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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2012-07-19

湯島サーキット 09:53

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かつ進で一人でトンカツ定食を食って、会社にもどろうかなと歩き始めたら、そういえば近所にラジコン屋があったなと思ってチャンプに立ち寄ってみた。


すると、やたら巨大な箱が置いてあって、なんだこりゃと思ったら、ミニ四駆のコースで、しかも1万円ちょっとだった。


こりゃあいい、と思ってミニ四駆もろとも大人買い。

ところがこれが重い。バカみたいに重い。ここから会社まではちょっときつい坂がある。

しかも距離的には近すぎてさすがにタクシーが可哀想、というレベルだ。

しょうがないからダイエットだと思って持って歩くことにした。


しかし重い。なんだこりゃ。腕がちぎれそうだ。

引きずるようにして交差点を渡ると、前方にガタイのいいポロシャツ姿のジェイが居て、「おーい」と話かけると振り向いた。


「なんすかそれ」


「サーキット」


ジェイとふたり、交替でもっていこう、ということになり、坂の途中でジェイが何度も「ハメられたー」と嘆くのを聞いた。


それで建造途中の新しい秋葉原リサーチセンター(ARC)にサーキットを設置することにしてみた。

文京区湯島だから、その名も湯島サーキット。


サーキットの名前は三音節がいい。グランプリとも相性がいいからね。

スズカ、モテギ、モナコ。そんな感じ


とりあえず組み上げると、タミヤのミニ四駆公式コースができあがった。


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ミニ四駆を組み立ててとりあえず走らせてみる。

遅い。


最近出たミニ四駆プロを走らせると、早すぎてコースアウトしてしまった。

それでまたチャンプに戻って、アップグレードパーツやらグリスやらを買って来た。


色々組み上げて、何度もコースを走らせる。

それで思った。ミニ四駆ってすげえ。そしてソーシャルゲームに似てる。


ミニ四駆を今のかたちに再構成したのは、タミヤの前ちゃんだ。

RCカーグランプリという番組が、新潟では毎週土曜日の朝にやっていて、僕はそれを食い入るように見ていた。


もともと前ちゃんはRCカーのマーケティング担当をやっていた。

タミヤではRCカーはそれほど力の入った事業でもなかったらしい。あくまで模型。RCカーはオモチャ。


前ちゃんの最初の仕事はホーネットのロゴをデザインすることで、それからRCカーを売り込むために大会を開催したり、テレビ番組を立ち上げたりといったことをした。


ところが、RCカーは値段が高くてそんなに売れない。

そこで前ちゃんは、別ラインで売られていたオフロード仕様のミニ四駆に目をつけた。


こいつをオンロード、つまりコース走行専用にして、値段をぐっと下げて600円前後にする。

この値段は利益が出るか出ないかギリギリで、数を売らないと絶対に成立しないようなイチかバチかの賭けだった。


そのかわり、アフターパーツを売って、改造する楽しみを子供達に伝えたいと思ったのだそうだ。


RCカーの遊びは三段階ある。

組み立てる段階、完成して走らせる段階、そして改造する段階だ。


ところがだいたいの人は、完成しては知らせる段階で遊びを終えてしまう。

考えてみれば当たり前で、RCカーの操縦はなかなかに難しい。


操縦を上達するまでにものすごく時間がかかるし、友達と対戦しようにも、友達にもマシンの組み立てと操縦の練習という面倒ごとをやらせなきゃならなくなる。


しかもレースをするためにはかなり広い場所が必要で、だから静岡にあったタミヤの本社くらい広くないとなかなか大会を開催するのも難しかった。



そのうえ、買った人が操縦の練習をしてる間、タミヤは一切儲からない。

レース場の提供などはほとんどボランティアに近い活動になってしまう。


そこで前ちゃんは考えた。

その三段階のうち、改造に一番の重きを置いたらどうか。


そしたら、改造パーツを沢山買ってもらえばタミヤは儲かる。


そのためには操縦を練習しなくて済むように、いっそコースを強制的に走らせてしまえ、と。

これが天才的なひらめきだった。


作るのもカンタン、走らせるのもカンタン、改造するのもカンタンで、何度も改造をくわえたくなる。

そのうえ、「この改造なら間違いナシ」ということがなくて、コースごとに調整する必要がある。

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ミニ四駆は同じスピードで走るだけなので、速すぎてもコースアウトしたりするし、コーナーでの立ち上がりが遅くなったりする。


「このパーツを買えば絶対勝てる」がないから、みんなそれぞれ、思い思いの改造をする余地があって、下手でも3000円くらいする最初から改造パーツが全部入ってるキットを買えば充分戦える。


ミニ四駆の改造パーツは、いわば今のソーシャルゲームのカードにちょっと似てる。

ただし違うのは、時間と金をかければ単純にどんどん勝てるようになって行くソーシャルゲームに比べて、ミニ四駆はコースとの相性やバッテリーの状態、さまざまな不確定要因がある。


これを前ちゃんは「勝てば実力、負けたら運」と呼んだ。


こういう魅力は今のソーシャルゲームにはない。

しかしソーシャルゲームが本当に面白いエンターテインメントになっていくには、こうしたミニ四駆的な面白さを取り入れて行った方がいい。


また、会社として、技術と創意工夫に没頭するとは、こんなに楽しいことなのだ、ということを技術者は当然として、営業や事務や企画の人間にも肌で体験してもらう必要がある。


ちょうど8月8日に創立記念日があって、毎年その日にはちょっとしたバカ騒ぎをするから、その日にレースをしたらいいと思った。



そこで全社に向けてメッセージを書いた。

UEIの紳士淑女諸君

世界的大不況の昨今、我が国はもはやどん底の経済状況の中、生き残りを賭けた生存競争を余儀なくされている。とりわけ我社に於いては、高い技術力、発想力を武器とした技術闘争に関して、国内はもとより、アジア、そして全地球に点在する強力なライバル企業たちと闘い、これに勝っていかなければ我々に未来はない。

そこで此の度、UEIで額に汗して働く紳士淑女諸君のため、技術による生存競争とはどういうことなのか実体験するために、本社8階アクロポリス(ARC)にて超小型四輪駆動自動走行車両専用の競技施設として「湯島サーキット」をβ公開することに至った。

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社員は何時でも誰でも、この「湯島サーキット」で自ら製造・制作・解像した超小型四輪駆動自動車の実証実験に参加できるものとする。

また、この競技場公開に際し、来る8月8日、我社の創立記念日に大走行競技会を開催するものとする。


するとまず近所のラジコンショップ「チャンプ」からミニ四駆とその関連パーツがごっそりなくなった。

出遅れた連中は、アキバのもっと中心地のホビーショップか、ヨドバシカメラに押し寄せた。


折しもミニ四駆30周年。


ついでに、ミニ四駆だけでなくて前ちゃんもいたらいいな、と思って前ちゃんを引き抜いた。

7月からUEIのCHO(チーフ・ホビー・オフィサー)をお願いしている。


前ちゃんは、さすが、ミニ四駆の鬼だ。

そして天才的なセンスをもったマーケッターである。


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僕がどんどん長くしていった湯島サーキットを見るなり、「ダメですよ。ブリッジはどんなに余っても一個にしないと」といきなりダメ出し。

なるほど、そうなのか。


社員たちは僕の思う壷にミニ四駆にハマって行った。女子も男子も、エンジニアもデザイナーも総務も経理も自作のミニ四駆を作り始めた。


時速30kmまで改造して吹っ飛ばす奴、金にものを言わせて豪華パーツで金ぴかにする奴。Arduinoでラップタイマーを自作する奴も居た。

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CTOの水野君のミニ四駆は最も病的だ。

ジャイロセンサーや近接センサーを満載し、なんとカーブを自動的に検知してステアリングを切ったり、坂道では飛び出さないように減速したりする。


さすが器用だ。


このサーキットの存在を聞きつけて(と言ってもFacebookTwitterに垂れ流しているが)、うちの創立記念行事でレースに参加したいという取引先がかわるがわるやってくることになった。


当日の司会は前ちゃんが担当する。まるで往年のタミヤの大会のようだ。


運悪く、というかたまたま衛星テレビの取材が入っていて、彼らはめざとく湯島サーキットを見つけると、「僕大好きだったんですよね。ミニ四駆」と目を輝かせた。


初めてUEIを訪れた普通の大学生の石山君もやってきて仰天した。


「これは何の会社なんですか」


でも、僕に言わせれば「これぞ会社」なのだと思う。

アメリカ西海岸のIT企業にはもっといらないもの、遊びにしか使わないものが山ほどある。


ビリヤード場、ダーツ、カウンターバー、テニスコートやラグビー場や野球場だってある。


小さい会社でも週に一日はHaloナイトと言ってHaloで対戦したり、社員や社内外の関係者が親睦を深めるための施設に金をかけるのは珍しいことじゃない。


そういう意味でもミニ四駆はいい。

値段が安いし、技術者向きだし、対戦するのに訓練がいらない。


8月8日のレース大会が楽しみだ。

僕は日本に居ないけどね