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shi3zの長文日記 RSSフィード Twitter

2012-12-05

コードで書いたバースデープレゼント 09:05

 つい先日も書いたが、僕はマジックが好きで都内のあちこちにあるマジックバーによく通っている。

 ただ、基本的に店員の人に興味がないので名前とか覚えたりしないんだけど、あまりにも通うので顔見知り程度のつながりはある。


 先日、顔見知りの店員の一人が、最近スマートフォンに変えたからFacebookしようよというので、友達になった。何年も通っているのに彼女の名前が「イクヨ」であることを初めて知った。


 Facebookというのは不思議なツールで、友達の誕生日がガンガン出てくる。

 300人以上友達がいるとほとんど毎日が誰かの誕生日になる。

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 一日仕事をして、新橋で一杯飲んだ後、Facebookをみるとイクヨさんの誕生日だと解った。

 まあ銀座まで近いし、ちょっと顔を出すか、と思って顔を出した。


 「わあ、清水さん!」


 イクヨの反応はいつもこんなだった。

 というか、この店の店員の反応はいつもこんなだ。

 そういう社員教育が行われているのだろう。


 「実はこないだ、マックと新しいマジックを作ったんだ」


 マックつかさは丸の内十時のマジシャンだ。

 イクヨはマジシャンではない。ウェイトレスだ。でもマジックバーのウェイトレスは、簡単なマジックならできる。テクニックが要らない奴はね。


 僕がマックと作ったのはコンピュータを組み合わせたマジックだ。

 どんなことが起きるのかはネタバレになるので言えないが、コンピュータに詳しくない人はもちろん、詳しい人もみれば驚くようなマジックができた。


 それを見せると、イクヨは凄く驚いた。



 「これなら私が最近覚えたマジックとも組み合わせできるかもです!」



 と言って、また別のマジックを見せた。相変わらずテクニックが要らないマジックをよく見つけてくる。



 「よし、オーケー。それじゃあ、君のためにいまここでコードを書こう。バースデープレゼントだ」


 それからiPhone5をテザリングさせて、少しプログラムを書いた。

 素材の加工に多少の時間はかかったが、SFTPでもたついた時間を除けば、ものの2,3分だろう。

 彼女のスマホに作ったばかりのプログラムをインストールした。



 「できた」



 「すごい!清水さんってプログラム書けるんですね!」



 ギャフン。

 するとタキシードを着た女性がやってきた。

 彼女は天才的なマジシャンであり、この店の支配人でもある。


 試しに彼女にマジックを見せて見た。

 超人的な動体視力と身体能力を持つプロのマジシャンに素人がマジックを見せるというのは暴挙としか言いようがないが、今回ばかりは僕は確実に驚かせる自信があった。


 途中まで、彼女は「ふんふん」という顔をして見ていた。「いつものアレか」と思っているのだろう。

 ところが最後の最後、僕が仕掛けたコードで、彼女は絶叫するほど驚いた。


 コラボレーション。

 最近、その有り難味を噛み締めることが多い。


 東浩紀さんと樋口監督、近藤誠と濱津誠、僕とマック。

 哲学者と映画監督、プログラマとプログラマ、プログラマと手品師。


 それぞれの分野のスペシャリストが、それぞれの才能を活かして共通の目的を達成する。これがコラボレーションだ。


 シンプルなアイデアがまるでドミノのように転がり、思わぬ進化を遂げ、研ぎすまされ、ディティールアップされていく。


 そのプロセスを経て、想像もできなかったような新しい何かが生まれる。

 このダイナミズムは、実に痛快で、それは病み付きになるような快感だ。


 なにより僕が誰かのプレゼントとしてコードを書いたのは、長いプログラマー人生のなかで初めてのことだった。いや、一度だけ、お茶大の課題をやらされたことがあったっけ。


 すると、いいタイミングでマックからメールが来ていた。


 「例のマジック、使ってますよ!またバージョンアップしたんですね!」


 僕が生きるために身につけた能力が、誰かの能力と結びついて、また別の誰かを喜ばせる役に立つのはとても嬉しい。


 これがコラボレーションの持つ力か。


 マックが僕の作ったコードで誰かを驚かせている現場を僕はまだ見たことがないが、ぜひ見てみたいものだ。