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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2012-09-28

ヒーロー・マネジメント 07:47

ドイツのミュンヘン工科大学からケヴィンというインターンが来てる。

なかなか優秀なやつで、かなり面倒な数学的問題もなんなく解決する。

意外にも、そもそもちゃんと数学ができるプログラマーは珍しい。


うちでも数学がちゃんとできるのはARCにしかいないのではないか。

だいたい修士号クラスでないと高度な数学を実用的には使えない。

まあ高橋諒みたいに、大学中退でも電子回路の設計と数学にずば抜けたセンスを持ってるやつも居るが。


ケヴィンが特撮博物館に行きたいというので連れて行った。

彼が日本にわざわざインターンに来た理由、それはアニメが大好きだからだ。


行く道すがら、坂本龍馬の話になった。

日本には坂本龍馬が好きな人が相当数居る。

武田鉄矢とかは坂本龍馬が好きすぎて、寺田屋襲撃事件の夢を見て号泣するらしい。

自分が龍馬になるのではなく、龍馬が死んだと伝え聞いてボロボロ泣くのだと。

そこまでいけば立派だ。


ドイツにはそういうヒーローは居るのかい?と聞くと、「うーん、ヴェルナー・フォン・ブラウンですかねえ」という話になった。ヴェルナー・フォン・ブラウンはナチスの科学者で、第二次大戦が終わった後、アメリカに渡りNASAの基礎を作った。


人類の歴史的偉業である、アポロ計画の主任設計者として活躍し、人類史上最大の乗り物、サターンV型ロケットを開発した。

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サターンV型ロケットの実物を見に、なんどかヒューストンのジョンソン宇宙センターに足を運んだことがある。

初めて見た時は感動した。

その巨大さにではなく、むしろその小ささに。


こんなものに、いまどきのケータイの百万分の一以下の計算能力しかないコンピュータを載せて、肝心の軌道計算は全部人間の手計算と計算尺で、人類は38万4千キロ先の月までたどり着き、そして帰ってきたのだ。


僕はとても幸運な男だと思う。

子供の頃に憧れたヒーローに実際に接して、仕事さえ一緒にさせてもらえることがある。


たとえばコンセプターの坂井直樹さん。

初めて日産のBe-1を見た時は衝撃を受けた。

欲しい、と強烈に思った。小学生だったけど。


最近はau design projectのリーダーとして活躍していらした。

松岡正剛の「連塾」での講演も痺れた。

日本では数少ない、"本物の"デザイナー。


坂井さんは今は慶應義塾のSFCで教授になっていて、なんとenchant.jsに興味があるといってわざわざ昨日うちの会社までやってきてくださった。


感動した。

そんな凄い人と一緒に仕事ができる。

なんて幸運なんだろうと。


僕の地元のヒーローと言えば、なんといっても、遠藤諭だ。

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月刊アスキー編集長。

毎月、僕は少ない小遣いの大半を投じて、むさぼるように読んでいた。

小学一年生から、大学に入るまで、ずっと。


大学に入って図書館で最初に探したのは、月刊アスキーのバックナンバーだ。

僕の人生にそんな影響を与えた雑誌を、作っていたのが遠藤諭。


素朴な田舎少年だった頃の僕は、ある日、遠藤諭が僕の地元、長岡の出身と知って衝撃を受けた。

その時点で僕の人生が決まったと言ってもいい。

新潟の、県庁所在地ですらない、マイコンショップさえ一軒しかない、半導体屋だって数えるほどしかない、ど田舎で育った男が、コンピュータの最先端を行く、こんな凄い雑誌を作っているのだと。


俺もやるぞと、いつか必ず東京へ、いや、世界へ出かけて行って最先端を仕事にしてやるぞと遠藤諭の存在が僕をどれだけ勇気づけてくれたかわからない。その思いがあるから今の僕がある。


その遠藤諭が、昨夜、「10月にお台場の日本科学未来館で開催されるデジタルコンテンツEXPOで、enchant.jsを大々的に扱いたい」と電話を掛けてきた。


その時期は幕張でスマートフォン&モバイルEXPOもやっているので、人手が足りないし経産省から言われたときは一度断ったのだが、遠藤諭から頼まれたら断る訳にも行かない。

多少は金がかかっても、引き受けることにした。


とはいえ時間もないので、急遽、深夜でも打ち合わせをしようということになり、証券会社の連中と飲んでいた僕は、彼らと別れて銀座のバーに向かった。


それで思い出したんだけど、僕が坂井直樹さんを最初に知ったのは月刊アスキーだった。

なんとも奇妙な一致である。


僕は部下を、少年の頃の僕にとっての坂井直樹や遠藤諭のようなヒーローにしたい。


いまの少年少女が、UEIのプロダクトに胸をときめかせ、ドキドキ、ワクワクするようなモノを作り出し、いつか俺もこんなものを作るのだと。だから将来はUEIに入りたいと、そのために俺はいまプログラミングをし、数学を学び、苦しくてもがんばって勉強するのだと。そう思わせるようなものを今の部下達に作らせたい。


それを作り出すことは、いまの部下たちにはできる。

彼らには才能も、能力も、資金もある。


彼らをヒーローにするのだ。

そうしたヒーローたちを集め、僕はアベンジャーズを作る。

戦うべき場所を与え、その準備を整える。


最近、部下達と接していて、特にそう思うようになった。

もちろんそれぞれ能力もあれば欠点もある。


それを補い合い、優れた製品を作り出すチームを構築することこそがマネジメントの仕事だ。

これは簡単な仕事じゃない。だから面白い。