Hatena::ブログ(Diary)

UEI/ARC shi3zの日記 RSSフィード

2009-10-29

経済産業省がAR(拡張現実感)の法制度やインフラ構築を目的とした検討委員会を設置

平成21年度「ITとサービスの融合による新市場創出促進事業(e空間実証事業)」の公募の結果について(METI/経済産業省)

http://www.meti.go.jp/information/data/c90717bj.html

先日、経済産業省のe空間検討委員会のキックオフ会議がありました。


e空間とは、現実の空間をベースとし、そこに紐づいたメタ情報による電脳世界のことで、極めてざっくりと言えば、電脳コイルの世界を実現するために具体的にどのような法整備やインフラが必要か検討する委員会ということです。


委員には、日本の名だたる研究機関の先生方や、ゲームメーカー、広告代理店、デジタルサイネージ業者、鉄道会社、テレビ局といったところで、そこになぜか僕やAMNの徳力さんのようなネットベンチャー系もお呼ばれしました。


今年は渋谷と松山、それと関西でARを用いたデジタル街ブラウザの実証実験を行うということで、東急と大阪電通のプロジェクトが採択されたようです。


その二つの実証実験は非常に興味深いものではあったのですが、一番興味深いと思ったのは、経産省が本格的にAR産業の出現をにらみ、こうした検討委員会を設置したという事実です。


ARを単なる絵空事や玩具で終わらせず国家プロジェクトとしてインフラ構築の具体的な検討をするというのは、世界でも珍しい試みではないかと思います。


考えてみれば、ARの実用化を試みる場所として日本ほど適切な場所はありません。

思うに、ARが産業基盤として成立するためには、以下の要件を満たす必要があります。


  • 高い情報密度と人口密度
  • 均一な密度を保ったある程度の広さと人口
  • 情報インフラの整備(3G通信網、LTEなど)
  • 地域情報に紐づいたコンテンツの収集と配信体勢
  • 地域連動広告
  • 情報の頻繁な更新

こうして見た場合、国土が狭くて都市部に人口が集中している日本、とりわけ東京はうってつけです。

この目的にはニューヨークは狭過ぎ、ロンドンやパリはのんびり過ぎます。

しかも、携帯電話コンテンツ、とりわけiエリアなどに代表される地域連動型コンテンツが十二分に存在し、それを活用するためのインフラとしての3Gネットワークは世界随一の密度を誇ります。


秋葉原でも渋谷でも毎日のようになんらかのイベントが開催され、人を呼び込むべく大量のビラ、チラシが配られています。


これが例えばロスアンゼルスだと、街が狭過ぎてARの必要性が低く、また街のITリテラシーが低いため、おそらく上手く行きません。

アメリカ最大の人口を誇るカリフォルニア州では、未だにフライヤー(紙のチラシ)が主な情報インフラなのです。



その意味では日本がこれまでのように輸入一辺倒になったり、また、世界のガラパゴスと揶揄されるような、独自の鎖国政策に頼ることなしに、日本で発展させた文化的基盤を世界へ普及させて行くための新たなテーマとして、ARを用いた社会インフラの整備とAR技術の活用という部分に着目したのは、慧眼と言わざるを得ません。


ただし、AR=カメラパススルー型の情報掲示と考えるのは誤りです。

カメラパススルーは確かにインパクトがありますが、撮影しているように見えてしまうということと、長時間やろうとすると腕が疲れてしまうなど、いろいろな問題があります。


重要なのは、「いまだけここだけあなただけ」という言葉に象徴されるような、状況依存、個人依存のコンテンツを流通させるということです。


その点で、セカイカメラやLayarなどの現存するARアプリは、まだカメラパススルーのデモとしての性格が強く、コンテンツ流通プラットフォームとしては現状手探りの段階を出ていないと言えます。



この方向性は昨日今日、急に出て来たものではなく、例えば個人依存のコンテンツ掲示はiコンシェルなどで既に試みられています(いまのところあまり細かく推薦してはくれませんが)。


ただ、解りやすさとして、現実空間を拡張して新たな現実感を生じさせるAR技術は爆発的に普及する可能性を秘めていると思います。


これが最終的に地域産業の活性化やコンテンツ産業の新たな展開に結びつけることができるかどうか、興味深いところです。


また、これに関連して、ともすれば警察との鬼ごっことなりかねなかったAR鬼ごっこも、ARゲームの実証実験として大規模なものをやれそうな感じがしてきました。


近々、そのプレ実験を行おうと思っています。その際はまたこのブログで募集しようと思います。