2010-01-08
■1986年の堀井雄二が考えていたこと
時は第二次ネットゲーム戦国時代である。
たぶん、いまはその端緒に過ぎない。ドリコム、ウノウといったWeb2.0企業が軒並み「ゲーム会社」へと商売替えをし、ちょっと前までぜんぜん元気のなかったゲーム業界が再び活気に満ち満ちて来ている。もしかすると、我々は長い漂流生活の末、ついにオリーブの枝を見つけたのかもしれない。
そういうわけで僕も毎日ゲーム漬けという、ひさしぶりに徹夜続きの日々を送っている。
しかしゲームというやつ、しかも新しいゲームというやつは、いったいぜんたい、雲を掴むような話で現実感がないのもまた事実。
ゲームというのは、そもそも作る方法論がきちんと確立していないから、才能のない人は誰かが作ったゲームを盗む。才能がある人は、誰かが作ったゲームを真似してさも自分が考えたかのように変えてしまう。
たとえば一昔前の第三世界の家電製品といえば、日本製のそれをそのまんま劣化コピーしたような、安いだけが取り柄のものだった。
しかし同じことをBMWがやるとどうなるか。
むかし、マツダが画期的な二人乗りのオープンカー、ロードスター(ユーノスロードスター)を発売したとき、それをパクってBMWはZ3という傑作車を作った。
その後、さらにZ8という、よりマッスルな方向のロードスターへと進化させていった。Z3もZ8もジェームズ・ボンドが乗っていた。
iPhoneは、スマートフォンはもちろん、明らかに日本の携帯電話に色濃く影響を受けている。しかし彼らはまるでそんなこと、存在すら知らなかったようにiPhoneを発表した。
いまやiPhoneが既存の電話とスマートフォンの焼き直しであることを揶揄する人は居ない。それはあまりに無意味だ。
同じようなことをゲームの世界でやるとどうなるか。ドラゴンクエストができるのだ。
「虹色ディップスイッチ」は、ドラゴンクエストをまさに開発中だった堀井雄二氏がログイン誌上に連載していたエッセイをまとめた本である。
1989年、ドラクエ発売直前に書かれた原稿がここに収録されている。
そこには、今日の巨匠になる直前の堀井氏の赤裸々な悩みと自身のほどが記されている。
いったいこのゲームは、どこまで話題をふりまくことができるだろう?
もしかして「スーパーマリオ」を超えるのじゃないかっ!?
と思う反面、いやー待てよ、こういうのはファミコンユーザーにまったく受け入れられなくて、ショップで在庫の山になったりして・・・・。
とか、いろんなことを考えてしまう。
この連載の時点で、既に氏はポートピア連続殺人事件などのゲームデザイナーとしてヒット作を出しており、発売前からスーパーマリオとどっちが売れるだろうか、と考えるくらいの自信のほどが伺える。
と同時に、全く新しい文化を持ち込もうとする不安との葛藤もまた感じ取ることができる。いま振り返ると実に感動的な文章だ。
そこにはもともとPCゲームの文化だったRPGを、なんとかしてファミコンに持ち込もうと奮闘する堀井氏が知恵を絞る様子が克明に記されている。
また同時に、本書は堀井氏がゲームをどのように捉えているか、という重要なことを示すさまざまな警句に彩られたエッセイである。
たとえば、このドラゴンクエストの回の次の回は、「アダルトソフト*1の巻」が二回続く。
自分が血道をあげて作ったドラクエの話は一回でおしまいにして、アダルトソフトの話を二回連続である。さすが東京ナンパストリートの作者だけある。
さらに「こんなゲームがつまらない」というエッセイがあり、そこには以下のような点があげられている。
- 遅い
- プレイヤーに無駄な手順を踏ませる
- ゲームバランスが悪い
- ラストがあっけない
- ゲームに変化が無い
- 操作性がわるい
- 絵がへたっぴぃである
これの凄いところは、今のゲームは殆どこうした問題をクリアしているということだ。
唯一ゲームバランスだけは未だに悪いゲームもあるが、堀井氏が当時指摘したバランスの悪さというのは、例えばRPGで最高レベルまで強くしたのにシナリオをクリアできないとか、そういうレベルのものである。今ではそれはバグとして処理されるだろう。
そう考えると、20年前に堀井氏が懸念したポイントは、ゲーム業界全体が頑張ることで排除されていった。
反対に、専門学校などで個人のゲームを作っている人は、上記に気をつけるのが最低限必要なことだろう。
ゲームに変化がない、ラストがあっけない、ということに関しては、昨今の海外製iPhoneゲームや、SNSゲームなどにもあてはまるところがあるような気がする。
本書は、ドラゴンクエストIだけでなく、IIやIIIのことも触れられているうえ、堀井氏が考えるアクションゲームやネットワークゲームに関する考察など非常に幅広いので、ゲームクリエイターを目指す人はぜひなんとかして手に入れて読んで欲しいと思う。
そして返す返すも堀井雄二氏は偉大だったなあと思う訳だ。
※この本、年代に関する誤植が多過ぎてタイトルを間違えて書いてしまった。正確には1986年である。
*1:今で言うエロゲー、ギャルゲー
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