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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2008-05-08 天才とのつきあいかたは難しい

天才ハッカーと企業とのつきあいかた 12:00

「ハッカーと仕事」 | おごちゃんの雑文

を読んで、いろいろ思うこと。

何度でも言うが、彼のあの発言が許されること、彼の身分が許されることは、彼が「特殊な人」だからであって、会社がそうなのではない。あの会社に入れば誰でもああいった生活が出来るかと言えば、それは100%ありえない。

たとえば村上龍中田英寿がどれだけ自由奔放な生活をしていても、「うらやましいけど彼はそれだけの才能と努力があるのだから当然だ」と思えるけれども、「この会社に入ればそういう生活ができる」というのは全く別でしょう。

それこそ本当に、Rubyで儲かってるならいいけど、オープンソースで利益を上げる、というか、生活を成立させるためには、それなりの工夫と代償を伴う訳です。

天才的なハッカーのライフスタイルというのを、僕は下表のように分類しています。ちなみに基本的には知人や著書を読んだことのある人を分類しています。もちろんあくまで僕が頭の中で分類しているだけなので、主観しかないということはご理解ください。


タイプ説明就業形態例(敬称略)
ローンウルフやりたいことはほとんど自分一人でできる一匹狼。やりたいこととやるべきことを同時にできるフリーランス 遊撃隊的な会社員マイケル・アブラッシュ 増井俊之 恋塚昭彦 布留川英一
イノベーター巧くつくることよりも、凄いものを作ることに長けている。斬新な理論を組み立て、実証用のプロトタイプを作れば満足教員 研究者アラン・ケイ マーク・アンドリーセン 西田友是 長尾確 中島謙互 安達晋
ビジョナリー技術理解を武器に、コンセプトを決定し、自分は動かず人を働かせる経営者スティーブ・ジョブズ ビル・ゲイツ 鈴木健
ビルダー独創的なコンセプトや技術革新を考案し、確実で強固なシステムを作り上げる実務家会社経営者 オピニオンリーダーリチャード・ストールマン リーナス・トーバルズ ジョン・カーマック ポール・グレアム ビル・アトキンソン 水野拓宏

これでいくと、まつもとゆきひろさんは僕のイメージではローンフルフ型のハッカーかなと思うのです。

ローンウルフ型のハッカーは、独創的な発想とコツコツ作る地道な努力が両立されているので、たぶんまつもとさんは会社から放り出されてもあまり困らないはず(というより世界中の企業がほっとかないでしょうが)。

けれども、会社が許す限りはRubyに時間を使ってよいということなので、環境としては恵まれていると言えます。


難しいのは、これがCOBOLなどの受託業務がメインの会社でまつもとさんがいると、やっぱりいろいろ感じる社員はいるだろうなということで、これは零細企業のUEIとても無視できない問題です。


また、彼や彼に係る仕事が儲かっていれば、そもそも文句を言うスジアイなぞない。

僕にできることは、天才型の社員に稼げる仕事を与え、本人がフリーランスで単独でやる仕事の何倍もの成果を出すこと。ただ、やっぱりそれだけでは難しい。

でも歴史上もいくつもの会社にスター的開発者が居て、その後どこかに行ってしまったり、事業に失敗したりしているのを目の当たりにすると、ある種の天才的ハッカーは必ず企業を必要とするし、企業もまた常に天才的ハッカーを必要としているのだろうなと思うのです。

天才のタイプによってつきあい方というのは違います。

UEIは西田友是先生に技術顧問をお願いしていて、ときどき講義をしてもらったり、話を聞いてもらったりと情報交換をするのですが、これもひとつの天才とのつきあい方ではないかと思っています。

たとえば、イノベーター型の天才の人は企業にいるよりも研究機関や教育機関に居て常に先端的な研究に身を投じている方がやっぱり良いと思いますし、我々のできることといえば、そうした方々の研究経過の片鱗だけでも使わせていただく。それが双方にとって良好な関係となると思うのです。


でも、失礼ながら、まつもとさんが不幸だとすれば、それはやっぱり会社の規模が小さいことでしょう。

たとえばMicrosoft ResearchやAppleGoogleにいれば、まつもとさんは歓迎されこそすれもと社員にこうなじられることはなかったでしょう。

仮にまつもとさんがGoogle社員で、全く同じ台詞を行ったとしても、「それは特殊な人だけ」などと言われなかったはずです。特殊なのが当たり前なのですから。

最終的には人夫々の話で、どういう状態が自分にとって最良なのか考えるのは自分自身なので、この話に答えはありません。