2011-01-10
■[CES雑感]"グッバイ・コンピュータ"までのラスト・ワン・マイル
ドコモからHT-03Aが日本初の"Googleフォン"として発売されたときのことを覚えているでしょうか。
そのときのキャッチフレーズには衝撃を受けたものです。
曰く「グッバイ・コンピュータ」
Google、オマエが言うか、という感じではあったのですが、果たして2011年のCESでは、奇しくもコンピュータの存在感は強烈に希薄化していました。
経済産業省に境真良というへんな官僚が居て、一時期は早稲田大学に島流しされていたのですが最近霞ヶ関に戻ったらしく、精力的に活動してました。
「どうよ、役人からみて今年のCESは?」
ラスベガスの名門ホテル、ベラージオのカフェ、その名もカフェ・ベラージオで一杯4ドルと意外に安い紅茶をすすりながらこう水を向けると
「グッバイ・コンピュータって感じかな」
と数年前のGoogleのCMと同じことを言うので、僕は思わず身を乗り出しました。
「どういうこと?」
「今年のテーマはスマートTVとスマートフォン、Androidタブレット・・・・どれももうPCの枠組みから飛び出して、"コンピュータ"が周囲に溶け込んでいくような動きになってる。そういう動きがいよいよ本格的に始まったという感じかな」
翌日、実際にCES会場に訪れてみると、確かに境さんの言ったことは実感となって僕にも感じられてくるのだった。
レジストレーションをすませてさっそくセンターホールに行くと、LGとサムソンという二大韓流メーカーがすさまじい存在感を発揮。
デジカメからPC、洗濯機に冷蔵庫まで、サムスンが存在感をドドーンと発揮。
日本に入って来ているサムスン製品はごく一部なんだけれども、デジカメなんかは非常に高性能。
わりとありふれた感のあるマルチタッチディスプレイも、サムスンが展示すると製品っぽく見えるから不思議。
サムスンのAPS-C採用コンパクト一眼レフはレンズがけっこうそろっていて、レンズ貧乏なNEX-5派としては羨ましい。
余談だけど、セレボの岩佐さん(通称和尚)と、AMNの徳力さんと飯を食った際、みんなNEX-5とEOS 5D MkIIの組み合わせで会場入りしているが、結局NEX-5しか使わないということになってるそうな。
NEX-5は、もうどう考えても素晴らしい。画質も申し分ないし、やや弱く感じるレンズも優秀。いざとなればマウントアダプタでどんなレンズでもつけられるし(ただし、スポーツシューティングとかには全く使えない)。
僕みたいに撮影対象が人物ポートレートと風景、たまにこういうトレードショウの取材くらいなら十分NEX-5でいい。ああ、EOS5D MkIIの出番がどんどん・・・で、でも、動画とるならいまだにEOS 5D MkIIのほうがいいけどね!
でも逆に言うとほんとそれくらいしかアドバンテージがない。
まあ僕がその程度の写真しか撮ってないってことなんだろうけど
余談終わり。
とにかくサムソンのカメラは良さそうなのではやく日本でも普通に売ってほしい。
そしてサムソンはもちろん、LG、パナソニック、シャープなども共通していたのは、テレビのリモコン革命
とにかくリモコンをAndroid端末にして、タッチパネルにする!というのがトレンドらしい。
確かにテレビのリモコンは21世紀になってなお、いまだに使い勝手が良いとは言えない代物。
そこにメスが入る訳だね。
そして我らがSONYがGoogleと手を組んだGoogleTVのリモコンは・・・
おおっ!?
なんかよくわからないけどキーが一杯だ!
しかも持ちやすそう。
これでテレビで検索とかしまくるのだね。
なぜか十字キーが二つあるけど、これは混乱しないのかやや心配
実際使ってみると、やはり混乱する。
ニュータイプでないと使いこなせそうもないデザインだ。大丈夫だろうか。
しかし、個人的には多いにそそられたので帰りのBEST BUYで買ってしまった。
まあ変態(僕)みたいな人は買うかもしれない。
ちなみにテレビのリモコンとして個人的に究極だと思ったのが下の動画
これ欲しい!
残念ながら参考出品なので売ってる感じではなかったのだけど、Kinectのテレビリモコンみたいな感じ。
こんな感じでジェスチャーで操作できるのはかっこいいけど、実際に使うと寝転んでたりとかしてるときに面倒なんだろうなーという感じ。一番21世紀っぽくはあるが。
そして僕も最近、家でPCを使っていると、どうせでかい画面あるしソファがあるんだから大画面のテレビでネットが見たい!と思うことが増えて来た。
これは薄型大画面テレビが流行してくると当然出てくる流れだと思うけど、そのときにテレビに内蔵されているプロセッサではどうしても非力なので、いまのところPS3で見ている。
が、某Aクンには悪いがPS3のブラウザもお世辞にも使いやすいとは言えない(かなりいいんだけど)ので、キーボードをどうしようか考えていたとろ、GoogleTVでいいじゃん、という結論に相成った訳。
ただ、これはAppleTVでもいいのかもしれないし、MacMiniでもいいのかもしれない。そのあたりはまだ深く考えていない。
ただ、PS3はAppleTVやMacMiniよりはテレビ向けに良く出来てると思う。
そう考えると、確かに境さんの言うように「グッバイ・コンピュータ」になってきているのかもしれない。
今回、会場とその周辺のホテルでは異常にiPadやGalaxyTabを使っている人を見かけた。
ある意味、日本で誤解されているかもしれないことなんだけど、アメリカ人は日本人以上に流行に染まりやすい側面がある。特にテクノロジーに関しては。
で、僕みたいに仕事でiPadアプリを作っているから、というわけではなく、みんな素でiPadを使っているように見えた。
ベラージオのロビーがiPadの客で埋め尽くされているのをみて、「21世紀だな。始まったな」と思った。
そんなわけだから、というわけでもないけど、タブレット端末や電子書籍端末はやたら数が出ていた。
これはタッチできる電子ペーパー端末
これは変わり種で、左側が電子ペーパー(書き込み可能)で、右側がふつうの液晶になってる二画面Androidタブレット。
これ、便利なのか?
と疑問に思わなくもないが、教育用途として設計されてるらしい。
ペンで書き込みできる電子ペーパーというのもあった。
ペンによるコンピューティングは、Newton以来、一度廃れてしまってはいるが、僕はいずれ復活すると信じている。
このNECのクラウド・コミュニケータ LT-Wもそんなペン・コンピューティングの一種だが、先ほどの端末と違い、両方の画面がタッチパネルになっていて、ペンで書き込める二画面タブレットだ。
ここで動作しているソフトについてはまたそのうち書きたいと思うが、二画面二つ折りのペンコンピューティング時代の到来はそれほど未来のことではないと思っている。
他には、モトローラは噂通りAndroid3.0を展示していたが、実はビデオを実機で流すだけの肩すかしなものだった。
うごいたら凄いけど
こういうのを見ると、スティーブ・ジョブズが「コンセプトカーは不要だ」と言ってるのを思い出す。
少なくとも動くもの出せよ、ということだ。
「動くもの出せよ」といえば、XEPERIA X10はぜんぜんコンセプトビデオの通りに動かないまま市場に投入された(最近のアップデートでマシになったらしい)ことで、顧客から失笑を買ってることが懸念されたのだけど、新製品のXPERIA arcは、前回の汚名を返上するに足るほど、よく動く。
噂では前回と開発した部署が異なるらしく、その甲斐あってか確かによく動く。これが動いてるなら全く文句無い、という出来だ。
これは久しぶりに欲しくなったApple製以外の端末だ。
久しぶりに欲しくなったApple製以外の端末といえば、WindowsPhone7も忘れてはならない。
これは驚くべきことにいままでのWindowsMobileが冗談に思えるくらい、良く出来てる。
去年のCESではまさに絵に描いた餅だったが、今年のCESに展示されているのは看板に偽りなし(のように見える)なのだ。
ひとつだけ気がかりなのは、デモビデオで見た時よりも魅力が減ってるように見えることだ。
これはデモビデオの投入から製品出荷まで実に一年という歳月を経たせいなのかなんなのか、うまく言えないしわからない。
気のせいかもしれないが、WindowsPhone7は非常に良く出来ているが、Windowsいう名前がついているせいで市場で目立たなくなっているような気がする。
今の時代、コンセプトの発表から出荷まで一年もかかるというのは長過ぎるということなのだろうか。
会場では、CEREVO-BOXをヘルメットに装備した和尚と出会った。
ものすごく注目されたらしい。
これはもうゲリラの領域である。出展料も払わずズルい(笑)
個人的に最も気になったのは、RECON INSTRUMENTSのゴーグルだ。
http://www.reconinstruments.com/
これはすごくて、ゴーグルの内側にディスプレイとGPSを内蔵している。
そしてスピードや高度などをリアルタイムに表示しながら記録をとってくれるらしい。
スキーヤーをハイテク化するわけだ。
このゴーグルを試したいがためにスキーにでかけたくなるような新製品だと思う。
値段も$429とそれなりだが、GPSとディスプレイ内蔵だったらそれほど高くない?
他に気になったのは、SONYの3Dハンディカム。
SONYはカメラ内部で一本のレンズからプリズムによって視差を作り出すカメラを作ってたと思うんだけど、民生用にはこんな凶悪なデザインのカメラを投入してきたところがまず驚いた。
これ、写真だとわからないけど、持つとかなりでかい。
大槻ケンヂのバンド「特撮」で「猫かと思ってよく見りゃパン、しかも一斤!」という歌詞があるが、一斤はないにせよ半斤くらいはある気がする。
この大きさをなんと表現しようか、表現する日本語がないことにむしろ戸惑いを覚えるほど。
しかし、この顔みたいにレンズが二つ、ズームレバーに連動して動く様はちょっとカワイイ。
加えて、富士フィルムのFinepix REAL 3D W1を買ったものの画質に全く満足できなかった僕は、これが発売されたら買ってしまうような気がした。
なにしろレンズが大きい。レンズが大きいというのはいいことなのだ。
いわば3DカメラにおけるEOS 5D MkIIであり、実際に5D MkIIを3D化しようとしたらレンズも本体もとてつもない出費になってしまう上に巨大すぎて話にならないので、このくらいなら許容範囲ということで自分を納得させてしまえるのである。
で、「そんなに3D動画を撮りたいの?」と言われればYes!Yes!断じてYes!である。
3D写真を撮影しない人には解らないかもしれないが、たとえば静止画の画質が軽く絶望感を覚えるほどに切ないFinepix REAL 3D W1であっても、3Dで見ると「なんだこれは!!!」と目を剥くほどの臨場感があるのだ。
で、写真に臨場感とか求めないとか、そういう人も沢山いるので、それはそれで放っておくけど、たとえば旅先でみた圧倒的な大自然だとか、コミケ会場で見つけた超絶的なコスプレ美少女だとか、撮影会で激写するモデルだとか、そういう被写体を考えれば、臨場感はあればあるほどいいのである。
3Dで撮影して3Dで再生するというのは、たんに3D映画を見るのとは全く別種の体験で、要するにそれは、僕個人の経験に照らせば、初めてビデオカメラが家にやってきたときの衝撃(うちの妹がテレビに映ってる!!!!とか)に近いものがある。
ただし、3Dにすると臨場感が半端無くなるのでくれぐれも3D酔いしないようにブレ対策はしっかりしたいものだ。
この凶悪なデザインの3Dハンディカムが一刻も早く発売されることを切に願う。
あとはiRobot社のテレイグジスタンスロボが気になった。
さすがに掃除機だけ作ってるわけじゃないのだろう。
これ買ったら高そうなので、とりあえず安くなることを希望。
最近、身の回りの非理系女子が口々に「Roomba欲しい」と言ってるのを聞くようになった。
「いや、あなたの家そんなに広いの?」
と聞くと
「なんか自分で充電に行くらしいし、可愛いじゃないですか」
というペット感覚らしい。
すごい。まんまとiRobot社の思うつぼだ。
他に気になったのはiPadと楽器の組み合わせ
なんかiPad埋め込みギターにはぐっと来るものがあった。買わないけど。
それと、不思議だったのは太陽電池
http://gyazo.com/d6fd367e810a8d2e5da6eac643786913.png:image:w500
やはり砂漠が多いから?
しかしアメリカには砂漠以上にガソリンスタンドがあるので、太陽電池で充電したいというのはよほどの事情が必要っぽい。
山登りとか、砂漠散歩とかで歩きながら充電とか?
実際、正月のモハベ砂漠にも二組くらい砂漠でキャンプしている家族居たし。
日本では絶対ウケないライフスタイルだなあと思ったりした。
そういうわけでCESをあとにしたのだけれど、今年は確かに脱・コンピュータ化の空気をぎゅんぎゅん感じた。
Dellとか完全にやる気無くて机一個分のブースしかないし。
しかも展示してるのはAndroid端末だし。
マザーボードメーカーとして大手のMSIも主な展示はAndroid。
脱コンピュータというか、脱Wintel連合という感じだった。みんなこんなにあっさりとGoogleの思うツボでいいのか!?と思わなくもないが、これがアメリカンドリームということなのか。
確かにここ数年でマイクロソフトは致命的な判断ミスをいくつか犯しているし、もっと以前に犯した致命的な判断ミスがいまに響いて来ているのだろう。
帰りに寄ったBestBuyでGoogleTVが大量に売られていたので、思わず買ってしまった。
ちなみにあの凶悪なリモコンはソニー製だけらしく、LogittecのGoogleTVは普通っぽかった。
テレビにGoogle入ったら確かにコンピュータの役割はちょっとだけいらなくなるかもしれない。
そもそももうWebをみるだけなら本当にiPadだけでもいいし、GalaxyTabだけでも問題ない。
むしろ快適な部類に入る。
ゲームを遊ぶなら本当にiPhoneで十分だ。
最近日本で流行ってるソーシャルゲームも、ケータイ電話だ。
仕事以外でPCを使う機会は数年前に比べて激減している。
では仕事で完全にPCを手放すことができるか。
まだそれができるのは一部の限られた仕事の人だけだろう。
資料のやりとりにはパワポが必要で、事業計画や見積もりにはExcelが不可欠だ。
Exceltがない世界など考えられない。
未だ、Excelを使うためだけと考えてもPCは必要だろう。
Excelに変わる、もっと冴えたやり方が見つからない限り、ビジネスマンはコンピュータに別れを告げられないのだ。
それ以外の用途に関しては、当面、もうほかの方法でもなんとか代用できそうな気はしている。
Excel・・・というか表計算ソフトをどう次世代に移行していくかということが、次世代コンピューティングにおけるラスト・ワン・マイルなのかもしれない。
もちろんGoogle Spreadsheetみたいな解もあるにはあるが、それではあまりにも芸が無いし、そもそも表計算ソフトはもともとキーボードがある前提で設計されたものだ。
キーボードがない端末で同種の問題をどう処理すべきか、というのは全く未知の問題である。
本当にPCに別れを告げられるかどうかは、Excelをどうするか、ということで決定する気がする。
そしてキーボードに別れを告げない限り、本当の「グッバイ・コンピュータ」の時代はまだまだ遠いのだ。
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