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2017-08-05 アベノミクスの本質とは何か このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

無茶苦茶ご無沙汰しています。 個人的に色々と忙しいことと、アベノミクスへの期待が失望に変わっていったことからブログの更新を怠っておりました。

さて、久々にブログを更新しようと思ったのは、アベノミクスの現状を端的に示す2枚のグラフをお見せしたかったからです。

言うまでもなく、アベノミクスとは(1)大胆な金融政策金融緩和)、(2)機動的な財政政策 (財政出動)、(3)民間投資喚起する成長戦略 の3本の矢であったはずです。

大胆な金融政策については、GDP比でみたとき、世界金融史上にも例をみないほどのマネタリーベース拡大などがいまも続いています。
また成長戦略についても、有効性はともかくとして、経済特区や働き方改革などなど各種の施策が矢継ぎ早に打ち出されています。

しかし、財政政策についてはどうでしょうか。

図1のグラフは、財務省ウェブサイトに掲げられた一般会計の歳出状況のグラフを分かりやすく改変したものです。 *1

f:id:shavetail1:20170805203545j:image:w800
     図1 一般会計歳出の状況
      出所 財務省ウェブサイト
     歳入・歳出のグラフから歳出部分のみを示した。
     グラフ上部の西暦では、アベノミクス期('13年−)を強調表示している。

アベノミクス初年度の2013年こそ歳出規模で100.2兆円と、民主党政権時代の前年度比で増加となりましたが、その後は一進一退、今年度に至っては97.5兆円と、消費税を上げる前の民主党時代と同等あるいはそれ以下の緊縮財政となっています。
安倍政権になってから、消費税増税社会保障関係の事実上の大幅増税を断行したにもかかわらずです。

差し引きでいえば、アベノミクスとは、民主党時代よりも一層、緊縮財政指向経済政策だということです。

85年ほど前の高橋財政ではわずか1年でデフレ脱却しました。
物価は、高橋財政前年にはGDPデフレータでマイナス10%近かったものが、翌年はゼロ%更に翌々年には3%と、それ以上上げる必要がないレベルとなりました。

その高橋財政初年には財政規模を前年比でなんと23%ほど拡大しました。*2
一方、アベノミクスでは初年こそ前年比で1.5%ほど拡大したものの、あとは一進一退です(図2)。

f:id:shavetail1:20170805220911j:image:w600
図2 アベノミクスと高橋財政 財政規模前年比推移
アベノミクス期の財政規模は対GDP比、高橋財政期は対GNP比それぞれの前年比。
アベノミクスは近年の経済統計から、高橋財政期については「昭和恐慌の研究」(p252)から算出した。
高橋財政では、4年目以後は過剰インフレ気味から財政抑制策に転じて軍拡を求める軍部の恨みを買い、
1936年の2・26事件につながった。

私としましては、金融政策が多少の為替への効果を通じての製造業支援になっていることなどは否定しませんが、円安は輸入業者から輸出業者への所得移転政策とも考えられます。
日本経済には再配分は更に必要とは思いますが、必要なのははごく一部の儲け過ぎの人から大多数の低所得者へであって、本質的には輸入業者から輸出業者への所得移転が求められている訳ではないでしょう。

また成長戦略はサプライサイドを拡大しようとするものですから、デフレを脱却してはじめて重要性を持つものではないでしょうか。

安倍首相をはじめとするアベノミクス推進者たちが、なぜ85年前の鮮やかなデフレ脱却成功事例を省みることなく、人気絶頂の政権奪取後から支持率が無残に下がった今に至るまで、無為に時間を費やしているのか首をひねるばかりです。

【関連記事】 2014-08-15 アベノミクスと高橋財政を比較してみた

*1:引用先のp4グラフ

*2:対GNP

りょうりょう 2017/08/06 00:33 >成長戦略はデマンドサイドを拡大しようとするものですから

サプライサイドの間違いではないですか?

shavetail1shavetail1 2017/08/06 09:21 ご指摘ありがとうございます。その通りですね。
文中訂正しました。

こ↑こ↓こ↑こ↓ 2017/08/06 13:22 まぁここまで露骨に緊縮&規制緩和等を行っているところを見ていると安倍さん的には財政出動&金融政策の組み合わせなんてどうでもよくて、規制緩和と構造改革がメインだったっていうことなんでしょうね・・・
加計の件にしても獣医師の待遇が悪いから成りてがいないのに、それをさらに規制緩和するとか正気じゃないこと言ってますからぶっちゃけもう終わった人として見ていいんじゃないかと思っています
ポスト安倍として名前の挙がってる岸田さんが所得の再分配を気にしていたようですが、民進党みたいな消費税で所得の再分配()みたいなアホ言わずにマシな政策掲げてくれることを切に祈っています

amaterasu-rakiamaterasu-raki 2017/08/06 16:34 そんなに心配しなくても大丈夫だと思いますよ。求人倍率等をみてもデフレは過去のものになると思いますわ。

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玉簾玉簾 2017/08/07 17:10 初めまして シェイブティルさん

最近のエントリー読んでの感想ですが、シェイブさんの立場としては安倍政権は最初の1、2年は公共事業で財政支出出してうまくいってたんだからここからでもどかっと大々的なインフラ整備でもやればうまく行くだろうと考えですか? 最初数年でうまくいったのだから
いわゆる公共事業供給制約仮設は怪しいんじゃないかと個人的に考えてます。あとやっぱり大本命の政策はいわゆる「財政ファイナンス」云わば高橋財政をもう一回やれですかね?

苫戸法師苫戸法師 2017/08/07 19:20  金融緩和に従い利益を上げた輸出関連企業は次のビジネスチャンスを生かす投資もせずに内部留保を増やすだけでだったのですから、消費増税はもちろん大失敗ですが、それに隠れて引き下げた法人税減税も失敗も良いとこでしたね。それを報じるメディアがないのも大問題だと思いますが。

shavetail1shavetail1 2017/08/07 21:13 こ↑こ↓さま
安倍さんは支持率浮上のため内閣改造をしましたが、あれも自分の可愛がっている稲田氏をひとりクビにするのに忍びなくて改造という形にしているだけのようにみえますね。
ポスト安倍さんが良い政策を打ち出すことを祈りたいのですが、とにかくカードが少ないですw

amaterasu-rakiさま
>求人倍率等をみてもデフレは過去のものになると思いますわ。
う〜ん。どうなんでしょう。

今の求人倍率向上の原因は何かという点について、需要が向上して高賃金でも人を雇いたいという企業が増えたのであればおっしゃる通りの結果、デフレ脱却となるかと思うのですが、現状はどちらかといえば、低賃金企業が人を取りたいが、労働者としてはそんなていちんぎんでは暮らしていけないから応募もしない、というパターンのような気がするんですよね。総務省統計なんかみたイメージで、論拠というほどのことはないのですが。

玉簾さま
初めまして。 公共投資については過去20年自民党も民主党もなりふり構わず切り捨てて来ましたね。それで産業として壊滅状態になってしまいました。 その間オリンピックは脇に置くとしても、インフラ劣化が進行して、是非とも公共投資増加に反転しないといけない効き的状況となりましたが、建設業では労働者数は横ばいのまま。業界では次にまた公共投資削減があるかも、と思えば新人を採ったりコストを掛けて教育訓練したりといった人的投資に消極的になっているのかもしれません。 公共投資がそうした状況ならば、有効な財政政策としては消費税減税・廃止が浮かびますね。
(国土強靭化、10年で200兆には期待してたんですが)

苫戸法師さま
おっしゃる通りですね。 法人税減税の財源としての消費税増税なんて亡国政策としかいいようがありませんよ。 最近では前面には掲げていませんが、経済同友会の機関誌では法人税財源として消費税を17%まで上げよなど頭がおかしいような主張が載っていました。
http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20150306

@@ 2017/08/09 21:26 まあお気持ちはわかりますが、日本は曲がりなりにも民主主義国家ですから。身内の与党、野党、官僚、学者、エコノミスト、マスコミの殆どが日本は財政危機と考えていて、彼らは積極財政に批判的です。

↓主権者である国民もこんな感じで完全に洗脳されてます。
改憲論議「急ぐな」が過半数=赤字国債、8割強が否定的−時事世論調査
https://web.archive.org/web/20160723163205/http://www.jiji.com/jc/article?k=2016072200542&g=pol

こんな状況で、首相の独断で国債を増発できたら、日本は制御システムが無い独裁国家ということになってしまいます。肩書がNo1だからって、全ては総理大臣の思うがままというわけにはいきません。中途半端なアベノミクスは、日本が民主主義国家である証左と考えます。

田中角栄も言ってましたが政治は数じゃないですかね。どんなに正論を主張しても、彼らが少数派なら数の力で潰されるのがオチです。海の向こうでも、トランプは威勢よくオバマケア廃止を主張してましたが、実行するのに悪戦苦闘してます。オバマ政権も財政拡大で庶民の生活の下支えを目指してましたが、緊縮派の茶会派に振り回され、思うように行かず「米国の分断」を招いてしまいました。

私は安倍総理が需要管理を軽視してるとは思えません。国会中継を見ても「PB黒字化に固執して景気が悪化したら元も子も無い」と言ってますし、この記事(幻の歳出上限59兆円 攻防・財政健全化/http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS26H44_W5A620C1SHA000/)を読んでも、歳出を絞ると景気に悪影響があるくらい理解してると思います。教育国債にも積極的です。消費増税もそもそも本当にやりたかったのか疑問です。反財務省で知られる産経の田村記者によると、安倍総理はせめてショックを和らげようと3%ではなく2%の引き上げを提案してたようですが、自民党内から「こんな景気が良いときにそんな弱腰でどうするんだ?」と猛反発を受けたようです。

@ 2017/08/09 21:51 ちなみに公共事業については、私が国内のエコノミストで一番信頼してる会田卓司氏によると供給制約がやはり存在するようですね。この20年、先進国で公共事業を一番多く削ってきた国なので仕方ないですが。

https://zuuonline.com/archives/99984
「短期間で優良なプロジェクトをともなう政府支出を決めることは困難であり、公共投資に依存してきたことが、景気対策が「ばら撒き」と批判を浴びる原因となった。そして、ばら撒きという批判を政府が浴びることを恐れるので、大胆な景気対策を実施できなくなってしまう。現在は、建設労働者や機材の不足という新たな公共投資の制約要因がある。」

あと、URL忘れてしまいましたが、同じく会田氏によると減税による需要喚起も難しいらしいですね。というのも、「税制中立」の原則で動いている自民党税制調査会を丸め込むのは物凄い政治的エネルギーが必要らしいです。

shavetail1shavetail1 2017/08/11 12:01 @さま
ご意見ありがとうございます。
おっしゃっていることは全てその通りと思いますよ。

会田卓司氏の見識には私も敬意を払っています。

玉簾玉簾 2017/08/11 18:56 >shavetail1さん、@さん

情報ありがとうございます。供給制約説のためになかなか難しいところありますか...
昔、富田克也監督「サウダーヂ」って映画が在りまして、公共事業を減らしまくった結果、荒廃してる山梨が舞台なんでよ。その映画見た後だと地方では公共事業が最後の砦になってるので、短期的にはやっぱり公共事業しなきゃと個人的には思いましたね。長期的には地方の公共事業依存の経済構造を変える必要はあるかなと思いますが、今はデフレ傾向ですからねえ...

asdasd 2017/08/12 10:09 こんにちは。

供給制約があるから追加需要は難しいと考えるか、
供給制約の解決方法は結局、追加需要すること、と考えるかですね。

別にこれは公共投資に限ったことではなく、デフレ容認を続ければ全ての産業が陥る話と思います。

2016-12-24 書評 「富国と強兵」 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

「現代の経済学者の大半は貨幣が何なのかを知りません。」
そう断言されたら、誰しも「そんな馬鹿な」と思うことでしょう。

ところが中野剛志氏の近著、「富国と強兵」の冒頭の数章を読めば、現代の経済学者の大半が貨幣を間違って理解していること、更にはその間違った貨幣観から、日本をはじめ多くの国々で間違った政策を提言している現状にも納得されるのではないでしょうか。

早速引用します。

貨幣の起源
流派経済学貨幣観はその開祖たるアダム・スミス以来、金属主義の立場に立ち、物々交換の困難から貨幣が発生する起源を説明してきた。 この金属主義対立する学説が表券主義であるが、貨幣の起源に関心を寄せる歴史学者や社会人類学者の多くは、表券主義の方に与した。それは、物々交換から貨幣が発生したという歴史的事実を発見することができなかったからである。 それどころか、歴史研究によれば、「計算貨幣」や「信用」といった社会制度は、商品交換や金属貨幣の登場よりもはるか昔の古代バビロニア時代以前の文明において、すでに存在していたことがあきらかとなっている。*1

金属主義によれば、貨幣の価値は、貴金属によって裏付けられているはずである。しかし、たとえばイギリスでは、17世紀後半、摩損によって重量を大きく減らした銀貨が流通していたが、物価・地金相場為替相場にはまったく影響を与えなかった。また、イギリス政府は18世紀末から四半世紀の間、ポンドと金の兌換を停止していたが、ポンドが国際通貨としての地位を固めたのは、むしろこの時期であった。*2

経済とは、貨幣を中心とした社会現象である。経済というものは、貨幣の存在なくしては成り立たない。それにもかかわらず、主流派をなす新古典派経済理論は貨幣の本質やその起源について、根本的に間違った理解をしている。*3

まず歴史的経緯から、大変簡潔に主流派経済学貨幣観、「金属主義」の誤りが指摘されています。

なお、金属主義大辞林第三版によれば 
きんぞくしゅぎ【金属主義
貨幣の本質を素材である金属そのものの価値に求める学説
とされています。

それでは、中野氏は正しい貨幣の理解とは何と主張しているのでしょうか。

この金属主義対立する学説は、通貨の価値の根拠は、その発行主体、とりわけ国家主権の権力にあるとみなす「表券主義(cartalism)」である。表券主義者は、貨幣の歴史的な進化や使用において中心的な役割を果たしてきたのは市場ではなく、国家であるとする。
(中略)
もっとも、主流派経済学も、不換紙幣の出現により、金属主義を見直さざるを得なくなってきており、今日では表券主義を支持するようになっている。 この場合、主流派経済学は、国家権力によって強制通用力を与えられた「法貨(fiat money)」として表券貨幣を理解するのが一般的である。
(中略)
これに対して、L・ランダル・レイは、同じく表券主義に立脚しながら、国家が貨幣租税の支払い手段と定めている点が決定的に重要であるという説を唱えている。 彼の議論を要約すれば次のようになる。*4
(以下、大事な議論ですが、ここに書くには書評として重たすぎるので、中略。貨幣とは何かに興味がある方は、ぜひ「富国と強兵」を買って熟読ください)

レイは、貨幣とは負債であるという「信用貨幣論」と、貨幣の価値の源泉は国家権力にあるという「表券主義」を結合させたのである。 このような貨幣論を「国定信用貨幣論」(Credit and State Theories of Money)」と呼んでおこう。


「富国と強兵」では、中野氏は貨幣供給に関して巷間に流布している誤解にもきり込みます。

内生的貨幣供給理論
イングランド銀行季刊誌(2014年春号)は「現代経済における貨幣:入門」に続いて、「現代経済における貨幣の創造」という解説を掲載し、その中で、貨幣供給に関する通俗的な誤りを二つ指摘している。*5
 一つは、銀行は、民間主体が貯蓄するために設けた銀行預金を原資として、貸出しを行っているという見方である。
 しかし、この見方は、銀行が行っている融資活動の実態に合っていない。 現実の銀行による貸出しは、預金を元手に行っているのではない。たとえば、銀行が、借り手のA社の銀行口座に1,000万円を振り込むのは、手元にある1,000万円の現金をA社に渡すのではなく、単に、A社の銀行口座に1,000万円と記帳するだけである。 つまり、この銀行は、何もないところから、新たに1,000万円という預金通貨をつくりだしているのである。
 銀行は、預金という貨幣を元手に貸出を行うのではない。その逆に、貸出しによって預金という貨幣が創造されるのである。貨幣が先で信用取引が後なのではなく、信用取引が先で貨幣が後なのである。このことを理解していたジョセフ・アイロス・シュンペーターは「実際的にも分析的にも、信用の貨幣理論(money theory of credit)よりも貨幣の信用理論(credit theory of money)の方が恐らく好ましいだろう」といったが、確かに的を射ている。
銀行による貸出しは本源的預金による制約を受けずに、借り手の需要に応じて行うことが可能である。銀行は、企業家に対して、理論的にはいくらでも資金を貸出すことができるので、企業家は大規模な事業活動を展開し、技術や事業の革新(innovation)を実現することができる。シュンペーターにとって、この信用制度こそが、資本主義経済発展の中核に位置するものであった。
シュンペーターの指導を受けたミンスキーもまた、次のように述べている。

貨幣がユニークなのは、それが銀行による融資活動の中で創造され、銀行が保有する負債証明書の約定が履行されると破壊される点にある。貨幣はビジネスの通常の過程の中で創造され、破壊されるのだから、その発行額は金融需要に応じたものとなる。銀行が重要なのは貸し手の制約にとらわれずに活動するからにほかならない。 銀行は、資金を貸すのに、元手に資金をもっている必要がないのである。この銀行の弾力性は、長期間にわたって資金を必要とする事業が、そのような資金を必要なだけ入手できるということを意味する。*6

更に、もうひとつの通俗的な誤解についても。

さて、イングランド銀行の解説が貨幣供給を巡る通俗的な誤解として指摘するもう一つの例は、中央銀行が、ベースマネー(現金通貨と準備預金の合計)の量を操作し、経済における融資や預金の量を決定しているという見解である。
この見方によれば、中央銀行ベースマネーの供給が、ある銀行の本源的預金となり、それが貸し出されることよって、銀行システム全体で乗数倍の貸出・預金を形成することになる、いわゆる「貨幣乗数理論」である。この見方が正しければ、銀行による貸出し制約しているのはベースマネーであるから、中央銀行ベースマネーの量を操作することで、貨幣供給の量を操作することができるということになる。
 しかし既に述べたように、銀行は、ベースマネーを貸し出すわけではない。銀行による貸出しは、借り手の預金口座への記帳によって行われるに過ぎないのである。従って、銀行の貸出し(すなわち預金通貨の創出)は、ベースマネーの量に制約されてはいない。もちろん、銀行は貸出しを増やせばそれに応じた準備預金も増やさなければならないので、準備調達の価格(すなわち金利)を調節すれば、銀行の融資活動に影響を及ぼし、貨幣供給を調節することができる。それゆえ、今日の中央銀行は伝統的に、ベースマネーの量ではなく、金利操作を金融政策の主たる政策目標としてきたのである。*7

(中略)
驚くべきことに、経済学の標準的な教科書の中には、イングランド銀行が初学者向けの解説で説いている現実の貨幣供給のプロセスをまったく逆立ちさせたことが書かれており、それが一般に流布しているのである。いわば、現代の天文学の教科書が、天動説を教えているようなものであろう。*8


日本人の著書で、これほど貨幣の本質に踏み込んで、主流派経済学の誤り、およびベースマネー供給を手段とするリフレ政策の誤りをきちんと指摘した本を私は知りません。

そしてこの後も、

−タドリー・ディラードは新古典派経済学の想定(理論の中に、現実の貨幣が存在しない)を「物々交換幻想」とよんだ。
−「アダムの罪」を「ドグマ」にまで仕立てたのがジャン・パティスト・セイだとタドリーはいう。
貨幣中立性、セイの法則はともに、「物々交換幻想」から導かれているもの。
−これらが、リカード、ジョン・スチュワート・ミルら古典派、さらにジェヴォンズメンガーワルラス新古典派にも継承された。
−中でもワルラス経済全体の需要が供給と均衡するという「一般均衡理論」の体系を確立し、新古典派経済学を主流派に押し上げる上で大きな貢献を果たした。
−主流派経済学は、いまなおワルラスが確立した一般均衡から出発して、分析を精緻化したり拡張させたりしているのである。*9 

と、現実の貨幣とは異なる、物々交換の幻想から出発した、古典派、新古典派、更には現代における主流派経済学が俎上にのぼり批判されています。

特に、現代の主流派経済学については、

流派経済学は、日常的な意味における時間の概念や(シェイブテイル注:確率分布では表せないタイプの)「不確実性」を無視することによって、経済現象数理モデルで表現することに成功した。主流派経済学は、分析手法数学化したことによって、数学的な分析こそが厳密な科学という通俗的な科学観に強く訴えかけ、それによって、社会科学の中でも特に大きな影響力を持つに至ったのである。
しかし、不確実性を排除することは、貨幣存在意義を排除することである。ワルラス一般均衡理論で不確実性を排除した時、そこから貨幣も蒸発した。
流派経済学経済モデルが大前提とする「一般均衡理論」が想定するのは、貨幣が存在しない世界なのである。

と、その理論の中に貨幣が存在せず、まったくもって現実の経済から乖離した代物として、厳しく批判されています。

これらの明晰な記述が、20章近くにも及ぶ「富国と強兵」の1章の中の一部に書かれているのですから、恐れ入ります。

 実は、本書の主題は、主流派経済学の根本的誤りを糺すことにはなく、これら正しい貨幣認識に基づく経済学と、厚みのある地政学とが交わるところに、新たな学問、「地政経済学」という視点があり、この視点から世界を俯瞰するとまったく新たなビジョンが生まれるというところにあります。

ただ、その内容にまで踏み込むのはとてもこの簡単なブログの記述では間に合いそうもありません。

この本は、現在の経済や政治について、いろいろな見解を持つ人々に、ぜひ一度は手にとっていただきたい名著です。

富国と強兵

富国と強兵

*1:「富国と強兵」p061

*2:同書 p062

*3:同書 p063

*4:同書 p060

*5:Michel McLeay, Amar Randia and Ryland Thomas, 'Money Creation in the Modern Economiy' Quarterly Bulletin, 2014b, Q1, Bank of England, pp14-27

*6:「富国と強兵」p067

*7:同書 p069

*8:同書 p070

*9:同書 p074

こ↑こ↓こ↑こ↓ 2016/12/24 13:10 面白そうな本だけどすごい難しそうですね

shavetail1shavetail1 2016/12/24 13:14 おっしゃるとおりです。 色々と背景知識がないといきなり読めない部分が多いですね。 第一章に限っても結構なので、ぜひ一般向けに仕立て直した本をみたいところです。

田中リンクス田中リンクス 2017/01/04 14:51 僕も買いましたよ!
三橋さんの本も買って読んだんですけど、より専門チックな中野さんのも読んどかなきゃと。
貨幣とは債務のことである、信用創造とは債務の拡大のことである、預金と現金の違い、日銀当座預金と貸し出しの関係性、金属主義の弊害、現実を見ない主流派経済学、債務を減らして経済成長することなどあり得ない、ぼんやりと捉えていた貨幣や経済に対する理解が一気に深まる本ですよね。
まあでも、マクロ経済にあまり関心がない一般層には敷居が高いのかも。そういう意味では三橋さんの本の方が取っつきやすいかもですね。
三橋さんの主義主張の賛否は置いといて、小難しい理論を分かりやすくて説明する能力は、僕は単純に凄いなと思います。友達に勧めるなら「富国と強兵」ではなく、「日本人が本当は知らないお金の話」を僕は選ぶでしょう。

せいせい 2017/01/04 20:59 昔「金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った 」とか「エンデの遺言」などを読んでお金の本質について考えさせられた事がありましたけれども、経済の専門用語が飛び交うような本格的な書作ではないので、そういう見方もある程度でした。直感的にピンとくるのは何故かこの手の裏話的解説ばかりだったので助かります

こ↑こ↓こ↑こ↓ 2017/01/06 20:55 関係ない話で申し訳ないんですが通貨発行益ってこれは毎年あるものと見て正しいのですかね もう一つはニュースでみずほ総合研究所が大型減税を安倍政権が取り入れるようなことが報道されていますが法人税がメインと考えたほうがよさそうですかね

GokaiGokai 2017/02/08 18:54 >さて、イングランド銀行の解説が貨幣供給を巡る通俗的な誤解として指摘するもう一つの例は、中央銀行が、ベースマネー(現金通貨と準備預金の合計)の量を操作し、経済における融資や預金の量を決定しているという見解である。

・私は中野剛氏が間違っていると思います。
・民間銀行は無からお金を貸し出している拙は安倍よしひろ氏の信用創造の説明2と同じものですが、民銀は提供可能なMBの量の範囲内で貸し出ししているに過ぎず、無いものを貸し出しているわけではありませんね。それゆえに日銀の意向は民銀にとってとても大きく、経済への日銀の金融調節はとても大きな影響を与えます。

通りすがり通りすがり 2017/04/08 11:44 今のところ、自分が必要な知識だと思っているもの:

?簿記の仕訳、そこから貸借対照表、損益計算書がある程度作成できる知識があること。

?建部論文で、銀行簿記、中央銀行簿記の仕訳を知ること。

?準備預金の後積みを知ること。

?日銀の金融調節、および、補完貸付制度等を知ること。

?ポール・デヴィッドソンの『ケインズ経済学の再生』で、「貨幣の非中立性」を知ること。

知識を得るときの態度について必要なもの:

?自分が今まさに完全に間違っている可能性を認めること。

?しっかり自分の考え、言うこと、書くことの裏付けとなる文献をちゃんと探すこと。どこそこのネットに書いてあった、などは文献にはならない。翻訳でも同様。

?分からないことは分からない、知らないことは知らない、と認めること(例:私は簿記の仕訳が出来ません。私は高等数学が分からないので経済学の論文が読めません。私は日銀の金融調節なる言葉は知りません等)。

shavetail1shavetail1 2017/04/08 22:29 通りすがりさま

コメントありがとうございます。
学問に対して真摯な姿勢ですね。頭が下がります。
私もそうありたいと思いつつも、なかなかそこまでの心境に到達できていません。

通りすがり通りすがり 2017/04/09 00:04 私は学問なんてやってません。ただの素人の政治経済オタクなだけです。多くのネット上の「論客」たちは、自分たちが匿名の、たんなるド素人の、政治オタクだということをわかってないんじゃないかと思うことがあります。

2016-11-05 日銀首脳と巷間リフレ派はドングリの(以下自粛) このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

一月ほど前ですが、週刊文春で日銀・岩田規久男副総裁の本音(?)を日銀関係者が語ったという記事が載っていました。

THIS WEEK週刊文春
量から金利へ回帰 リフレ派終焉で岩田副総裁の変節 2016.10.01 07:02

辞任も覚悟と公言していた岩田氏だが…
 日本銀行は9月21日の金融政策決定会合で、2013年4月から続く異次元緩和の戦略を修正した。市場に流すお金の量を年80兆円ずつ増やす目標をなくし、長期金利を「0%程度」とする目標に置き換えたのだ。

「そもそも日銀の異次元緩和は、デフレからの脱却をめざし、お金の『量』さえ増やせば物価が上がると唱えた『リフレ派』の考えを採り入れてスタートしたもの。今度の修正策はそうしたリフレ派の主張を否定して追いやり、伝統的な金利政策に回帰する色彩が強い」(経済部記者)

この文春経済部記者の見方は鋭いですね。 
「これからは、イールドカーブコントロール(YCC)だ」
と新金融政策を打ち出したかにみえましたが、内実は量から金利への回帰ということになります。

その上、日銀が直接コントロールできる短期金利以外に、市場が決めるはずの長期金利までもコントロールすると宣言したことにより、速水総裁時代の日銀内でリフレ政策を孤軍奮闘唱えた中原伸之からさえ、「イールドカーブを国家管理の下に置くのは戦時下と同じ発想」と斬って捨てられる始末です。*1

さて、先の文春記事に戻ってみましょう。

 長らく異端扱いだったリフレ派が台頭したのは、2012年12月。政権奪回を果たした安倍晋三首相が「大胆な金融緩和」を日銀に迫ったのが始まりだ。リフレ派に近い元財務官の黒田東彦氏が総裁、リフレ派の筆頭だった学習院大教授の岩田規久男氏が副総裁に送り込まれ、日銀はリフレ派の占領下におかれた。

 だが、リフレ派に従った金融緩和策の成果は出なかった。初期こそ円安誘導で輸入品は値上がりしたが、景気は回復せず、円安が一服すると物価も前年比で下落に転じる。金融緩和頼みの限界が見え、黒田総裁は豹変する。

「今年1月のマイナス金利導入でいち早く宗旨替えした黒田総裁はダメとわかれば固執しないタイプ。一方、岩田副総裁はこだわりが強いと見られていたが、最近は『巷のリフレ派は分かってない』などと言い始めて主張を転換。共通するのは自分の責任は認めないこと」(日銀関係者)

岩田副総裁のいう、『巷のリフレ派』とは、誰の、どのような言説を指すのかが不明ですが、リフレ派の理論的支柱であるはずの岩田規久男氏が自らの信者を切り捨てたのだとしたら、リフレ派もおしまいではないでしょうか。 

ちなみに、量的緩和は無意味と主張しているこの私も、「リフレ派」をデフレ脱却が必要だとする人々とする緩い定義ならば、いまもって私もまた岩田規久男氏にdisられている広義『巷リフレ派』()なのかもしれません。

それはともかく、文春記事ではさらに。

 かくしてリフレ派は敗北を喫し、日本経済を使った「壮大な実験」と呼ばれた異次元緩和は、「量」から「金利」重視へ回帰したのだ。しかし、安倍首相を後ろ盾とする前内閣官房参与の本田悦朗・駐スイス大使ら日銀外のリフレ派は怒り心頭だ。

「日銀の政策修正には『緩和はもう十分。あとは政府の構造改革、規制緩和の問題』とのメッセージも含まれる。『もっとお金の量を増やせ』『まだまだ増やせる』が持論のリフレ派にとっては面白いはずがなく、このまま引き下がるとは思えない」(前出・経済部記者)

 今後も政府と日銀は蜜月を続けられるのか。残り1年半の黒田総裁の任期はそこが焦点になる。


この文春記事は、リフレ批判に終始し、結局実際にどうやったらデフレ脱却が可能かには触れられずに終わっています。

また、記事中登場する岩田規久男氏といい、本田悦朗氏といい、第一の矢・金融政策と第三の矢・構造改革には関心があっても、第二の矢・財政政策には言及されていません。

ただ実際の消費者物価の動きをみれば(図表1;引用元楽天証券)、消費税という負の財政政策を実施した途端に物価が下がり始めたことは誰の目にも明らかでしょう。

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図表1 アベノミクス期の物価推移
[出所]総務省物価指数より楽天証券作成

負の財政政策が物価に直ちに効く(ただしマイナス方向に)、となれば消費税廃止を含む正の財政出動デフレに効かない理由はないでしょう。

ところが、デフレ脱却の責任を負う当の黒田・日銀総裁は、消費税を上げるかどうかの分岐点となった13年8月の消費増税の集中点検会合の席上、次のように強く主張しました

黒田総裁、消費税先送りは「どえらいリスク」 点検会合で発言 2013/9/7付 日経電子版
 内閣府は6日、8月30日に開いた消費増税の集中点検会合の議事要旨を公表した。日銀の黒田東彦総裁が、増税を先送りして金利が急騰するリスクについて「万が一そういうことが起こった場合の対応は限られる」と発言し、予定通りの税率引き上げを求めていた。

 ただ内閣府が内部でまとめた詳しい議事録によると、黒田総裁は金利急騰の危険性に触れ「確率は低いかもしれないが、起こったらどえらいことになって対応できないというリスクを冒すのか」と、政府側に予定通りの増税を強く迫った。

 黒田総裁は国内総生産(GDP)に対する債務残高の比率について現在の約220%から「250%でも大丈夫かもしれない。(しかし)300%でも、500%でも、1000%でも(大丈夫か)といったら、それはあり得ない。どこかでぼきっと折れる。折れたときは政府も日銀も対応できない」と発言。「中央銀行として脅かすつもりは全くないが、リスクを考えておかないと大変だ」と述べた。

 内閣府が公表した議事要旨ではこうした発言を修正・削除している。

この発言により、安倍政権消費税増税に導いておきながら、実際消費税を上げた結果のデフレ逆戻りにも、消費低迷にも無視し、更には14年11月と今年6月に増税延期されても金利急騰どころかマイナス金利が定着していることにもホッカムリを通しています。 

現在の日銀が黒田東彦・岩田規久男体制になって早くも3年半。 その間物価消費税増税までは多少上がり、その後は右肩下がりで現在に至っています。 日銀では先日、もう何度目かも判然としないインフレ率2%達成時期の先送りを発表しました。 その間皆が忘れている間も日銀の国債買い入れは続いており、効果不明の長短金利調節も始まりました。

もうそろそろ、日銀の中も巷間リフレ派も、この3年半で結果的に効果がはっきりしてきた第ように「二の矢、正の財政政策でデフレ脱却」という簡単な結論に到達しても良い頃ではないでしょうか。

こ↑こ↓こ↑こ↓ 2016/11/06 13:53 いい加減さっさと減税して財政出動してほしいですね・・・。
安倍首相は今度3選して政権を9年握ってもぎりぎりデフレ脱却できるぐらいの時間しかなさそうですね。出生率1.8やら待機児童介護離職ゼロも政府支出増やせば達成できそうなのにやらないのが本当に問題だと思いますよ

hat_24ckghat_24ckg 2016/11/06 20:33 財政再建派はつける薬がないとして、社会保障を強化したい勢力は財務省お決まりの「財源がない」に対して「国債増発で賄え」と迫るべきです。なぜ大人しく引き下がってしまうのか。

2016-04-04 安倍政権の理想を達成したギリシャの現在 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

日本についで財政健全性指標が悪いギリシャでは、2011年から15年の政府債務伸び率が世界一になりました。 
ただし、世界一は世界一でも、世界で最も伸びが小さかったのです。
また2013年には日本が目指すプライマリーバランス均衡も達成しました。
そのギリシャの現状とはどのようなものでしょうか。

IMFのデータベースで比較可能な世界36カ国で、11年-15年の4年間での政府債務伸び率をみると、驚くべきことにギリシャは「財政健全性の優等生」に変貌していました。(図1)

ギリシャでは近年政府債務伸び率が世界一小さい

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図1 政府債務伸び率ランキング
出所: IMF WEO Oct. 2015
比較可能な世界36カ国で、2011-2015年の4年間での政府債務年平均伸び率を算出
図は主要国だけだが、国名の後の数字は伸び率の小さい国ランキングの順位を示す

ギリシャでは2009年の政権交代時に多額の財政赤字が発覚し、その後国際通貨基金(IMF)、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)からの融資と引き換えの緊縮財政が開始されました。
その結果ギリシャの基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスは2009年の対GDP比-10%から2013年には+1%に改善しました。

ギリシャは安倍政権が骨太方針に掲げるプライマリーバランス均衡を既に実現しているのです。

ギリシャに多額の融資をしているドイツを上回る緊縮財政をしいて、プライマリーバランス均衡を達成したギリシャの経済状況はといえば…。

まず、プライマリーバランス均衡達成とともに、政府債務残高(ユーロベース)は増加が止まりました。(図2)

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図2 ギリシャのPBバランスと政府債務(ユーロ建て)の関係
出所:図1に同じ、以下同


ところが、財政健全性指標つまり政府債務残高÷名目GDPの悪化は止まっていません。(図3)

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図3 ギリシャのPBバランスと財政健全性指標の関係

ということは、ご推察の通り、名目GDPは大幅に悪化しています。(図4)
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図4 ギリシャのPBバランスと名目GDPの関係

また、物価は急速にデフレ化しました。(図5)
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図5 ギリシャのPBバランスと物価の関係
物価はここではGDPデフレータ

その他にも09年から15年の間にギリシャでは失業率が9%から26%に悪化し、一人あたり名目GDPは15%減少しています。

安倍政権は「骨太の方針」で2020年のプライマリーバランス均衡を目指しています。
しかし、現実にプライマリーバランス均衡を達成したとすれば、ギリシャが今体験しているような経済状態を自ら実現する、ということなのです。

プライマリーバランス均衡は現在の安倍政権では国民生活よりも重要な指標であるかのように国家目標化していますが、元々は2006年骨太方針の中での竹中平蔵元大臣の発案に過ぎませんでした。 

ウィキペディアでプライマリーバランス(基礎的財政収支)を調べると、日本語では約2000字の記載があり、ドイツ語でも4500字ほどの詳しい記載があります。ところが、英語では600字程度の定義の記載のみ、他はアラビア語の定義のみ。
他の言語での記載は全くありません。

要するに、世界でプライマリーバランス均衡を気にしている国は竹中構造改革以後の日本と、ドイツ語圏およびドイツの銀行から多額の借金があるギリシャ位ということなのでしょう。

しかもこれを達成すれば、失業率二桁、厳しいデフレで財政健全性は悪化というような最悪な経済状態です。
安倍政権もそろそろ怪しい経済学者たちに鼻面を引き回されるのを止めにしないと、日本は世界一対外債務を持ちながら世界最悪の経済状態になりかねません。

asdasd 2016/04/05 10:31 初めまして。ここ最近から、興味深く読ませてもらってます。

マクロは拡大均衡が標準であるということを理解されてない方が多いんですよね。
だから総需要不足だろうが緊縮財政を支持する人が出てきてしまう。
まあそんなことは義務教育もマスコミも教えないもんだから仕方ないですが、困ったもんですね。

shavetail1shavetail1 2016/04/05 12:45 asdさま

コメントありがとうございます。

おっしゃるとおりで、金利がある以上はマクロでは拡大せざるを得ないし、拡大する際に健全な負債の担い手が政府と企業だということが為政者と大多数の経済学者に理解されていないのは情けないほどです。

長期経済データをみると、政府の債務残高は
1872年に28百万円…長期データの最初の年
1929年に66億円…濱口内閣が一人90円の借金が巨額と不況下の緊縮策を強行して昭和恐慌を引き起こした年
1982年に121兆円…鈴木善幸内閣で財政非常事態宣言をした年
そして現在1200兆円。
いつでも多かったといえば多かったが、四半世紀もすれば何で騒いだのか見当もつかないほどの少額だったともいえます。

そもそも政府がすべての債務を返すのならば、その債務を誰かが肩代わりするのか(海外?)、マネーを使わない自給自足か位しか選択肢がないことを政治家・経済学者が知っているのかどうか。

いずれにしても、サプライサイダーには貨幣や債務は理解できないのに、竹中平蔵らはひどく馬鹿げた国家目標を掲げたものです。

通りすがり通りすがり 2016/04/25 23:18 >長期経済データをみると、政府の債務残高は
1872年に28百万円…長期データの最初の年
1929年に66億円…濱口内閣が一人90円の借金が巨額と不況下の緊縮策を強行して昭和恐慌を引き起こした年
1982年に121兆円…鈴木善幸内閣で財政非常事態宣言をした年
そして現在1200兆円。
いつでも多かったといえば多かったが、四半世紀もすれば何で騒いだのか見当もつかないほどの少額だったともいえます。

馬鹿な人がいつも引っかかっている詐欺の手口ですね。インフレと名目ではなく実質成長の二言で説明できるというのに。

通りすがり通りすがり 2016/04/25 23:21 >そもそも政府がすべての債務を返すのならば、その債務を誰かが肩代わりするのか(海外?)、マネーを使わない自給自足か位しか選択肢がないことを政治家・経済学者が知っているのかどうか。

学部のころに、初歩の初歩の間違いと習うことを恥ずかしげもなく言っている人がいるのを見ると…

たくろうたくろう 2016/04/26 17:42 >馬鹿な人がいつも引っかかっている詐欺の手口ですね。インフレと名目ではなく実質成長の二言で説明できるというのに。

実質成長概念で説明出来ると口ばかり。出来るならやれば。

通りすがり通りすがり 2016/04/27 00:39 >実質成長概念で説明出来ると口ばかり。出来るならやれば。

とっくにやってること。知りたいならば調べればいいだけ。説明を省きすぎたので少し補足すれば、戦前の債務はハイパーインフレ、預金封鎖という名のデフォルトで大部分が清算された。だから実質成長で返済されたという印象を与えたのはまずかった。

結局、馬鹿が引っかかるという事実は曲げようがないけれども。

2016-04-03 家計最終消費支出には消費税の影響は出ないのか このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

先日このブログで、「消費税を上げるたびに、家計の実質的な生活水準を示す消費水準指数が下方に屈曲してきた」という主旨のことを書きました。
これに対する反論のブログがありましたので、これについて書いてみたいと思います。

まず、シェイブテイルの意見がこちらです。



これまでの消費税0%、3%、5%、8%のトレンドと同じことが起きれば、消費税10%では実質的な生活水準は毎年3%ずつ下がっていくだろう、というのが結論でした。

一方、反論のブログはこちら。


曰く、

GDP統計の家計最終消費支出は増えている。1994年から2015年までは人口は最大で2.25%しか変わっていないので、家計最終消費支出を人口で割った数字で見ても、増加傾向は変わらない。しかし、消費水準指数は低下している。一人あたりの消費が増えているのに、世帯規模を調整した家計消費は減っている事になっている。二つの指標の傾向が合致しない。

ついでに図表も引用させていただくと
f:id:shavetail1:20160403092422p:image:w420

あちらのブログの主旨を忖度すると

消費税が上がっていても、家計最終消費支出はマクロでは増えているではないか。
消費水準指数がトレンドとして下がっているのはよくわからないが統計上問題があるのではないのか。
だから消費税を上げても無問題である。

といったところでしょうか。

確かに同じ家計支出をみているはずなのに名目GDP算出の基礎にもなっている家計最終消費支出は増加トレンドで同じ家計支出に対して、1世帯当たりの実質消費と似ていますが、消費支出から世帯規模(人員)、1か月の日数及び物価水準の変動の影響を取り除いて計算した消費水準指数では減少トレンド、というのは一見矛盾のようでもあります。

この、”取り除かれた影響”の中に極めて影響が大きい因子があるのだろう、とおもっていましたら、himaginary氏より早速良い情報を提供してもらえました。

mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/12/dl/02-2.pdfによれば世帯数の増加が乖離の主因との由。
https://twitter.com/himaginary_/

himaginary氏引用URLの「平成24年版 労働経済の分析」のp161「世帯数の増加が消費の押し上げ要因となってきた」によれば、日本では人口増加を上回るスピードで世帯数増加が起きていて、これがマクロでの消費を押し上げているとのことです。

確かに核家族化や、高齢者の単身化が進めば、各家庭にひとつは必要な、冷蔵庫・テレビ・車などの耐久消費財の消費を中期的に押し上げる力になってきたのでしょう。

ただ、各個人の立場からみれば、使っている耐久消費財の数が増えているわけではなく、その意味で家計の人数増減を調整し、マクロの家計最終消費支出ではわかりにくい実質的生活水準を消費水準指数としてみえやすくしているのでしょう。

とはいえ、もしも家計最終消費支出では消費税の影響がないのであればそれはそれでひとつの論点といえるでしょう。
そこで、前回の消費水準指数とともに、家計最終消費支出(名目値)を使って、消費税増税の影響を再検討してみました。

消費税増税の影響は消費水準指数以上に家計最終消費支出にあらわれている

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図 消費税率と消費水準指数・家計最終消費支出の伸び率との関係
出所:総務省統計
消費税率0%時代(1985−1989年)、3%時代(89-93年)、
5%時代(97−01年)、そして8%時代(14−15年)について
2つの指標それぞれの年平均伸び率(%)を算出した

これによれば、消費税率アップの影響は、世帯数増加という潜在的プラス要因がある家計最終消費支出にも出ていて、出ているどころか、消費水準水準以上に大きな悪影響が見て取れます。

もしも安倍内閣が消費税率10%への増税を強行した場合、グラフのトレンドから考えると個人の実質生活水準のみならず、マクロでの家計最終消費支出もまたほぼ年率3%で縮み始めるでしょう。

蛇足ながら、消費税率アップの影響が3%と8%の時は軽めに、5%の時は重めに出ているのは、初めて消費税を導入した3%増税時には並行して物品税を廃止したため、実質的には3%消費税増税とはなっていなかった、また一昨年の8%増税時にはアベノミクスで異次元緩和を行った結果、円安を招き、インバウンド需要を惹起したこと、一方5%増税前後にはアジア通貨危機、ロシア危機など外部環境が悪い中、消費増税以外にも橋本改革と称する強力な需要抑制策をとったことも関係しているのかもしれません。

いずれにしても、これらの情報をしった上で消費税を8%維持もしくは10%に上げるのは、リーマン・ショック級の愚挙と思われます。

SS 2016/04/04 11:59 家計支出への影響より企業投資への影響の方が額としては大きくありませんか?過去の消費税導入、5%への増税の際は消費以上に投資へのマイナス影響が大きかった。
8%二年目のの昨年は企業の投資マインドは好調だったかのように報道されていたので、果たして本当にそうなっていたか数字が出てくるのが楽しみです。

2016-03-27 増税派黒田総裁にみていただきたい一枚の図 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

日銀の黒田総裁は3月23日の参院の財政金融委員会で、消費増税による経済への悪影響について「成長率への影響は減衰し、何年もは出ない」と述べました。
 これは正しい認識といえるのでしょうか?

 ここに黒田総裁にみていただきたい一枚の図があります。 それは消費水準指数です。(図1) この指数は、簡単にいえば、実質的な生活水準をみているといえるでしょう。*1

消費水準指数は消費税を上げるたびに下方に屈曲してきた

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図1 消費水準指数の推移
出所総務省統計局 消費水準指数(世帯人員分布調整済)※-二人以上の世帯(エクセル)
消費税は1989年に3%に、1997年に5%に、そして2014年に8%にそれぞれ引き上げられた。

図1をみると、消費税率が上がるたびに、消費水準指数の推移は下方に屈曲しています。 黒田総裁のいうような「成長率への影響は減衰し、何年もは出ない」状況ではありません。
そこでもう少し詳しく、消費税率0%時代、3%時代、5%時代、そして8%時代での消費水準指数の伸び率を調べてみました。(図2)

消費税率を上げるたびに消費水準指数の伸びが低下した

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図2 消費税率と消費水準指数の伸びの関係
消費水準指数(図1)で、消費税率0%時代(1985−1989年)、3%時代(89-93年)、
5%時代(97−01年)、そして8%時代(14−15年)について消費指数の平均伸び率を算出した。
この相関関係が維持されるなら、消費税10%時代には
消費水準は毎年3%減になるだろう。

図2は消費税率と消費水準指数の伸びの相関関係を示しています。
これによれば、消費税の影響は増税単年で消えるようなものではなく、増税するたびに確実に国民の消費生活を蝕んでいることがわかります。 この関係が維持されるのであれば、消費税を10%に上げるならば、消費水準は毎年3%程度で縮小していくことでしょう。

最近、安倍内閣では消費税増税の先送りを模索しているという報道もちらほら出てきています。 SNSなどでもそれを支持する意見が多く見られます。

ただ、過去の消費水準指数の推移から考えると、このままの消費税8%で維持すれば問題がないとはいえず、この四半世紀続く国民生活の水準低下を止めるには消費税を廃止するなどもっと踏み込む必要があるのではないでしょうか。

 黒田総裁は日本国債への信認低下を恐れて、消費税増税に前向きのようです。 しかし日本国債の金利は10年ものでさえマイナスになるような昨今、国債の信認低下、つまり金利上昇がどれほど身に迫った危機だというのでしょう。

 黒田総裁の言い分は「健康のためなら死んでもいい」と思い込む健康オタクに通ずるような倒錯、というのは言い過ぎでしょうか。

*1:消費水準指数は、1世帯当たりの実質消費と似ていますが、消費支出から世帯規模(人員)、1か月の日数及び物価水準の変動の影響を取り除いて計算した指数で、家計消費の面から世帯の生活水準をより的確に把握することができるとされています。

GokaiGokai 2016/03/31 08:37 shavetail1さま

良いグラフを出されましたね。
確かに相関関係は、強いといえるでしょう。
しかしそのご説明では因果関係を指摘できていません。

なので決定的な説得論理にはならないのでは、ないでしょうか?

例えば、消費増税による購買力低下を打ち消すだけの購買力を国民に与えることが出来れば、消費水準指数も低下を続けなくなります。

shavetail1shavetail1 2016/03/31 22:24 Gokaiさま

コメントありがとうございます。
ご指摘の通り、消費税増税と消費水準指数の関係についてはこの図で因果関係の証明ができたわけではありません。

むしろ、金融政策および消費税以外の財政政策変更も多々あったにもかかわらずこのような単純な関係が導かれることが考えにくい(単なる偶然)という考え方も否定できません。

ただ、消費税という税制は国民の目につくだけに他の税制以上に変更が容易ではない点、これは上げるだけでなく、下げるのにもそれなりの理由が要るということから、一度10%にあげて、もしこのグラフのように年率3%で世帯生活水準が落ちていっても止めるのにも時間を要するということがあります。

その間日本経済は加速度的に縮むのですから、消費税は減税する方向では間違いができても、上げる方向で間違えればもう取り返しがつかないのでは、と捉えています。

GokaiGokai 2016/04/01 16:18 shavetail1さま

>単純な関係が導かれることが考えにくい(単なる偶然)という考え方も否定できません。

ご返信ありがとうございます。
おっしゃられるとおりで、この相関が偶然であろう筈もありません。
しかし消費増税で財政確保派は、難癖つけるでしょう、w。

>消費税は減税する方向では間違いができても、上げる方向で間違えればもう取り返しがつかないのでは、と捉えています。

国内消費の落ち込みは円高要因且つ企業業績悪化で、シャープなどの白物家電の身売りという結果を招き、日本の国力は益々弱体化していくという構図が現在生まれています。
そしてそれらの為に、貿易収支で見た場合日本の産業力は、2014年では世界代124位という散々なものになりました。
http://www.globalnote.jp/post-3277.html
もう取返しがかなり難しい状態になっていますね。

shavetail1shavetail1 2016/04/01 17:39 Gokaiさま
そこは私はかなり楽観的でして、かつての経済大国だった中国が政策の失敗から後進国に転落して、現在都市部や香港ではほぼ先進国に返り咲きました。

正しい経済政策、つまり十分かつ継続的な財政政策をとれば、日本もすぐに元に戻れるのではないでしょうか。

GokaiGokai 2016/04/01 18:37 shavetail1さま

>つまり十分かつ継続的な財政政策をとれば、日本もすぐに元に戻れるのではないでしょうか。

財政出動にはもちろん同意ですが、どのような方面への財政出動で、貿易収支の改善が図れるとお考えですか?

ぷーくろぷーくろ 2016/04/02 21:43 たまたま通りかかりました、ひとこと。
興味深いグラフ、ありがとうございます。
消費税率が上がるたびに、消費水準指数が下方屈曲するとすると、ヨーロッパ諸国はさぞかしすごいことになっているのでしょうか?
(諸前提諸条件等が異なりますので、一概に推定はできないでしょうが。)

shavetail1shavetail1 2016/04/03 10:28 ぷーくろさま
ご指摘ありがとうございます。
フランス人に言わせると、消費税発祥国のフランスの消費税と日本の消費税は全く別のものだそうです。

なにが違うかといえば、フランスでは吸い上げた消費税は当然のように国民に返す。 戻ってくる税だから消費税率アップに国民は全く懸念を感じないとか。

一方、日本の場合、消費税は公式の建前、社会保障費財源などにはなっておらず、単なる増税であり同時に緊縮財政を進めていますから、税金は国民には戻っていないんですよね。 これは実感される通りで、増税のたびに国から何らかの給付が増えたなんてことはありません。
日本型消費税は、国の経済を潰す以外に目的がない税だと私は思っています。
[関連記事]
http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20131022

2015-10-31 信用創造の仕組みからみたQQEの帰結 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

日銀は昨日30日に開催された金融政策決定会合で、2%の物価目標達成時期を先送りしました。
2013年4月、量的質的緩和(QQE)に着手した黒田総裁は「マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上」にし、2年以内つまり2015年3月末までの物価目標2%達成を宣言しました。

その後、昨年10月にも量的質的緩和の拡大として、マネタリーベース買い入れ増額などの俗に「黒田日銀バズーカ2」と呼ばれる追加緩和も実施しましたが、今回更に物価目標達成時期が送らされ、当初予定より二倍ないしそれ以上の時間がかかることを追認する形となっています。

f:id:shavetail1:20151031100156j:image:w180:rightこれは一体どういうことなのでしょうか。
筆者は、不遜ながら、黒田日銀の信用創造に対する理解がおかしいのではないかと感じています。

1.通常いわれている信用創造の説明*1
右はある大学経済学部の先生のサイトから引用した信用創造の説明図です。 
これは教科書などに記載される標準的な理解です。このサイトを運営されている先生をdisる意図は毛頭ありません。

これを単一の銀行の信用創造の連鎖として図を眺めるとそれほど違和感はありませんが、マクロで銀行と非金融部門との相互作用の図としてみるとかなり違和感があります。 

2.ここがヘンだよ、信用創造の説明
図表1は右上の信用創造の説明図をマクロの主体間の取引として眺めるためのものです。
f:id:shavetail1:20151031101504j:image:w480
図表1 簡略化した金融システムのモデル 

金融システムを金融界(=マネタリーベース界)と非金融界(=マネーサプライ界)に分けて表示。
二つの世界は金融システムという壁によって隔てられ、市中銀行部分から現金を介して連絡しているのみ。
現代の通貨制度では少額取引以外は預金形態のお金で回っている。
なお今回、政府(左)は説明には関係していない。

1)預金だけのモデル
最初、ある人が銀行に預けたお金が現金ではなく、預金であった場合図表1でb−dのやり取り(と、aで日銀当座預金口座の振替え)が起きているだけで、お金が新たに生まれたわけではないことは理解が容易でしょう。

2)現金が持ち込まれたモデル
最初ある人が銀行に預けたお金が現金の場合、日銀からここに記載されていないルート−例えば日銀の職員が現金で給与を貰ったなどのケース−があれば現金がマネーサプライ界に現れ、それが銀行に預けられ…という「信用創造の図解」に描かれたようなシーンも考えられます。

その場合にはそのマネーサプライ界で現れた現金が恒常的にマネタリーベース界に流入しないことには「信用創造の図解」のようなスキームは成立しません。

ところが、現実の世界をみれば、日本ではマネーサプライも増えていますが、それと並行して日銀券が恒常的に日銀に向かって流れこみ、総量が減少するということは観察されていません。(図表2)

日銀券発行高は伸びている

f:id:shavetail1:20151031123938j:image:w360
図表2 日銀券発行高とマネーストック(M3)残高推移
出所:日銀資金循環統計
経済学の教科書に載っているモデルでは、マネーストックと並行して
日銀券発行高が伸びていることが説明できない。

3.現実の預金は債務と同時に発生
 実際の信用創造はどうなっているのかといえば、図表1のb、銀行と企業間取引で、新たな貸出がおこなわれると、貸し出された預金が貸出企業の預金として銀行のバランスシートに出現します。

この信用創造で生まれたお金は、銀行員のペン先からお金(預金)が生まれたことを意味する"fountain pen money"という言葉でよばれることもあるようです。*2

4.リフレ派とデフレ派が共に陥りやすい落とし穴
現実の信用創造は市中銀行が企業にお金を貸すことで生まれるわけですから、日銀がaで市中銀行の国債を懸命にマネタリーベースに変換したところで、企業に資金需要があり、同時に銀行がお金を貸すリスクが取れなければマネーストックは創造されません。
また、銀行員のペン先から民間が使うお金、マネーストックはマネタリーベースの量とは無関係に生まれるのですから日銀が一生懸命マネタリーベースを積み上げることに実質的な意味はありません。 従って日銀による市場からの国債購入を主体とする量的質的緩和で物価が上がらないのも無理はない話でしょう。

黒田日銀のパフォーマンスの悪さを嘲るデフレ派も同じ落とし穴に陥りやすいことも事実です。
デフレ派はしばしば「近い将来、政府負債残高が家計純債務残高を上回りそうで、財政破綻が予測される。だから消費税増税はやむを得ない。」といった発言をします。

しかし現実には以前ブログで書いたように、政府預金というお金もまた政府債務という負債と同時に生まれていて、政府預金は家計や企業の資産に姿を変えて家計資産が増える構造となっていますから、政府債務だけ返すこともできないしプラスの意味もないことになります。*3

国債は家計の預金量とは無関係に発行可能 - シェイブテイル日記 国債は家計の預金量とは無関係に発行可能 - シェイブテイル日記


それにしても、なぜ現実とかけ離れた信用創造のモデルがいまだに経済学の教科書に書かれているかは一種のナゾです。

これは筆者の想像ですが、現代は管理通貨制度という不換紙幣を中心とする経済であるのに、経済学はあったかどうか相当怪しい物々交換から議論を出発させ、また殆ど経済とつながりを持っていない商品貨幣をいまだに議論の中心に持ってきています。

従って管理通貨制度を正しく認識し、議論の中心に持ってくると、経済学の体系が崩れるから、現実(債務を裏付けとする貨幣システム)を教科書に記述することができないのではないでしょうか。(この辺の事情をご存知の方がいらっしゃれば是非お知らせ下さい。)

それにしても、現代主流派経済学のお金への認識が間違っていることから、効果不明の量的質的緩和や、明らかに悪影響しかないデフレ下の消費税増税が行われていることを考えると、そろそろ管理通貨制度をきちんと記述した経済学の教科書が現れてもいい頃ではないかと思います。

*1出所熊本学園大学笹山ゼミ資料

*2イングランド銀行信用創造の説明p3

*3:日本がインフレなら政府債務を抑制することにはプラスの意味があります。

投資家投資家 2015/10/31 21:54 貨幣経済(金融)については、単純に金融論の教科書を読めば良いと思います。また現代金融は、間接金融より直接金融中心のため証券論の理解も必要でしょう。

わろすわろす 2015/11/16 18:25 http://www.mag2.com/p/money/6246