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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2012-10-04

本当に美味いものを食おう シミシュラン2012 11:31

若い奴にビックリするほど美味いものを食わせると、みんな同じことを言う。


 「ああ、お袋に食わせてやりてえ」


それでいつか自分も稼いでこういうところに両親や大切な人を連れてこよう。そう思えるのだ。

こういう食への感動は、仕事への前向きな力として恐ろしく作用する。

美味いものは、実はそれほど高くない。


僕が五人しか居なかった冴えない会社、ドワンゴに入ったのも、結局は森栄樹の美食力に惚れたからだ。森さんは毎日、徹底的に美味いものを食わせてくれた。


それは座るだけで5万円も取られるような寿司屋から、一杯600円のラーメンまで、東京中、どこにあっても、タクシーで何万かけて往復しても、美味いものを食うのだといって食わせてくれた。


あるとき、老舗のとんかつ屋で、「おれ今月、小遣い足りないからヒレは諦めてロースにしときます」と言ったら烈火の如く怒られた。


「アホかお前、今この瞬間の空腹は、人生に限られた貴重なリソースなんだぞ。人間は一日たった三回、一年でわずか1095回しか腹が減らんのだぞ。その貴重な一回を、単に金がないとか、そんなくだらん理由で台無しにするのか。いいからヒレを食え。大盛りで食え。金ならおれが貸してやる」


借金してでも美味いものを食え、これが森栄樹の教えだった。美味いものを食い続けたければ人より何倍も効率的に働け。



こんな調子で部下に徹底的に美味いものを食わせる。自分も美味いものを食う。そのために働く。実に解りやすい。

それで解ったのは、美味いものに値段はあまり関係ないということ。美味いものは結局のところ、安い。


例えば高級食材として知られるフォアグラは、そこそこいいものを東京で食べると一皿5000円くらいはする。でもそれは、空輸してきたものを一流の料理人が丁寧にソテーし、それを一等地の東京で食べるための値段なのだ。自分でフランスのカルカソンヌあたりにでかけていけば、値段は1/3になるが、そこまでにかかる旅費の方が遥かに高い。そういう比較論でいけば、それだけの価値のあるものなら安いと言えるのだ。そういうものを食べるには、単なるぼったくりとは違う店を見つけ出さなければならない。


600円の牛丼も、5000円のフォアグラも美味いものは等しく美味い。

美味の前に人は平等なのだ。



僕もドワンゴで働き始めてから二年後には、田舎から出て来た両親にビックリするほど美味しいビーフシチューをご馳走できた。給料がめちゃくちゃいいというわけではなかったが、お金を掛けてもいいものと悪いものの区別を、上司が教えてくれたからだ。人形町の老舗で出されるひとつ7000円のビーフシチューは、両親を心から感動させた。ボーナス一回分くらいの出費で、両親を一生に一度くらいの美味で喜ばせることができるなら、安いものだと思った。


そこで感じる感動と、食べ物の味そのものを比較すれば、感動するくらいに美味いものを食べた方がお金そのものよりも遥かに豊かな気分になることができる。


カネをどれだけ沢山持っているかじゃない。どれだけ美味くカネを使えるか。

同じお金でどれだけ豊かな体験を生み出すことが出来るか。

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徹夜なんかは滅多にしないけど、まあどうしてもしなきゃなんないこともある。

最後の最後までクオリティを追い込むようなときは特にそうだ。

お疲れさま、という気持ちも込めて、社員を連れて朝イチで築地にある「とんかつ八千代」へ。

八千代の名物はなんといってもC定食。

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刺身鮮度のアジフライと、ホタテフライ、大ぶりの海老フライで、1300円。

信じられないくらいのボリュームがあり、かぶりつくと衝撃的なまでな美味が口内に広がる。

アジフライとは、こんなに美味いものなのかと感動する。

早朝の街、という築地のイメージと裏腹に、平日の13時までやってる。

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上野の東京牛丼。

おすすめは東京牛丼・白。並盛りで690円、大盛り890円と少し高め。

国産牛に拘り、トレーサビリティまで意識した牛丼屋は日本広しといえどここだけだろう。

ニンニクを生絞りしてバターと牛肉、温泉卵をかき混ぜながら食べる。

わざわざ上野まで出かけて行って食べる価値がある逸品だ。

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ちょっと高めの店になっちゃうけど、六本木「いさご家」は魚が好きなご両親に感謝したいときには絶対にオススメのお店。

今の季節は松茸(1200円)、ふぐ焼き(7000円)がいい。

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一般的にふぐと言えば刺身とちり鍋が有名だが、ここはふぐを焼いたり唐揚げにしたりして楽しめる。

ふぐ特有の引き締まった身が焼かれて水分が蒸発することで絶妙な食感を生み出す。

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銀座の泰明小学校の横にある、有楽町産直飲食街は安くて手頃な価格ながら牛、豚、馬、魚それぞれの産地に拘った飲食店が集まっていて楽しい。

値段はどれも手頃で、特に牛のお店、牛○はなんと24時間営業。

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イチオシはこのポンドステーキ。

アツアツの鉄板をジュージューやりながらつまむ。

3999円。まあポンドステーキはちょっと高いけど、牛タン塩799円、串焼きカルビ299円とだいたい常識的なお値段。

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庶民的な感じなので入りやすい。


庶民的な感じと言えばなんといっても上野のガード下は外せない。

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ここはその名も「大統領」ガード下で大統領。もうそのギャップがたまらない。

味は確か。値段も安い。

こういうところに一部上場企業の役員とかを連れてくると衝撃を受ける。

僕は偉くてカネを持ってる人ほど敢えてこういうところで接待する。

安くても美味いものがあるということが実感できる店だからだ。それは経営の真実だと思う。


カネを持ってる方が常に勝つなら誰も銀行に勝てないし、銀行は誰にもカネを貸さない方がいい。

安くてもいいモノが作れる、だからこそいいモノを作る技術は安易にカネで買うことが出来ない。

そういうことが焼き鳥屋では実感できるのだ。

常に酔っぱらいで一杯なため、満席のときは諦めるしかない。


焼き鳥屋といえば新宿思い出横丁の「ささもと」は外せない。明朗会計で、一本195円。

まあ鳥じゃなくて豚だけど

2000円もあればお腹いっぱいになる。

が、なかなかいい写真がなかったので今回は紹介しない。

ささもとは銀座にもあるけど、断然オススメなのは、木金土しかいない、店主のオヤジさんがカウンターに立つ日。


オヤジさんは「焼き」の技が違う。その違いを楽しむのもいい。


しかもオヤジさんは現役の3Dプログラマー。御歳65歳。

たまに行くと、オヤジさんの「作品」をAndroid端末で見せてくれる。


本当に安くて美味いものを食うと、世の中への考えが変わる。

なぜこの値段でこんなことができるのかと驚くのだ。


感動するほど美味いものを食いながら、いつか俺も、こんなふうに人を感動させるような仕事がしたいと思うのだ。