでしょうか?
通貨の供給ルートとして、しばしば「信用創造」として、銀行に預けられたおカネが引き出しに備えた準備預金を除き、再び別の銀行に貸し出されるモデルが紹介されることがありますね。 
しかし、あの教科書に載っているモデルは間違いなんです。

おカネはどのようにしてうまれるか。
これについて、本日は、Twitterでのやりとりの延長で、横山昭雄氏の「真説 経済金融の仕組み」を一部抜粋してご紹介します。

横山昭雄 「真説 経済金融の仕組み」 p80-p84より

第3節 真の通貨供給メカニズム−モデルI

■すべては銀行の信用創造行動から始まる
いま歴史のコマを早回しして、現金・キャッシュが全く不必要なまでに信用化の進んだ金融経済機構を想定してみよう。そこでは一切の取引・決済が預金通貨の振替、手形・小切手の授受を通してなされるため、銀行券・補助貨は全く不必要になる。また、政府の財政活動に伴う金融的諸取引、外国との貿易・資本取引に絡む諸金融現象についても、当分の間これを考慮の外に置くこととしよう。
この信用経済(これをモデル気噺討椶Α砲旅柔メンバーとしては、中央銀行とA、B二つの市中銀行信金信組農協等すべての預金受け入れ機関を含む概念)、資金を需要する甲、乙、丙、…等複数の企業とa、b、C、…等多数の家計があるとしよう。
この進んだ信用経済における、たとえば10000のマネーストック(全額預金通貨)は、どういうプロセスを経て供給されるのだろうか。
それは、銀行の(主として対企業)″貸出″行動を通して供給される(より広くは信用供与、つまり相手方への貸出のほかに、相手方からの有価証券買い取り・引受をも含む概念。以下便宜のため"貸出"なるタームをもって与信全体を意味することとするが、必要に応じて有価証券取得をも含む与信概念にも言及)のである。

今、一般企業と同様、利潤追求企業としての銀行Aが、企業甲の設備資金借り入れ需要(800)に対応する、とする。
(中略)
この時の取引関係の経理処理を、複式簿記手法によって示せば図3-1の通り。つまり、銀行は貸出を行い、その反射行為として、自己の負債としての預金を創出するわけである。これを信用創造という。まさにM・フリードマンが言う通り、″銀行の書記のペンから預金が産まれる″のである。この後、企業甲が、機械メーカー乙から機械(700)を購入すれば、関係者の貸借対照表(B/S)は、図3-2の通り変化する。
この場合、便宜上、メーカー乙もA行の取引先と仮定する。
A行は、このような貸出活動を、甲以外の多数企業にも行い、トータルで7000の与信残高、したがって7000の預金残高を持っている、とする。同様にB行では3000の与信残と3000の預金残が見合っている、とする。
両行合計で10000の与信がなされ、経済全体として10000のマネーストックが供給されているのである。この時、経済全体のB/Sは図3-3の通り。
さて、以上の話の流れでは、預金とは、すべて銀行貸出・与信行動のはね返りとして創出された″派生預金″であると断じられ、既存の教科書によく見られるような、貸出と無関係な″純預金″あるいは″本源的預金″という概念が全く無視されている点、あまりにもこれまでの常識に反していることに触れておく義務があろう。

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(中略)

 エコノミスト、つまりマクロ経済を考察している人達が、金融機構全体を論ずる場で、貸出のためには預金獲得が必要といった発言をしたとしたら、これは全くの誤りであると言わなければなるまい。それはたとえば、個人預金なるものをちょっと詳しく考えてみれば、すぐに理解できることなのである。

今ここにA行を取引先とする企業甲、そこに勤務し自宅からの利便を考えて給与振込口座をB行に開設しているサラリーマンaがいるとしよう。今月分のaに対する給与40万円が支払われて、B行におけるa名義個人預金口座に振込まれたとすると、この個人預金40万円は、B行にとって間違いなく、貸出の見返りでない本源的預金である。しかしながら、我々はすぐに、A行においてはその分だけ甲の企業預金が減少していることに気が付かねばなるまい。つまりB行にとっての本源的個人預金40万円の資金源泉は、実はA行における甲の企業預金であったわけである。そしてこの甲の企業預金は、恐らく甲が給与支払に先立って製品販売先丙から代金回収を受けたか、あるいは取引先A行から借入れをしたか、のいずれかによるものであろう。ここに気が付けば、さらに製品販売先丙の決済原資となった丙の企業預金もまた、その取引先B行からの借入れか、丙の販売先企業丁からの代金回収かである……と辿っていくことは極めて容易である。つまり、一行にとって本源的預金であるところの個人預金も、その資金源泉をたぐっていけば、結局銀行組織によってそれに先行して行われた、主として企業向けの与信行動にぶつかるのであり、それ以外ではあり得ないということが判明してくる。非債務者法人の純預金についても、理屈は全く同じことである。

このように見てくると、個別行の眼からは一見貸出に関係のない純預金に見えるものも、つきつめて信用体系全体で考えれば、何処かで行われた貸出の見返り(派生預金)に他ならないのであり、したがって(モデル気砲△辰討蓮法マクロ的に見るかぎり、貸出と無関係な、いわゆる本源的預金なるものはそもそも存在しない」ということがはっきりとしてくる。我々が、いま批判的に取り上げているフィリップス型信用拡張公式のミスリーディングな叙述ないし誤謬も、結局のところミクロの個別銀行の預金吸収行動と、全金融体系のマクロ的な預金創出メカニズムとを混同したことから起こったもの、と断ずることができよう。

恐らく、以上の話の流れがあまりに通説と異なるため、いぶかしさを禁じ得ないでおられるだろう読者のために、つまり、「それでは、そもそも本当の本源的預金なるものは、この世にないのか」と、戸惑っておられるかもしれない諸賢のために、話を少し先取りして言えば、モデル気砲△辰討蓮◆中央銀行オペレーションなどで供給する中央銀行預金のみが、全銀行システムにとって、つまりマクロ的に見て、唯一、(市中銀行貸出の見返り・派生ではない)という意味での、本源的預金と称び得るもの」なのである。さらにモデルの制約を取り払った後も、外貨流入などの特殊事例を除き、大筋この考え方が基本となることが判明する。

しかし、ここであわてて付け加えるべきは、「中央銀行信用による中央銀行預金のみがマクロ的本源的預金である」と述べたとしても、それは決して、「この本源的預金がベースとなって信用拡張メカニズムが展開される」などと、言おうとしているわけではない、ということ。むしろ、この犖躄髻蹐海修、筆者が、本書を通じて論駁したいと考えている最大のポイント。このあと順次、この点について、丁寧に論じていくこととしよう。(以下略)


いかがでしょうか。
>>まさにM・フリードマンが言う通り、″銀行の書記のペンから預金が産まれる″

つまりおカネは銀行の貸し出しの際に生まれるという概念、ご理解いただけたでしょうか。

通りすがり通りすがり 2017/04/08 23:47 私は、フィリップスの信用創造論については次のように思っています。

フィリップスの信用創造論でも、貸出でお金が増えることは同じだと思います。

私は、フィリップスの信用創造論の肝は、むしろ経済人の行動にあると思います。

準備率が10%だとして、現金100万円が預金されたら、10万円残して90万円貸し出す、というのは、「ペンから預金が生まれる」に矛盾しません。

なぜなら、預金を90万円、「ペンによって」信用創造されて、それが全部下ろされれば、フィリップスの信用創造論の通りになるわけで、矛盾しなわけです。

つまり、フィリップスの信用創造論の肝は、「現金」でお金が増える、という点にはなくて、「銀行は準備ぎりぎりまで貸し出しを行う」「預金が生み出されたら全部引き出されて使われる」という「仮定」にあると思います。

おそらく、「合理的経済人」の想定なのでしょうが、そういうモデルだと思います。

それと、これはあくまで、「一つの預金」を追ったモデルだ、という点です。つまり、時点ネット決済や、同銀行内決済、そして、出て行った現金もあれば入ってくる現金もあるという「二つ以上の預金」のことは語っていないモデルだということです。

私はそのように思っていますが、ただの匿名の素人さんの意見なので、あまり信用しないようにしてください。

shavetail1shavetail1 2017/04/09 21:32 通りすがりさま

ここで問題視されているフィリップス型信用創造論に従い、A行にb氏が預金100を預けているとして(預金残高100)、法定準備率が1%で、A行はC行(預金残高ゼロ)に口座があるd氏に99又貸しすると考えると、貸し出し後にはA行の預金残高1、B行の預金残高99で、預金としては「創造」されていない点が問題かと思います。 もしA行には100、B行にも99残高があるとすれば、この99部分は同時にb氏の預金でもあり、d氏の預金でもあるという詐欺的な状況ということになるのではないでしょうか。

通りすがり通りすがり 2017/04/09 22:45 まず、AさんがX銀行に、100の預金をしたとします。そうすると、預金がAさんの分、100になりますよね、

そして、X銀行がBさんに90の預金創造を行ったとしましょう。そうすると、その時点では、X銀行に現金100、預金が190になります。もっと細かく言うと、資産に、現金100、貸出金90、負債に預金が190になります。

そしてBさんがそれを全部引き出して使ったとしましょう。そうすると、X銀行に現金10、預金は100になります。細かく言うと、資産に現金10、貸出金90、負債に預金100です。

フィリップスの信用創造論の通りです。矛盾はありません。

通りすがり通りすがり 2017/04/09 23:21 私も、もともとは、「フィリップスの信用創造論はむちゃくちゃだ!間違っている」という人でした。

しかし、当時神戸大学助教授、石井隆一郎『現金銀行論』で、フィリップスの信用創造論がバランスシートで説明されているのを見て、見た時点では馬鹿にしていたのですが、ちょっと経ってから「待てよ」と思い、上の理解になったわけです。

当時は、時点ネット決済なども知らなかった、というのもあります。

通りすがり通りすがり 2017/04/09 23:23 『現金銀行論』ではなくて、『現代金融論』です。打ち間違えました。すごい古い本です。

こんな「趣味」は、現実では誰にも語れません。

通りすがり通りすがり 2017/04/09 23:25 ああ、1965年の本なので、すごい古い本、とも言えないですね。たびたびすいません。

通りすがり通りすがり 2017/04/10 13:44 「もしA行には100、B行にも99残高があるとすれば、この99部分は同時にb氏の預金でもあり、d氏の預金でもあるという詐欺的な状況ということになるのではないでしょうか。」

そうではなくて、bさんの預金は100であり、dさんの預金は99です。何も詐欺的なことでもありません。A銀行がdさんにお金を貸すときに、A銀行の預金の総額が199になり、そしてdさんが現金を99下ろすと、100に戻ります。

それをdさんが使ったり、別の銀行に預ければ(別の銀行に融資を受けたdさんが全額預けるなんてことは通常ないと思いますが)、別の銀行にdさん、あるいはdさんが使った先の人の預金が99(総額)になります。

何も矛盾はありません。ようは、A銀行が「現金」を渡す、ということを注目してしまって、その時点で預金創造がなされていることが見えにくくなっているだけです。

なぜなら、預金が生まれなければ、現金は下ろせないので。直接、現金が渡されてたとしても(通常そんなことはないとは思いますが)、別に矛盾しません。その時点で預金が生み出されて、それが下ろされたということが省略されているだけです。

通りすがり通りすがり 2017/04/10 13:59 「誰かに貸し付けるときに無から生じる」というと、多くの人は、「預金を作ったって、現金がおろされるんだからそこで限界があるでしょ」ということになってしまうと思う。

だから、銀行内決済、時点ネット決済、現金は単に預金の移動を助けているだけ、出て行く現金もあれば入ってくる現金もある、準備金の後積み、日銀の金融調節、という知識が必要になってくる。

でもここまでこれる人がどれぐらいいるだろうか。もっと人生には楽しいことがたくさんある。人を馬鹿にして気持ちよくなるためには、あるいは自分が頭がいいと思いたければ、1〜3冊ぐらい経済学者の一般書を読んで、その知識で殴り続ければそれで事足りる。

通りすがり通りすがり 2017/04/10 21:34 「A行にb氏が預金100を預けているとして(預金残高100)、法定準備率が1%で、A行はC行(預金残高ゼロ)に口座があるd氏に99又貸しすると考えると、貸し出し後にはA行の預金残高1、B行の預金残高99で、預金としては「創造」されていない点が問題かと思います。」

間違っていると思います。A銀行には、bさんの預金100で、C銀行にはdさんの預金99です。dさんの預金99は、A銀行がdさんに貸出を行った際、信用創造されています。

A銀行が1になるのは、ここでは現金です。預金と現金がごっちゃになっていると思います。

それと、C銀行に口座があるdさんに、A銀行が貸す、というのも、ちょっとそもそも違うのではないかと思って、金融大学HPによれば、

http://www.findai.com/yogow/w00321.htm

「銀行が、預金者から100円を預かったとします。法定準備率を10%とすると、10円だけを現金で銀行に残し、残りの90円(元本の90%)をA企業に貸付けることができます。A企業は、銀行から借りたお金で、取引先であるB企業に支払いをします。B企業はそのお金を銀行に預け、銀行にはB企業の預金90円が新たに作られます。」

となっており、A企業への貸出をしてその支払いがB企業でいき、預金される、となっています。私はこの金融大学HPと同じ理解でした。

通りすがり通りすがり 2017/04/10 23:01 現代の銀行は現金を渡して融資する、ということはしないと思いますが、現金を直接貸し出したとすれば、その仕訳は、

貸出金 100/ 現金 100

になると思います。では現代はどうかというと、まず

貸出金 100/預金 100

となって、預金が信用創造され、現金でそれがおろされたとすれば、

預金 100/現金 100

となり、最終的な結果は同じになります。

つまり、銀行に貸出金という資産が表れている時点で、相手には当然借入金という負債が生じていて、それを預金でもっていようが、現金でもっていようが、「信用創造」されたのは同じなのです。

フィリップスの信用創造論は、経済学を学ぶ人たちが説明の文章を読むときに、この「貸出金」という資産勘定が銀行に発生することが、よく分からないことによって、誤解が生じていると私は考えています。

また、実際の制度をよく知っている人たちも、フィリップスの信用創造論「を」簿記的に仕訳してみる、ということはしないため、「預けられてそれがまた貸し出されるなら、使えないカネが増えることか、まったく間違っている」とか言ってしまうのだと思います。

使えないカネが増える、ではなくて、X銀行が、Aさんに100万円貸したらなら、まさに「そのお金が」使えるお金なのです。

と、私は「みんながしている誤解」はそのようなものだと思っています。

asdasd 2017/04/11 00:11 書こうかどうしようか迷いましたが…
私も通りすがりさんと同様の理解です。言い方や捉え方が違うけど、結局どちらも同じ事を言ってると思います。
私なりの理解では、信用創造の歴史の話でも結構重要ポイントだと思いますが、帳簿上の数字という概念が組み込まれているところがキモだなあ、と思ってます。預金を貸し出したはずなのに預金が手つかずに残ってる、っていう。この部分なんかまさに詐欺的ですよね。

通りすがり通りすがり 2017/04/12 00:39 こうやって説明すると、「だって、99現金を渡したら、1になっちゃって、bさんがお金をおろしたくても使えないじゃないか」という人がいるのだと思う。

だから、このモデルは誤解を生みやすいのだと思うし、信用創造の形を教えるのに適切だとは言えないのだと思うが、これはあくまでモデルであって、一つの預金を現金で追ったものにすぎないのだと思う。

つまり、例えば、A銀行から99預金がB銀行に流出しても、B銀行も貸し出しを行っているなら、A銀行に99預金が流れることだって考えられるのだが、それだと2つ以上の預金を扱うことになるので、また別の話になってしまう、ということなんだな。

A銀行が貸し付けた人が、A銀行と取引のある人のところでお金を使う場合だって考えられるわけで、そうなると、別にB銀行にお金が流出するわけでもなくなる、ということもある。

また、日銀の買いオペ等による、マネタリーベース供給とか、金融調節とか、マネタリーベースを融通しあう(貸付合う)、コール市場とか、そういったものが現実にはあるわけで、そうなってくるとまた別の話になってくる。

自分としては、そのように最初から教えたほうがいいと思うが、ともかく、フィリップスの信用創造論の批判は微妙なものが多いと思っている。

私は、モデルの仮定うんぬん、というよりも、そもそもみんな簿記の仕訳が出来ますか、私の上で書いていることが分かりますか、と問いたい。私は高等数学が分からないから経済学の論文は読めない。だから、経済学が出来る人も、簿記が出来ないと認めてほしい。つまり上の説明は分からないんだ、と。

tamurin7tamurin7 2017/04/13 02:44 そうですね、私も通りすがりさんが書いている通りだと思います。
フィリップス型の信用創造論(と呼ばれていることも今回初めて知りましたが)は別に間違っているわけではない。
ただ、非常にミスリーディングであることが問題なんですよね。
現金で貸していることにされると、貸した瞬間に実は預金が創造されているのだということに気づける人はほとんど居ないでしょう。
この説明だと銀行がお金を作っていることが非常に見えづらくなってしまう。
嘘をついているとは言い切れない説明でありながら、銀行がお金を作っていることを見えなくしている点で、この説明を考えた人(フィリップスさんですかね)は天才的だなぁと思ってます。

望月夜望月夜 2017/04/13 02:48 通りすがりさんの言っていることは、概ねその通りと思う。

個人的には、「このモデルは誤解を生みやすいのだと思うし、信用創造の形を教えるのに適切だとは言えない」というところが、全体を通してもっと強調されても然るべきとも思うが。

通りすがりさんはかなり理解されている方なので、今から書くことは通りすがりさんに対してではなく、通りすがりさんのコメントを読んでいる人たち(そしていまいちピンと来ないであろう人たち)の理解の一助としてもらうために書く。

通りすがりさんが『フィリップスの信用創造論』と呼んでいるもの、よく「又貸しモデル」と言われるものは、決済が全て「引き出された現金」を介して行われる、という仮定のもとに組み立てられている。ただ一方向だけに限れば、銀行間決済であっても(一旦引き出された現金が移動するか、日銀当座預金が直接移動するかの違いはあっても)同様のことが起き、仕訳上の動きも(ほぼ)同一である。

問題は、実務的には「引き出された現金で決済する」というのは全体で見て極めて限定的な規模であるということである。

この部分を根本的に正すと、最終的に言えることは、我々が決済手段としているのは実は現金(紙幣・硬貨)ではなく、信用、負債なのであって、現金はあくまでその単位であったり、信用決済を補助するものであるに過ぎない(信用貨幣論)、ということなのである。

shavetail1shavetail1 2017/04/14 08:12 皆さんコメントありがとうございます。

ここまでコメントいただいた皆さん全員、フィリップス流信用創造に賛同されているようですね。

さて、通りすがりさまのご指摘、「フィリップス流信用創造と矛盾はないではないか」
これは私もそう思います。特に1行だけでみればそう思えます。

「現金と預金を混同していないか」
これは混同していません。モデルIでは元々現金の存在を前提としていないからです。

さて、信用創造については、通りすがりさまの仕訳で間違いはないと思いますが、その理解ならば、そもそも他行から受け入れる預金は新たな信用創造と直接は関係ない要素ではないでしょうか。

フィリップス流の理解ではそれが信用創造の原資という理解ですから。

通りすがり通りすがり 2017/04/14 09:03 「貸し出し後にはA行の預金残高1、B行の預金残高99」

A銀行の預金残高は1ではないですよ、と言っています。1になるのはここでは現金ですよ、預金はbさんの100ですよ、預金と現金を混合してますよ、と言っています。もし、現金の存在を前提としていないのであれば、「A行にb氏が預金100を預けているとして(預金残高100)、法定準備率が1%で」という、その前の文章があるのが意味が通りません。

「その理解ならば、そもそも他行から受け入れる預金は新たな信用創造と直接は関係ない要素ではないでしょうか。」

これは入ってきた現金を準備金を除いた額全部貸し出して、全部引き出されて使ったらどうなるのか、みたいな「モデル」なんだと思います。モデルは仮定で構成されています。また本源的預金に関していうと、歴史的経緯なども考えなければいけないと思っています。もし、現在のお金の原資が、幕府がまいた銭だったり、輸入したものだったりした場合、本源的預金は存在するといえるかもしれません。私はそういうことには興味はありませんが。

ともかく私が思うことは、フィリップスの信用創造論を批判している人たちは、銀行が現金で貸し出した際、当然、銀行に貸出金という資産が生まれる、ということがあんまよくわかってないんじゃないか、というものであり、ブログ主さんがそうではないのであればもうしわけなかったです。

shavetail1shavetail1 2017/04/14 13:05 「貸し出し後にはA行の預金残高1、B行の預金残高99」
これは判りにくい話でしたね。それは取り下げます。

この話のポイントは、銀行の貸出しに、本源的預金が必要か否かです。
 フィリップス流の信用創造つまり、本源的預金なしには派生的な預金が生まれないという理解が正しいのかどうかです。

通りすがり通りすがり 2017/04/14 15:16 「判りにくい」んじゃなくて、間違いだと思います。

「もしA行には100、B行にも99残高があるとすれば、この99部分は同時にb氏の預金でもあり、d氏の預金でもあるという詐欺的な状況ということになるのではないでしょうか。」

という文章から見る限り、ブログ主さんは、フィリップスの信用創造論を勘違いして理解されていると思います。私が言っているポイントはそこですし、あなたの最初のコメントも本源的預金うんぬんなどとは全く書いてありません。

「貸し出し後にはA行の預金残高1、B行の預金残高99で、預金としては「創造」されていない点が『問題』」と書いてるじゃないですか。ですから創造されてると思いますよ、と書いてるんです。

shavetail1shavetail1 2017/04/14 15:45 まず、金融大学の信用創造の部分をみていただきましょう。

http://www.findai.com/yogow/w00321.htm

これが、フィリップス流の信用創造の説明です。
本源的預金が預けられると、それ自身を別の銀行(の口座がある人)に直接貸し出される、という説明です。

通りすがりさんの書かれた仕訳は正しいのは間違いないですが、上記の信用創造創造の説明の仕訳ではないですね。

私が言っているのは、フィリップス流の信用創造(と言えるのかどうか)では信用創造ができないという点を指摘しています。

通りすがりさんは、無意識に、フィリップス流信用創造説を否定して、本源的預金とは無関係な仕訳(正しいです)を書かれているように思いますが。

shavetail1shavetail1 2017/04/14 16:16 蛇足ながら、金融大学のフィリップス流信用創造(?)スキームの通りなら、どの段階でもB/Sの大きさは100のままですよね。

ところが、通りすがりさんの説明、というよりも横山氏でも私でも信用創造の仕訳をすれば、新たな貸出しが90発生した時、 銀行のB/Sの大きさは100+90になるでしょう。

asdasd 2017/04/14 18:49 フィリップス式では、「Aさんの預金100万から90万がBさんに貸し出されてBさんが90万預金払い戻し権を得ても、Aさんの100万預金払い戻し権は失われずそのまま存続する」ということが明示されませんので、そこが誤解を生む要因の1つでしょうね。
なので、そこさえ踏まえればフィリップス式でも銀行B/Sの大きさは100+90になるわけです。

ものすごく端的に言ってしまえば、フィリップス式本源的預金と横山式本源的預金は全然別物、違うものを指してますよね。
フィリップス式本源的預金はあくまでフィリップス式の見方をするときの便宜的な定義というか、通りすがりさんも言ってますが「そういうモデル」なわけです。
或いは、フィリップス式視点という名のミクロとでも言えましょうか。
そしておそらく、横山氏もその視点自体まで否定しているわけではない、だからこそわざわざ「マクロ的(に見るかぎり)」という但し書きを入れてるのだと思います。

通りすがり通りすがり 2017/04/14 19:01 ブログ主さんにお尋ねしたいのですが、簿記の仕訳が出来ますか?私の書いていることが正しいと書かれているのに、「金融大学のフィリップス流信用創造(?)スキームの通りなら、どの段階でもB/Sの大きさは100のままですよね。」と書かれているのは変だと思います。

あと、このブログは、

「つまりおカネは銀行の貸し出しの際に生まれるという概念、ご理解いただけたでしょうか。」

「貸し出し後にはA行の預金残高1、B行の預金残高99で、預金としては「創造」されていない点が問題」

だから、「あの教科書に載っているモデルは間違いなんです。」

という内容なんですから、そうじゃなくて、フィリップスの信用創造論でも、貸出で預金が増えているのは同じなんですよ、と書いているんです。

通りすがり通りすがり 2017/04/14 19:45 私の仕訳は、金融大学の説明を仕訳したものではない、ということでしたので、金融大学の説明に沿って、仕訳をしたいと思います。

?「銀行が、預金者から100円を預かったとします」

現金 100円 / 預金 100円

?「法定準備率を10%とすると、10円だけを現金で銀行に残し、残りの90円(元本の90%)をA企業に貸付けることができます」

貸出金 90円/ 現金 90円

全く上のコメントの仕訳と同じです。?の仕訳は書いていませんでしたが、それはあのコメント内の説明に不要だったからです。

で、この?の仕訳は、

貸出金/預金

と信用創造されて、

預金/現金

と出されれば、結果は同じですよ、と書いているんです。

通りすがり通りすがり 2017/04/14 19:47 ※文字化けしているので

私の仕訳は、金融大学の説明を仕訳したものではない、ということでしたので、金融大学の説明に沿って、仕訳をしたいと思います。

1「銀行が、預金者から100円を預かったとします」

現金 100円 / 預金 100円

2「法定準備率を10%とすると、10円だけを現金で銀行に残し、残りの90円(元本の90%)をA企業に貸付けることができます」

貸出金 90円/ 現金 90円

全く上のコメントの仕訳と同じです。1の仕訳は書いていませんでしたが、それはあのコメント内の説明に不要だったからです。

で、この2の仕訳は、

貸出金/預金

と信用創造されて、

預金/現金

と出されれば、結果は同じですよ、と書いているんです。

通りすがり通りすがり 2017/04/14 19:53 「本源的預金が預けられると、それ自身を別の銀行(の口座がある人)に直接貸し出される、という説明です。」

間違っていると思います。金融大学の説明を見ると、

「法定準備率を10%とすると、10円だけを現金で銀行に残し、残りの90円(元本の90%)をA企業に貸付けることができます。A企業は、銀行から借りたお金で、取引先であるB企業に支払いをします。B企業はそのお金を銀行に預け、銀行にはB企業の預金90円が新たに作られます」

とあり、銀行はA企業に貸して、それが取引先のB企業の支払いにあてられて、B企業が別の銀行に預ける、という説明です。

「それ自身を別の銀行(の口座がある人)に直接貸し出される、という説明」ではないと思います。

通りすがり通りすがり 2017/04/14 20:23 現実に行われていることは、

貸出金/預金

と信用創造されて、それが現金でおろされると、

預金/現金

になるし、銀行内決済されると、

預金/預金

になるし、グロス決済で考えたとして、別銀行に送金されると、

預金/日銀当座預金

になる。

準備金は後積みだから、預金創造するときに準備金に縛られるわけではない。日銀当座預金を銀行間で貸し借りするのが、コール市場で、全体としてマネタリーベースが足りず、あるは過剰になり、コールレートが上がりすぎたり、下がりすぎたりしないように、主に買いオペ、売りオペにより金融調節が行われる。

で、(上の説明が間違っていたら申し訳ないですが)そういう現実とは関係なく、フィリップスの信用創造論で預金創造が行われていない、という認識は間違いだと思う、と書いています。

通りすがり通りすがり 2017/04/14 21:50 「下記「金融大学」の「信用創造」説明文などでもよくわからないのは、100円から90円貸しても、10円預金+90円貸し出しみたいにかかれていて、190円ではなく100円のままの仕訳になりそうなんですが私の勘違いですかね。」

勘違いだと思います。金融大学の図を見ても、「銀行 『現金』で残す10円」と書かれています。「10円預金」とは書いてありません。

現金を90円貸し出したとすれば仕訳は、

貸出金 90円 / 現金 90円

であり、もとの100円の預金は減少も増加もしません。減るのは現金であって、預金ではありません。現金が100円あったのが、90円貸し出されて、100-90で10円残るわけです。

つまり、資産に10円の現金、90円の貸出金、負債に預金の100円です。

shavetail1shavetail1 2017/04/17 12:03

https://twitter.com/wankonyankorick/status/853797174773137410

通りすがり通りすがり 2017/04/17 13:09 「貸し出し後にはA行の預金残高1、B行の預金残高99」

これは間違いということでいいですね。

shavetail1shavetail1 2017/04/17 17:34 http://manabow.com/hayawakari/hayawakari6_2.html
これもまたフィリップス流の信用創造の説明です。
信用創造(?)で預金が増えるように書かれていないでしょう。
そもそもこのサイトの説明では、バランスシートが左右でバランスしていませんが。

勿論、この解説は間違っていますが、この解説こそ、フィリップス流の信用創造の説明なんですよ。

あなたがフィリップス流の信用創造(という間違った概念)を正しく理解していないというだけの話です。

shavetail1shavetail1 2017/04/17 17:38 >「貸し出し後にはA行の預金残高1、B行の預金残高99」
これは間違いということでいいですね。

勿論間違っています。
勘違いされているようですが、それは私がそう理解しているのではなく、それこそが、私が批判しているフィリップス流の信用創造の説明ですよ。

http://manabow.com/hayawakari/hayawakari6_2.html

これもまたフィリップス流の信用創造の説明ですが、貸出しと両建てで銀行資産が増えているとはされていません。
要するにフィリップス流の信用創造とは間違いということです。

通りすがり通りすがり 2017/04/17 20:10 パンダに貸して、1900万円に預金が増えてるじゃないですか。

「預かったのはタヌキ夫妻の1000万円だけなのに預金口座の合計は1900万円になったな」

と、うさぎさんが言っているのに、「信用創造(?)で預金が増えるように書かれていないでしょう。」とはどういうことなんですか?ちゃんと文章を読んでますか?リッキーさんの批判は信用創造されていないことではないですよ?

リッキーさん:「なぜわざわざ準備率が10%だから現金100万円残して残りを貸し出そう、という一方でということで900万円の預金を振込む(負債を発生させる)のか意味不明」

「900万円の預金を振込む(負債を発生させる)」とリッキーさんも書いているでしょう。900万円信用創造されている、ということですよ?

で、現金が900万円下ろされたら、資産に現金が100万円、貸出金900万円、負債に預金1000万円です。

あなたの言っていることだと、預金が100万になってしまうんですが、どうしてパンダがお金をおろしたら、タヌキの預金が減ってしまうんですか、ということを言ってるんですよ?

「貸出しと両建てで銀行資産が増えているとはされていません」

じゃあ、どうやって、銀行は利息をもらうんですか?お金を貸すんじゃなくてあげちゃう、というのがフィリップスの信用創造論なんですか?

通りすがり通りすがり 2017/04/18 21:00 ブログ主さんに質問ですが、金融大学HPの信用創造論は仕訳が不可能であり、私の2017/04/14 19:47 のコメントでの仕訳は間違っている、と考えているんですか?

2「法定準備率を10%とすると、10円だけを現金で銀行に残し、残りの90円(元本の90%)をA企業に貸付けることができます」

貸出金 90円/ 現金 90円

↑これが間違っていると思っているんですか?

通りすがり通りすがり 2017/04/19 12:31 私が間違えいるにせよ、シェイブテイルさんが間違えているにせよ、人間は間違えているときには自分の間違いに気づけない、なぜなら間違えているから、ということを本当に思う。

それでいて、私たちは、「経済学者はまったく全然わかっていない、間違いを認めない」とか言っているわけだが、自分たちも間違えているときに、それを指摘されたら考え直してみたり、訂正したりといったことが容易に出来るのか、というとまったくそうではない。

人間は、「今現在持っている自分の世界の理解」を容易に手放さない。これは未来予想に関わることでもあり、理解そのものが自分そのものだからだと思う。そして、間違いを認めることは、「群れ」の中の順位、評判、信用を落とす、ということも本能的に思うのだろうとも思う。

おそらく、間違いというのは実際の痛みも伴うもので、身体的な痛みと同じ脳の部位を使っているんじゃないかと思う。何かでそんなようなものを読んだことがある。心の痛みには頭痛薬が効く、とか何かで見たことがある。

しかし、私たちは「知っていること」よりも「知らないこと」のほうが圧倒的に多いので、その点だけでも間違えるなんて当たり前なんだよな。でもそうなると、とたんに世界が不安定なものに思えてくる。だから、「根拠のない自信」っていうものがあるのも役目があるんだし、私たちは「根拠のない自信」があるのが「正常」なんだな。うつ病患者のほうが世界を正しくみている、というのもなんかで読んだことがある。

通りすがり通りすがり 2017/04/22 01:50 例えば、掛けで売上100万円が上がった時の仕訳は、

売掛金 100万円/売上 100万円

になる。この売掛金を現金で回収したら、

現金 100万円/売掛金 100万円

となる。

これを最初から現金100万円でもらったとすれば、

現金 100万円/売上 100万円

となる。つまり、掛けで売り上げて、それから現金を回収するのと、最初から現金で売り上げるのとは、最終的な結果は当然同じになる。

だから、銀行が貸出を行う際に、預金創造をして、

貸出金/預金

その預金が現金でおろされるのと、

預金/現金

最初から現金が貸し出されるのとでは、

貸出金/現金

最終的な結果は同じだ、と言ってるんだな。つまり、現金が貸し出された時点で、その人は現金を得ているんだから、その現金そのものが信用創造されたものなんだ、と言っているんだ。預金が出来て、現金をおろすのと、最初から現金を渡されるのとは、同じなの、と言ってるんだな。

銀行がそのとき貸出金という債権が発生していない、と考えるのは変な話で、「貸してる」のであれば当然債権が発生しているんだよね。「あげちゃう」なら、現金がなくなるだけだけど。

こ↑こ↓こ↑こ↓ 2017/04/27 21:17 久しぶりにコメントさせていただきます ブログ記事に関係ないことで申し訳ないのですが、ブログ主様は松尾匡氏の経済への意見はどう思われているのでしょうか? 知り合いに勧められて松尾氏の本を読んでみたのですが、わかりやすくていい本だと僕は思いました。松尾氏の意見の中でおかしい所はありますかね?

通りすがり通りすがり 2017/04/29 23:52 コメント欄の総括の記事を希望します。私、たむりんさん、望月さんの、ここが、こう間違っている、という記事をばっさりと書いてほしいです。よろしくお願いします。

トムトム 2017/05/02 10:22 教科書的的信用創造説明のダメな点は、銀行が貸出を行う場合に現金を渡すのは現実にはあり得ないことです。

どうしてわざわざ現実には行っていない方法で説明するのか意味不明。そのため「銀行が預金通貨を発行して貸出を行う」という信用創造の本質が見えなくなってしまいます。

JancloJanclo 2017/05/05 05:03 侃々諤々の議論が続いていますが、恐らくここで挙げられてる認識と、政府の信用創造の認識とは乖離はないのでは?

日本経済を考える上では、バランスシートの左側、つまり担保となる資産サイドに着目すべきではないでしょうか?

お金が負債であるの議論に集中していると、麻生大臣のように、企業は投資しろ、銀行は金を貸せ、に行き着いてしまいます。

しかし、企業が投資しないのは、資産の減価リスクが大きい為。
銀行が貸せないのは、貸し出し企業が返せなくなるリスクが大きい為。

つまり、今必要なのは、政府による企業の収益と担保資産の保証でしょう。
実際、護送船団方式だった小泉改革以前の日本では、企業も銀行も積極的にリスクをとっていたわけです。(逆に自己責任社会の今、積極投資をした企業は、東芝やシャープなど無惨な姿を見せています。)

信用創造とは、中国では鉄、欧州では金の借用書から始まってるわけですから、資産サイドに着目した議論が日本経済の為には必要なのではないでしょうか?

トレーダートレーダー 2017/05/12 16:12 シェイブテイルさん、いつも楽しい記事をありがとうございます。
横から失礼致します。

子供に理解させるには関連に説明しないといけない。
大人に理解させるには難しく説明しないといけない…
皆さん小難しく考え過ぎですよ。

レバレッジと言い換えれば理解しやすいでしょうか?
fxや先物では100万円の自己資金があれば、それを証拠金として
1000万円ぶんの取引が可能です。
銀行は100万あれば1000万貸し出せます。
100万あれば90万ではありません。
法定準備率とは証拠金のようなものです。
100万円の自己資金を元に1000万円貸し付けても、
法定準備率の10%です。
この概念が理解しにくいのは、下記の記述に嘘があるからです。

「銀行が、預金者から100円を預かったとします。法定準備率を10%とすると、10円だけを現金で銀行に残し、残りの90円(元本の90%)をA企業に貸付けることができます。A企業は、銀行から借りたお金で、取引先であるB企業に支払いをします。B企業はそのお金を銀行に預け、銀行にはB企業の預金90円が新たに作られます。」

大学や経済学、経済学者というのは都合のよい人物や理論に権威を与えて利用するものです。
銀行が先で、経済学が後付けです。
世界を正しく認識する為には、一度撤退的な自己否定を経験する必要があります。
一生懸命学校で勉強された方であれば尚更です。
今迄の自分や人生はなんだったのかと。

銀行が悪質なのは、自己資金ではなく、他人の資金を元手に他人に又貸しし、
さらにレバレッジをかけ利ざやを抜く利権を作っているからです。
自己資金を使わず、他人のお金を又貸しし、債務者には保証をつけさせ、
返済できない場合は債務者の資産を奪うわけです。
これが正しい行為であるかは皆さんの判断にお任せします。

銀行、そして中央銀行という存在は国家を越えた権力なのです。
歴史をきちんと勉強すれば、これが現実だと理解できます。
要するに認識の枠組み自体が間違っているわけです。
サッカーをしているフィールドで、野球のネクストバッターズサークルで次の打席を待つようなものです。

民衆を利用する側は、それ自体を認識させないフレーミングを教育によって行うのです。
嘘だと思うなら調べてくださいね。

ちなみに私は元トレーダーで、過去に自己資金で新興国の銀行買収を検討したことがあります。
銀行の信用創造は投資家やトレーダーの中では常識です。

shavetail1shavetail1 2017/05/15 17:43 私事ですが、身内に不幸があったため、ブログ更新どころか、チェックもできていませんでした。 後ほどまた書き込みます。

皆様コメントありがとうございます。

shavetail1shavetail1 2017/05/15 21:30 こ↑こ↓さま
コメントありがとうございます。

松尾匡先生。 基本的におっしゃっていることは結構なことが多いですね。 私も数年前には何冊か本を読んだことがありました。

松尾先生の「問題」といって良いのかどうか分かりませんが、全面的には賛意を示せない点は、先生が完全に左翼という枠からは出ようとしないことでしょうか。

折角先生がいい意見をお持ちなのに、なぜ与党に働きかけをせず、あの野党に提言をするのか。 まず左翼、そして国民や経済という順番では、残念ながら現在の日本では意見が通る余地はないのではないでしょうか。 ケインジアン的思想ということでは同じ京都方面なら藤井聡先生の方が実現可能性がありそうではないでしょうか。

shavetail1shavetail1 2017/05/15 21:33 トレーダーさま

ご意見ありがとうございます。 おっしゃる通り、物事を難しく考えると大局が見えなくなるということがありますね。

重箱の隅をつつく議論に終始すると、結局元の自説を擁護することが目的となり、共通認識となる結論から遠ざかる気もします。

shavetail1shavetail1 2017/05/15 21:39 トムさま 2017/05/02 10:22
>教科書的的信用創造説明のダメな点は、銀行が貸出を行う場合に現金を渡すのは現実にはあり得ないことです。

どうしてわざわざ現実には行っていない方法で説明するのか意味不明。

おっしゃる通りです。
あり得ない前提でなければ説明さえもできないのが、フィリップス流の信用創造の説明ですね。 

現代が金本位制あるいは、紙幣が金の引換証という金匠の時代なら多少の説得力がありますが、紙幣・コインは預金通貨の代用という現代の現実から遠く離れて経済学を組み立てた結果、どれほど複雑な数学で修飾しようが、現代には何の役にも立たない代物になっているように思います。

トムトム 2017/05/17 03:47 多くの人々が(一部の経済学者さえも)「銀行は日銀から供給された資金を企業などに貸出している」と誤解しているのは、フィリップス流信用創造の説明のせいだと思います。

フィリップス流説明は「民間銀行がお金を創り出している」という事実をわざとわからなくしているようにしか思えません。

こ↑こ↓こ↑こ↓ 2017/05/19 22:54 お身内にご不幸があったとは知らず、忙しいなら返答してくれてありがとうございます。松尾匡さんは一部では左派トラップとも呼ばれているのですがこれはどういうことなんでしょうかね? あと金融緩和したお金がそのまま財源にならないとも反論されていますがどうなんでしょうか? お忙しのところ失礼いたしました。

ぽっぽぽっぽ 2017/06/17 14:01 money as debt 日本語字幕版
https://www.youtube.com/watch?v=PnVBwrXA990

妙なのに粘着されてたいへんですね。
money as debtでも見てくればいいんじゃないでしょうか。
自分は銀行を批判するつもりはありませんが。

2016-12-24 書評 「富国と強兵」 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

「現代の経済学者の大半は貨幣が何なのかを知りません。」
そう断言されたら、誰しも「そんな馬鹿な」と思うことでしょう。

ところが中野剛志氏の近著、「富国と強兵」の冒頭の数章を読めば、現代の経済学者の大半が貨幣を間違って理解していること、更にはその間違った貨幣観から、日本をはじめ多くの国々で間違った政策を提言している現状にも納得されるのではないでしょうか。

早速引用します。

貨幣の起源
主流派経済学の貨幣観はその開祖たるアダム・スミス以来、金属主義の立場に立ち、物々交換の困難から貨幣が発生する起源を説明してきた。 この金属主義に対立する学説が表券主義であるが、貨幣の起源に関心を寄せる歴史学者や社会人類学者の多くは、表券主義の方に与した。それは、物々交換から貨幣が発生したという歴史的事実を発見することができなかったからである。 それどころか、歴史研究によれば、「計算貨幣」や「信用」といった社会制度は、商品交換や金属貨幣の登場よりもはるか昔の古代バビロニア時代以前の文明において、すでに存在していたことがあきらかとなっている。*1

金属主義によれば、貨幣の価値は、貴金属によって裏付けられているはずである。しかし、たとえばイギリスでは、17世紀後半、摩損によって重量を大きく減らした銀貨が流通していたが、物価・地金相場・為替相場にはまったく影響を与えなかった。また、イギリス政府は18世紀末から四半世紀の間、ポンドと金の兌換を停止していたが、ポンドが国際通貨としての地位を固めたのは、むしろこの時期であった。*2

経済とは、貨幣を中心とした社会現象である。経済というものは、貨幣の存在なくしては成り立たない。それにもかかわらず、主流派をなす新古典派の経済理論は貨幣の本質やその起源について、根本的に間違った理解をしている。*3

まず歴史的経緯から、大変簡潔に主流派経済学の貨幣観、「金属主義」の誤りが指摘されています。

なお、金属主義は大辞林第三版によれば 
きんぞくしゅぎ【金属主義】
貨幣の本質を素材である金属そのものの価値に求める学説
とされています。

それでは、中野氏は正しい貨幣の理解とは何と主張しているのでしょうか。

この金属主義と対立する学説は、通貨の価値の根拠は、その発行主体、とりわけ国家主権の権力にあるとみなす「表券主義(cartalism)」である。表券主義者は、貨幣の歴史的な進化や使用において中心的な役割を果たしてきたのは市場ではなく、国家であるとする。
(中略)
もっとも、主流派経済学も、不換紙幣の出現により、金属主義を見直さざるを得なくなってきており、今日では表券主義を支持するようになっている。 この場合、主流派経済学は、国家権力によって強制通用力を与えられた「法貨(fiat money)」として表券貨幣を理解するのが一般的である。
(中略)
これに対して、L・ランダル・レイは、同じく表券主義に立脚しながら、国家が貨幣を租税の支払い手段と定めている点が決定的に重要であるという説を唱えている。 彼の議論を要約すれば次のようになる。*4
(以下、大事な議論ですが、ここに書くには書評として重たすぎるので、中略。貨幣とは何かに興味がある方は、ぜひ「富国と強兵」を買って熟読ください)

レイは、貨幣とは負債であるという「信用貨幣論」と、貨幣の価値の源泉は国家権力にあるという「表券主義」を結合させたのである。 このような貨幣論を「国定信用貨幣論」(Credit and State Theories of Money)」と呼んでおこう。


「富国と強兵」では、中野氏は貨幣供給に関して巷間に流布している誤解にもきり込みます。

内生的貨幣供給理論
イングランド銀行の季刊誌(2014年春号)は「現代経済における貨幣:入門」に続いて、「現代経済における貨幣の創造」という解説を掲載し、その中で、貨幣供給に関する通俗的な誤りを二つ指摘している。*5
 一つは、銀行は、民間主体が貯蓄するために設けた銀行預金を原資として、貸出しを行っているという見方である。
 しかし、この見方は、銀行が行っている融資活動の実態に合っていない。 現実の銀行による貸出しは、預金を元手に行っているのではない。たとえば、銀行が、借り手のA社の銀行口座に1,000万円を振り込むのは、手元にある1,000万円の現金をA社に渡すのではなく、単に、A社の銀行口座に1,000万円と記帳するだけである。 つまり、この銀行は、何もないところから、新たに1,000万円という預金通貨をつくりだしているのである。
 銀行は、預金という貨幣を元手に貸出を行うのではない。その逆に、貸出しによって預金という貨幣が創造されるのである。貨幣が先で信用取引が後なのではなく、信用取引が先で貨幣が後なのである。このことを理解していたジョセフ・アイロス・シュンペーターは「実際的にも分析的にも、信用の貨幣理論(money theory of credit)よりも貨幣の信用理論(credit theory of money)の方が恐らく好ましいだろう」といったが、確かに的を射ている。
銀行による貸出しは本源的預金による制約を受けずに、借り手の需要に応じて行うことが可能である。銀行は、企業家に対して、理論的にはいくらでも資金を貸出すことができるので、企業家は大規模な事業活動を展開し、技術や事業の革新(innovation)を実現することができる。シュンペーターにとって、この信用制度こそが、資本主義の経済発展の中核に位置するものであった。
シュンペーターの指導を受けたミンスキーもまた、次のように述べている。

貨幣がユニークなのは、それが銀行による融資活動の中で創造され、銀行が保有する負債証明書の約定が履行されると破壊される点にある。貨幣はビジネスの通常の過程の中で創造され、破壊されるのだから、その発行額は金融需要に応じたものとなる。銀行が重要なのは貸し手の制約にとらわれずに活動するからにほかならない。 銀行は、資金を貸すのに、元手に資金をもっている必要がないのである。この銀行の弾力性は、長期間にわたって資金を必要とする事業が、そのような資金を必要なだけ入手できるということを意味する。*6

更に、もうひとつの通俗的な誤解についても。

さて、イングランド銀行の解説が貨幣供給を巡る通俗的な誤解として指摘するもう一つの例は、中央銀行が、ベースマネー(現金通貨と準備預金の合計)の量を操作し、経済における融資や預金の量を決定しているという見解である。
この見方によれば、中央銀行のベースマネーの供給が、ある銀行の本源的預金となり、それが貸し出されることよって、銀行システム全体で乗数倍の貸出・預金を形成することになる、いわゆる「貨幣乗数理論」である。この見方が正しければ、銀行による貸出し制約しているのはベースマネーであるから、中央銀行はベースマネーの量を操作することで、貨幣供給の量を操作することができるということになる。
 しかし既に述べたように、銀行は、ベースマネーを貸し出すわけではない。銀行による貸出しは、借り手の預金口座への記帳によって行われるに過ぎないのである。従って、銀行の貸出し(すなわち預金通貨の創出)は、ベースマネーの量に制約されてはいない。もちろん、銀行は貸出しを増やせばそれに応じた準備預金も増やさなければならないので、準備調達の価格(すなわち金利)を調節すれば、銀行の融資活動に影響を及ぼし、貨幣供給を調節することができる。それゆえ、今日の中央銀行は伝統的に、ベースマネーの量ではなく、金利操作を金融政策の主たる政策目標としてきたのである。*7

(中略)
驚くべきことに、経済学の標準的な教科書の中には、イングランド銀行が初学者向けの解説で説いている現実の貨幣供給のプロセスをまったく逆立ちさせたことが書かれており、それが一般に流布しているのである。いわば、現代の天文学の教科書が、天動説を教えているようなものであろう。*8


日本人の著書で、これほど貨幣の本質に踏み込んで、主流派経済学の誤り、およびベースマネー供給を手段とするリフレ政策の誤りをきちんと指摘した本を私は知りません。

そしてこの後も、

−タドリー・ディラードは新古典派経済学の想定(理論の中に、現実の貨幣が存在しない)を「物々交換幻想」とよんだ。
−「アダムの罪」を「ドグマ」にまで仕立てたのがジャン・パティスト・セイだとタドリーはいう。
−貨幣の中立性、セイの法則はともに、「物々交換幻想」から導かれているもの。
−これらが、リカード、ジョン・スチュワート・ミルら古典派、さらにジェヴォンズ、メンガー、ワルラスら新古典派にも継承された。
−中でもワルラスは経済全体の需要が供給と均衡するという「一般均衡理論」の体系を確立し、新古典派経済学を主流派に押し上げる上で大きな貢献を果たした。
−主流派経済学は、いまなおワルラスが確立した一般均衡から出発して、分析を精緻化したり拡張させたりしているのである。*9 

と、現実の貨幣とは異なる、物々交換の幻想から出発した、古典派、新古典派、更には現代における主流派経済学が俎上にのぼり批判されています。

特に、現代の主流派経済学については、

主流派経済学は、日常的な意味における時間の概念や(シェイブテイル注:確率分布では表せないタイプの)「不確実性」を無視することによって、経済現象を数理モデルで表現することに成功した。主流派経済学は、分析手法を数学化したことによって、数学的な分析こそが厳密な科学という通俗的な科学観に強く訴えかけ、それによって、社会科学の中でも特に大きな影響力を持つに至ったのである。
しかし、不確実性を排除することは、貨幣の存在意義を排除することである。ワルラスが一般均衡理論で不確実性を排除した時、そこから貨幣も蒸発した。
主流派経済学の経済モデルが大前提とする「一般均衡理論」が想定するのは、貨幣が存在しない世界なのである。

と、その理論の中に貨幣が存在せず、まったくもって現実の経済から乖離した代物として、厳しく批判されています。

これらの明晰な記述が、20章近くにも及ぶ「富国と強兵」の1章の中の一部に書かれているのですから、恐れ入ります。

 実は、本書の主題は、主流派経済学の根本的誤りを糺すことにはなく、これら正しい貨幣認識に基づく経済学と、厚みのある地政学とが交わるところに、新たな学問、「地政経済学」という視点があり、この視点から世界を俯瞰するとまったく新たなビジョンが生まれるというところにあります。

ただ、その内容にまで踏み込むのはとてもこの簡単なブログの記述では間に合いそうもありません。

この本は、現在の経済や政治について、いろいろな見解を持つ人々に、ぜひ一度は手にとっていただきたい名著です。

富国と強兵

富国と強兵

*1:「富国と強兵」p061

*2:同書 p062

*3:同書 p063

*4:同書 p060

*5:Michel McLeay, Amar Randia and Ryland Thomas, 'Money Creation in the Modern Economiy' Quarterly Bulletin, 2014b, Q1, Bank of England, pp14-27

*6:「富国と強兵」p067

*7:同書 p069

*8:同書 p070

*9:同書 p074

こ↑こ↓こ↑こ↓ 2016/12/24 13:10 面白そうな本だけどすごい難しそうですね

shavetail1shavetail1 2016/12/24 13:14 おっしゃるとおりです。 色々と背景知識がないといきなり読めない部分が多いですね。 第一章に限っても結構なので、ぜひ一般向けに仕立て直した本をみたいところです。

田中リンクス田中リンクス 2017/01/04 14:51 僕も買いましたよ!
三橋さんの本も買って読んだんですけど、より専門チックな中野さんのも読んどかなきゃと。
貨幣とは債務のことである、信用創造とは債務の拡大のことである、預金と現金の違い、日銀当座預金と貸し出しの関係性、金属主義の弊害、現実を見ない主流派経済学、債務を減らして経済成長することなどあり得ない、ぼんやりと捉えていた貨幣や経済に対する理解が一気に深まる本ですよね。
まあでも、マクロ経済にあまり関心がない一般層には敷居が高いのかも。そういう意味では三橋さんの本の方が取っつきやすいかもですね。
三橋さんの主義主張の賛否は置いといて、小難しい理論を分かりやすくて説明する能力は、僕は単純に凄いなと思います。友達に勧めるなら「富国と強兵」ではなく、「日本人が本当は知らないお金の話」を僕は選ぶでしょう。

せいせい 2017/01/04 20:59 昔「金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った 」とか「エンデの遺言」などを読んでお金の本質について考えさせられた事がありましたけれども、経済の専門用語が飛び交うような本格的な書作ではないので、そういう見方もある程度でした。直感的にピンとくるのは何故かこの手の裏話的解説ばかりだったので助かります

こ↑こ↓こ↑こ↓ 2017/01/06 20:55 関係ない話で申し訳ないんですが通貨発行益ってこれは毎年あるものと見て正しいのですかね もう一つはニュースでみずほ総合研究所が大型減税を安倍政権が取り入れるようなことが報道されていますが法人税がメインと考えたほうがよさそうですかね

GokaiGokai 2017/02/08 18:54 >さて、イングランド銀行の解説が貨幣供給を巡る通俗的な誤解として指摘するもう一つの例は、中央銀行が、ベースマネー(現金通貨と準備預金の合計)の量を操作し、経済における融資や預金の量を決定しているという見解である。

・私は中野剛氏が間違っていると思います。
・民間銀行は無からお金を貸し出している拙は安倍よしひろ氏の信用創造の説明2と同じものですが、民銀は提供可能なMBの量の範囲内で貸し出ししているに過ぎず、無いものを貸し出しているわけではありませんね。それゆえに日銀の意向は民銀にとってとても大きく、経済への日銀の金融調節はとても大きな影響を与えます。

通りすがり通りすがり 2017/04/08 11:44 今のところ、自分が必要な知識だと思っているもの:

?簿記の仕訳、そこから貸借対照表、損益計算書がある程度作成できる知識があること。

?建部論文で、銀行簿記、中央銀行簿記の仕訳を知ること。

?準備預金の後積みを知ること。

?日銀の金融調節、および、補完貸付制度等を知ること。

?ポール・デヴィッドソンの『ケインズ経済学の再生』で、「貨幣の非中立性」を知ること。

知識を得るときの態度について必要なもの:

?自分が今まさに完全に間違っている可能性を認めること。

?しっかり自分の考え、言うこと、書くことの裏付けとなる文献をちゃんと探すこと。どこそこのネットに書いてあった、などは文献にはならない。翻訳でも同様。

?分からないことは分からない、知らないことは知らない、と認めること(例:私は簿記の仕訳が出来ません。私は高等数学が分からないので経済学の論文が読めません。私は日銀の金融調節なる言葉は知りません等)。

shavetail1shavetail1 2017/04/08 22:29 通りすがりさま

コメントありがとうございます。
学問に対して真摯な姿勢ですね。頭が下がります。
私もそうありたいと思いつつも、なかなかそこまでの心境に到達できていません。

通りすがり通りすがり 2017/04/09 00:04 私は学問なんてやってません。ただの素人の政治経済オタクなだけです。多くのネット上の「論客」たちは、自分たちが匿名の、たんなるド素人の、政治オタクだということをわかってないんじゃないかと思うことがあります。

2016-07-01 英国の経済格差は日本よりどれだけ酷いか調べてみた このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

先週末のイギリスのEU離脱決定は今も世界経済に影を落としたままです。

イギリスでは、エリート社会と低所得者社会がもともと分断されているところに、この投票結果はさらに分断を強める結果になるだろうと報じられています。

そうすると、近年移民流入が続く英国の格差社会はかつての格差を超えて、さぞ酷いことになっているのだろうと思い、ピケティの所得データベースを使って実際のところを調べてみました。(図表1)


  英国の所得下位者の所得は伸びているし、格差拡大もしていない
  日本の所得下位者の所得は著しく減り、格差は英国以上に拡大

f:id:shavetail1:20160701125647j:image:w600
 図表1 英国・日本の所得上位10%と下位90%の所得推移
 出所The World Top Incomes Database Thomas Piketty他
 それぞれの所得水準は、2010年通貨で実質化されている。
 英国の所得格差は5.5倍程度で変化がないが、日本の所得格差は
 4.4倍から6.1倍と階級社会英国を超えている

 英国の下位90%の平均所得は、実質ベースでも1993年から2010年にかけて伸びていますし、絶対値では5倍以上開いている上位10%の平均所得との比も、予想に反して開いていません。

 一方、比較対象とした日本の下位90%の平均所得は実質ベースで1993年の225万円から149万円へと、実質34%もの減少となっています。
その結果、英国の所得格差は5.5倍程度で変化はありませんでしたが、日本の所得格差は4.4倍から6.1倍と階級社会英国を超えるまでになっています。 また日本の場合、英国とは異なり上位、下位とも実質所得が減少していることも特筆に値します。

 英国では日本同様の緊縮財政を続けている一方で、ロンドンのシティを世界の金融センターとして維持したり、住宅取得ローンに政府保証をつけたりと、民間の活力維持にはそれなりの努力をしている結果、民間の所得維持が可能になってるのでしょうか。

 かたや日本。 鳴り物入りで始まり、今も安倍首相は成果を強調するアベノミクスでしたが、総務省のデータなどによれば、国民の実質所得の低下はアベノミクスの間に更に強まっています。

 政府日銀は、イギリスのEU離脱ショックに備えるため、潤沢な流動性供給などで協力すると報じられていますが、政府経済失政をいつまでもこうした海外環境や天変地異のせいにせず、あり得ない国債暴落を防ぐという無意味な緊縮政策が過去や将来の日本で必要だったのかを内省する必要があるのではないでしょうか。

?? 2016/07/01 22:47 失業率は??

shavetail1shavetail1 2016/07/02 08:19 今の日本のように、極めて低賃金の劣悪な仕事だらけで求人すれば、求人倍率は何倍にも増えていくし、それと上のグラフの実質賃金低下は何の関係もない話ですね。

通りすがり通りすがり 2016/07/02 11:06 別にアベノミクス論者ではありませんが、政策開始から効果が出るまでのタイムスケールを厳密にして議論しないと、アベノミクスの効果の可否と断定できないのでは?

shavetail1shavetail1 2016/07/02 17:00 通りすがりさま

アベノミクスはこの数年ですが、日本で所得下位者の所得低下が著しくなった時期はアベノミクスを含めたこの20年にわたります。 その間ほぼ一貫しているのは、緊縮財政です。

アベノミクスも、2014年の消費税8%への増税で実質賃金も消費指数も両方ともいっぺんに悪化しました。 
私もアベノミクスについては、2011年末から2013年にかけて一時的に期待していて、財金併用をやってくれるものと思っていましたが、2014年以降は、逆に緊縮財政が酷くなってしまいました。 
安倍さんはいまだに「財政再建の旗は降ろさない」などといっていますから、いまもってご自分が引き起こした国民生活の窮乏はご存じないのでしょう。

阿Q阿Q 2016/07/02 19:57 緊縮財政が20年も続いているとかいう割にアベノミクスが引き起こした国民生活の窮乏にご存じないとは、全責任のっけるような書き方ですね。
ご自身がつらいのはわかります。
私もそうやって政治の責任にできる精神的勝利法を体得したいですので、その秘儀の一部だけでもぜひ記事にしていただけないでしょうか。

名は実を語る名は実を語る 2016/07/03 11:04 政治に影響力が無いのであれば、日本という実体は無いに等しい。
個人の能力と責任が日本の有り様を決める最大要因であるならば、国の存在価値は無いに等しい(どころか税金で国民の足を引く害虫のような存在かw)
自身が展開する論法そのものが魯迅が批判した阿Q的論法であろう。

shavetail1shavetail1 2016/07/03 11:15 名は実を語るさま

いいことおっしゃいますね。 今後ともよろしくお願いします。

BaruBaru 2016/07/03 15:56 イギリスの状況は知りませんが、日本については、高齢化の進行が格差拡大にもっとも寄与しています。格差を論じるときには、高齢化に関する分析が欠かせないと思っております。
調べた限りでは、イギリスは1993と2010の間でそれほど信仰していないようですので、高齢化の進行度合いの違いが、イギリスとの違いを生んだのではないでしょうか?

JancloJanclo 2016/07/03 16:31 >高齢化の進展
これは私も思ったのですが、どうなのでしょう?

安倍総理は半年前、高齢者は消費性向が高いから3万円配るんです!と言ってましたが、これは高齢者が現役時代にためた資産を削っているから高く出る、という数式上の話 。

こういった世代特性を無視して議論すれば、解決策が明後日の方向に行きかねない気がしますがどうでしょう?

kemushikunkemushikun 2016/07/03 21:35 こういう意見もありますよ。

富の独占率:日本低水準、中国は大幅に上昇
http://www.chinapress.jp/12/43753/
>一方、富の分配が最も進んでいる国家はベルギーであった。
>所得上位10%人口の資産が、ベルギー総資産に占める割合は47.2%にとどまる。
>第2位は日本の48.5%。富の独占率が50%を下回ったのは調査国中、ベルギーと日本の2カ国のみであった。


駐英でしたがイギリスはロンドンとそれ以外は完全に別の国になってます。投票後にロンドン独立論が出たのを見てもわかるでしょう。地方は完全に衰退してます。それなりの格式のある店は防犯用の鉄格子がはまってるケースが少なくないです。残りの店の存在理由は貧乏人に必要な生活必需品の提供。顧客の中に自分の名前すら書けず、仕方なく名前欄に「×」を入れたことも何度かあります。日本でそんな経験はありません。


フォーブスの世界長者番付ですが、上位200人の中で日本人はたった3人しかランクインしてません。
世界で3番目の経済大国なんですがね。孫正義さんも世界の中じゃ小物の部類です。私は日本の格差がそこまで酷いとは思いません。
http://www.forbes.com/billionaires/list/5/#version:static

stuffstuff 2016/07/04 16:10 全体として上昇していれば、格差は対した問題ではないはずなんです。
日本はずっと全体的に下がっているのが深刻。(先進国で唯一?)

格差格差と叫んで、上の人の足を引っ張って低値で平等を求める日本式横並びは、結果として「皆で貧乏」「社会全体で貧乏」にしてるだけですね。

お金持ち増やして気持ちよく納税してもらおう、という仕組みに転換しないと…

タニタタニタ 2016/07/04 21:05 印象操作でアベノミクスを批判してみた
って記事だな・・・
大卒就職率や失業率とかの数字は出しません(苦笑い)

田中リンクス田中リンクス 2016/07/06 20:04 stuffさん

お金持ちを増やして気持ちよく納税、とは具体的にどういう政策ですか?
法人税の更なる減税?それとも累進課税の廃止?

タニタさん

大卒就職率や失業率の改善はアベノミクスのおかげなのですか。成る程成る程。
では具体的にどういった政策がどういった経路により失業率の改善に繋がったのでしょうか?そして雇用が増えた産業はどこなのか?なぜ人手不足に陥っているのか?
是非とも御教授願いたい。

JancloJanclo 2016/07/06 21:53 田中リンクス さん

横レスですが、
>お金持ちを増やして気持ちよく納税
資産取得に対する損金の拡大や固定資産税、相続税の減税などですね。

資産家や企業に多額の税金を掛ければ、税金を支払うために現金の需要が増すだけ。
つまり、デフレを強めるだけなんです。

>具体的にどういった政策
金融緩和による円安で、自動車や鉄鋼産業なんか求人が増えてますよ。

とおりすがりとおりすがり 2016/07/09 15:10 与党の予定では、秋の補正予算で財投債(プライマリーバランスに関係しない国債)でリニア建設等、阿保ほど(隠れ)財政出動(ヘリコプターマネー)をやるので、思ったほど心配はないのでは。

JancloJanclo 2016/07/09 21:00 財投債で景気対策となると、小泉改革での天下り改革て何だったのかと呆然となりますね。(私は賛成ですが)

ただ、もし財投債で景気対策となると、財投改革に携わったシバキリフレの人とかやかましそうだ。

SS 2016/07/12 11:24 「お金持ち増やして気持ちよく納税してもらおう、という仕組み」

これが累進化税率の強化を意味しているなら正しい。そうでないならぺけ。

のぞみのぞみ 2016/07/23 16:51 sさん、落ち着いて!
2回も同じ投稿をしないでください。
ところで、あなたはアク禁ではありませんか?

SS 2016/07/25 11:05 Sとsさんは別人です。念のため。
更に、sさんは前のsと別の人のような・・・

aa 2017/05/13 23:19 所得格差があっても社会保障のカバーで日本の格差はここ数年ずっとよこばいだけどね。

2016-06-26 途上国に始まり、EUに終わる? このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

f:id:shavetail1:20160626083430j:image:w250:right今日も英国EU離脱報道がまだ続いています。 英国はもちろんですが、英国での離脱派勝利から、ドイツ以外のEU主要国内でもEU離脱派が勢いづいているようです。
各国内でも、ドイツに牛耳られて一挙手一投足に規制を入れてくるEUに対する不満が大きくなっているのでしょう。

ただ、EUは英国を準加盟国扱いにするという情報もあり、ノルウェー、あるいはカナダに準じて処遇するとすれば、英国に対して常識的な幅の中でオプションを提示して、離脱させるという流れになるとすれば、英国の離脱問題自身は不透明性が高い今が問題のピークなのかもしれません。

それに対して主要加盟国から離脱運動が盛んになっているEUのあり方こそ、今後の焦点となっていくのではないでしょうか。

ところで、2011年秋ごろ、リーマン・ショックで個人は多額の負債を抱えたまま放置されているのに、サブプライムローンを売った側の大手金融機関の多くが救済されたという不公平などの理由から、ウォールストリートが占拠されたことがありました。 

あのウォール・ストリート占拠運動もまた、直接的には欧州内に渦巻いていたEUに対する不満が米国に飛び火して発生したものでした。
その占拠運動の主導者のひとりは、デビッド・グレーバーという人物で、活動家でもありますが、本職はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学教授です。*1

彼は人類学調査で赴いたマダガスカルで、経済危機によりIMFから多額の債務を受けざるを得なくなりその代償として厳しい緊縮財政を強いられ、マラリア駆除の予算さえ削減されて、人々の命が緊縮政策の犠牲になる状況を目の当たりにしました。

この経験により、本職の人類学の研究から負債と貨幣の関連、およびマダガスカルの状況から負債と緊縮政策との関連について深く関心を持った結果、前者からは現在の経済学に対する強い疑問をいだき、後者から活動家にも進んだようです。 

シェイブテイルとしては、グレーバーはこう考えたのではないかと思います。 
「現在の経済学の基本的な誤りから、世界中に間違った緊縮政策がはびこり、人々を苦しめている」と。

さて、グレーバーの活動家面についてはおくとして、人類学の研究からは2011年に重要な一冊の本が書かれました。 Debt: The First 5000 Yearsという本です。
とても興味深い本なのに500ページほどの原書で、買って読めずにいましたが、この本の骨子について解説した文献を文化人類学者の松村圭一郎氏が現代思想に書いてくれていました。*2
この文献もとても短いという訳ではありませんが、更に骨子に当たる部分を引用します。

(以下引用)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
貨幣と負債の起源
貨幣の起源を語る経済学者にとって、負債はつねに貨幣のあとに発達したものだった。ずっと人類学がその誤りを指摘してきたにもかかわらず、経済学的には、信用貸しと負債は純粋に経済的な動機から生じるとされた。だから、負債が貨幣以前に存在するとは認められなかったのだ。経済学者は、交換の媒体としての貨幣が登場するまで、人びとは物々交換をしていたと考えた。社会が複雑になるにつれ、直接的な物々交換は煩雑になる。貨幣が媒体となってはじめて、市場が生まれ、取引がうまく機能するようになった。グレーバーは、この神話が想像の産物にすぎないという。

 未開の物々交換を貨幣が代替していくという神話の基礎をつくつたのが、アダム・スミスだった。スミスは、貨幣が政治体制によってつくられたという考えを否定し、それ以前に貨幣と市場が存在していただけでなく、貨幣と市場こそが人間社会の基礎であると主張した。人間だけが、ある物を他の物と交換し、そこから最大の利益を得ようとする。その人間の性質が労働の分業につながり、人類の繁栄と文明をもたらした。政治の役割は、貨幣の供給を保証するなど限定的なものにすぎない。このスミスの観点が、経済が道徳や政治からは切り離され、それ自身のルールに則って作用するという考え方をつくりあげた。
 グレーバーは、その説明には何ら根拠がないと指摘する。 人類学は、物々交換が異邦人や敵どうしのあいだで祝祭的、儀礼的に行われてきたことを示してきた。二度と会わない相手、継続的な関係を結ぶことのない相手との交換では、相互の責任や信頼を必要としない一回きりの物々交換が適切だった。

 経済学のテキストでは、交換する人びとが親しくなることも、地位の差もないという現実離れした想定がなされている。じつさいに社会関係をもつ人びとのあいだでは、物々交換ではなく、贈与交換になる。それが、人類学があきらかにしてきたことだ。

 洗練された物々交換は、むしろ国家経済の崩壊にともなって生じ。最近では、1990年代のロシア、そして2002年前後のアルゼンチンで、貨幣が使われなくなった。かって、ローマ帝国やフランク王国のカロリング朝が滅んで物々交換への転換が起きたときにも、硬貨を使わない信用取引が行われた。

 古代エジプトやメソポタミア時代の紀元前3500年の記録も、硬貨の発明に先立って信用取引が行われていたことを記している。シュメール文明の時代に発明された硬貨の使われ方からは、貨幣が商業的な取引の産物ではなく、物資を管理するために官僚機構によってつくられたことがわかる。負債や市場での価格が銀貨で算定されても、それを銀貨で払う必要はなく、ほとんどが信用取引だった。グレーバーはさまざまな時代の資料を示しながら、物々交換の神話が虚構だと論じる。いわゆる「バーチャル・マネー(仮想通貨)」が最初にでき、硬貨はずいぶんあとにつくられた。さらに長い間、貨幣は一般的には使われず、信用取引を代替することはなかった。物々交換は、貨幣の一時的な副産物だったのだ。

 では、なぜ経済学において、この神話が保持されてきたのか。グレーバーは、その理由は、物々交換の神話が経済学の言説全体にとって中心的だったからだと指摘する。 経済学には、物々交換のシステムが「経済」の基礎にあることが重要だった。個人と国家にとって何より大切なのは、物を交換することである。その視点から排除されてきたのが、国家の政策の役割だった。グレーバーは、貨幣をめぐるふたつの理論を参照しながら、国家と貨幣の関わりを考察する。

貨幣の信用理論と国家理論
 貨幣の信用理論といわれる立場がある。この理論では、貨幣は商品ではなく、勘定のための道具だとされた。つまり、貨幣は物ではない。貨幣単位は、たんに計算の抽象的な単位にすぎない。では、物差しとしての貨幣は何を測っているのか。
 その答えが負債である。信用理論家たちは、銀行券は1オンスの金と同じ価値の何かが支払われるという約束だと論じた。その意味では、貨幣が銀であろうと、金のようにみえる鋼ニッケル合金であろうと、銀行のコンピューター上のデジタルの点滅であろうと、関係ない。それらは「借用書」にすぎないのだから。

 もうひとつの立場が、ドイツ歴史学派として知られる歴史家によって唱えられた貨幣の国家理論である。貨幣が計量単位だからこそ、皇帝や国王にとっての関心事となる。彼らはつねに国内で度量衡を統一することを目指していた。じつさいの通貨の循環は重要ではない。それが何であれ、国家が税の支払いなどで認めさえすれば、通貨となる。つまり通貨政府への債務の印として取引されてきた。

 近代の銀行券も同じだ。最初に成功した世代的な中央銀行であるイングランド銀行が設立されたとき、イギリスの銀行家連合は、王に30万ポンドのローンを提供した。その代りに、彼らは銀行券の発行についての王室の独占権を受けとった。今日に至るまで、このローンは返済されていない。最初のローンが返済されてしまえば、イギリス全体の貨幣システムが存在しなくなるからだ。

 この観点から、国家がなぜ貨幣を用いて課税をするのかがあきらかになる。スミスが想定したように、政府から完全に独立した市場の自然な作用によって金や銀が貨幣になったわけではない。グレーバーは、むしろ貨幣と市場は国家によってつくられたと強調する。国家と市場が対立するというスミスに由来するリベラルの考え方は誤りで、歴史的な記録にもとづけば、国家なき社会には市場も存在しないのだ。マダガスカルでは1901年のフランスの占領によって、人頭税が課された。この税は、あらたに発行されたマダガスカル・フランでのみ支払いが可能だった。納税は収穫直後に行われ、農民は収穫した米を中国人かインド人の商人に売って紙幣を手に入れた。収穫期はもっとも米の価格が低い時期だった。
 多くの米を売らざるをえなかった世帯は、家族を養えなくなると価格が高い時期に、同じ商人からツケで米を買い戻すことを強いられた。借金から抜け出すには、換金作物をつくるか、子どもを都市やフランス人植民者の農園に働きに出すしかなかった。それはまさに安い労働力を農民から搾り取るための仕組みだった。農民の手元に残ったお金は、中国人の店に並ぶ傘や口紅といった商品の消費に使われた。この消費者の需要は、植民者がいなくなったあともマダガスカルをフランスに永遠に結びつけた。1990年に革命政府によって人頭税が廃止されたとき、市場の論理はすでに浸透していた。

同じことがヨーロッパの軍隊によって征服された世界各地で起きた。 それまでなかった「市場」が、まさに主流派経済学が否定した「国家」によってつくりだされたのである。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

いかがでしょう。 現代経済学が人類学調査の結果が否定する物々交換という神話を手放さないのは、経済学者にとっては現在の仕事の基礎を失うため、政治家にとっては、政府は小さいほうがいいという自分たちの主張の誤りを覆い隠してくれるから、というのは言い過ぎでしょうか。

シェイブテイルとしては、世界を変えるようなノーベル経済学賞が経済学者の世界からではなく、ちょっと会計をかじった人類学者から出るのではと半分冗談ながら思っています。

Debt - Updated and Expanded: The First 5,000 Years

Debt - Updated and Expanded: The First 5,000 Years


*1:生まれはニューヨーク

*2:現代思想 2012 vol.40-2 pp218「負債とモラリティ」

asdasd 2016/06/26 15:18 市場原理主義者の方々は「とにかく市場に任せろ、国家を切り離せ」と言うけれど、そもそも市場とは貨幣(国家管理された道具)で成り立ってるものだってことわかってんのかいな
…という不満をずっと持ってましたが、この本が広まってくれれば私の溜飲も下がりそうですね

asdasd 2016/06/26 15:28 ネットで序盤を翻訳してくれてる方がいたので今読んでますが、異様に面白いですね。人類学者なのに、そこらの経済学者連中より圧倒的に信用を理解している(笑)
惜しむらくは日本語訳が出版されてないことですが、早速現代思想を取り寄せてみました。

shavetail1shavetail1 2016/06/26 15:43 asdさま
コメントありがとうございます。全くおっしゃる通りで、これほど面白い本がなぜ邦訳されないのか不思議なほどです。

2016-04-04 安倍政権の理想を達成したギリシャの現在 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

日本についで財政健全性指標が悪いギリシャでは、2011年から15年の政府債務伸び率が世界一になりました。 
ただし、世界一は世界一でも、世界で最も伸びが小さかったのです。
また2013年には日本が目指すプライマリーバランス均衡も達成しました。
そのギリシャの現状とはどのようなものでしょうか。

IMFのデータベースで比較可能な世界36カ国で、11年-15年の4年間での政府債務伸び率をみると、驚くべきことにギリシャは「財政健全性の優等生」に変貌していました。(図1)

ギリシャでは近年政府債務伸び率が世界一小さい

f:id:shavetail1:20160404162351j:image:w480
図1 政府債務伸び率ランキング
出所: IMF WEO Oct. 2015
比較可能な世界36カ国で、2011-2015年の4年間での政府債務年平均伸び率を算出
図は主要国だけだが、国名の後の数字は伸び率の小さい国ランキングの順位を示す

ギリシャでは2009年の政権交代時に多額の財政赤字が発覚し、その後国際通貨基金(IMF)、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)からの融資と引き換えの緊縮財政が開始されました。
その結果ギリシャの基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスは2009年の対GDP比-10%から2013年には+1%に改善しました。

ギリシャ安倍政権が骨太方針に掲げるプライマリーバランス均衡を既に実現しているのです。

ギリシャに多額の融資をしているドイツを上回る緊縮財政をしいて、プライマリーバランス均衡を達成したギリシャ経済状況はといえば…。

まず、プライマリーバランス均衡達成とともに、政府債務残高(ユーロベース)は増加が止まりました。(図2)

f:id:shavetail1:20160404170026j:image:w300
図2 ギリシャのPBバランスと政府債務ユーロ建て)の関係
出所:図1に同じ、以下同


ところが、財政健全性指標つまり政府債務残高÷名目GDPの悪化は止まっていません。(図3)

f:id:shavetail1:20160404170056j:image:w300
図3 ギリシャのPBバランスと財政健全性指標の関係

ということは、ご推察の通り、名目GDPは大幅に悪化しています。(図4)
f:id:shavetail1:20160404170127j:image:w300
図4 ギリシャのPBバランスと名目GDPの関係

また、物価は急速にデフレ化しました。(図5)
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図5 ギリシャのPBバランスと物価の関係
物価はここではGDPデフレーター

その他にも09年から15年の間にギリシャでは失業率が9%から26%に悪化し、一人あたり名目GDPは15%減少しています。

安倍政権は「骨太の方針」で2020年のプライマリーバランス均衡を目指しています。
しかし、現実にプライマリーバランス均衡を達成したとすれば、ギリシャが今体験しているような経済状態を自ら実現する、ということなのです。

プライマリーバランス均衡は現在の安倍政権では国民生活よりも重要な指標であるかのように国家目標化していますが、元々は2006年骨太方針の中での竹中平蔵元大臣の発案に過ぎませんでした。 

ウィキペディアでプライマリーバランス(基礎的財政収支)を調べると、日本語では約2000字の記載があり、ドイツ語でも4500字ほどの詳しい記載があります。ところが、英語では600字程度の定義の記載のみ、他はアラビア語の定義のみ。
他の言語での記載は全くありません。

要するに、世界でプライマリーバランス均衡を気にしている国は竹中構造改革以後の日本と、ドイツ語圏およびドイツの銀行から多額の借金があるギリシャ位ということなのでしょう。

しかもこれを達成すれば、失業率二桁、厳しいデフレで財政健全性は悪化というような最悪な経済状態です。
安倍政権もそろそろ怪しい経済学者たちに鼻面を引き回されるのを止めにしないと、日本は世界一対外債務を持ちながら世界最悪の経済状態になりかねません。

asdasd 2016/04/05 10:31 初めまして。ここ最近から、興味深く読ませてもらってます。

マクロは拡大均衡が標準であるということを理解されてない方が多いんですよね。
だから総需要不足だろうが緊縮財政を支持する人が出てきてしまう。
まあそんなことは義務教育もマスコミも教えないもんだから仕方ないですが、困ったもんですね。

shavetail1shavetail1 2016/04/05 12:45 asdさま

コメントありがとうございます。

おっしゃるとおりで、金利がある以上はマクロでは拡大せざるを得ないし、拡大する際に健全な負債の担い手が政府と企業だということが為政者と大多数の経済学者に理解されていないのは情けないほどです。

長期経済データをみると、政府の債務残高は
1872年に28百万円…長期データの最初の年
1929年に66億円…濱口内閣が一人90円の借金が巨額と不況下の緊縮策を強行して昭和恐慌を引き起こした年
1982年に121兆円…鈴木善幸内閣で財政非常事態宣言をした年
そして現在1200兆円。
いつでも多かったといえば多かったが、四半世紀もすれば何で騒いだのか見当もつかないほどの少額だったともいえます。

そもそも政府がすべての債務を返すのならば、その債務を誰かが肩代わりするのか(海外?)、マネーを使わない自給自足か位しか選択肢がないことを政治家・経済学者が知っているのかどうか。

いずれにしても、サプライサイダーには貨幣や債務は理解できないのに、竹中平蔵らはひどく馬鹿げた国家目標を掲げたものです。

通りすがり通りすがり 2016/04/25 23:18 >長期経済データをみると、政府の債務残高は
1872年に28百万円…長期データの最初の年
1929年に66億円…濱口内閣が一人90円の借金が巨額と不況下の緊縮策を強行して昭和恐慌を引き起こした年
1982年に121兆円…鈴木善幸内閣で財政非常事態宣言をした年
そして現在1200兆円。
いつでも多かったといえば多かったが、四半世紀もすれば何で騒いだのか見当もつかないほどの少額だったともいえます。

馬鹿な人がいつも引っかかっている詐欺の手口ですね。インフレと名目ではなく実質成長の二言で説明できるというのに。

通りすがり通りすがり 2016/04/25 23:21 >そもそも政府がすべての債務を返すのならば、その債務を誰かが肩代わりするのか(海外?)、マネーを使わない自給自足か位しか選択肢がないことを政治家・経済学者が知っているのかどうか。

学部のころに、初歩の初歩の間違いと習うことを恥ずかしげもなく言っている人がいるのを見ると…

たくろうたくろう 2016/04/26 17:42 >馬鹿な人がいつも引っかかっている詐欺の手口ですね。インフレと名目ではなく実質成長の二言で説明できるというのに。

実質成長概念で説明出来ると口ばかり。出来るならやれば。

通りすがり通りすがり 2016/04/27 00:39 >実質成長概念で説明出来ると口ばかり。出来るならやれば。

とっくにやってること。知りたいならば調べればいいだけ。説明を省きすぎたので少し補足すれば、戦前の債務はハイパーインフレ、預金封鎖という名のデフォルトで大部分が清算された。だから実質成長で返済されたという印象を与えたのはまずかった。

結局、馬鹿が引っかかるという事実は曲げようがないけれども。

2016-04-03 家計最終消費支出には消費税の影響は出ないのか このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

先日このブログで、「消費税を上げるたびに、家計の実質的な生活水準を示す消費水準指数が下方に屈曲してきた」という主旨のことを書きました。
これに対する反論のブログがありましたので、これについて書いてみたいと思います。

まず、シェイブテイルの意見がこちらです。



これまでの消費税0%、3%、5%、8%のトレンドと同じことが起きれば、消費税10%では実質的な生活水準は毎年3%ずつ下がっていくだろう、というのが結論でした。

一方、反論のブログはこちら。


曰く、

GDP統計の家計最終消費支出は増えている。1994年から2015年までは人口は最大で2.25%しか変わっていないので、家計最終消費支出を人口で割った数字で見ても、増加傾向は変わらない。しかし、消費水準指数は低下している。一人あたりの消費が増えているのに、世帯規模を調整した家計消費は減っている事になっている。二つの指標の傾向が合致しない。

ついでに図表も引用させていただくと
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あちらのブログの主旨を忖度すると

消費税が上がっていても、家計最終消費支出はマクロでは増えているではないか。
消費水準指数がトレンドとして下がっているのはよくわからないが統計上問題があるのではないのか。
だから消費税を上げても無問題である。

といったところでしょうか。

確かに同じ家計支出をみているはずなのに名目GDP算出の基礎にもなっている家計最終消費支出は増加トレンドで同じ家計支出に対して、1世帯当たりの実質消費と似ていますが、消費支出から世帯規模(人員)、1か月の日数及び物価水準の変動の影響を取り除いて計算した消費水準指数では減少トレンド、というのは一見矛盾のようでもあります。

この、”取り除かれた影響”の中に極めて影響が大きい因子があるのだろう、とおもっていましたら、himaginary氏より早速良い情報を提供してもらえました。

mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/12/dl/02-2.pdfによれば世帯数の増加が乖離の主因との由。
https://twitter.com/himaginary_/

himaginary氏引用URLの「平成24年版 労働経済の分析」のp161「世帯数の増加が消費の押し上げ要因となってきた」によれば、日本では人口増加を上回るスピードで世帯数増加が起きていて、これがマクロでの消費を押し上げているとのことです。

確かに核家族化や、高齢者の単身化が進めば、各家庭にひとつは必要な、冷蔵庫・テレビ・車などの耐久消費財の消費を中期的に押し上げる力になってきたのでしょう。

ただ、各個人の立場からみれば、使っている耐久消費財の数が増えているわけではなく、その意味で家計の人数増減を調整し、マクロの家計最終消費支出ではわかりにくい実質的生活水準を消費水準指数としてみえやすくしているのでしょう。

とはいえ、もしも家計最終消費支出では消費税の影響がないのであればそれはそれでひとつの論点といえるでしょう。
そこで、前回の消費水準指数とともに、家計最終消費支出(名目値)を使って、消費税増税の影響を再検討してみました。

消費税増税の影響は消費水準指数以上に家計最終消費支出にあらわれている

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図 消費税率と消費水準指数・家計最終消費支出の伸び率との関係
出所:総務省統計局
消費税率0%時代(1985−1989年)、3%時代(89-93年)、
5%時代(97−01年)、そして8%時代(14−15年)について
2つの指標それぞれの年平均伸び率(%)を算出した

これによれば、消費税率アップの影響は、世帯数増加という潜在的プラス要因がある家計最終消費支出にも出ていて、出ているどころか、消費水準水準以上に大きな悪影響が見て取れます。

もしも安倍内閣が消費税率10%への増税を強行した場合、グラフのトレンドから考えると個人の実質生活水準のみならず、マクロでの家計最終消費支出もまたほぼ年率3%で縮み始めるでしょう。

蛇足ながら、消費税率アップの影響が3%と8%の時は軽めに、5%の時は重めに出ているのは、初めて消費税を導入した3%増税時には並行して物品税を廃止したため、実質的には3%消費税増税とはなっていなかった、また一昨年の8%増税時にはアベノミクスで異次元緩和を行った結果、円安を招き、インバウンド需要を惹起したこと、一方5%増税前後にはアジア通貨危機、ロシア危機など外部環境が悪い中、消費増税以外にも橋本改革と称する強力な需要抑制策をとったことも関係しているのかもしれません。

いずれにしても、これらの情報をしった上で消費税を8%維持もしくは10%に上げるのは、リーマン・ショック級の愚挙と思われます。

SS 2016/04/04 11:59 家計支出への影響より企業投資への影響の方が額としては大きくありませんか?過去の消費税導入、5%への増税の際は消費以上に投資へのマイナス影響が大きかった。
8%二年目のの昨年は企業の投資マインドは好調だったかのように報道されていたので、果たして本当にそうなっていたか数字が出てくるのが楽しみです。